「それで、イオリさん!!この後、わしらはどのようにすればええんじゃ?」
「ホーディー達はギャンコルド広場に集まってるわ。既に魚人島の人たちの避難も完了してるはずだから、あとはみんなで殲滅するだけかしら?」
「そのホーディってのが向こうの親玉で、海賊王を狙ってんだな?」
ルフィが聞いてきた。
珍しく、私の話を聞いていて、話の中から相手の頭の名前を拾っていたらしい。
やっべェ…。思わず声を上げそうになったじゃんよ?
マジでビックリしたんだけど、ポーカーフェイスで誤魔化した。
話を聞かない事がデフォなのは、たかだか2年で改善出来るはずもなし。たまたま、偶然、図らずも…奇跡に近い事なのだと自分を納得させてみる。
うんうん…だよねェ~!!
「そうだよ?」
「そんじゃ、そいつはおればぶっ飛ばす!!」
「そう言うと思った。アーロンもそれでいいわよね?」
「かまわねぇ。そもそもおれはここで命を終えるつもりだったんだ。もっとも、ヤツはおれに文句を言いてぇだろうけどな?」
「別に、アーロンが気に病むことじゃないわよ。魚人街を偵察した時に覗いてきたけど、あいつらは空っぽみたいだから。」
「「空っぽ?」」
「そのうち解るわよ…!それじゃあ、対戦カードを発表するわね!」
その頃…ギャンコルド広場にはホーディ一味が集結していた。その数15万…
「誰もいねぇじゃねぇか…麦わらの一味の連中はここに向かうようなことを言ってやがったが…王族共もどこに隠れやがったんだ!? それになんでバンダーデッケンは帰って来ねぇ!?」
ホーディがギャーギャーと喚いている。
「頭! なんかものすごい勢いで近づくボンチャリが…!!」
「ボンチャリ?まさか、麦わら共か!!?」
現れたボンチャリから金髪の男が広場に降り立つ。
「あの顔…どこかで見たような…」
「ウィーハハハ! くらえッ "
パージェスが、腰を捻って反動をつけ、ラリアットの要領で腕を振る。弧を描く覇気をまとった風圧が、彼の前方数百mメートル圏内の魚人達を勢いよく吹き飛ばした。嵐脚と比べてスピードが遅い為、切断力は無が、威力は高い。
風圧に当たった者からすると、巨大なバットで殴られたような感覚らしい…
なんで『らしい』かって?
だってあの技、遅いから簡単に避けれるんだもん…
原作での技『波動エルボー』は飛び道具ではないので、接近戦になったらお目見えするだろう。
「…300人程度か…」
「もっと技を工夫しないといけませんねェ…」
「連続で繰り出せば問題ねぇだろ?」
「確かに…それでは、わたしも!!」
と言って、ラフィットが跳躍する。空中で手を羽に変え、羽ばたいたかと思うと敵陣の中に降り立った。
回転しながら羽を飛ばすと彼を中心として円状に魚人達が倒れていき、その円が大きくなっていく。
「ホホホ…パージェスのざっと5倍といったところでしょうか?」
「おれだってもう2,000プラスしてるぜ?ウィーハハハ!!」
「敵は少数だ!!囲んじまえば何てことはねぇ!!数で押し潰せ!!」
― ドドドドンッ!! ― ドサドサ… ―
二人を取り囲もうとした魚人達1,000が次々と倒れていく
「「何だと!!?」」
「必要ねぇのに…」
「ホホホ…彼にも出番をさしあげましょう、パージェス?」
「コメカミをかすめたのみ…!気絶しただけである!!」
崖の上から声をあげるのは、ヴァン・オーガ!!
「あの連射でこれだけの人数のコメカミをかすめただけだと!!?…バケモノか!!」
「「…」」
「おれ達がバケモノだったら、
「ホホホ…そうですねェ…神、…それとも?」
「いや、絶対悪魔だろ!!」
「その表現はまさにピッタリなのである。」
「わ…わたくしは そんな事、思ってませんからね?知りませんよ~彼女は地獄耳ですから!!」
「あっ!!ずりィーぞラフィット!!」
「ホホホ…私は神と申しましたよ?」
「失言なのである。我輩も悪魔などとは思っていないのである…」
話しながらも次々と魚人達を倒していく面々。すぐさまノルマの3万に達していた。
「おやおや、もうノルマが終わってしまいましたねぇ…手応えがなさすぎて消化不良気味ですよ」
「「まったくだ」」
「くそっ!!ヤツラは一体…ん!!? あ、あれは…ネプチューン軍と島民!!今まで一体、どこに隠れていやがった?」
「おお…さすがは『紅雨海賊団』の方々…凄まじい強さじゃもん!」
「我々は2年それを嫌と言う程味わいましたからね。父上。」
!?
ネプチューンと王子共…な、なんだ? 2年前とは雰囲気がまるで…
「あなたは負けるわ。ホーディ…麦わらの一味によってね。」
「ああっ!? 誰だ!?」
ホーディーが声のする方に目を向ける。
「懐かしい顔だが…てめぇ、ふざけた事抜かしんじゃねぇぞ!!」
「ホントの事だよ。私はある御方に頼まれてこの島の未来を占ったのさ。ついでにあんたの事もね。当然この島のトップにあんたが座る未来は無いよ!!」
「ほざけぇ!!」
ホーディがシャーリーに撃水を放つ。
― バチン!! ―
「!!? 頭の撃水が相殺された!!」
「あんまり前に出るな。シャーリー。」
「ご、ごめんなさい……兄さん。」
「ハア!? 兄さん?だと、何を言って…」
「「「!!?」」」
シャーリーの後ろから現れた魚人を見て、ホーディ一味が驚愕する。
「バ、バカな…な、なぜアーロン…さんが!!?」
「ホーディ…おめぇもウワサには聞いてたんじゃねぇのか?おれたちが白ひげ連合に所属してるって事…」
まぁ、所属してるのは紅雨海賊団だし、おれは姉貴に付いただけだがな!!
「信じてなかった…いや、今でも信じられねぇ!!白ひげ連合って…いくら四皇だからって…人間の下にあんたが付くなんて事は考えられなかったからな!!!」
「事実だ!もっともおれは四皇の下についた憶えはねェがな。おれは今『紅雨海賊団』2番艦の船長をやってる。」
言うと、アーロンの後ろから数人の魚人が姿を現す。
「ううっ! くっ…ハチさん、クロオビさんにチュウさん…まさかアンタらもか!?魚人としてのプライドを無くしちまったのか!?」
「チュ! 悪く思うなよ!!」
「エイヤ! 愚問だな…我らは敬愛すべき御方に出会えたのだ。」
「それにホーディ…おめえに魚人のプライドを語る資格はねェ!!魚人(仲間)達に手を出した時点で、おめぇはおれたちの意志も継いじゃいねぇんだ。おめぇらには『魚人海賊団』を名乗る資格はねぇよ!!」
「ぐぬ…うるせぇ!!1番許せねぇのは…アーロン!アンタだ!!幼かったおれ達に人間に対する怨念、憎悪を植え付けた張本人が下等生物である人間と仲良しこよし…。無様にも程があるだろう!!!」
「確かに…無様と言われても否定は出来ねぇなぁ…だがよホーディ!!おめェは自分より弱いヤツに頭を下げる事が出来るか?上っ面じゃなく、心からだ!!以前のおれは出来なかった…だが今なら出来る!!」
「…何だそりゃ?」
「はじめてだった…力の差は歴然。なのに力でねじ伏せるわけでもなく、威圧するでもなく…ただ、ただ…そいつはおれたちの話を、愚痴を…おれたちの言う事をちゃんと聞いてくれた!!おれたちは溜め込んでいたものを全てそいつにぶつけた。そしたらそいつはどうしたと思う?あろう事か、そいつはおれ達に頭を下げやがったんだ!!」
《 第一印象は大事だけど、それだけで相手を見ちゃいけないよね?私も反省してる。ゴメン!! 》
「それまで人間がおれ達魚人に対してして来た事を人間を代表して謝罪…なんて事じゃねぇ…自分がおれ達に対して持っていた認識が間違ってた事に対してそいつは頭を下げた。…最初におれ達に出会った時におれ達の事をまるっきりの悪だと思っていた事に対して…」
《 やっぱりあれね…いろいろと調べてまわるよりも本人たちに聞くのが一番重みがあるよね…。一方向からしか見てなかったら見えない景色があるって事、実感させてもらったわ。ありがとう!! 》
「「……」」
「おれは思った。 ― なんだコイツは!!? ― と…そして、気づいた…おれがずっと人間から聞きたかった言葉は『これだったんだ』ってな!!」
「「「……」」」
「…しゃらくせぇ!!そんな話でおれが改心するとでも思ったか!!人間どもになびいた貴様ら全員… 一人残らず海の藻屑にしてやる!!そうだ!!いい事を教えてやる!10年前、オトヒメを殺したのは…おれなんだよぉ!!ジャハハハハ!!」
「「「知って(まし)た。」」」
王族達と島民達が見事なハモリを決める…
「ハア!!??な…どういう…何の冗談だ?し、知ってただとぉー!?」
驚愕するホーディとその幹部達。白髪頭で驚愕するホーディはまさに化物の形相…
しかもホーディ軍の幹部以外の部下達からすれば自分たち以外がそれを知っていたことも合わせて2重の驚きだった。
「海神様に聞いたんじゃもん!!」
~ 回想 ~
白ひげ連合とジンベエを連れてイオリが魚人島を2度目に訪れた時の事…
《 お主の妻を殺したのは人間ではない。魚人街のホーディ・ジョーンズがその犯人よ!! 》
「「「!!?」」」
「!!!」
「「………!!!」」
竜宮城にいる大臣や衛兵、ネプチューン軍の兵士たちを含め、王や王子達も驚きのあまり声も出ない。
ただ一人、しらほしだけがうつむいて涙を浮かべる。
「…何じゃと!!?」
人間を殺し、犯人だと叫んでいた兵士がホーディだった。その場に居合わせたジンベエにとっては大きな驚きだろう。
「で…では、あの時の”人間”は…!!?」
「ホーディが雇った海賊よ。そいつの仕事は”署名箱”に火をつけること…火の手が上がり、広場が混乱…。その混乱に兵士たちの意識が向いている時に、ホーディは王妃を撃った…」
「「…」」
「そして、雇った人間を口封じで撃ち殺し、犯人に仕立て上げた…」
「「お…おのれ!!ホーディ!!!」」
王と王子達が立ち上がり武器を取る。イオリはリヴァイアサンに指示を出した。
《 鎮まれっ!!! 》
「!! しかし、海神様っ!!」
《 まず、己の娘の話を聞け!! 》
リヴァイアサンの言葉に、その場にいる全員がしらほしを見る。
「…!!!知ってました」
「!!!?しらほし…!!?」
「なんじゃと!!?」
しらほしの言葉に、ネプチューン王とジンベエが驚く。
「…事件から数年後…メガロがこっそり教えてくれました…!!」
「!!?」
「このコは元々ネプチューン軍のペット ― あの日、全てを見ていたのです…!!」
「しらほし姫…!!ではなぜ、それをわしらに!!」
「 ― 言えば…誰かがホーディ様をお恨みになると思いましたので…!!」
「!!?」
「それではお母様が悲しまれます…!!」
「「え…!?」」
「正に今、国王と王子達…ジンベエもかな?…ホーディを憎みはじめてる。」
ポロポロと涙を流すしらほしの頭をポンポンと撫でるようにしてイオリが言った。しらほしは頷いて言葉を続ける。
「お母様と交わした…最後のお約束なのです…!!!犯人がどちらのどなたさまでも決して憎んではいけないと…!!!」
「!!!」
― 犯人がどこの誰であれ私の為に怒りや憎しみに取り込まれないで… ―
王子たちの脳裏に、母の死ぬ間際の顔が、言葉が浮かぶ…
「…!!」
「それで…!!」
「8年前の…!!!母の言いつけを守って…!!お前…この事実を…!!硬殻塔で一人…!!ずっと抱え込んでいたのか…!!!」
兄の問いに、コクリとうなずくしらほし
― 親を殺した者を憎まんじゃと!!?たとえ死にゆく母の願いだとて…それを実際に聞き受けるのは不可能に等しい…なんと素直で健気な娘じゃ…!!!一体誰がマネできようか!!! ―
「どう?この娘…凄いと思わない?この娘なら覇気を使えるようになるのもすぐだと思うんだけどな?」
~ 回想 おわり ~ …
「わしとしてはなホーディ…それを知った1年半前のその時、すぐ貴様を殺してやりたかった。しかしお前の兵力、すなわち人間に反旗を翻す者達を一カ所に集める良い機会だと諭されてのう…。我慢に我慢を重ねたのじゃもん!!それに…しらほしは知っていたんじゃもん。娘はオトヒメの言葉を守って、お前を恨むこと無く、誰にその事を言うでもなく一人で耐えていたんじゃもん…。そんな娘の気持ちをわしが無駄にするわけにはいかんかった。」
「海神様に聞いただと!?海神はテメェだろうが!!」
「海神様は今、ある御方を主とされている。お前も一目見れば分かる…」
「…」