イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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鏡世界で被害者が!!?

原作89巻が完了です。


どうぞ!







13-333話:プライド

「おれの聞き違いだよな?…もういっぺん言ってみろ!!」

 電伝虫の相手はフランペだった。鏡世界から勝敗の結果を知らせたのである。

 

 彼女はイオリの説教により、他人の見た目を笑う事が出来なく(・・・・)なっていた。そうなった彼女にとって、カタクリは”強い”憧れの兄に戻っていた。兄が負けた事はショックだったし、悔しかったが、幻滅する事はなかった。

 なにせ相手は”魔王の弟”である。もっとも…口止めされているので喋る事など出来ないのだが…

 

『カタクリ兄さんは…!麦わらのルフィに負けたのよ!!!』

「「!!?」」

 

 ー お前の無敗伝説が…!!あんな小僧に…!!? ー

 

「ウソだァ~~~~~!!!兄さんが負ける筈ない!!カタクリ様に敗北などあるハズがない!!」

 

「「…」」

 多くの兄弟たちが敗北を否定する中、半年前のあの日…カタクリと一緒に居た兄弟たちは顔を見合わせていた。

 

 麦わらは確か、あの女の義弟!!ならば…それもあり得る!!

 

 あの日以来、カタクリ兄さんが己を鍛えていた事を知っている。その訓練はまさしく鬼気迫るものだった。

 

  ― まだだ…!!まだまだ彼女に遠く及ばない…!!! ―

 

 つい先日も動けなくなる程の訓練を終えた後の兄の言葉が耳に残っている。

 

 麦わら一味の一人がワナにハメられるという話を聞いたとき…兄はこの事を予感していたに違い無い

 

 あの日…

 

 ”麦わら一味は敵対するの?” そう聞いたのは自分達だ!!

 

 その時カタクリは…

 

 ”こちらが手を出さん限り、当面は無いだろうな…” そう答えたのだから…

 

「何か卑怯な手を使ったに違いない!!許せねェっ!!!」

「「…(違うと思う…!!)」」

 

 ”あいつと戦う時に油断しないでくれる?”

 ”手加減は?”

 ”必要ないわ”

 

 当時は何のことか分からなかったが、あの時交わされた会話はこの事なのだろう…

 ”あいつ”とはきっと”麦わら”の事だ!!

 

 

「殺せ!!切り刻め!!”麦わらのルフィ”の骨も残すな!!!」

「「…」」

 それが無理だという事を…その兄弟たちは確信していた。

 

「追うぞ!!足の速い船は先に行け!!奴らを止めろ!!絶対に逃がすな!!包囲して殲滅するんだ!!!」

 

  ― オォオオオォォォォオォォ!!! ―

 

 数隻の船が急いで出航する!!すると…

 

  ― ズム!!! ―

 

  ― ドッゴォォオン ―

 

「「!!?」」

 

 

 

  ~ サニー号 ~

 

「「!!?」」

「どういう事!?ビッグ・マム海賊団の船が…爆発した!?」

 後方で爆音を聞いたナミが上空から見下ろし驚きの声を上げた。

 

「恐らく、わしらを追おうとしたんじゃろう!そこに機雷が仕掛けてあった!!」

「機雷って…いったい誰が!!?」

 

「ジェルマじゃろうな…あの船影を見るに!!」

 ジンベエの視線の先にはジェルマの船団が見えた。数が少なく見えるのは戦闘の結果か、それとも…?

 

「何でジェルマが?私達に味方したのは一時的なものでしょう!?」

「わしらの味方というよりは、ビッグ・マム海賊団の敵…というのが正しいじゃろうな!単に撤退するのでは、ジェルマのプライドが許さんかったのじゃろうて…」

 

 それを巧みに利用した…というわけか?

 あいかわらず、おぬしらの参謀殿は恐ろしいのう…!!

 

「あ!!来たよみんな!!サンジがルフィを担いでる!!」

「!!」

 

「やったァ―!!帰って来た~~~!!!」

「ルフィ~~~!!!」

「サンジ―!!!」

 

 

「タイミングはバッチリだ!見えたぞルフィ!!サニー号だ!!!」

 サンジがサニー号に飛び乗った!!

 

「ふぅ…」

 

「ルフィ~~~~~!!!無事でよかった―!!!」

「くか~~~…」

 

「寝てるし…」

 

「ふが!!…お…おー…お前ら…待ちくたびれたぞ…!!」

「うそつけー!!ボロボロじゃねェか!!」

 

「チョッパーさん!すぐに手当てを!!」

「おう!!」

 

「しかし…最強将星と闘ってその程度の傷とは!!恐れ入ったわい!!」

 

 

 

  ~ ふんわり島近海… ~

 

『ぺロス兄ィ~~~!!!応答願う!!!ママはどうなった!!?ベッジは!?ケーキは!!?事によっちゃカカオ島より深刻だ!!ぺロス兄っ!!』

 

「 ― ああわかってる…ハァ…ハァ…もうすぐふんわり島に着く!!」

 

「モンドール兄ちゃん!ババロアだ!!ぺロス兄は長ェこと傷を放置したせいで今、衰弱しきってる!!」

 

「んな事言ってる場合か!ペロリン!よこせ!!…ハァ…ついさっき、ユンアさんが一人でケーキを持って島に降りた!!ベッジとシフォンは海域を離脱した!!どうやらママの暗殺は諦めたようだ!!」

 

「ハァ…ハァ…ママは今、ケーキの前に居る!!ペロリン!!数分後には…決着がついちまう!!いいか!!今から起こり得る事は2つに一つだ!!」

 

「1つ!!”ケーキにママが満足しねェ時!!”癇癪は止まらず、ママは国を破壊し続ける!!」

 

「2つ!!”ケーキがママの満足する味だった時!!!”これだけがおれ達の生き残れる道だ!!それもこれもママの想像の中のケーキ如何による!!覚悟を決めろ!!我々の運命はケーキの味に委ねられた!!!」

 

『…!!連絡なら国中に回ってる!!』

『どうなるんだ万国は…』

 

 

 

  ~ ふんわり島 ~

 

 既に住民たちは避難している。そこにはビッグ・マムことリンリンとユンアだけが居た。

 

「ハ~~~ハハハハ…ママママ…ウェ~~~ディ~~~ングケ~~~キ!!!」

 

  ― ドスゥ…ン ―

 

 ケーキの前にマムが降り立った!!

 

「リンリン…!待ってたわよ!!」

「…ユン…ア…!?」

 

「「…」」

「プロメテウス、ナポレオンも…臨戦態勢を解きなさい!!リンリンの邪魔をしてはダメよ?」

 

「は~い!!ユンアさん!!」

「わかりました~!!帽子に戻りま~す!!」

 

「これ…食べていい…の?」

「ええ、もちろん!これはあなたの為に用意したものですもの!!」

 

「わ~い!うれし~!!いただきま~す!!!」

「どうぞ、召し上がれ!」

 

 

 

  ~ カカオ島 ~

 

 カカオ島にはジャッジの声が響いていた。

 

『茶会では…!世話になったなビッグ・マム海賊団…!!』

 

「貴様ら…!!」

『オーブン!やめておけ!!熱で機雷を破壊しようとすれば船団を失なう事になるぞ?』

 

 オーブンがジャッジの言葉を無視して熱を放つと港の船、数十隻が爆発した!!

 

「!!?」

 

「まさか…熱にも反応するのか!!?…くそっ!!」

 

『お前達がこの機雷網から抜け出す事は容易ではない!!今、我々が攻撃すれば船団の殲滅も可能だ!!』

「お…おのれ!!」

 

「ここには、ビッグ・マム海賊団の艦船のほとんどが集結している!!それが殲滅されたら…」

「ママが何というか!!」

 

  ― ゾゾォ~~~… ―

 

『だが…!今回は見逃してやる(・・・・・・)!!』

「「!!?」」

 

『金輪際…!我々ジェルマに関わるな!!!』

 

「…なんという屈辱!!!皆殺しにしようとしていたジェルマに!!」

 

 監視の船を数隻残しジェルマが万国を後にする…。そこから遠く離れた場所でその映像を見ながら父や弟達は満足そうな笑みを浮かべていた

 

「…恐ろしい娘…」

 レイジュは一人、家族と離れたところでつぶやいた。

 

 プライドを保つどころか優越感すら持たせるなんて!!

 ジェルマの総帥が…いや、ビッグ・マム海賊団までもが彼女に踊らされている?

 

 これでジェルマは息を吹き返す事になるだろう!!それは彼女にとってどんな意味を持つのだろうか?

 

「それにしても…」

 気になるのは彼女がジャッジに何を言ったのかという事…

 あの時の父の顔は何か楽しそうに見えた。

 

 今回…父は学んだ事だろう。海賊(モーガニア)は信用できないという事を。

 

 そして…

 

「決して…『彼女(くれない)』を敵に回してはいけない…」

 

 という事を…!!

 

 

 

  ~ カカオ島近海 ~

 

「麦わら達を…追わないの?」

 スムージーに兄弟たちが問いかける…

 

「無駄だ…速度が違う!!カカオ島からバトルシップが出れない以上、我々だけで追いつくのは不可能だ!それに…どうやら我々の背後にも機雷がまかれた様だ!!」

「!!?」

 

 ジェルマのバトルシップが数隻…左右から背後を抜けてゆくのが見える…

 

「いつの間に!!?」

「ジャッジめ…ずいぶんと冷静だな!!激昂して暴れるかと思ったが…」

 

 機雷の数はそれほど多くはあるまい…数隻の被害を覚悟すれば麦わらを追う事は可能だろう。

 追いつけはしないだろうが…

 

 それに…ぺロス兄の話ではエルとかいう女はカタクリ兄と互角に戦っていたという。さらにジンベエも居る!

 黒足がどのくらいの力を持っているかはわからないが少なくともエルと同等と考えるべきだ。

 だとすれば…追いつけたところでこの艦隊だけでは勝ち目はない!!

 

「後日の楽しみという事もあるしな!!」

「…」

 

「ジェルマの船が引き上げるようだ!オーブン兄さんに連絡を入れろ! 早々に掃海せねばな!!」

 

 

 

  ~ サニー号 ~

 

 着水したサニー号は順調に航行していた。その横に巨大な影が現れた!!

 

「なんだ!?」

「さすがジェルマ!この船に追いつくとはのう!いや、待ち伏せか?」

 

「…」

 サンジがジェルマの船を見上げる!そこにはジャッジの姿があった。その目がルフィの事を認め睨みつける!!

 

「…そいつが何だと言うのだ!!!麦わらのルフィ!!!」

「!」

 

「ここは踏み込めば二度と出られぬ『四皇』ビッグ・マムのナワバリ!!!そいつを一人取り戻す為に命を賭けたのか!?」

「…」

 

「サンジはジェルマの失敗作だ!!!皮膚も盾とならず、メシ炊きに従事し王家のプライドもない!!つまらぬ情に流され弱者の為に命を危険に晒す様な脆弱な精神!!兵士としてあまりに不完全な出来損ないがその男だ!!!」

 

「「…」」

 ルフィとチョッパーは驚いたようにジャッジを見た

 

「「…」」

 ジャッジの言葉にサンジとジンベエが暗い表情になる…

 

「じゃあな!!援護ありがとう!!」

「!!」

 突然、元気よくルフィがジャッジに手を振った!!ジェルマが速度を緩めたのだろうか?

 サニー号はジェルマから離れていく…

 

「!!おい!何とか答えたらどうだ!!!麦わらァ!!!」

 

 …まったく…!嬉しそうな顔をしおって…!!

 

「…」

 どこか嬉しそうなジャッジの顔を見て、レイジュは首を傾げていた。

 

 もしかして…!?

 

 ・

 ・

 ・

 

「びっくりしたなァ…!何であいつ急に、お前のいいとこ全部言ったんだ?」

「な!!そういう意味で言ってねェだろあいつは!!」

「わはははは!!最高じゃなお前達!!」

 

「わ!!」

「キャロット!?今度は何!!?」

 

「ジンベエ!!」

「おぉ!!お前達!!」

 

 そこにはタイヨウの海賊団が待ち構えていた。

 

「見送りに来たぜ~~~!!!ジンベエ船長ォ~~~!!!」

「あ!元だ!!元船長!!ぎゃはははは」

「ナワバリを出るまでは、おれ達はまだ部下でいいよな!?」

 

「心配ねェとは思うが念の為、護衛だ護衛!!」

 

 その後、タイヨウの海賊団はナワバリの出口付近まで並走し、魚人島へ向けて舵を切ったのだった。

 

 

 

 

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