イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

367 / 385
14-343話:ユナの提案

 世界会議4日目…

 

「いやぁ…!昨日はユナさんの武勇伝が一番盛り上がりましたなぁ!!」

「四皇相手に一歩も引かない胆力!!感服しました!!」

 

「そんなたいした事じゃないですよ!(天竜人を相手にする事に比べれば!!)私はお客様に対して言うべき事を言ったまでです。」

 

「いや、それが凄い!!私だったら『ビック・マム』の言いなりでしょうな!!」

「命を狙われでもしたらたまりませんからな!」

「下手をすると、大変な事になっていたかもしれないな!」

「…」

 それは確かにそうなのよねェ…

 

 今はFSSもきちんとした体制を築けているから、社員の安全確保も可能だと思う。けれど、そうでなかったなら、話の方向性によってはヤバい事になってた可能性もある。

 あの時、リンリンが笑って折れたから良かったものの、そのまま話が平行線をたどって、F-RONPと敵対するって事になってたら!!

 ビック・マム海賊団とFSS(&海都)がぶつかる事になったかも知れない。そしたら、HCI編が無くなってたかも? (←勝つこと前提!!?)

 

 

「では、一昨日出た議題『七武海制度の撤廃』についてだが…考えはまとまった事と思う!評決の前に意見のある者がいれば聞こう!!」

 

「よろしいでしょうか?」

「「!!?」」

 通常、自分達に直接関わりの無い事について意見を述べる者はいない。一昨日にも話し合われ、意見は出尽くしたと誰もが思っていたから、皆の驚きは当然だった。

 

「…ユナ殿」

 

「この会議の品格(・・)を問われる事になる票決かも知れませんので、意見を述べさせていただきます!」

「「「…」」」

 

 ユナは一同、特にコブラ王とリク王を見た。そして言葉を続ける

 

「アラバスタ、ドレスローザの件については確かに…”七武海”という”制度”の暗部によって起きてしまった事だと思います。が…見直すこともせずにいきなり撤廃というのはいささか乱暴ではないかとも感じています。みなさんは気にされていないようですが、この会議で決定されれば”撤廃”は即日実施されるものと思われます!仮に撤廃するにしても通達して猶予を設けるなどの措置は必要かと思いますが、いかがでしょう?」

 

「そんな事をして、海賊共が暴れ出したらどうするんだ!!」

「撤廃・即捕縛!!それが肝要!!」

 そうだそうだ!と声が上がる

 

「静粛に!!ユナ殿、以上でよろしいか?」

 

「まるで、”だまし討ち”のようですね?」

「「!!?」」

 

「だからこの会議の品格が問われると申したのです。このまま票決を取るのであれば、このことは大々的に、報じて貰おうと思います。表面上はどうであれ、世界会議とは『自分の事しか考えず!他者の痛みなど意に介さない”神”と同じ種類の人間の集まりである』と!!」

「「!!?」」

 

「それは違うぞ!ユナ殿!!」

「何が?どう違うと言うのです、コブラ王?」

 

「この議題は…!以前から海軍内部でも話し合われてきた事なのだ!!何も我々はだまし討ちをしようとは…」

「そうでしょうか?先ほど”撤廃・即捕縛”という発言が上がりましたし、それに賛同する声も多数聞こえました。とても少数とは思えない数でしたよ?しかもその理由が『暴れたらどうするんだ!!』ですから…笑って(・・・)しまいますよね?」

「「!!?」」

 

「そもそも彼らは”海賊”なのでしょう?通達しようがしまいが、いつ暴れ出すかわからない!!みなさんはそう考えているのですよね?ならば通達したとしても何も問題は無いではありませんか。」

「…」

 

「私は”制度の撤廃”に反対する訳でも、この議題を”阻止”したい訳でもありません。”撤廃”するにしてもやり方があると思うのです!たとえば…!現在”海賊”はピースメインとモーガニアに分類されています。海軍はピースメインの海賊と共闘する事もあると聞きます。ある海域などは海賊による”警備”も行われていますし、地域によってはわが社の商船もピースメインの海賊に護衛を依頼する事もあるのです。彼らの扱いは賞金稼ぎの方々に準じるもので、捕縛はほぼ無いと聞いています。」

「…」

 

「これまで政府機関に”協力”してもらっていたのですから、彼らをまずは、”ピースメイン”に分類し、七武海制度を撤廃!!その後、期間を設けて区分を見直す事とする!制度を撤廃するのであれば、これくらいの猶予は与えるべきだと思うのです!!」

「「…」」

 

「…いきなり撤廃、即捕縛では”だまし討ち”と同じ!!それではこの会議の品格が疑われると…」

「伝えるにしても、ただ”撤廃”ではなく、まずは猶予期間を設け…その後の行い如何によっては捕縛も免れられる…!そう、彼らに伝えるという事か。」

 

「なるほどな…確かにそうかも知れん!票決の前にこの議案について修正を加えようと思うが…皆の意見はどうか?」

 賛成という者と、異議なしという者が数名居り、沈黙する者が多数居た。沈黙する事は賛成と同義らしい。とりあえず、私の提案は受け入れられたようだ。

 

「ひとつ…ユナ殿に質問を!」

「リク王!」

 

「なぜ、あなたは今のような提案をされたのか?誰ぞ気になる七武海でもおられるのかな?」

「なるほど、そう来ましたか。」

 ドフラミンゴとローの後任は決まっていない。

 現在七武海は5名。ミホーク、ハンコック、バギー、クマ、ウィーブル…

 

「気になる海賊は、そうですね…七武海には(・・)居ませんね。海賊女帝ハンコックは是非、わが社のモデルにほしいとは思いますけれど…」

「…」

 

「なぜ、この提案を…という事で言えば、先日この議題を聞いて考えたのです。わが社であればどうするだろうかと!」

「わが社?」

 

「はい。会社の組織で悪行が発覚した場合、それにどう対処するか?そういう事だと思ったのです。そう考えた時、先ほどの提案が浮かびました。区分けがなければ思い浮かばなかったかも知れませんが…」

 

「流石は巨大企業の会長ですな!組織運営に当て嵌めたあなたならではの発想というわけですな!」

 国を企業と置き換えれば、あんたらにだって同じ発想ができるはずだけどね?

 表情には出さず、そんな事を考えていたら、ハリウッドが疑問を呈してきた。

 

「それで…」

「?」

 

「七武海以外には気になる海賊がおられるようだが?」

「そんな事は、もうご存知かと思ってましたが?”麦わらの一味”ですよ!!」

「「!!?」」

 

「ご存じない?…あ、でもこれはこの会議の場で話す事ではありませんね!」

 

「あら、私は聞きたいわ!」

「私もだ!」

 

「短めで頼むぞ!議題はまだある!!」

 なんじゃそら!そもそもあんたが聞いたんじゃないさ!!

 

「世界の王がお集まりですものね!!せっかくなので、宣伝(・・)させて頂きます!!彼らがピースメインに分類されてからですが(ウソ)、わが社には”麦わらの一味”とのコラボ商品がいくつかありまして……」

 

 

 その後、ユナの提案が”七武海制度の撤廃”の議案に加筆され、全員一致で可決された。

 

 

 

 

 

  ~ ワノ国 イチユリ城地下2階 修練場 ~

 

 キィン!! キキン!! ギィン!!! キン! キィン!!

 

 ザザッ!! ドドッ!!

 

  ― ドゴンッ!! ―

 

 ビリビリ…!!

 ギリギリ…

 

「「ハァ…ハァ…」」

 

「……ここまでにしよう!!イヌアラシ、アシュラ!!」

 

「驚きましたアシュラさん!!20年!!維持するだけでなく、さらに強さを増しておられようとは!!」

「菊~~~!!ナメた口きくと身ぐるみはがすぞ!!」

 

「え~!ホメたのにィ~…」

 

「おいどんは『光月おでん』という男にホレ込み!あの人の為に命を張る”侍”だったんど!!!『光月』という一族に仕えた覚えはねェ!!」

 

「イヌアラシ公爵と互角だなんて…!!」

 

「なァ!?モモの助ェ!!!」

「…!!」

 

現在(いま)とておいどんは、イチユリ様に仕えてここにおるだけ!!勘違いするでねェど!!」

「おぬしの方こそ忘れるなよ!拙者がどういう男であったか!!仲間にはしてみせる」

「ふん!!」

 

「アシュラ、意地を張るな!!」

「!!」

 

「イチユリ様!!」

 

「おぬしが鬼ヶ島の見取り図を手に入れたのも、フラの介が修理している船を集めたのも…!1000を超える刀を用意したのも!!全ては錦えもん達を…!トキの言葉を信じていたからであろう?」

「「!!?」」

 

「私がココを治めるようになってから、まだ2年も経っておらぬ!オロチの治めるワノ国で、これだけのものを集めるのには最低でも10年は必要なはず!!」

「…」

 

「アシュラ…」

 

「ち…ちがうど!!いいか!勘違いするでねェど!!」

 顔を真っ赤にしながらアシュラは修練場を出ていった。

 

「…」

 

「許してやってくれ。錦えもん!!」

 

「許すも何も…!アシュラが準備してくれていた事には感謝しかござらん!!しかし何故あのような…」

 

「そうだな…。一度、頭山を訪ねてやってくれ!あやつの事だ。自分からは言わぬだろうからな…」

「?」

 

「私がこの地に来た頃…アシュラは心を失いかけていた!!」

「「!!?」」

 

 

  ~ 1年半ほど前の事… ~

 

 当面の食料だと、カイドウからもらった物資(モノ)を、イチユリはそのままおこぼれ町へと置いていった。

 食料ならパックダイアルに大量に持ってきた。無論自分用である。

 本当はその一部をおこぼれ町に置いて行くつもりでいたのだが、それも不要となった。

 おでん城跡を見て、城を建てる交渉をしての帰り…

 

 都から剃刀でおでん城跡へと向かう途中、大きな気配を感じたイチユリは、その足をおこぼれ町へと向けた

 

 

「頭山盗賊団だー!!」

「逃げろ町から離れろ!!」

 

「返して!!それはイチユリさんが…!!イチユリさんがくれたんです!!」

「うるせェ!!!」

「きゃあ」

 

「ずいぶんいいもの持ってますよこいつら!!酒天丸様っ!!」

「……」

 

「果物も米も!酒もある!!水ガメもこんなに!!生意気な!!」

 

「返してくれ!孫に食わせるんじゃて…!!」

「うるせェジジイ!!さっさとくたばれ!!」

「!!」

 

「どこんどいつだどこんなマネすんのは!メシを与えて英雄気取りか!?おいどん達に奪われて終わり…!おめぇら儚ェ夢を見たな!…このあわれな弱者共を守ろうっちゅう”侍”もおらん!こん国はもう…強き『侍』を従えられる様な本物の(おとこ)もおらん!!!ワノ国は終わったんだど…!!」

「…」

 

「なァババア!これ以上長生きしても目に映るんは無残な現実ぞ!おいどんが斬ってやるど」

「待ってください盗賊の方!!おばあちゃん逃げて!!」

「ばーちゃん! えーん」

 

「あたしゃ、おトキ様の言葉を信じてる!」

「死人だ」

 

「きっと九人の侍が…おでん様の想いを遂げるのさ…!!」

「バカめ!大将もおらず戦になるか!!」

 

「ヒィ~!!酒天丸様ァー!!!」

 部下の一人が悲鳴をあげながら何かから逃げてきた。その後を追って現れた女を酒天丸が睨みつける。

 

「!!…なんだおめェは!!?」

 

「ばあさん!幻滅するかも知れないがね…その男は九人の内の一人さ!!」

「「!!?」」

 

「何者だお前!!」

「昔の久里に逆戻りかい?まったく…!お前が惚れた男はこの状況を見てどう思うんだろうねェ?」

 

あの方(おでん様)は…もうおらん!!」

「肉体はね!…じゃあ聞くが、彼の想いも意志も…一緒に死んじまったと言うのかい?」

「!!?」

 

「お前の中で…!それ(おでん)は生きていないのか?」

「…」

 

「どうなんだい?」

…うるせェど…

 

「なんだって?小さくて聞き取れないねェ!!」

「”うるせェ”と言ってるんだど!!」

 

  ― ギィン!! ―

 

「ぐあっ!!」

 イチユリに斬りかかった酒天丸だが、斬撃はあっさりと受け止められ、掌底で弾き飛ばされ倒された。

 

「…信じられねぇ!!酒天丸様が!!」

「あんな華奢な女に!!?」

 

「お前一人に『彼』の意志を継げなんて事は言うつもりはさらさらないが…!!惚れた男の想いを…!悲しい目で踏みにじる男を見るのは耐えられないんだよ!愛想をつかしてるんならまだいいさ!だが…!お前は、今の己を恥じているのだろう!?」

 

「…いったい…おめェは…!!?」

「私は…”鬼徹一門(きてついちもん)”が一人!!『姫徹(きてつ)』!!この名前なら聞いた事があろう?」

「「!!?」」

 

「あの…『海』と『雲』の!!?」

「ワノ国に置いて行ったのは『奉納刀』!!これがその『真打』だ!!」

 

「その『姫徹』がなんでここに居る?」

「この地を!治める!!」

 

「「!!?」」

 

「手に入れたのは、まだ(・・)久里の一部だがな!!」

「!!?」

 

「信じられねぇ!!カイドウと…オロチと話を付けたのか!?」

 

「弱者を守る者が居ないと言うのなら、それをお前がやれ(・・・・・)ば良いだろう?」

「おいどんが…弱者を…守る?」

 

「私の元に来い!家臣になれとは言わん!お前が仕えると決めたのは”あの男”一人だけなのだろうからな!!」

「…」

 

「それから一つ…!誤解を解いておいてやろう!!」

「誤解?」

 

「彼らは死んでなどいない!まして逃げたのでもない!!あの日、”トキ”の能力で飛ばされたのだ!!」

「飛ばされた?一体どこへだ!!もうすぐ二十年だど!?」

 

「その口ぶりだと、トキの言葉は覚えてるようだね?」

 

 ”月は夜明けを知らぬ君 叶わばその一念は 二十年を編む月夜に九つの影を落とし まばゆき夜明けを知る君と成る”

 

「…まさか!!?飛ばされた先というのは…」

「そのまさかだろう。信じ難い事だが恐らく…彼ら(・・)は!!あの日(・・・)から二十年後(・・・・)飛ばされた(・・・・・)のだ!!」

「…」

 

「20年は長かろう?しかし…!必ずそれには意味がある!!せっかく18年耐えたのだ。あと2年…。2年だけ、死ぬのは待て!!」

 

「…気味の悪い!!おかしな女だど!!だが…あと2年!!あと2年だけ待ってやる!!」

 

 

 これより、アシュラ童子達はイチユリと行動を共にするようになる!!

 

 城やダムの建設、そして荒野の開拓。それらを進めるイチユリの傍らには酒天丸達の姿があった。

 

 この実行力!発想力!!そして統率力!!!まるで…

 

「ん?どうかしたか?」

「いや…な、なんでもないど!」

 

「おかしなヤツだな…」

 

 あの日の再来のように、アシュラはイチユリに惹かれていく…

 

 イチユリが現れる前…久里を治めていたのは”ジャック”だった。

 アシュラ童子は酒天丸を名乗り盗賊団を結成してジャックに対抗(・・)した。

 

 ただし… ”侍”をまとめ上げたわけではない。

 仲間は既に亡く、荒くれ者を集めただけの組織に、百獣海賊団とやりあうだけの力はなかった。

 自分達が食うために、一般の者から略奪する事もしばしば…

 おでんに仕えていた頃の誇りはどこへやら!自分を恥じるようにもなっていた。

 それでも…逃げた奴らよりはマシ!!そう思う自分も居た。

 

 あれから18年と少し…

 

 死に損なったという気持ちが日に日に大きくなっていた。

 

 もしかすると自分はトキの残した言葉の意味を取り違えたのではないか?

 もしくは…

 世間で言われる様に、恨み言を残しただけなのではないか?

 

 仲間でもなく、元はワノ国の者でもないイチユリに、トキの言葉を言われたのは正直大きかった。

 

 18年耐えてきた。しかし…

 あと2年と思ったところで、それは保証も何もない事。

 もう限界だった…

 

 イチユリが現れねば…

 あるいはアシュラは命を投げ出していたかも知れない…

 

 

 

 




時間軸は違いますが、
酒天丸がおこぼれ町を襲ったシーンは原作とほぼ同じ感じです。
イチユリが乱入(?)しますけど…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。