ここはドラム王国。ワポルが治める雪国だ。可能であれば前王の時代に来たかったなぁ…
でもまぁ、国一番の腕を持つ医師は王の庇護下にあらず。
その人の元で修行しようと思っているのだから関係ない。
しかし、国一番の”力”を持っているとは驚きだった。
うん。ドクトリーヌ。やばくね?
この国で一番大きな気配の持ち主なんですけど?
ドルトン、クロマーリモ、チェス、ワポル、も居るはずだよね?
たぶん城から感じる気配がそうだろう。
でも違う。一番強い気配はやっぱりこの人だ。
戦わなかった理由もわかる。多対一では分が悪いと判断したのだろう。
城に居る4人は決して弱くない。2人以上なら勝つのは難しい。
もしかしてこの人、見聞色が使える?
「何だい、おまえは。あたしに用かい?」
「あなたが世界一の医師だと聞いたの。弟子にしてください。とは言いません。学ばせていただけませんか?」
「うまい言い方をするじゃないか。弟子にしてくれと言われてたら断ってたんだがね?」
「一応、あなたの半分くらいは生きているもので。」
「はっ!面白い事を言うじゃないか。おまえはどう見ても…!!」
「?」
「なるほどね。そういう事かい。」
目を細めながら私を見てドクトリーヌが言った。何がそういう事なのかしら?
「あたしの事は知ってるんだったね。おまえさんの名前は?」
「私は、イオリと言います。」
「それじゃあイオリ、あたしの家に行くよ。付いておいで!!」
~ ~ ~ ~ ~
「まどろっこしい前置きは無しだ。で?おまえさんの”本当の名前”はなんていうんだい?」
「驚いたわね。まさかそんな質問をされるなんて思ってもみなかったわ」
「あたしは人のウソを見抜くのが得意でね。おまえさんの言った事がウソでない事はわかってるんだよ。見た目はどうあがいたってひとケタ程度のおまえさんがあたしの半分生きてると言った。それはつまり、不老か転生かどちらかだろうさ。」
「お見事としか言いようがないわね。」
「話せる内容だけで構わないよ?人助けをするほど暇じゃないんでね。」
いやいや、ドクトリーヌ?医者してるんだから人助けしてるでしょうに。まぁ治療後は追いはぎまがいの事してるみたいだけどさ。
私は素直に事のはじまりから話し出した。
暇じゃないと言いながら、食事をはさんで数時間。ドクトリーヌは私の話を聞いてくれた。
ごちそうになりましたよ?大食いって言われちゃった。失敗失敗。小さくなればよかったかな?…って結果は同じか。
「異世界からの転生ってのは初めて聞いたね。いくつか聞いた話はどれもこの世界の転生者だったからね。もっとも転生者と会うのは初めてだよ。長生きはするもんさね。」
「”若さの秘訣かい?”とは言わないんですね?」
「バカ言っちゃ困るよ。あんたみたいな子供にいうもんかい!まあ、おまえさんには言ってもいいかもしれないがね。」
「…」
「いいよ。好きなだけ学んで行きな!その間、食事はおまえさんが作る!それが条件だよ。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「それで…イオリでいいのかい?」
「はい。イオリでお願いします。」
~ ~ ~ ~ ~
転生者という事にも驚いたが、彼女が天竜人だという事にも驚いた。
医術を学びたいという理由にも…
世界をより良くしたい。その為に『分身の一人が』海賊と一緒に旅をする為だと言う。船医かと聞けば代理との事。
ようするにこの子は自分がいつ消えてしまうかわからない存在だという事をきちんと理解している。理解した上でこの世界で何かをしようとしている。
バカげていると思った。そう言ってやった。
すると彼女は驚く言葉を口にした。
「一緒でしょ?」
と、そう彼女は言ったのだ。
明日生きてると誰が保証してくれるのか?誰にも保証なんて無い。
ならば一緒ではないか! と…
いつ消えるかわからない。でもそれは考えてどうにかなるものではない。
考えるだけ無駄なのだ。
要するに普通の人と変わらない。誰も何かの保証があって生きているわけではないのだから。
なるほどね…。言われてみればその通りだ。
「何人くらいに分かれてるんだい?」
「通常は6人…かな?」
「それを4歳からだろう?って事は、おまえさんの人生経験は全部で99年って事だ。」
「あ~、そうなるのね。」
「イオリが17歳になる頃にはあたしを超えちまうね。」
「あらやだ」
「何言ってんだい!自分で望んだことだろう?」
「まぁ…そうですけどね。」
さて、この娘に私の持ってる技術をすべて詰め込むのにどの程度時間がかかるだろうか?
話を聞く限り、この娘は音を上げたりはしないだろう。
楽しみだね。
その後、約2年半に渡りイオリ(イチユリ分)はドクトリーヌの元で医療を学んだ。
13歳を迎えると、医者狩りの激しさが増してきた事もあり、ドクトリーヌが島を出るようにと言った。イオリにはあたしの技術を全部詰め込んでやったからと言って…
最後の晩…
「ヒルルクさんのところにトナカイ君がいるでしょ?」
「あぁ、喋る青っ鼻のバケモンを拾ったと言ってたね。それがどうしたんだい?」
「私の弟弟子かな~、なんてね?」
「…異世界の知識かい?ヒルルクがあたしに渡すとも思えないけどねェ?」
「長くないんでしょ?彼…」
「知ってたのかい?そうだね…。すぐに、というわけじゃないが再発したら手の施しようもない。今の医学じゃあのヤブを治す事は出来ないんだよ。今まで生きられたのが奇跡ってやつさね。」
「なら、誰かがトナカイ君の面倒を見る事になるんじゃないの?」
「それがあたしだってのかい?なるほどねェ…あのバカが押し付けてくるって訳だ。そしておまえさんはそれを受けろと。そういう事だね?」
「そうね」
「なるほどそうかい。つまり、イオリはあのトナカイの代理って事か。」
「フフ…話が早くて助かるわ。」
「まったく…面倒な事を任されちまったねェ…。いいよ!おまえさんの頼みなら引き受けてやるさ。友達だからねェ」
「よろしくね?また…会いに来るから」
「絶対だよ?忘れたら承知しないからね!」
とっても仲良しになりました。まさかガールズトーク出来るとは思わなかったわ。