イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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01-39話:ルフィの船出

 未来の海賊王(?)の船出は、原作とは異なり二人での船出だった。

 

 

「ダダン、今までお世話になりました?」

 ご近所さんとのお別れなんだし、きちんと挨拶しないとね?

 

「何で疑問形なんだい?」

 苦虫を噛み潰したかのような表情のダダン。だってしかたないでしょう?

 

「私はあんまりお世話になってないから!!」

 きっぱりと言い切らせていただきました。むしろ私が、お世話していた気がするし…。

 

 エースが居なくなってからしばらくすると、ダダン家の食事事情は明らかに低下していた。

 理由は単純。狩りの獲物が減ったから。

 ルフィがうちに食べに来るのが多かったし、私がダダンのところでご飯を食べる時は、獲物も狩ったし料理もしてたから、その状況にしばらく気づいていませんでした。

 気づいたのはルフィのおかげ。もう、ダダンの所でメシ食いたくねェ!と駄々をこねた。

 小さくなれないので、腹いっぱい食えないからだと思っていたけど、そうではなかった。

 食事の質が低下した。というのが一番の理由。

 気づいてしまったので対処しました。

 私とルフィが居なくなった後も、ちゃんと生活できるようにと、畑を整備したり、狩りの道具や罠を作ったりした。

 

 ダダンは面白く無さそうだったけど、たぶん感謝してくれているとは思う。

 お酒とか持ってきてくれたし…

 

 ダダンが、ガープにエースやルフィを押し付けられた被害者なのは知っている。

 だけど、食事事情を見る限り、なんだかんだとうまくやっていたという事なんだろう。

 勿論、そのガープには黙っての船出だ。当然ながら。

 

 私はこの1年の間、ガープと会ってもいない。というより完全に避けてました。理由?

 拉致られるのが怖かったから。

 さすがにそれは無いとは思いたいけどね?でも、わかんないじゃん?あいつ、自由人だし…

 

「ダダン!おれ、山賊嫌いだけどよ!」

 私の隣ではルフィが満面の笑みである。お前また、ダダンのダムを決壊させる気か?

 

「お前らは好きだ!」

 ブワッと涙が溢れ出すダダン。しかたない。私も追撃するとしよう。

 

「私も好きよ?」

 ダダンは完全にあらぬ方を向いて号泣しだした。

 

「テメェらさっさと行っちまえ! チキショー!!」

 

 うん、いってきます。

 

 コルボ山付近から出航したエースと違い、私たちはフーシャ村の港からの出航だ!

 

 マキノさんの所に通っていたこともあって、私も村のみんなにちゃんと認識してくれていた。

 ルフィに声をかけるついでにはなってるけど 『いってらっしゃ~い』と激励を受ける事ができました。

 

「イオリ、寂しくなるわ…。身体に気を付けてね?」

「マキノさんもね。」

 うん。私も寂しくなるな…。でもまぁ、ここの電伝虫、知ってるから…。

 

「…あのさ、寂しくなったら…電伝虫かけてもいい?」

「ふふっ、いいわよ。いつでもどうぞ!」

 ちょっと驚いたみたいだけど、やさしく笑いかけてくれた。私も笑い返して、握手をしてから船に乗る。

 

 

 乗り込む船は、原作のようなボートではなく、全長6mほどの船室ありの船。

(ヨットみたいな感じ?)

 もっと大型でもよかったんだけど、あんまり大きいとそれでよくね?って事になり、メリー号を入手しなくなっちゃうからね?

 だってほら私、ミニミニの能力者じゃん?この船でも100人くらい乗れちゃうわよ?

 まぁ私が居ない時の事を考えるとそれはダメなんだけどさ。

 って事でこのサイズにした。

 横帆ではなく三角帆なので、小さな海賊旗ならあげれなくもないけど、ルフィも何も言わないのでそのまま出航です。

 大渦にのまれそうになったら回避するつもり。別にアビルダから船をもらう必要もない。

 そもそもあれもボートだしね。

 念のため、回避出来ない事も考えてしっかりと密閉できる樽も用意してある。

 

 船室がないとねェ…うるっさいと思うんですよ。ルフィが!

 ボートだと調理ができないから、肉は干し肉だけになる。

 わかるでしょ?どんな状況になるのか。

 

 干し肉に飽きて、焼いた肉食いてえ!って絶対言うじゃん?

 だから船室付きにした。もちろんキッチンもあります。

 小さな修練場も持ってきた。1/100になってそこで修練に励むのだ。

 

《あれ?ってことは…小さなキッチンがあれば、ボートでも調理が出来たって事?》

”ですね。別にこの船を用意する必要はありませんでしたよ?聞かれなかったので答えませんでしたけど…”

 おめェなぁ…言えよ!!気づいてたんなら言ってくれよ!!

 結構苦労したんだぞこの船用意すんの!!

 

 まぁ、私が居なくても、他の人もキッチン使えるからいっか。

 

 

「サボが1番、エースが2番。おれたちは3番目だけど、負けねぇぞ!」

 

 おれ『たち』って言ってくれるルフィも優しいねぇ。フーシャ村の人々の声をBGMに、船は港から出航した。

 

 

「イオリ、おれはお前を副船長に決めた!」

 突然、ルフィがのたまった。

 

「はぁ?」

 いきなり何を言い出すのよこの子は…

 決めた!って、何を勝手に!?

 

 これって、ウソップを狙撃手に決める時と同じノリじゃないの?

 あれはウソップの狙撃の腕が良かったからでしょ?

 私は…なぜに?

 

「あのねぇ。。。私はエースたちがあんたの事を心配してたから、ここに居るのよ? わかる? 私の役目はあなたの”お・も・り(・ ・ ・)”!!」

「失敬だなお前!!」

 

 海図も読めず、航海術どころか海の知識の一つも覚えようとしない奴が何を言っとるんだ!?

 原作と同じとはいえ、よくもまぁこの状態で船出するもんだよ。

 お前、私と違って溺れるじゃんか!! え? 何、死ぬ気?

 

「でも意外ね。ルフィが作ろうとする海賊団に副船長なんて…」

 船長以外は横並びなのかと思ってたのにね?

 

「お前が後ろにいると思うと、何か安心するんだ!」

 何をいい笑顔で言い切ってるかなぁ…。

 それってつまり、『お・も・り』を肯定する発言じゃないの?

 『失敬だな』とか言っといて!? まぁ、覚悟してましたからいいんですけどね…

 

「そもそも2人しかいない海賊団に船長と副船長だけいてもどうにもなんないわよ?」

「いいんだよ、仲間はこれから集めるんだ! そうだなー、まずは音――」

「まずは航海士とコックと船医を探すべきよ!」

 言い切る前に割り込ませてもらった。こいつ今、音楽家とか言おうとしたでしょ?

 

「バカ言え、海賊は歌うんだぞ!まずは音楽家だ!」

「バカはお前だ!!ほんっっと、ダメな子だわ。」

 

「重ねて失敬だなお前!!」

 何が失敬だ!!私の言ってる事は至極当然の事だよ!まったく、先が思いやられる。

 

 

 副船長って事は要するに、こいつは全部私に任せようって魂胆なんだろう。

 ルフィの船長の定義はおそらく”自由”。

 好き勝手にやる気だ。原作でもそうだったし…

 

 あーメンドくさい!今のところ狙撃手は必要ないとして…私の役割は、

 航海士代理、コック代理、船医代理、総舵手代理、音楽家代理、それとルフィのお守りか…って多すぎるわ!!

 

「まぁ、何にせよまずは仲間集めだ。10人は欲しいな」

 

 あれ?赤髪海賊団を超えるんじゃなかったっけ…

 まぁ、確かに赤髪海賊団の主要メンバーはシャンクスを除けば10名か…

 (ベックマン、ラッキー・ルゥ、ヤソップ、ガブ、スネイク、ライムジュース、ホンゴウ、ボンクパンチ、モンスター)

 それ以外はほとんど名前も出てこないモブだもんね。

 単に数が多いだけでは意味が無い。統制が取れなければ烏合の衆でしかないのだから。

 ”数は力だ”と言うけれど、今のところこの子が大所帯をまとめられる気もしないしね。

 

 ちなみに、この船が原作と違うのは、エースとルフィで決めた事だと言われた。

 私が航海術の訓練で使っていた船だけど、エースにあげようと思ったのよ。でもね、ルフィと使えって言われた。

 大渦にのまれるかもしれないので、エースが使え!って思ったけど言えなかったし…

 とか考えてたら、下から船に近づく気配がして海中に魚影が見えた。随分と巨大だ。

 あぁ、あれか。

 すぐに、1匹の海獣?が現れた。なんかウツボっぽい感じに見える。

 

 実は心配してたのよね。私の気配を感じて出てこなかったらどうしようって…。

 もちろん気配は消してますよ?でもね、ルフィとの会話ってあれじゃん?冷静さを失う事も多いのですよ。

 さっきだって、ちょっとイラっとしたし…

 

「出たか、近海の主!!」

 ルフィはなんだかうれしそうだ。かたき討ちって気持ちもあるのかしらね? ないか…

 

「まかせたわよ?船が壊されないように手早くね!!」

「おう、まかせとけ!!……相手が悪かったな。10年鍛えたおれの技を見ろ!」

 

 ニヤリ、と挑発的な笑みを浮かべるルフィ。

 近海の主は”ガア”っと大口あけて襲い掛かって来た。

 

 しかし遅いな。やっぱりシャンクスが腕を食われたのはわざとな気がする。ルフィに海の過酷さを教える為とは言え無茶をするよね。

 

「行くぞ! ゴムゴムの~~~~!」

 ブンブンと腕を振り回すルフィ。

 

「銃!!」

 見事にクリーンヒットした拳は、一撃で近海の主と呼ばれる存在を沈めた。

 ザパァン、と大きな水しぶきが立ち、近海の主は気を失ったのか、そのまま浮いて、動かなくなった。

 

 どうしようかな?今の感じからすると近海の主ってめちゃくちゃ迷惑な存在な気がする。

 コイツがいなくなれば漁業とかもっと栄えるんじゃないの?

 小さくすれば持っていけるけど、この後の展開考えると腐っちゃうかもしれないからなぁ…。

 冷蔵庫も設置しとけばよかったかしら?

 

「思い知ったか、魚め!」

 

 あっ、アイツって魚の括りなんだ?

 そういえば、収納貝があるんだった!!回収しとくか!!

 

 私は紐をつけたナイフを近海の主に向けて投げた。ナイフが刺さったところで能力を発動。小さくした近海の主を引き寄せた。

 

 「イオリ、どうすんだそれ?」

 回収した近海の主を小分けにして袋に入れてたらルフィが聞いてきた。

 どうするってお前、決まってんじゃん。

 

「後で食う!」

「おー!」

 

 深く考えるのは止しましょうね?さすがのルフィでもたぶん食べれなくなるから…

 山賊食べたとか、シャンクスの腕食べたとか…それがコイツの血肉になってるとか考えたら…ねぇ?

 

「よっしゃ、行くぞ! 海賊王に! おれはなる!!」

 

 で、私はルフィの『おもり』なわけですね。でもなぁ~副船長ねぇ…。

 決められちゃったから仕方ないけど(こいつ言っても聞かないし…)場合によっては、ルフィ以外のお守りもしなきゃならないんじゃないの?

 でもまぁそれはいいか。どのみちみんなを鍛えるつもりだし…

 

 あとは、そうね。資金集めはしないとね!お金は持ってきたけどこれはあくまでも緊急時用の予備費だから!

 

 基本的に航海に必要なものは航海で調達するって決めている。もちろん民間からの略奪は論外。”ピースメイン”だからね!

 

 カモはいっぱい出会うだろうし、問題ない!!

 ちょっと楽しそうだなァ~と思ってニヤニヤしてしまった。

 

「イオリ?どうした?」

「なんだかこの先、楽しそうだなァ~!なんて思っちゃってね?」

「?」

 

 ルフィはわけがわからないと言いたげに首を傾げた。まぁ別に悪行を企んでるわけじゃないからいいでしょう?

 あれ、これは悪行になるのかしら?出くわす海賊の皆さんから搾り取ってやろうと思ってるだけなんだけど…

 

 かくして、ルフィと一緒に冒険は始まったわけだ。何度も言うけど私の役目はおもりだけどね。

 でもまぁ、なんとも言えない高揚感はあるね。

 

 さて、大渦…回避できるかしら?

 

 

 

 




 幼少期編の最終話となります。

 長かった…
 けど、ここからも長い?

 期間的に言うと生まれてからここまで229ヶ月なので、
 ここまでの方がとてつもなく長いんですけどね?

 ここから3ヶ月程度で一味崩壊。
 その後、20ヶ月の修行期間を挟み、3ヶ月でワノ国クリアです。
 漫画は100巻超えてますけど、(幼少期の2巻分を除く)そこに書かれているのは全部合わせても半年程度の事なんです。


< おしらせ >
 東の海編は2023年7月から投稿を予定しています。


 ― おまけ ―

 出航を記念に?今一度、元居た世界について検索したみた。

”元居た世界は、2029年7月です。”

 前回検索したのが10歳の時。3年ほどが経過していた。
 そして19歳で6年ちょい。
 つまり、こちらの世界の時間の進み具合はむこうの世界の3倍程度って事か?
 原作が終わる頃はおそらく3年後。
 ってことは2030年かな?

 でも、前回検索した時は月は言われなかったのよね?
 なんとなくだけど、今後は元の世界について、頻繁に確認してみようと思うのでした。
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