イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

359 / 385
HCI編完結です。

ユンア()万国から去るのです。

どうぞ!








13-335話:同じ目線で

 ビッグ・マム海賊団がサンジとプリンの結婚式の招待状を招待客に送るより半年ほど前の事になる。

 

 シュトロイゼンの元にその女は現れた。

 

 その女は、料理の修行の旅に出ていたが路銀が無くなってしまった。少しの間、雇ってもらえないか?と申し出た。

 とりあえず料理の腕を見せてもらう事にしたシュトロイゼンだが、結果は落第点ではないが合格点には届かないという、可もなく不可もないものだった。なのでシュトロイゼンは彼女の申し出を突っぱねる事となる。

 

 ところが…

 

 丁度その時リンリンが食い煩いを発症。ユンアは自分の造った料理をリンリンの下へと持っていく!!ユンアがその時作ったのは和食だったのだが、食い煩いのお題と違うものであるにも関わらず、それを食べたリンリンが、

 

「なんておいち~~~の!!」

 

 そう言って、一時落ち着いた

 

「「!!?」」

 ある意味それは大事件であった。セムラが食べたいと騒いでいたのに、ご飯とみそ汁を食べて落ち着いたのだ。

 食い煩いが収まったわけではない。一時落ち着いて、”お題”が届くまで待つことが出来たという事だったのだが、これまでに在り得なかった事に、ユンアの料理の評価が上がった。

 

 実は、これには訳がある。

 

 ユンアはリンリン達の事を想って料理を作ったのだった。

 料理を食べて、おいしーと喜ぶリンリンや、リンリンの子供たちの姿を想像しながら作った料理…

 

 《 ― 何が起こったんだ!!? ― 》

 

 それを食べた、リンリンの子供たち全員がなぜか涙を流した。

 

 普通の味なのに…!!?

 

 味だけで言えば、万国の料理人たちの方が格段に上だ。にもかかわらず…

 

 《 …なんておいしいんだろう!!! 》

 

 なんだか…懐かしい? とても気持ちが落ち着く感じの味がする…!!?

 

 

 ビッグ・マム海賊団のどの料理人がそのレシピや作り方を真似て作っても、その味(・・・)は出せなかったという…

 

 

 彼女はお菓子作りにこそ、その真価を発揮した。本人は料理全般の技術向上を目指していたが、パティシエとして見れば超一流の域に達していた。以前いたレストラン(バラティエ)ではパティシエを任されていたらしい。

 

 普通の料理も料理人としては問題無いレベルで、ゼフから教わった料理だけはシュトロイゼンも唸るほどであった。

 

 シュトロイゼンもいくつか料理を教え、彼女はそれを完全にコピーして見せた。さらにその中のいくつかにはアレンジを加えて料理の格を上げ、シュトロイゼンを驚かせた。

 

 料理の腕の向上もさることながら、なにより彼女の統率力にシュトロイゼンは驚かされた。

 

 シュトロイゼンが居ない時の厨房はしばしば混乱する。料理長クラスが何人も居るからなのだが、彼女はその統制を取る事が出来た。

 格上であるはずの料理人までもが彼女の指示に従い、シュトロイゼンが居ない時でも厨房が統率の取れた一つの組織として機能していた。

 料理の腕はまだまだだが、指示が迅速で分かりやすく適切!しかも料理人ごとに指示の出し方を使い分けていた。

 

 3ヶ月程が過ぎる頃、シュトロイゼンは自分が厨房を空ける時には、彼女に総指揮を任せる様になっていた。

 

 麦わらの一味が集結した後、サンジの手配書が写真に変わるとジェルマ獲得の為の計画が練られ、結婚式までの新郎側の料理番を任されることとなる。

 

 

 結婚式の騒動が終わった後、ユンアの料理で家族の食事が行われた。

 そして…カタクリはイオリを呼ぶ。

 

「おれは…夢を見てるのか?家族がみんな同じ目線に…!!?」

「そうだよママ!!…夢のようだろう?」

 食事を食べて、その料理にまたも涙を流す家族たち…

 

 食事が終わると、全員が元の大きさに戻っていた。

 

 《 やはり…夢だったのか… 》

 

 落胆したが、どこか幸せな気持ちが残っていた。それはリンリンだけでなく子供達にも…

 

 カタクリだけは知っていた。

 

 

「礼を言う!!あの、幸せそうなママの顔を…おれは一生忘れないだろう!!」

 

 何を大げさな…!

 イオリはカタクリにそう言おうとも思ったが、こんな機会はそうそう訪れるものではないと思い直した。

 カタクリの言いたい事もわかる。この能力を多用すればリンリンは私の事を欲しがるかもしれない。

 なにしろ自分の夢の一つが叶うのだから…!!そうなれば全面戦争は避けられないだろう。

 

 まぁ、私一人で闘ってもいいんだけどね?

 

 …あれ?

 もしかしてこれって、モアモアの実でもいいんじゃね?

 

 ミニミニの実の能力はこの世界ではあまり知られていないらしい。

 私が多様しない事もあるが、それほど注目される能力ではないからだろう。

 いろいろな文献を漁ってみても『モノを1/100に出来る。』とか、『稀に四身の術を使える者が現れる』としか書かれてない。

 

 使いこなせば戦闘時にも恐ろしい能力なのだが、ここまで使いこなした者も、”覚醒”させた者もいなかったのだろう。

 

 カタクリも気づいていないんじゃないかしら?

 この能力の恐ろしさ…

 

「機会があったらまたやればいいわ!その時は遠慮なく呼んでくれていいわよ?」

 

「そうだな…機会があれば…」

「…」

 

 一人イオリを見送ったカタクリは願いが叶った事に号泣していた。

 

「大きな借りが出来た…お前はそうは思っていないのだろうがな!!」

 

 この借りは…いつか…必ず返す!!

 命に代えても!!

 

 

 

 カタクリが居間に戻ると、雰囲気がガラリと変わっていた。

 話を聞くとユンアが万国を去るとママに言ったらしい

 

 

 何もこのこのタイミングで言わなくとも…そう思わないでもない。

 

 ただ、結婚式を最後に万国を去る事は決まっていた事だった。

 リンリンも一度は了承したことでもある。

 

 カタクリもプリンやシュトロイゼンから聞いて知っていた事だ。

 だが…ママがそれを良しとしなかったのだろう。

 

 それでこの雰囲気か…

 

「お前はおれにとって最高の料理人なんだ!!これからもおれ達の為にメシを作ってくれ!!」

「いえ…私はまだまだ修行の身…!!世界をまわって腕を磨きたいと思います。」

 

「「…」」

 兄弟の中にはおろおろとうろたえる者も居た。それよりもカタクリはユンアの胆力に驚いていた。

 あのママの威圧をこともなげに耐えている…会話を聞いているとまるで…!対等ではないか!!

 

「…おれの言う事が聞きけねぇってのか?」

「ダメですよ!そうやって高圧的に人を押さえつけては!!あなたがやさしくなれば私なんかよりおいしい料理を作れる人が、ここには大勢いるんですから」

 

「言ってる意味がわからないね。どうしても出ていくってんなら死んでもらうよ」

「無理ですよ。あなたに私は殺せません。」

 

「ふざけんじゃないよ!!」

 リンリンが拳を繰り出す。ユンアは難なくそれを避けた。何度も何度も…

 

「信じられねェ事ばかり起こる…!ママが弱くなったとは思えねェ!!ペロリン!」

 それは即ち、ユンアの強さを物語る!!

 

「この人…やっぱり…(すっげェ~強かったんだ!!!)」

 オーブンが驚きの声を上げる。

 あの微笑みの裏にはやはり…それ相応の強さがあったのだ!!

 

 逆らわなくてよかった…!!!

 

 元々逆らえなかったが…、誰もがそう思っていた。

 

「ハァハァ…何だってんだおまえ!ちょこまかと…逃げてるだけじゃ、ここからは出られないよ!!」

 

「私は…あなたを傷付けたくないの…!!」

「「!!?」」

 

「…」

 

「あっははは!!傷つけたくないとは恐れ入ったねェ!!傷つけられないの間違いだろう?ナポレオン!!」

「は、はい!!」

 

「…」

「笑わせてもらった礼に、苦しまずに殺してやるよ。一刀両断でね!!」

 

 リンリンがナポレオンをかまえると、ユンアはマグロ包丁を抜いてかまえた!!

 

「仕方がないわね…」

 

  ― ぐぐぐぐ… ―

  ― ぐぐぐぐ… ―

 

「「威国!!」」

 

 ― ドガガァーン!! ―

 

 斬撃がぶつかる。

 

 リンリンの攻撃は完全に相殺されていた。

 

「「「!!?」」」

 

「なんだってェ!!?お前…!その技をいったいどこで…!!?」

 すかさずユンアはリンリンの懐に潜り込み、左拳を腹部にあてた!!

 

「少し、眠ってもらうわね!!」

 

 - 無・空・波(むくうは) -

 

  ― ズン!! ―

 

 拳の一撃!!

 

 それを受け止めたリンリンの足元が僅かばかり後ろに動いた。

 しかし…鋼鉄の肉体を持つリンリンにそんな打撃が効くハズが無い!!

 誰もがそう思った。受けたリンリン本人も…

 

「なんだいそりゃあ…?そんな攻撃、痛くも痒く…も!!?」

 

  ― ドクン!! ―

 

 なんだァ今の揺れは!!? あぁ!!? 景色が…歪…む? 

 

 揺れたのはリンリン自身だった。故に、その事に誰も気づかない…

 

「…!!?… ガッ!!」

 

  ― ドサァ…ズゥン… ―

 

 リンリンは振り上げたナポレオンを放してそのまま仰向けに倒れて意識を失った…

 

「「ママ!!」」

 ナポレオンとプロメテウスが叫ぶ

 

「大丈夫!気を失っただけよ!もしかしたら数日、目を覚まさないかもしれないけれど…」

「「…」」

 

「あなた達は元に戻ってなさい!」

「「は…はい…」」

 ユンアに言われ、ナポレオンとプロメテウスは普段の状態に戻った。

 

「シュトロイゼンさん…!半分以上はあなたの責任ですよ?」

「!!?」

 

「あなたが過保護に育てたからです。彼女は…あなたと出会った時に起こったことをきちんと知る必要があります。それを彼女に話すのは、あなたの責務だと思いますよ?」

「…何を言って!!? まさかお前は…!!?」

「「「???」」」

 

「本来であれば、彼女は事実をすぐにでも知るべきだった。たとえ精神が壊れたとしても…」

「…」

 

「あなたが話さなくても、いずれ彼女は本当の事を知るでしょう。本当はもう…」

 知っているかも知れないけどね…

 

「「???」」

 

「ユンア…あなたはいったい…」

 プリンが遠慮しがちに声をかける。

 

「私はあなたの友達よ?何があってもね!!もちろん…あなたがそう思うかはあなた次第だけど?イオリの言った事…忘れないでね?

「!!?」

 

「プリン、またね!」

 

 

 ポン…

 

 ユンアはリンリンの頭に手をあてた。それをおとなしくなったナポレオンとプロメテウスが見つめている…

 

今のはノーカンにしてあげる! 次はないわよ? じゃあ、またね!!」

《 … 》

 

「みなさん!私はこれで失礼します!!また会う事もありましょう。それでは、ごきげんよう!!」

 ユンアは荷物を抱えて手を振りながら颯爽(さっそう)と部屋から出ていった

 

 

 さて…次はどこに行こうかしら?1/8もいらないところがいいわね!!

 

 

 こうしてユンアも万国を後にした…

 

 万国からの離脱者には珍しく、彼女を追う者も攻撃する者も無かったという!!

 

 

 

 その後…

 

 

 リンリンが目を覚ましたのは丁度…

 

 麦わらの一味が万国のナワバリを抜けた頃だった

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。