私が目を覚ますと、イオリは居なくなっていた。
まだちゃんとお礼が言えていないのに…と思ったけれど、イオリは数日後にもう一度この船に来るとの事だった。
シャンクスと仲直りが出来たのだから、ウタのこれからについて、ゴードンとシャンクスとウタで話し合うべきだと言っていたらしい。
しかも、話し合うのは一旦落ち着いてから。興奮した状態では話合わないでほしいとも。
なんだろう?
なんだかイオリが一番の年長者で、しっかりしている様な気がしてならない。
ちょっとだけれど、私のほうがお姉ちゃんなのにな?
驚いた事に、イオリはあのF-RONPの会長ユナさんと交友があるとの事。
たまに海岸に流れてくる古い新聞や雑誌に載っていたので知っている。F-RONPの事…。
素晴らしい会社だと思った。素敵な女性が居ると思った。私と同じ年なのになんて凄いんだろうと思った。
そんな人とイオリが知り合いだなんて…!
イオリってすごい!!
そんな風に思っていたら、さらに驚いた事に、彼女は既にその会社で小説家デビューしているのだという。
いろんなジャンルの小説を書いている、売れっ子なんだって。シャンクスが教えてくれた。
何でか顔が赤かった気がするけど…。気のせいかな?
イオリって文才まであるんだ?
楽器も出来て、航海術ももっていて。しかも空を飛べるし、すっごく速いし…
もしかして、ものすっごい人と、友達になっちゃったんじゃないの私?
そして、私にとってはこれが大事!
その会社には芸能事務所があるらしく、私はそこで、歌手デビューできるかも知れないとの事だった。
もしかして、イオリが推薦とかしてくれるのかな?
でも大丈夫かな?
私、ちゃんと歌手としてやっていけるかな?
ちょっと不安。でも楽しみのほうが大きいかも?
2日ほど船で過ごして、気持ちを落ち着けてから、丸一日かけて3人で話し合った。
シャンクスの船に戻りたいと思う気持ちはあったけど、エレジアをあのままの状態にしておくのにも気が引けた。
愛着だってある。復興するにしても、あの海岸は、あのままにしておいてほしいな…。なんて想いもある。
イオリは、私たちの誰の
だから…
私は、私の歌でもう一度、エレジアを音楽の国として復活させたいと言った。
そして、それを
ゴードンは涙を流して喜んでくれた。シャンクスも私の意見を尊重してくれた。
私、今、すっごくやる気に満ちている。ずっと、もやもやしていた気持ちが無くなって、すごく晴れ晴れとした気分!
シャンクスと仲直りする事も出来た。
全部、ぜ~んぶ、イオリのおかげ!!彼女が友達で、すっごくうれしい!!
よ~し、私! 頑張るそ!!
~ ~ ~ ~ ~
ウタを預けた数日後、私は再度、レッドフォース号を訪れた。
話し合いの結果も聞いた。そうなるだろうとは思っていたけどね?
私が来た事で、ウタとのお別れ会と称した宴が開かれる事となった。
ほんとこの人たち、宴が好きよね?
ルフィの宴好きはきっと、この人たちから、話をいっぱい聞いた結果なんだろうと思う。
あいつ、お酒弱いのにね?
一つ、懸念があったので、3人にそれを伝えたところ、その点もしっかりと話し合ったらしい。
私の懸念。そう、ウタウタの実の能力についてだ。
制御できない状態で、あの能力が人目に触れるのはマズい。悪用される可能性が大きいからだ。
映画のような事が起こるとは思えない。けれど、悪者に知られるのは危険だと思う。
現状のウタワールドは、現実世界のウタが、眠る事でしか解除できない。そうではなく、彼女の意志によって解除できるようになるまでは、人目に触れる場所では使わないでほしい。それが私の考えだった。
話し合った結論を聞くと同じような感じだったので安心した。
「ゴードンさん」
「なんだね?」
勝手に楽譜を使ってしまったので、伝えておこうと思い、ゴードンさんに声をかけた。
「あなたが城の地下に隠した『TotMusica』の楽譜についてなんだけど…」
「!!…なぜそれを!?」
「見聞色って力があってね。禍々しい気配を感じたから行ってみたら楽譜があった。このままここに置いておいちゃいけない。そう思ったから、自分勝手とは思ったけれど、私が対処させてもらいました。その事を伝えておきたかったの。たぶんもう…トットムジカが顕現する事は無いと思うわ!」
「…そうか…すまない。私はあれを処分する事ができなかった。…君には何から何まで世話をかけてしまったな…。ありがとう、感謝する」
まぁ、私も処分してないけどね?対処しただけです。
楽譜は収納貝に入れてあります。念のため…
ゴードンと雑談をしていると、シャンクスが近づいてきた。
「イオリ、ちょっといいか?」
シャンクスに呼ばれ、二人きりで話がしたいというので、デッキの前の方へと向かう。
「まずは礼を言わせてくれ、ありがとう。お前のおかげで、ウタと仲直りする事ができた。」
「礼なんていらないわよ。私はウタの友達なの! あなたはルフィに言ったんでしょう?『どんな理由があろうと、友達を傷つける奴は許さない』だっけ?私はそれを実践しただけよ?」
「…手厳しいな…」
「当たり前でしょ?でもよかった。あの子があんなに明るくなって…」
海賊団の連中と、楽しそうに話をするウタを見ながら、私とシャンクスも笑顔になっていた。
「にしても、お前…前より強くなってねェか?」
「あなたもね?」
「いや、レベルが違うだろうよ。」
四皇の一人にそんな風に言われちゃうなんてねェ…
「まぁね。私は世界最強を目指してるからね?」
「おいおい、目指してるってなんだよ?もしかして…まだ強くなるつもりか?」
「そうよ?なんで?」
「いや、既に世界最強…っつうか、お前の言う世界最強って、どんなだよ?お前が居たら、トットムジカも倒せてたんじゃねェかって思えるんだが?」
いやいや、私だけじゃ倒せなかったんだよ。あんたらが闘った時より強かったんだから…。
「まだまだ、上は居ると思うのよね。だから…もっと強くならないと…」
「上限なしかよ。まぁせいぜいお前とは敵対しないように気を付けるとするさ。ただし、もしもウタを泣かすようなことがあれば、たとえ
「あんたがそれを言うか?私も言わせてもらうけど、次はもっとひどいからね?ルフィの恩人だろうと許さないから!!」
「ああ、わかってる。とにかく、ありがとよ。この恩は忘れねェ。」
「いいわよ別に…。私もあなたにお礼言わなきゃならなかったんだし…」
「礼?お前がおれに?」
「私、ルフィの
「あ~、そういや、この前エースと会った。おめェらの
「そっか、エースもあなたに会いに行ったんだ。」
「あぁ、礼を言われて、ルフィの話も聞いた。もちろんお前の話もな?あいつもずいぶんと強かったな。もしかしてお前、指導者の素質があるんじゃねぇのか?」
「どうなのかな?」
自分の事を教官とか言ってやってますけど、どうなんでしょうねェ?
限界までいじめて、そこから特訓とかやっちゃってるし。
元の世界だったら捕まってんじゃん?ってレベルな感じがしてるんですけど?
一応、死なない程度には気を付けていますけど、私に指導者の素質があるというよりも、みんなが生きるのに必死になって頑張ってるっていうのが正しいんだと思います。
わかってるんです。私の鍛え方が異常だって事は。
だけどね?
自分自身を鍛える時にそうやっているので、自分を鍛える方法をみんなにやってもらっているだけなんですよ?
それが異常だと言われてしまえばそれまでなんですけど…
(※注:カノンの所業も含めています。みんなというのはほぼ、CPメンバーの事です。)
「二人で、何を話してたの?」
みんなの所へ戻ると、ウタが話しかけてきた。
「シャンクスに、お礼を言われてたの。必要ないって言ったのにね?」
「私も、イオリに感謝してるよ?本当にありがとう!」
「どういたしまして。私はウタが元気になってくれた事が一番うれしいわ。」
「イオリ!!」
ウタが抱き着いてきた。私は優しく彼女の頭をなでる。
さて…
「みんなの前で、今一度、約束を交わしましょうか。今度の約束は破ったらひどいからね?」
「ああ、かまわねェ…」
「最低でも年に1回、2、3日は、エレジアを訪れてウタと一緒に過ごす事!!今後、ウタは忙しくなるかもしれないから、きちんと日程調整を行う事!!」
私はシャンクスと、もう一度、約束を交わす事にした。ウタがエレジアに残ると決めたので、最低条件を言い渡す。
「7年もエレジアに置き去りにしてたんだから、これくらいは守ってよね?」
「それを言われると痛ェな…」
「これは、ウタの父親・シャンクスと、ウタの友達・イオリの約束だからね?守れないとかダメだから!!ウタから連絡受けたら、あなたが何処に居ても強制的にエレジアに連れて行きますのでよろしく!!」
ウタも一緒に聞いている。赤髪海賊団の面々も立ち合いの元での約束だ。
「赤髪海賊団のみんなも協力してね?シャンクスが約束破ったら、あなた達も同罪だからね?」
「「ははは…」」
テメェら、笑ってんじゃねぇぞ!あたしゃ、マジだからな?
私は、赤髪海賊団の面々に、例の微笑みを向けた。
「シャンクスが約束を破ったその時は……みんなを地獄に連れて行ってあげるから!!」
「「えっ!!?」」
「私、本気だからね?ちゃんと約束、守ってよね?」
「「……は、はい…」」
「イオリ。…なんか怖い……」
そりゃそうでしょうとも。あたしゃ
協力してね?って言った時に、同意を示さず笑ってやがるからだよ!!
あ~あ、ウタに怖がられちゃったじゃん!!
その後…
ウタがエレジアに戻ってしばらくすると、そこにF-RONPのエージェントが現れた。
ウタは、F-RONPと契約し(ゴードンはマネージャーとして契約した。)、大々的にデビューを果たす。
ウタの名は、瞬く間に世界に知れ渡り、”エレジアの復興の為に尽力する歌姫”というフレーズも、徐々に浸透していった。
エレジアにも、F-RONPの芸能事務所が建てられ、それと共に、復興事業が立ち上がる。
国は瓦礫だらけであったが、逆転の発想をすれば、それはすなわち、一から街をつくりあげられるという事。
国王、兼、ウタのマネージャーであるゴードンも参画して、都市復興計画が策定された。
F-RONPの施設は他に、工場(食品、衣料、他)、お店(食料品、雑貨、服屋)が次々に建てられ、同時に人の住む場所も整備されていく。
住む場所と働く場所が出来た事で、都市の完成を待たずして、移住してくる者は加速度的に増えた。
都市復興計画は2年で完了した。
その頃には、国王を支える役人や職員も増え、エレジアは、国としての機能を取り戻していた。
各国の協力を得て、再び世界政府への加入を目指したゴードンは、1年でその目標を達成。
さらに2年後、エレジアは音楽の国として再び栄える事となる。
ウタとシャンクスが仲直りしたその日から、わずか5年。
エレジアは、国王一人だけという状態から、脅威の復興を遂げるのだった。