イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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01-37話:魔王との闘い

 寝てしまったウタをベットに寝かせ、私はシャンクスとゴードンに話をした。

 1日程ゆっくりした後、ウタの今後について3人で話し合ってほしいという事を告げた。

 すぐに話し合わないでほしいのは、興奮した状態で今後の事を決めてほしくなかったからだ。

 ウタも、久しぶりに昔の仲間に会ったばかりで興奮しているだろうから、それが冷めてからにしてほしいのだ。

 ウタをシャンクスが引き取るか、それともゴードンがこれまで通りエレジアで面倒を見るか?第三の選択肢(誰かに預ける事)も含めて考えてほしいと…

 

 とりあえず、私は友人にユナという大企業の会長が居る事を伝えた。二人も彼女の事は知っていたようで驚いた顔をしていたが、本題はそこではない。

 彼女の会社には芸能事務所があり、ウタであればすぐにでもデビューできるだろうという事を伝えた。

 シャンクスは、海賊がデビューなんて出来るのか?と疑問を呈したが、そもそもウタは、まだ海賊として認識されていないのだし、もちろん認識されたとして、そこは問題ないと答えた。

 音楽は誰がつくっても、オリジナルは売れる。それが海賊だろうと関係ない。社員として雇う事は難しいかもしれないが、歌手として契約する事は問題ない。

 私が小説家として契約している事を伝えると、あれはお前だったのか?とシャンクスに驚かれた。何を読んだのか気になるところではある。

 ユナも、ウタの事については乗り気だったし、彼女がシャンクスの船に戻ったとしても、話題性があると喜ぶ事だろう。

 エレジアに残るのであれば、復興の為に尽力する歌姫。とでも銘打って売り出すつもりだ。

 どちらに転んでも、ウタのデビューは決まっている。

 第三の選択肢としては事務所に預けるという事だ。宿舎があるのでそこに住むことも可能。その場合、全面サポートするので心配ない事も伝えた。

 

 ウタの今後については、二人にまかせ、数日後にもう一度、この船に来る事を伝え、私は一旦、船を後にした。

 

 向かうはエレジア。

 もう一人(・・)、落とし前をつけてもらう相手がそこに居る。

 

 ~ ~ ~ ~ ~

 

《”ここ”なら…”本気”で戦っても問題なさそうね?》

”はい。ここは『仮想空間』ですから!”

 

 当初の予定としては、トットムジカの楽譜を見つけて、収納貝に入れて封印するつもりだった。

 けれど、ウタワールドに行った事で、エイタが仮想空間を作る事を覚えたらしく、そこでトットムジカを呼び出せるのではないか?という事で、試してみる事にした。

 映画の話だけど、ウタワールドと現実世界。どちらか片方ならば四皇が勝てる強さだという事で、仮想空間でトットムジカを呼び出しても、倒す事は可能だろうと考えたわけだ。

 枷を外せば、今の私は世界の全戦力と渡り合えるだけの力がある。負ける理由なんてない。

 

 楽譜を見つけるのは、隠した本人の思考を読んだのだから、あっさりだった。

 仮想空間に、トットムジカを呼び出すことは可能なのか?

 少し不安ではあったけれど、トットムジカは要望に応えて現れてくれた。

 

「ここなら全力で戦っても問題はないそうよ?うれしいわ。本気を出してみたかったの。あなたもでしょう?」

 

 呼び出したトットムジカは、どこか嬉しそうだ。自分を指名して、呼び出してもらうのは、恐らく初めての経験なのだろう。

 呼び出しに応じてくれたのも、それが一番の理由のように思えてならない。

 

 トットムジカの思考を覗いてみると、その奥底に、怒り、苛立ち、悲しみ、不安、恐怖、孤独、罪悪感。

 さらには消えてしまいたい。というネガティブな感情が渦巻いていた。

 

 世界中の負の感情の集合体。

 今も負の感情が流れ込み、力を蓄えているのが分かる。

 

 少しだけ、私の中に恐れる気持ちが生まれた。それが()の力になるとも気づかずに…

 

 

 ~ ~ ~ ~ ~

 

 

 やばいやばいやばい!!本気の一撃が受け止められるなんて!

 まだまだ強くならなきゃダメだ!!

 

 でもきっと、そう思えた事だけでもこの戦いには価値がある。

 

 死なないためにと頑張って来たのに何をしてるんだ?と言われるかも知れない。私もそう思う。

 力試しで死んだらシャレにならないわよね。勝算があったわけでもないのに…

 

 ウタを苦しめた張本人を成敗してやる!!なんて考えもなくはない。

 でもコイツはそんなんじゃない。この歪んだ世界のすべての負の感情の集まりなのだ。

 

 いいえ、それはちがうわね。どこの世界でも負の感情は存在する。

 歪んでいるとかいないとかそんな事は関係ない。陽気があれば陰気がある。光があれば影があるように…。

 コイツは負の感情を、集め、貯え、力に変える。

 

 魔王を恐ろしいと人々は言っていた。でもね…どうしようもなく…

 

 楽しい!!

 

 めっちゃ楽しい!!

 

 禍々しい気を放っているのはおいといて、この強さは世界最強に近しいものではなかろうか?

 

 枷を外した私の全力は、今や四皇海賊団すべてと海軍全てを相手取っても互角以上に戦えるほどのものなのだ。

 それをコイツは受け止めた。

 

 なんて…なんてすばらしいんだろう!!(あれ?いつから私は戦闘狂になったのかしら…?)

 

 トットムジカも歓喜に震えているようだ。

 

 自分を見てくれている。認めてくれている。

 自分と…本気で向き合ってくれている!!

 

 禍々しい気の中に嬉々とした感情があふれている。

 

 ()ろうよ!もっと()ろうよ!!

 そう言っているように感じる。

 

「!!?」

 突然、トットムジカの姿が変わった。FILM REDでも見なかった、いや、見せなかった姿。

 

 言ってみればDBのフリーザの最終形態のような…

 さっきまでの巨体ではなく、小さくなった体。

 

 にも拘わらず、これまで以上の禍々しい力が凝縮されているのが、みなぎっているのがわかる。

 

 それがあなたの本気の姿なのね?

 

 ならば…

 

 私もそれに応えましょう!!

 全力で…

 ほんとの私の全力で!!

 

 私はみんなを呼んだ。

 そしてすぐさま、みんなが集まった!

 

「!!?」

 表情はよくわからないが、トットジムカが驚いているように感じた。

 

 頭が割れるように痛い。でも…これが!!

 

「これが…私の…『本当の力』よ!!」

 

 分かれた分身を全て取り込み、本当に久々に一人になった。

 海楼石も重りも全て外した。

 

 これが…

 これが、今の私の全力だ!!

 

 武装色と覇王色を同時に纏い、私の体が黒く、そして赤く輝くように変わる。

 

「いくわよ!」

「!!!」

 

 戦いはしばらく続き、そして…終幕を迎えた。

 

 ~ ~ ~ ~ ~

 

「滅ぼそうかと思ったけど、あなたの存在は有用だわ!だって『世界中の負の感情』を集める事が出来るんですもの!」

 負の感情がトットムジカに集まれば、他は正常な世界になり得るかも知れない。

 負の感情が無くなる事は無いだろうけど、そこに留まり悪さをする事はなくなるだろう。

 集まった負の感情は少しずつでも昇華すればいいし、今みたいに私と戦って消費してもいい。

 場合によっては私が”力”として、使わせてもらってもいいかもしれない。

 

「という事で、あなたは私のなか(・・)に取り込みます。」

「・・・」

 

 コクリ

 

 トットムジカがうなづいた。

 

 手をかざすと()の体は、黒い光の粒子となって手のひらから吸い込まれるようにして、私のなかに入った。

 

 力が…溢れているのがわかる。

 

 

 ― 扉を開く資格を獲得しました。 ―

《!!?》

 

 エイタの表示する文字でなく、突然、頭の中に声が響いた。

 

《扉?なんの?》

”………”

 

 

 私たち(・・)は、また、元のように分かれたけれど、

 

 トットムジカが分身する事はなかった。

 

 彼は今、私(イオリ)の中に居る。

 

 

 

 

 

 




 トットムジカを恐れる事で、その恐れが()の力となりました。
 イオリが戦いを”楽しく”思った事で、その恐れが消え、()への力の流入が止まりました。
 トットムジカが戦いを”楽しく”思った事で、負の感情が昇華され、()の力は衰えました。
 もしもいくつかの事象が違っていたら…イオリは敗れていたかも知れません。

 だから…イオリはまだまだ強くならなきゃダメだと、強く思うのです。
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