イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

358 / 385
原作で言えば、HCI編最終話!!

89~90巻をまたいだ感じの話です。


どうぞ!!








13-334話:戦いの勝者

  ~ ふんわり島 ~

 

  ― ばくっ!! ―

 

「!!!」

 リンリンは一口ケーキを食べると、狂ったように頬張り続けた…

 そこに、ぺロス・ペローが乗る船が到着した!!

 

 ばくっ!ばくっ…ばくっ…もぐもぐもぐ…!!

 

「……!!」

 

 ごっくん!!

 

 アァアアァァァァァアァァァアアァァ…!!!

 

「ママ!!?」

 

 リンリンは涙を流していた…

 

「ハァハァ…しぬほど…おいしい!!何て甘み!!!」

「!!?」

 

「ユンアさん!!」

 上陸したぺロスがユンアに声をかける

 

「よかった…!!満足してくれたみたいね!!」

 ユンアは安心したようにケーキを食べるリンリンを見上げた。

 

「これこれ~~~!!!ウェディングケ~~~~~キ!!!」

 

「見ろ!!ママが正気に戻った!!」

 

「はむ!はむ!」

 ばく♪ばく!ばくばく!!

 

「最高だよ!この甘さ!! どこかで知ってる!!何の味!? おいち~~~!!!」

「…」

 

 

『「万国」各島に告ぐ ― ペロリン!!これ以上、被害は拡大しねェ!!シャーロット家35女!プリンの活躍によりママの癇癪は止まった!!』

 

「はぁ~~~しあわせ…!ごちそうさま!!」

 

  ― パァァァ… ―

 

「!!?」

 

 ケーキを食べ終わり、満足して仰向けに倒れたビッグ・マムを中心に…

 辺り一面が光に包まれた!!

 

 

 

 

  ~ カカオ島 ~

 

 プリンの傍には電伝虫が置いてあった。ビッグ・マム海賊団の通信用である。そこからぺロスの報告が聞こえていた。

 

 違う…私じゃない…!!

 

「プリンにも作れると思うわよ?もっとも、リンリン(母親)の事を想いながら(・・・・・)っていうのは難しいかも知れないけどね?」

「!!?」

 

 誰も居ないハズの場所で声が聞こえ、驚いてプリンは顔を上げた。

 

「あ…あなたは!!(こいつ…『くれない』!!?)」

 

「サンジとは、あんな別れ方で良かったの?」

「…見てたの?(消さなきゃ!コイツの記憶!サンジさんにバレちゃう!!)」

 

「私の記憶を消す必要は無いわよ?誰にも言うつもりないし…」

「!!?」

 驚くプリン!しかしカタクリからイオリについて聞いた事を思い出し脱力する

 

「そうだったわね…でも、仕方がないでしょう?彼とわたしとでは住む世界が違いすぎる…」

 考えている事が筒抜けならば隠した所で意味はない。観念したプリンは己の胸の内を吐露した。

 

「な~に悲劇のヒロインぶってるのよ!!でもまあ、今の所はそれでいいかもね。ただ、もしサンジの事を好きって気持ちが大きくなるようなら、抑え込まずに持ち続ける事を薦めるわ!!」

「?? カタクリ兄さんが言ってたわ。麦わらの一味には一人、ママを凌ぐバケモノが居るって…!あなたのことね?」

 

「さぁ?今の(・・)私は、四皇を凌ぐほどではないかもね?」

「…本当に?」

 

「うん、マジでマジで!!ってか、バケモノ?…あんにゃろ~!!」

「ううん、兄さんは言ってないわ!わたしがそう思っただけ!!ママを凌ぐだなんてそうとしか思えないから…」

 

「アドバイスをしておくわね。気のおけない相手を見つけて内外同一の感情表現を出来るようにしておくといいと思うわよ?」

「…何言ってるのかわかんない…」

 

「あれ?ユンアも言ってなかった?」

「えっ!?」

 

「お似合いだと思うわよ?たぶん…サンジは結婚したら真面目な旦那さんになると思うから。」

「けっ…結婚だなんて、そんな…」

 

「プリン!あなたはあなたで、いきなさい(・・・・・)!!」

「!!?」

 その言葉を最後にイオリは消えた。

 

「消えちゃった…結局、彼女は何を言いたかったのかしら…」

 でも…少し心が軽くなった…そんな気がする!!

 

 それに彼女…

 この目を見ても何もなかった様に話してた!

 

 麦わらの一味って…そういう人達の集まりなのかな?

 

「今度、ママの事を想ってお菓子を作ってみようかな? そしたら…(喜んでくれるかしら?)フフフ…」

 

 プリンは兄弟たちの居る港へと向かって歩き出した。

 

 

 

  ~ 鏡世界 ~

 

「…」

 カタクリが目を覚ますと、顔の上に帽子が置いてあった。そして私に気づいたようにして身を起こす…

 

「…麦わらは?」

「とりあえず、船で万国の海域を脱出中…」

 

「…お前は…行かなくていいのか?」

「用事が済んだら戻るわよ!!」

「…用事?」

 

「これなんだけどね…」

 と言って、手渡したのは仙豆の入った運搬貝。

 

「…これは…?」

 

「名前くらいは聞いたことあるんじゃない?”仙豆”って珍しい豆が入ってるわ。」

「!!?」

 

「あなたのじゃないわよ? あなたの兄貴…”ぺロス”とか言ったっけ?彼が腕を失ったみたいだから、1年以内に食べさせてあげなさい!それ以上経過すると治らないから気を付けて! あっ、それから…!私からもらったって事は言わない事!!」

「…敵に塩を送るのか?」

 

「さあ…?どうなるかなんてわかんないじゃん? 昨日の敵は今日の友って言うしね?」

「…」

 

「気に入らないなら、そうねぇ~!ルフィとの闘いに私が感動したからって事で!もらっておいて!!」

 

「…わかった。遠慮なく貰っておくとしよう。しかしどこで手に入れたことにするかな?」

「どこかの廃屋とかで、宝箱にでも入ってたってことにでもすれば?」

 運搬貝に入っているから大丈夫っしょ?

 

「…なるほどな。ではどこか、滅んだ国にでも行ってみるか…。用事というのはこれだけか?」

「そうよ?」

 

「おれからも…ひとついいか?」

「うん?」

 

「おれへの…褒美を貰えないだろうか? その…感動したというのであれば…」

 

「…別に、イヤじゃないけど?」

「イヤなら別に…」

 

「「…」」

 

 

 

「おれも…もっと強くなってみせる!!」

「今回も随分とレベルアップしたみたいだしね?」

 

「麦わらだけじゃない…!”蒼炎”をも超えてやるぞ!!」

「まぁ、死なない程度に頑張りなさい!」

 

「別に…闘って倒すという意味じゃない!ヤツ等よりも”大きな男”になってみせる!!その時は…」

 

「…えらいのに惚れられたわね…」

「まんざらでもなかろう?」

 

「…バーカ!…自惚れんじゃないの!!」

 

 そもそも私が惚れているのは彼らじゃないのよ?

 まぁ、言ったところで分からないだろうし、もちろん言う気もないけどね!!

 

 ・

 ・

 ・

 

「…」

 次はワノ国…か…つまりそれはヤツが四皇を超える事を意味する!!

 

「海賊王どころではないな…」

 もしも今…彼女に忠誠を求められたなら、おれは迷うこと無く忠誠を誓っただろう…

 

「ママ以外の人間に…こんな想いを寄せる事があろうとは…」

 当然か…

 彼女はママよりも”遥かに”強いのだから…

 

 しかし…麦わらもまた、ママを超えるだろう。

 ならば…おれもママを超えねばならん!!

 

「お兄ちゃん」

「!!?」

 

「惚れてたの?…あの女に!!」

「…ソデにされたがな…」

 

「えっ?頬にキスしてもらってたのに?」

 

  ― ボッ ―

 

 カタクリの顔がみるみる赤くなる

 

「み…見てたのか?」

 

「彼女なら…!私、認めてあげてもいいわよ?…ほら見て、私の顔の傷!!キレイに消えてるでしょ?」

「!!?」

 

  ~ 女の顔を傷つけるなんて!! ~

 

 彼女は怒った!!恐らく、カタクリ兄さんと同じ様に…

 

 

 脅かすつもりだった。でも、彼女は全てお見通し…

 いや、そもそも私の前に現れたのはきっとこの為だったのだろうと今は思う…

 

「ねー見てアタシの顔…!!ひどいでしょ?」

 なぜ、ココにこの女が居るのか?わけがわからなかった。ただ、彼女を放置する事は兄が不利になる!!そう思った

 ブリュレは決死の覚悟で背後から声をかけた!!

 

「ホントだ!!…誰にヤラれたのその傷、ずいぶんと古いようだけど…?」

「!!?」

 振り向いた彼女に言われ、その反応に驚いた。

 

「信じられない!!女の顔に傷をつけるなんて!!」

「な…何を言ってんだい!!そんなセリフを聞きたくて…」

「ちょっと見せて!!」

 

「こ…こら!!触るな!!」

 

「じっとして!」

「止めろってば!!」

 

「じっとしてろっ!!」

「…はい!!」

 この女も覇王色を操るのか!!? ママと同じ…いやそれ以上の威圧!!

 

「…深部は…そう深くはなさそうね。問題は大きさか…でも…」

「…」

「ちょっと我慢してね?30分ほどで終わるから!!麻酔かけるわよ!!」

 

 ・

 ・

 ・

 

「彼女はおかしな人ね。わたし達は敵なのに…」

 

「…昨日の敵は今日の友…らしいぞ?」

「なにそれ?」

 

「フッ…」

 

 まぁそれは…まだ先の事だと思うがな…

 

 

 ~ ~ ~ ~ ~

 

 

 (???)

 

 (なっ!!?なんだこれは!!?)

 

 

 ビッグ・マムは光に包まれ停止していた…

 

 《こんなところに居たのね?》

 

 (お…お前は!!?)

 

 …………

 

 (バカな事をお言いでないよ!!私が消えたらこの子はどうなると思ってるんだ!!)

 

 《そうねぇ~きっと優しい子に戻るんじゃないかしら?》

 

 (なんだって?)

 

 《少なくとも悪だくみをするような事は無くなるんじゃない?》

 

 (私とこの子の精神は融合してるんだ。それが崩壊したらこの子は壊れて暴れるよ?それこそ食い煩いがずっと続くようなもんだ!どうするつもりだい!!)

 

 《今のこの状況、理解してます? この状況を作り出したのは私よ?》

 

 …

 

 《この子に教えるべきは、感情のコントロールだったんです!力のコントロールよりも先にね…》

 

 (…お前、いくつだい?なんだってその事(・・・)を知ってる?)

 

 《あなたがそれを知る必要はないわ!だって…あなたはもうすぐ消えるんですもの!!》

 

 (ちょ…ちょっと待ちなさい!!そうだ、取引をしようじゃないか!!)

 

 …

 

 (なんでも一つ、言う事を聞いてあげる!!)

 

 《は?何それ…そんな事であなたを消す事を辞めろって?》

 

 (じゃ…じゃあ、じゃあ…)

 

 《そうねぇ…!この子があなたに対してそうだったように、私に逆らえないようにしてくれるなら…考えてもいいわ!》

 

 (…それは無理!!私の言う事ですら聞いてくれない時があったのに…)

 

 《それは食い煩いの時でしょう?そこまでは望んでない。それに…あなたと違って私はこの子を止める事が出来るもの!!そうそう、勘違いしないでね?私はこの状況をいつでも作れますから!!この場しのぎでは済まされませんよ?》

 

 …………

 

 《では…契約成立ね!!》

 

 …

 

 《いい事?約束を破ったら…私はいつでもココに来ますから!!それを決して(・・・)お忘れなきよう!!》

 

*--*--*--*--*

 

「今のは…何だったんだ?ペロリン…」

「えっ!!…何がです?」

「!!?」

 

「見てなかったのか?今、ママが光に包まれて…」

「「???」」

 

「い、いや…何でもない…」

 

「ぺロスさんは、少し休んだ方がいいわね!!」

「ユンア…さん?」

 

「ヒドイ傷…船医には見せたの?」

「…一応は…」

 

「まったく!男どもってどうしてこうなのかしら!!ちょっと!抗生剤をお願い!!」

「元のママに戻っちゃってるぜ…かなり痩せてたのにな!!しかし!なんてケーキを作りやがったんだ!!こんな恍惚の表情のママ…見た事ねェよペロリン!!」

 

「ほら!動かない!!」

「悪いんだが、報告だけさせてくれ…!!ママ!!あんた船長だ!!現状一応報告するぜ!?」

 ぺロスがリンリンに近づき話しかける。

 

「ベッジの奴も麦わらも…太陽の海賊団、ジェルマの船団も…もうすぐ万国の海域を抜けるとの報告を受けた!!うちの船団はカカオ島でジェルマの機雷によって身動きがとれなくなってるようだ!!ペロリン!!」

「幸せ…」

 

「こりゃァ…ダメだな!!…今のママには何を言っても聞こえねェらしい!」

 

「じゃあ、治療するわよ!!」

 

「…きっと」

「?」

 

「今回の、ビッグ・マム海賊団の失態はきっと…マスコミに大きく報じられる事になる!ペロリン!!」

 

「プリンとサンジがちゃんと結婚してたら…どうなっていたのかしらね?」

「…」

 

 ぶっちゃけた事を言えば、麦わらの一味にプリンが席を置いても何も問題はなかったのよね!!

 ビッグ・マム海賊団は”傘下”となる海賊団と婚姻を結ぶ。だけど今回はジェルマが傘下に入るのではなく、同盟を結ぶだけのハズだった!!

 

 なんで同盟で婚姻を結ぶんだって話だよ!!

 というツッコみは置いといて…

 

 ビッグ・マム海賊団とジェルマの同盟の為に、プリンとサンジを結婚させたのであれば、どちらか一方に二人を置く事はもう一方が不満を持つ事になる。

 ならばそのどちらでもない場所に二人を置くのが理想であるはず!!その場所が、もともとサンジが所属していた麦わらの一味になるのは不自然な事じゃない!!

 ビッグ・マムの娘たちがいる場所を見れば明らかだしね!!

 

 もう一つの懸案…

 麦わらの一味がビッグ・マム海賊団の傘下に入る事も同盟を組む事もない!!

 私とルフィは蒼炎の兄弟だけど、麦わらの一味は白ひげ連合の配下ではない。

 プリンが麦わら一味に居てもなんら問題は無いのだ!!

 

 もしも、そうなっていたら…

 

 ルフィ達はサンジとプリンを連れて帰ればいいだけの話で…

 ジェルマはビッグ・マム海賊団という後ろ盾を得て”北の海”の覇者になるべく動いただろう!

 ビッグ・マム海賊団はジェルマの科学力を得て、その力を拡大していただろう!

 

 まぁ、そうなったらそうなったで未来はまったく読めなくなって困るっちゃ困るんだけど、その時はその時だ!!

 

 あ~でも…!

 玉手箱はマムが開けて大きな損害が出ていたかもしれないわね!!

 

 そういえば…原作と違ってジンベエが一緒にワノ国に行っちゃった…

 

 原作(扉絵シリーズ)でジンベエがやってた事は、代わりにやらんとアカンかなァ~…

 

 

 

 

  ~ タイヨウの海賊団 ~

 

  ― 策を何重にも巡らせておけば不測の事態に慌てる事もないでしょう? ―

 

「ふふふ…結局、イオリさんから預かったこの船は使わずじまい…まぁ、それもいいか!!」

「おやぶんが無事に逃げれてよかったら!!」

 

「死ぬ気で残ったんだがな…」

 

 

  ~ 数時間前… ~

 

「ママは出ていく者は皆殺しにする人よ!シャシャシャ!!」

 

「つまり、おれ達にやれる事は…!!ジンベエ船長の盾となり死ねって事!?」

「ギャハハ!!全滅はダメだぞ!語り部は生き残れ!!」

 

「否定はできんなハハハ!逃げる者を責めやしない…!!おれについて来るものは、相応の覚悟をしろ!!」

「ジンベエの新たな船出を! あいつらに邪魔させやしない!!!」

 

  ― ウオオオオ~~~~~

 

 

 ~ ~ ~ ~ ~

 

 

 ≪ フフフ…最悪の事態になったとて、おぬしらが死ぬことは無かったろうがな!! ≫

「「!!?」」

 

「か…海神様…!!?」

 

 ≪ 敵の海賊団は”能力者”が主力だと聞いた。ならば(あるじ)の力で戦力を削る事は容易かろう!!ジン(風の魔人)と我を使役すれば、竜巻・津波で敵を殲滅する事も可能だった!! ≫

「それは…」

「…確かに!!」

 

 海賊団の主力が海に飲まれればビッグ・マム海賊団の戦闘力は半減どころではない!!

 

 ≪ しかし…戦闘が無くなった事は、おぬしらにとっては不幸かもな? ≫

「「?」」

 

 ≪ もともと主は”ビッグ・マム海賊団”との戦闘を実践訓練の場と考えていた!!それが無くなったのだから!! ≫

「…訓練て…」

 

「「???」」

 

「それが?…なんで不幸なのですか?」

 

 ≪ わからんか?それが何を意味するか…!これまでの2年を鑑みればある程度想像できよう?おぬしらに待ち受けているのが、どれほどの”地獄”であるか!! ≫

「「「えェっ!!」」」

 

 ≪ これまでとはが違うぞ?なにしろ”四皇海賊団”との戦闘の替わり(・・・)だからな!! ≫

 

「「「えぇぇぇえぇえぇえぇぇぇぇ~~~~~っ!!?」」」

 

「万国を抜けて安心してる場合じゃねェ~~~!!」

「ウオォ~~~!!マジかァ!!?」

 

「今からでも「ビッグ・マム海賊団」と戦おう!!」

「バカ!何の為にだよ!!」

 

 ≪ 無駄だ!!おぬしらが命がけで戦わねば意味が無い!主に助けてもらえるとわかった上で戦ったなら、その後に待つ”地獄”は同じだぞ? ≫

「うぎゃ~!!それじゃ今から四皇と戦ったって戦い損じゃないですか!!」

 

「あきらめろ!お前達!!」

「!!?」

 ずっと話を聞いていたアラディンが声を上げる!!

 

「ジンベエが無事出航出来たんだ!!おれ達の望みは叶った!!ならば…その”地獄”も望む所だ!!」

「お…オォオオオォォォォオォォ!!!」

 

 ≪ …さすが…伊達にこれまで主のシゴキに耐えてきたわけでは無いか… ≫

 

 

 

  ~ サニー号 ~

 

「…そうかペドロは…死んだのか…」

「…」

 後方の2F甲板で、サンジはたばこに火を付けながら呟いた。そこにはキャロットとルフィ、エルが居た。

 

「おれを迎えに来たせいで…(お前の死に場所は…ここじゃなかったんじゃねェか…?)」

 

 ぽんっ さすさす…

 

「?」

 キャロットがサンジの頭を撫でていた…

 

「大丈夫!!大丈夫だよ!!サンジ!!ペドロは自分の意志でそうしたの!!責任なんか感じないでサンジ! ゆティア達がモコモ公国を救ってくれたから…恩返しに来たんだよ!!」

 なでなでさすさす…

 

「ペドロがいなかったらあの時みんな死んでた…!!だがら…!!『ありがとう』って… 言ったげで…!!!これでよがったんだがら…!!!」

 さすさすさす…

 

 ポロポロ えぐっ…ひっく…

 

 ポン

 

「わかってる…どういう男かは!!」

 今度はサンジがキャロットの頭を撫でていた…キャロットは声を上げて泣いた。

 

 そんな中、ルフィは二人の傍に行きバツば悪そうに頭を掻いた

 

「…え~っとなぁ…サンジ、キャロット!!……」

「!!」

 

 ”…………”

 

「!!?」

 やっぱり!あの時感じた気配は!!

 

「「えぇっ!!?」」

 

「な…なんでイオリちゃんが!!?…!!」

「え~!…じゃあ!ネコマムシの旦那も一緒なの!!?」

 

「ちがうだろ?…ルフィ、もしかしてイオリちゃんは…」

 

「あ、それとイオリが万国に居た事は内緒な!!」

「「え?」」

 

「だからよ、ペドロが無事だって事もみんなには内緒にしてくれな!!」

「「えェ~~~!!!」」

 

 普段であればルフィはそんな事を気にしたりはしない。イオリがナミに怒られたくないと言ったのを笑っていたくらいなのだから…。

 

 ただ、その怒りの矛先が自分に向くとなれば話は別だ!!

 

「ナミに言ってくれて構わないわよ?その場に私が居なければ怒りの矛先はルフィに向かうだろうからね?」

「!!? なんだそれ!!冗談じゃねェ!!誰が言うかよ!!」

「いやぁ、ルフィの事だからポロっと言ってくれると思って…!期待してるわよ?」

 

 ペドロが無事だとみんなに知れれば戦力が増えると喜ぶだけの事。ワノ国で合流すれば済むだけの話だ。

 ぺコムズについては微妙だが、きっとなんとかなるだろう。

 それゆえのイオリの発言であった。

 

 誰にも言わないという選択肢もあったが、そんな事が出来るルフィではない。

 言ってくれて構わない!と言われたのだからなおさらである。

 だからと言ってナミの怒りの矛先が自分に向くのはルフィも嫌だった。

 それゆえのこの顛末だ。

 

 ナミが居るのが離れた甲板だったのはルフィにとって幸いだったに違いない。

 

 

 綿あめの雪が降る…

 それはナワバリの出口が近い事を意味する!!

 

 舵輪がある前方2F甲板にはジンベエ、ナミ、ブルック、チョッパーが居た。

 

「後ろは…何、騒いでんのかしら…?」

 

「ペドロさんの事じゃないでしょうか?サンジさんは知らなかった事ですから…」

「そっか…」

 

「泣いてるみたいだ。大丈夫かな?妹分…」

 

「…」

 ジンベエは舵を取りながら数日前の事を思い出していた…

 それは電伝虫での定期連絡だった。

 

 一通りの報告の後、ジンベエは素朴な疑問を彼女に投げた。

 

「イオリさんは…ルフィの事が心配では…」

 

『心配してないわよ? そもそもそこには”ユンア”が居るでしょう?』

「!!?…ま…まさか!!? ……」

 

『そだよ?まさかこんな事になるとは思ってなかったけどね!!』

 

 確かに似た雰囲気を持っているとは思っていた。彼女はここに来る前はバラティエで働いていたコックだった。

 ビッグ・マム海賊団に来て半年ほどになる。サンジの後輩だと本人から聞き、親近感を持ったものだが…

 

 それが…まさか!!

 

 

「え~ん!!ペドロォ~~~!!」

 サンジの胸でキャロットは泣いていた。サンジは『万国』の方を見て微笑んでいた。

 二人の女子の顔を思い浮かべて…

 

 

 しかし…

 

『四皇』ビッグ・マム海賊団に対してこれだけの事をやらかしておいて!!

 なおかつ4つの船団、すなわち、麦わら・ファイアタンク・ジェルマ・タイヨウ!!

 その全てが無事に『万国』を脱出できようとは…

 

 彼女以外のいったい誰が予想しただろうか?

 そしてそれは、ビッグ・マム海賊団にとってどれほどの失態か?

 

「これが(いくさ)であったなら…」

 勝ったのはまちがいなく!!

 

 ニヤリ!

 

 ジンベエは笑った。

 

 

 ワシは…とんでもないところ(・・・)に来てしまったのかも知れんのう!

 

 魚人島だけではない。白ひげの死後…白ひげのナワバリは危機にさらされていた。

 訃報が世界を巡った時、”白ひげのナワバリ”になる前の様に、海賊たちに荒らされる事になってしまうのではないか?そこに住む者の誰もがそう思った。

 

 そうならなかったのは『白ひげ連合』の存在だ。

 

 そして…

 

 『白ひげ連合』が成ったのは彼女の気転と言っていい。

 

 白ひげ海賊団が存続していたなら、跡目争いが起こらないとも限らない。今でこそエースは『蒼炎』と呼ばれ、新たな『四皇』に座しているが、当時はそうではなかった。

 白ひげの跡目を継いでいたのであれば『白ひげ海賊団』は世間から、『炎拳海賊団』と呼ばれるようになっていた事だろう。

 そうなれば、それをよしとせず離れていく者もあったに違いない。

 

 それを…

 

 彼女は、白ひげの”息子”達で構成する『連合軍』を作り上げた!!

 

 誰かを新たな親にするのではなく、『白ひげ』という旗印(象徴)を掲げ、それに集う組織を作ったのだ!!

 

 ルフィに惚れた!それは事実。

 しかし、彼女が麦わらの一味ではなく、別の海賊団に居たならば…

 魚人島でルフィに誘われたとき、即座に断っていたかも知れない。

 

 彼女には恩がある。仁義を重んじる自分にとってそれは大きい。だがそれだけではなく惚れてもいた。そうでなければ、ビッグ・マム海賊団に身を置きはしなかったろう。

 

 

 

 数時間後…

 

 『四皇』のナワバリから無事脱出に成功した麦わらの一味は…

 

「……」

 ぐぎゅるるるるる…

 

「なァおい…!メシ…作っていいか?」

 誰かの(と言ってもルフィしかいないが)腹の音を聞いてサンジが言った。

 

「メシ…!!」

 

「メシャ―!!!」

「わああああああああ!!!サンジのメシャー!!!」

「実はハラヘリました―っ!!!」

 

 男共が歓声を上げる中…

 

「そっか…!もう作らなくていいんだ!!」

「…残念ですか?」

 ナミのつぶやきにエルが問いかける

 

「ううん、ぜんぜん!本職に任せたほうがいいに決まってるでしょう?」

「私はナミさんの料理も好きですけどね?」

「嬉しい事言ってくれちゃって!何も出ないわよ?」

 

 

「メーシ!メーシ!!」

 

「わかったわかった!どんな時でも腹は減る!!」

 サンジの包丁が軽やかにリズムを刻み、フライパンの上で食材が躍る…

 調理は進み料理が皿に盛られてテーブルに並ぶ。

 

「さァ食え!!食いてェ奴にゃ食わせてやる!!話はそれからだ!!」

 

 麦わらの一味に…サンジ(コック)が帰還した!!

 

 

 

 




『イムの娘』では、
HCI編の最終話は次回になります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。