イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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原作93巻終盤~94巻あたまの話

原作と異なり、麦わらの一味の活躍の場はございません!

さて、どうなりますか…

どうぞ!






14-346話:”白舞大名”霜月康イエ

 わーわー ギャーギャー

 

「康イエ様~~~!!!私は『白舞』の出身です!!」

「康イエ様!よくぞご無事で!!」

 

 

「昨夜、都にて盗みを働いたこの男!!落ちも落ちたり現在『えびす町』にて太鼓持ちを生業とする『白舞』の元”大名”!!『霜月康イエ』であった!!!」

「……」

 

「康イエ様~!!」

 

 わああぁぁあぁ…

 

 わーわー ギャーギャー

 

「過去に軍を率いて『将軍オロチ様』に盾ついた大罪により、花魁小紫の殉死者として、屈辱的な『死刑』を言い渡す!!」

「……」

 

「 ― なお、本人曰く、長く巷を騒がせてきた『丑三つ小僧』であると供述もあるが…」

 

「アレは”ウソ”だ!!どうせ死ぬなら注目を浴びたく!そう答えた!!」

「!?」

 

「え!?違うのか!?犯行時刻が変だと思った!」

「”子の刻”に現れたんだ!さしずめ『ねずみ小僧』」

 

「ウソをついて悪かった!!わしはそんな英雄ではない!!」

 

 わーわー ギャーギャー

 

「ではなぜ窃盗など…!!」

 

「康イエ様~!!」

 

 

「小紫の葬儀の騒ぎが、そのまま康イエ処刑への注目に変わったな!」

「ドレークさん!!えびす町の町人達が『花の都』に侵入して来ました!!」

「!?」

 

「この男…我々の想像を超える大人物の様だな…」

 ホーキンスが康イエを見上げて呟く。

 

 わーわー ギャーギャー

 

「皆…!」

 

 

「暴徒に警戒せよ!『光絵』の通信で処刑を見せしめるオロチ様の判断が裏目に出るかもしれん…」

 

「わははは!将軍殿は愚か者ゆえ!!」

「!?」

 

「従者の苦労、お察し致す!!」

「おい貴様!!」

 

 わーわー ギャーギャー

 

 

「さて!!皆の衆!!」

「!!」

 

「 ― 見よ!!麗しき『花の都』!!絶景かなワノ国!!この風景はまさに!代々『光月家』と庶民達の手で築き上げた我々の誇り!!!間違っても貴様の手柄ではない!!黒墨オロチ!!聞こえているかオロチ!!貴様は広大にあった森や草木も川も郷も!!欲深きドロで汚していくだけの!!ただの害虫だ!!!」

「「!!!」」

 

「康イエ様!それ以上は…!!」

「取り返しがつかなくなる…!!!」

 

「今一つ!!皆に謝りたき事がある!! ― 昨今出回った『判じ絵の札』!!『光月』の名が死んで20年!!もはや仇を討つ兵力もなく『光月家』の無念を想い…!!!わしが作ってばら撒いた!!!」

「「!!?」」

 

「「えぇ!?」」

 

 『牢屋敷』を囲む民衆だけではない。『光絵』を見るワノ国の民達がどよどよとざわめく!!

 

「イタズラでござる!!ワハハハ!!!」

「「え~~~!?」」

 

「20年前おでんが死に…!!オロチは残る我々4人の”大名”に問うた!黒墨家に仕えるか!戦うか!!」

 

 

 

  ~ 九里・頭山 ~

 

 アシュラ童子の居住にも光絵の設備はあった。

 錦えもん達が今日ここに来る事になっていると聞かされ、待っていたところにイチユリから連絡が入った!

 

『誰も助けに行くんじゃないよ?』

「イチユリ様!?」

 

 ここから花の都までは数時間かかる!!助けに行ったところで間に合わないだろう!!

 

『笑止千万!!おでんに大恩ある貴様が!!姑息な計略で奪い取っただけの将軍の座!誰が認める!!?』

 

 そこに錦えもんとイヌアラシが姿を見せる。

 

「まさか…」

「康イエ殿…!!?」

 

「イチユリ様!なぜ…!?」

 

『お前たちの為に”康イエ”殿が命をかけた大芝居!!しかと見届けよ!!』

「「!!?」」

 

 

 

  ~ 花の都 ~

 

「各郷の大名と民は、迷わず刀を手にしたが!カイドウという”怪物”を前に仇討ちならず!!ワノ国は焼き尽くされた!!!わしは不本意にも一命を取り止め…『えびす町』に隠れ住んだが、このまま寿命で死ぬのも無念ゆえ!!童の様な一計を案じた…!どうか許してほしい!!」

「……」

 

「 ― だが、オロチの”臆病”は想像の上を行き、”月の印”の流行り模様を有する罪なき者達を投獄する狼狽え様!!」

「!?」

 

「え~~~!?オロチ様の思い過ごし~~~!?」

「どうすんだこんなに捕まえちまった!!」

 

 ようやく、康イエの目にオロチの姿が映った…

 

「来たかオロチ!久しいな」

 

「一言あるか”康イエ”!!!」

 

「オロチ…そうだな…!お前の”心の呪縛”読んでやろう!!」

「!?」

 

「”器の小さき男には一生食えぬ『おでん』に候”!!」

「!!」

 

「ワハハハ(さてもここまで…)」

 

 よいな錦えもん!赤鞘の侍達!!そして未来の将軍モモの助!!!お前達の作戦は、今ここで白紙に戻す!!

 羅刹町に捕まった同志達には、新たな集合場所を提示した。わしの命でできる事はこれくらいである!!これで、臆病者のオロチが何を叫んでも…もはや兵の耳には届くまい!

 

 

 牢屋の中で同士達が新たな判じ絵を見て涙を流す!

 

「かたじけない」

 錦えもんが、涙で頬を濡らす!!

 

 

 カイドウの首一つ!!20年間…!!それを誰も取れなかった…!!

 

 

「子供らの目を塞げ!!『光月』に仕えた最後の大名が!いやさ、えびす町のお調子者が!!あの世へ参るぞ!!歌ってゆこうか!!!あらよっと♪」

 

 行け!鬼ヶ島へ!!主君の仇を討ち果たせ!!!

 

「康イエ~~~~~!!!」

 オロチが銃を構えて康イエを狙う!!

 

 吉報をあの世にて待つ!!!

 

「お父ちゃーん!!」

 おトコの声が聞こえ、康イエの目に涙が浮かぶ…

 

 許せおトコ!!お前を残してゆく父を!!!

 

 (覚悟されたところ、申し訳ございませんが…!!)

 

 !!?

 

  ― ドン!! ―

 

「ブヒッ!!!」

 オロチの放った弾丸が康イエを貫く!!

 

  ― ドン!! ドン ドン!! ドドン!! ―

 

 続けざま、オロチ軍の役人達が康イエを撃つ!!

 

「どうするつもりかと思えば…”ブリュレのマネ”…か!!」

「「えっ!?」」

「??」

 イオリのつぶやきに、ナミとサンジが振り返り、ウソップとロビンが首を傾げる

 

「トノヤスさ~~~ん!!」

 

  ― ドドド ドン!! ―

 

「えびす町の下人共だ!!都から追い出せ!!」

 

  ― ドドド!! ドン!! ―

 

「ヤスさん!!」

「康イエ様~~~!!」

 

  ― ドォン!! ドドド!! ―

 

「お父ちゃ―ん!!お父ちゃ―ん!!!」

 

「…」

「康イエ様」

 

「ウ…ウウ」

 

  ― どわっはっはっはっはっはっはっはっは… ―

 

「ぶわーっはっはっはっはっはっは!!トノヤッさんが死んだ―!!!」

「!!?」

「わっはっはっ康イエ様がァ!!死んじまった~~~!!!」

 

「アハハ!!お父ちゃんが…!!」

 

  ― トンッ!! ―

 

「ウッ…」

 後ろからの衝撃で、おトコが気を失った。すかさず女が倒れるおトコを抱きかかえた。

 

「カザマ!!」

(ここに!!)

 

「この子()安全なところへ!!」

(かしこまりました!)

 

「あ~~~っはっはっはっはっはっはっはっ!!!」

「きゃははははは!!」

「…」

 

「オイ…どうなってんだ!!人が死んで…!!何が可笑しいんだよ!!!」

「うっ…!!」

 ゾロが怪訝な表情を浮かべて怒鳴る傍らで、日和が口を押えて嗚咽する…

 

「あっはっはっはっはっはっはっはっ!!!トノヤスさんが死んじまったよー!!!アハハハハ!!!」

 

「てめェら!!」

「やめて!!みんな泣いてるんです!!」

「!?」

 

「いつも笑ってるえびす町の人達は、苦しくても悲しくても顔に出せないんです…!!『笑顔』以外の全ての”表情”を奪われて…!笑う事しかできなくなってしまったんです!!」

「…!!」

 

「カイドウと…オロチが持ち込んだ!!『SMILE』という果実のせいで!!!」

「!!!?」

 

 

「ヤスさんが死んじまった~~~!!ぎゃははは!!」

 

「おい!!『えびす町』の奴らをたたき出せ!!」

「何なんだこいつら!気味が悪ィ!!」

 

「トノヤスさ~~~ん!!あ~っはっはっはっは!!」

 

  ― どわっはっはっはっはっはっはっは… ―

 

 柵の外でえびす町の町民たちが騒いでいた。

 

「都から出ろ!下人共!!」

「やだよ!アハハハ離れないよ―!!」

 

「康イエ様が殺されたのに、なぜコイツら笑ってんだ!!?」

 

「 ― これが!将軍オロチの最大の罪…」

「…」

 

 ぎゃ~っはっはっはっは!!

 

「人を不幸にしておいて…!!悲しむ事もさせないなんて…!!ここは…”地獄”以外の… 何ですか? ゾロ十郎さん…」

 

 わはははは…

 

「『スマイル』はただの”人造悪魔の実”じゃねェのか…!?」

 

 

「ムハハハハハハ~~~!!!」

「!!」

 

「貴様にふさわしい最後だな康イエ!!!わしの『ワノ国』で図々しく生きていたとは!!無礼なりハリネズミ!!…いや、ドブネズミか!!ムハハハハ!!」

「…」

 

「そうだ皆の衆!笑ってあの世へ送ってやれ!!これがワノ国!!明るいワノ国じゃ!!」

 

 ぎゃはははは…

 

「天国と見紛うばかり!!」

 

 

「くそ!!トノヤスがやられた!!」

「間に合わなかった!!」

 

「康イエ様~!!まさかこんな事になろうとは!!それがし切腹物の不覚!!」

「…」

 

 どわっはっはっはっはっはっはっは…

 

「でも何コレ!おかしいでしょ!?」

「あんなにしたってた、えびす町の人達が…」

「康イエ様ぁ~~~!!!」

 

「しのぶちゃん!みんなに教えてやってよ!!『SMILE』について…!!」

「「!!?」」

 

「そうね!もっと早くに話しておけばよかったわね…『えびす町』の人達の笑顔は”お面”なのよ」

「え!?」

 

「一生外す事のできない”お面”なの!!」

「?」

 

「数年前からカイドウとオロチはこの国で作らせた武器と引き換えにある人工的な”果実”の輸入を始めたの!」

「それが『SMILE』…!!」

 

「そうよ!その実を食べると海に嫌われ泳げなくなるかわりに”動物の力”を得て凶暴化する”恐ろしい果実”」

 

「『人工悪魔の実』だろ…おれ達はその工場を壊してきた!」

「ええ、錦様に聞いたわ!…カイドウの目的は、それによって自分の部下達を怪物の様に強化し、”最強の海賊団”を作り上げる事…!!だけど、うまい話にはリスクはつきもの!その果実による強化の成功率は約10%!!10人が果実を口にして力を手に入れられるのはたった1人!!あとの9人はハズレで…リスクのみを引き受ける!!泳げなくなる事は当然!!不完全な薬品の副作用で『悲しみ』『怒り』の表情を失い、ただ笑う事しかできなくなってしまうの…!!」

「え!?」

 

「不運な者達を嘲る様に、奴らはその人工的な果実に『笑顔』という意味の名をつけた!『SMILE』と!!!」

「「!!!」」

 

「”悪魔の実”に変な名前がついてると思ったけど…」

「そんな怖い意味があったのか!!」

 

「イオリは知ってたの?」

「イチユリから()聞いてたからね。でも…『SMILE』の恐さはそれだけじゃないのよ!!」

「「え!?」」

 

「そうよ!悲劇はここからよ…!!」

「「!!?」」

 

「オロチはひと口かじっただけの失敗作の『SMILE』に目をつけた!!果実にはまだ副作用だけを伝達する効力が残っていて、新たな”笑う者達(プレジャーズ)”を生み出す事ができる…!!」

 

「!!…まさか…」

 

「日々…人が死にむせび泣く『花の都のおこぼれ町』を疎ましく思っていたオロチは都から出る”おこぼれ”の中にその『SMILE』の失敗作を混ぜ込んだの」

「!!?」

 

「当然…おこぼれ町の住人達はそれを喜んで食べた!!」

「…」

 

 リンゴがあるぞ!!まだ新鮮だ!

 こんなにあるぞ!!みんなで分けよう!!

 病人たちに食わせてやろう!!

 わーい

 なんてうまいリンゴだ!!

 

「幾度も続けば、それがどんな果実なのか誰にだってわかる…!それでも”おこぼれ町”の人達は空腹に勝つ事は出来なかった…!!」

「!!!」

 サンジの顔に怒りが浮かぶ…。死ぬほどの空腹を味わった者にはオロチの仕出かした罪がよくわかる!!

 

「…一人残らず笑顔で明るい町『えびす町』はそうやって出来たんだ!!」

「一見…楽しそうなのに!親の死さえ悲しめない悲劇の町が…!!」

「…!!」

 向こうには日和とゾロが見える!!ゾロもキレる寸前みたいね!!

 

 もっとも…

 

 麦わらの一味が活躍する場面はなさそうだけど?

 

 

  ― スタスタスタ… ―

 

「ん!?」

 

  ― ザザンッ!! ―

 

「「!!?」」

 

 突如、磔台を囲んだ柵が斬られ、中に一人の女が入って行った。

 

「あいつ!!何してやがる!?」

 

「あ…!あの人は!!」

 

「「…イチユリ様!!?」」

 

 騒いでいた民衆が静まりかえり、イチユリの行動を見守っていた…

 

 イチユリは、あまたの銃弾により磔台から落ちたトの康の傍でしゃがんだ。

 首筋を触り…脈が無い事を確認する。そして…立ち上がりオロチの方を向いて叫んだ!!

 

オロチ!!トノヤスの亡骸は…!!あたしが貰って行くよ!!」

「「!!?」」

 

「イチユリ!!?キサマ!勝手は許さんぞ!!今日は大安ではない!!」

 驚きながらもオロチはイチユリに向かって叫び返した。自分が優位であると確信しているが故である。

 

「…だから?」

「「!!?」」

 

 オロチが何も言わずに頷いただけならこの場は丸く収まっただろう。ところがオロチはイチユリを止めようとした。

 自分が仕出かした事をわかっていない男にイチユリは侮蔑の籠った視線を向けた。その目には怒気も伺える

 

「お前達は、何か勘違いしてないかい?あたしが大安以外に我慢(・・)してるのは、あたしの治める領地の者に、危害が及ばないようにする為だよ? ところでオロチ!!『この人』はどこに住んでたんだろうねェ?」

「えっ!!?」

 

「トノヤスは”えびす町”の住人だ!!そして…!!」

「「!!」」

 

「”えびす町”は半年前にお前があたしに押し付けた領地!!よもや忘れたとは言わせないよ?」

「「!!?」」

 

「…そ…その者は大罪人だ!!」

「だから何だ!?」

「!!?」

 

「最初に言ったハズだよ?あたしの治める領地の者に手を出したら契約は反故にするとね!!そりゃそうだろう?”我慢”しても民を守れないなら、最初(はな)っから、我慢する意味なんて無いんだからね!!」

「「!!?」」

 

「し…しかし!!」

 

「彼が大罪人だとしても…!まずはあたしに連絡するのが”スジ”だろう?…違うかい?」

 

「いや、しかし…」

 

  ― ダンッ!!

 

「!!?」

 イチユリがオロチに向かって足を一歩踏み出した!!震脚が大きな音を立て威嚇する!

 

しかし、しかしと、うるさいねェ!オロチ!!

「!!」

 

「あたしはこの目で見てたんだよ!!一発目の銃弾がお前じゃ無ければ、まだ言い訳が立ったろうがねェ!!」

「ぐっ!!」

 

「…つまり…!契約は反故だと?」

 X・ドレークがイチユリに問いかける。

 

「それは避けたいだろう?だから…亡骸をもらい受ける事で手を打とうとしてるんだけどねェ?」

 

「わかった…!!勝手にするがいい!!それで良ろしいですかな?オロチ様!!」

「ま…まぁ…よかろう!!」

 

「さすがは『最悪の世代』の一人だ!話が早い!!」

「…」

 

「さぁ!えびす町の皆!!”トの康”と一緒に(・・・)帰るよ!!」

「「はい!!イチユリ様!!」」

 

 トの康を抱いたイチユリの後を追うようにして、えびす町の住民たちは花の都を後にする。

 その光景は、さしずめ大名行列のように整然としていた。

 

 

「…恐ろしい方だ!!真打ちがこれだけ居るというのに…!まったく動じる素振りさえ見せないとは!!」

 

「…当たり前だ!!」

「「!!?」」

 

「あの女は…!!龍になったカイドウと互角に戦うのだ!!しかも無手で!!!」

「「!!?」」

 

 

 

 




 イチユリが百獣海賊団と敵対しない理由を、オロチは敵わないからだと思っています。

 カイドウと無手で互角に戦える事を知っているのにねェ?
 んなわけねーじゃん!バカじゃんね?

 実は互角じゃないんですけどね
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