イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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14-340話:おこぼれ町

 飛徹との話を終えたイチユリがルフィを見つけるのと、ホーキンスがルフィ達に声をかけたのは、ほぼ同時だった。

 

「そこにいるのは全国指名手配中の浪人ゾロ十郎とその一味か?」

 

「! あれ!?あいつは!!」

 

「”麦わら”…!? 今から久里ヶ浜に出向こうと思ったが、犯人はお前で間違いないな?」

 

あぁ…、あいつカイドウの子分らしいんだ…!!

 

「部下が二人と狒々が一頭消えた。お前達がやった確率98%…!!だがそれもどうでもいい話!この『ワノ国』では強者につくか…従わず逃げ回るか!それだけだ!!」

 

錦えもんの話はこうだルフィ!『騒ぎは起こすな』!!」

「よし!じゃあちゃんと後で謝ろう!!」

 

「観光ならやめておけ…!この国を裏で誰が牛耳っているか知ってるのか?」

 

「…知らねェな!!」

「カイドウだろう!?おれは『四皇』をブッ飛ばしに来たんだ!!」

 

「おいルフィ!そういうのも言っちゃダメだと錦えもんが…」

「今のはウソだ!おれ知らねェ!!」

 

「グルルル…」

「ヤバいでやんす!!」

 

「…お前達が一ヶ月後、生きている確率…99%!!?そんなバカな!!?」

 

「あの者達は、今日!私に襲い掛かって来たゆえ、潰したまで!!」

「「!!」」

 

「イチユリ殿!? ”麦わら”達の生存率が高いのはそういう事か…!なるほど”蒼炎”とゆかりあるあなたであれば!”麦わら”ともつながりがあるのはある意味納得ですね。」

 

「別に…その者達は、私のツレというわけではないがな!」

 

「…それを信じろと?」

「信じる信じないは、お前の好きにすればよかろう?もっとも…身にかかる火の粉ならば振り払うまで!!」

 

「そうか!今日は”大安”!!あなたが自由に動ける日!!」

 

「その通り!!今日は私がこの国を自由に動ける日!!”カイドウ君”への反逆行為を行わない限り、誰も手出しは出来ない決まり(・・・)!!それは”真打”のおまえも例外じゃないよ?」

 

「「??」」

 

「さあ、わかったら引き上げとくれ!それとも…闘るかい?」

「…あなたと闘るほど愚かではない。”大安”ではさらに分も悪い。引き上げるとしよう!」

 

 ・

 ・

 ・

 

「なんだよ!闘ろうと思ってたのによ!!」

 ホーキンスが立ち去った後、ルフィが文句を言っていた。

 

「…ところでルフィ!お前のその刀!どこで手に入れた?」 

「ん?名刀でござるだろ?」

「いや、本当に名刀の気配がする。ちょっとおれに貸してみろ!」

 

「それは”二代鬼徹”!大業物の一つだよ!!ゾロの持つ三代鬼徹と同じく”妖刀”だけどね!!」

「何ィ!?」

 それは預かりものだから、ゾロのモノにはならないよ?

 

「まさか…こんなところでイチユリ様にお目にかかれるなんて…!!」

「誰だお前は!!」

 

「先ほど緑のあなた様にお助け頂いた、鶴と申します。」

「尻尾の中にいたのか!!」

 

「お急ぎでなければ是非、ウチの『茶屋』へお越しいただけませんか?お礼をさせてください!」

 

「茶屋?美味いもんでもあんのか?」

「たいしたモノはありませんが、ウチの『おしるこ』は自慢の品なんですよ?」

「へ~」

 

「城には甘味処は用意してないからちょうどいい!お玉ちゃんに食べさせてやってくれるかい?」

「ええ、もちろん!喜んで!!」

 

 

 

 茶屋に着くと菊が浦島に言い寄られていた。確かにキレイですけども…

 相撲取りからすれば体格差は少なくていいかも知れないけど、『菊』は女形ですけど?

 そういえば、原作でサンジも言い寄ってたっけ…。

 

 お鶴の姿を認め、浦島は帰って行った。

 

 ルフィとゾロには団子が振舞われ、ゾロはお酒も飲んでいる。お玉は初めてのお汁粉を口にした。

 

「あんめぇ~~~!!!何てうめェ食べ物なんだ~~~!!!」

「初めて食ったのか?それ」

「はい!!」

 

「おもちが入ってるでやんす!!正月にしか食べれないと思ってました!!なんてぜいたくな食べ物~!!かたじけないでやんす!!お師匠様に悪いですが…!!」

「…」

 

「おもち!おもち!!」

 

「お前、ほっぺたから出せるだろ」

「あれはお腹にたまらないでやんす」

 

「ウゥッ…」

「お鶴さんっ!!」

 お玉の言葉を聞いて、鶴が声を殺して泣いていた。

 

「今日は最高の日でやんす!!」

「…」

 

 

 

「あんな子供はざらにいますよ このワノ国にはね…」

「…」

 

「…まだまだチカラ及ばず…申し訳ない!!」

「イチユリ様が謝る事じゃありませんよ!飲み水すらままならなかった数年前に比べたら…」

 

「あんなチビ助が腹いっぱいメシ食えねェなんて…!!そりゃ大きくなりゃ狩りで食ってけるけどよ」

「大きくなっても狩りは無理だよ!」

 

「普通なら海と山と森がありゃ食い物なんかどうとでもなる筈だ!!」

「ええ…そりゃそうなんですけどねえ…」

 

「荒野で獣を見ただろう?あれらを狩れるような強者はみんな殺されるか奴隷にされている…。船は将軍が押さえてるから漁業もままならない!海の幸もヤツが独占してるようなもんさ!山は見ての通りの有様だ!!工場が立ち並び、食べ物なんて採れやしない!!桃源農園の収穫の一部と荒野を開拓した田畑が久里の食料事情を支えてるんだよ!それだって皆に十分に行き渡る程の量じゃない!!」

 

「それなら荒野をもっと開拓すりゃいいんじゃねェのか?」

「それはそうだが、すぐには無理なんだよ!」

「なんでだ?」

 

「田畑が増えれば人も要る!人が増えればその分食料も必要になるんだ。収穫を得るまでは食料が不足する事になりかねない。それに…荒野を耕しても土地の広さに見合った収穫が得られるようになるまには時間がかかる!!食料を確保しながら、少しずつ増やしていくしかないんだよ!」

「なるほどなァ…」

 

 F-RONPが介入すれば、なんとかなるかも知れないが、ワノ国は非加盟国であるうえに鎖国国家だから、さすがのユナでも簡単には手が出せない。世界政府も絡んでいる為、実はカノンから止められてもいる。

 

「お優しいね!お兄さん方…そうだお名前は?」

 

「おれァゾロ十郎、浪人だ!」

「おれはモンキー・D」

「こいつは”ルフィ太郎”」

「そう、ルフィ太郎だ!!ござる」

「…」

 

「ふふふ、海外の人だろ?」

「!!」

「言葉が変だよ…イチユリ様くらいになりゃ、わからないけどねぇ!」

「…」

 2人も普通に話せばいいのにね?

 

「よく入国できたねえ」

「なんでバレたんだ!」

 

「大丈夫!誰にも言いやしないよ!あたしもこの町では新入りで、お菊ちゃんもウチに来て一ヶ月の新人さ…」

 

「ここは『おこぼれ町』っつってたが、何だその名前」

「名前の通りだよ…みんな役人の町のおこぼれを目当てにこの辺りに住んでるからさ!」

「それで『おこぼれ町』か…!!」

 

「もっとも…最近はそうじゃない人も増えてるけどね」

「どういう事だ?」

 

「イチユリ様が荒野を田畑に変えてくださったからさ!今じゃ農業を営む人も大勢いるよ!久里のおこぼれ町の大きさは1年前の倍以上になってるんだ!活気もあるし、ありがたい事だよ」

 

「スゲェなお前!!」

「…」

 

「そういや、『食い物がたくさん採れる場所』がどっかにあるって、玉が言ってたぞ?」

「煙突のない山が見えるかい?山頂に昔は『おでん城』というお城があってね…もう20年も前になるけど…」

 

「あの城なら行った!イチユリの城だろ?」

「おでんって聞いたな…何だっけ?」

 

「20数年前までは…永く『光月』という氏族がこの『ワノ国』を治めてたんだ…。あの山の麓にかけて広がる大きな農園は…今は亡きおでん様が久里の皆においしい物を食わす為に作ったのさ!決してオロチ達が”食”を牛耳る為に作ったものじゃない!あの『桃源農園』はね…」

「…」

 

「そこに大量の食料があるのか?」

「あるよ…今ではその農園もイチユリ様の領地になってるけど…」

 

「なんだよ!じゃあ問題ねェじゃんか!!うまい物いっぱい食えんだろ!!」

 

「収穫の9割は将軍に納める”約束”だ!それを条件に荒野の開墾を許してもらってるんだよ…」

 

「何だそりゃ?それでここにいるチビ達が腹いっぱい食えねぇっておかしいだろ!!」

「…」

 

「イチユリ様を責めるような事は言わないでおくれよ!イチユリ様が来る前は、収穫は全部将軍オロチのものだった!川の水も飲めず…!久里の住民は生きていくのも苦しい、ギリギリの生活を強いられてたんだ…」

 

 

 ~ 一年ほど前の事… ~

 

「顔をあげておくれ!あんたイチユリちゃんだろ?十数年くらい前に鍛冶場に居た!…大きくなって!!」

「あのイチユリちゃんかい?えらいベッピンさんになって!!」

「あたしの事覚えてる?同い年って事で一緒に遊んだ事もあるんだよ?」

 

「こんな事になっているなんて知らなくて…!ごめんなさい!!」

 

「あんたが謝る事なんてないだろう?」

「それに”戻って”来てくれたんだ!こんな所に!!…それだけで十分だよ!」

 

「それにしても、本当に久里を治めてくれるのかい?」

 

「はい、一部ですけど…!カイドウとオロチ将軍とは話を付けて来ました!」

「「!!?」」

 

 イチユリが最初に手に入れたのは

 久里城跡(桃源農園含む)、頭山、おこぼれ町、荒野の一部

 ※博羅町、編傘村はもらえなかった。

 

 桃源農場の収穫の9割をオロチ軍に納める事を条件に、荒野を耕した土地で採れる作物は全て自由にして良いとされた。

 当然の事ながら桃源農場で働く人を荒野に移す事は出来ず、荒野の開拓はおこぼれ町の住人でまかなう事になった。

 

 領地を手に入れイチユリが最初に着手したのは工場排水の改善だった。キレイな水がなければ作物がムダになるからだ。

 ろ過装置を設置して、川にはろ過した水を流すようにした。国の者にはナイショだが、川の底にあったヘドロは土と水の精霊の力によって浄化した。

 そのおかげもあって、わずか1ヶ月ほどでキレイな水を確保する事が出来るようになった。

 

 キレイな水が手に入る事がわかると、桃源農場の1割の収穫も手伝って、人が集まるようになり、荒野の開拓は驚くほど速く進んだ。

 ルフィ達が来る頃にはおこぼれ町は原作よりも2倍以上の大きさに膨れ上がり活気のある町に変わっていた。

 

 そして半年前…!おこぼれ町の改善を聞きつけたオロチがえびす町をイチユリに押し付けた。要するにそこもイチユリが治める土地となっていた。イチユリは都の外の荒野のかなりの土地をその領土として認められ、そこに田畑を開拓している。

 ようやく最初の収穫を迎えた頃、錦えもん達が過去から現れたのだった!!

 

 

人間(オロチ)が汚した水と大地をイチユリ様が元に戻そうとしてくださっている!オロチなんかにゃできない事だよ!」

「…」

 

  ― シュルルルッ ―

 

「!!」

 

  ― カッ!! ―

 

「!!?」

 飛んできた矢をゾロが剣で止めた。

 

「誰だ!!」

 

「キキキキ!!聞こえたぞ女ァ~!!?将軍の悪口を言ったな!?」

 上空にいるのは弓矢を持った太ったコウモリ…

 

「おれの聴覚は人間の6倍だ!!」

「ギフターズだ」

 

「聞こえたのはいいが…それが命を取るほどの理由か!?当たりゃ死んでたぞ…!!」

 

「お鶴さん!!よかった無事で!!」

「大人しく生きてりゃそうそう手はださねェ…!が…オロチ様は反抗的な意思を決して許さねェ!気をつけるんだな!おれ達は今”大事な用事”を実行中!!」

 

「ほォ~…!!」

「!!?い…イチユリ!!?さ…ん?」

 

ここ(・・)を私の領地と知った上で、今のセリフを吐いてるんだろうねェ?」

「!!?」

 

「いや…おれは今!!あんたの領地の外に居る!!」

 

「領地の外からなら”私の領地”を攻撃しても良いと?」

「え?」

 

「それはカイドウ、オロチの意見と受け取っていいかい?バットマンとやら!」

「あ、いや…その…」

 

「質問に答えな!それでいいんだね?」

 

「わー!!誰でやんすか!?」

「!!?」

「え!!」

 

「たま!!?」

 

「わーアニキ助けて~!!」

「ホホホホ!!おいらは韋駄天!!時速200Km!!!」

「さらわれるでやんす~~~!!」

 

 ワンワン!!

 

「お玉ちゃん!!なんて速い足っ!!乗せてコマ犬くんっ!!」

「ワン!!!」

 菊が狛犬に乗ってガゼルマンを追う!

 

「あの女、刀持ったぞ!!」

「剣術ができるらしいのよ!見た事ないけど!」

 

「犬~~~っ!!おれも連れてけ!!」

「待ておれも行く!!」

 ルフィが腕を伸ばして狛犬に手をかける!!

 

「腕が…!!!」

 ルフィの腕が伸びたのを見てお鶴が驚く、次の瞬間!!

 

「ぎゃ!!」

 バットマンがイチユリに落とされていた。

 

「お前の上司は『ホールデム』だったね?上司の所へ連れてってもらうよ!!」

「は…はい!!」

 

「お前とアイツがしたことの落とし前…キッチリつけて貰わないとね!!」

 

「イチユリ様…!お玉ちゃんは…」

「ルフィ達に任せておけば問題にない。どのみち行先は『ホームデル』の所だろう。っと、行く前に…」

「?」

 

「お鶴はここへ来て半年ほどか?何故、ここに居を構えた?」

「…」

 

「そういえば…今年で20年だったな。」

「!!?」

 

「何も言うなよ?まずは無事だと伝えておこう!では…また来る!!」

 イチユリはバットマンを抱えて飛び上がると剃刀で博羅町へと向かった。

 

 

 尚…

 

 ホールデムは、部下の管理不行き届きの為、バットマンとガゼルマンともどもイチユリに叱られ(・・・)ました。

 

 ルフィ達はホールデムとは戦うことなく、お玉を連れて、そ~っとその場を後にしたとか…

 

 

 

 




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