イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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02-44話:1人目(ひとりめ)

「キャー!!」

 悲鳴を上げる町人たちに、不測の事態に慌てる海兵たち。

 今しがた、ルフィがヘルメッポを思いっきり、ぶん殴った。

 

 当然といえば、当然の結果ではある。

 『1ヶ月耐えれば解放する』という”約束”を言い出したのは自分だろうに、それをギャグ扱いし、信じたゾロはバカ扱い。

 ”約束”に対する認識は、ゾロもルフィも同じってわけね。

 それにしても…

 何でコイツは、約束を軽視してるのかしら?

 

「ルフィさん、落ち着いてください! 海軍を敵に回すつもりですか!?」

 コビーがルフィに抱きついて止めようとしてるけど、何を言っているのかな?

 

「冷静になるのはコビーの方よ!」

 私はコビーをルフィから引き剥がした。

 

「ルフィが殴ったのは海兵じゃないわよ?あいつは、海軍大佐の息子ってだけなんだから!」

 それに、ルフィは海賊って言ってるんだから、海軍は敵になっちゃうんだけどね?

 

「そ、そうですけど、状況から見てそうなっちゃうじゃないですか!?」

 まぁね。海兵が護衛している時点で、VIP待遇な感じだものね。言いたいことは分かるんだけど、それよりも…

 

「そんな事を言うなら、私たちは海軍を敵に回そうが知ったこっちゃないけど、コビーはその海軍に入りたいんでしょ?私たちと仲間だと思われたりしたら、まずいんじゃないの?」

 私の発言に、コビーは言葉に詰ってしまった。

 そんなやり取りの間に、ルフィが2発めの拳をヘルメッポの顔面に叩き込んでいた。

 あらら…。コビーというストッパーを取っちゃったからか。

 

「な、殴りやがったな! 親父にも殴られたことがないおれの顔を! それも2度も!!」

 ガン〇ムのア〇ロくんかな?

 もっと似せてくれたら面白いのに…

 

「じゃあ、3発目!!」

「へ?」

 私は剃で、尻餅をついたままのヘルメッポに近づくと、顔面目掛けて軽く蹴りを叩き込んだ。

 

「ブフォッ!?」

 ヘルメッポは2~3m吹っ飛んだ。うん。私、めっちゃ手加減うまくなったと思う!

 

「あ、ゴメン!今のは殴ったんじゃなくて蹴ったんだから、3発目じゃなかったわ。」

 神経を逆撫でするように、軽く笑ってみせたら、ヘルメッポは顔を真っ赤にして怒った。

 

「お、お前ら!! おれが誰だか解ってるのか!? おれは海軍大佐モーガンの」

「七光りのバカ息子でしょ?」

 途中で遮り、フン、と鼻で笑ってやった。

 っていうか、原作読んでて思ったんだけど、七光り具合じゃルフィの方が上なんじゃないの?

 海軍本部中将、しかも英雄とか呼ばれてる人の孫なんだから。

 まぁ別に、だからって何をするでもないんだけどね。

 

「親父に言ってやる! お前らは死刑だ!!」

「それしか言えないの!?」

 私もルフィも、これ以上手を出す気分じゃなくなった。なんというか…呆れ果てた。

 

「あいつ、これ以上殴る価値ねぇや」

 ルフィのその発言に全てが集約されている気がする。

 

「イオリ!!」

 海兵の肩を借りながら、ヘルメッポが退場していく。正直あいつはもうどうでもいい。

 それより、ルフィが決意したらしい。

 

「ゾロ。仲間にするぞ!」

 だよね?想定通りだ。

 

「了解!!それじゃあ、ゾロの所へ行きましょうか!」

 

 私とルフィは再び海軍基地へと舞い戻った。ゾロを正式に勧誘するためだ。

 ちなみに今回は、コビーは一緒じゃない。

 

「海賊の勧誘なら断っただろうが」

 二人で来たからだろうか?何も言わないうちにゾロが言った。

 

「おれはルフィ。ゾロ、縄解いてやるからおれたちの仲間になれ!」

 ゾロの言葉はどこへやら…。ルフィは軽く言い放つ。

 

「お前、人の話聞いてんのか?」

「無駄よゾロ。ルフィは人の話を聞かないのがデフォなんだから。」

 

「イオリ、おめェ…こいつを止めろ!仲間なんだろ?」

 

「そんな事より、刀はどうしたのよ?」

 聞くとゾロは悔しそうな顔をした。その時のことを思い出してるんだろう。

 

「あのバカ息子に取られたんだよ!おれの『宝』を……っ!」

 『宝』…それはつまり、くいなの刀だ。まったく、何をやってるんだか…。

 

「教えてあげるわ。そのバカ息子は、あんたとの約束なんて守る気はないそうよ?信じたあなたがバカなんですって!ムカついたから、ルフィと私でボコってやったわ!」

「なっ!?」

 ゾロは心底驚いた顔を見せた。

 

「そうだぞ!あいつ、ひでーヤツなんだ!!」

「で、どうするの?私たちの仲間になるなら助けてあげるけど?」

 

「おれはおれの信念に恥じることをするつもりは毛頭無ェ。海賊なんて外道になるのはゴメンだ」

 しっかりと、芯が通っているのはいいことね。もっとも…仲間になるのを断るのであれば、それは逆効果だと思うけど。

 

「おれはお前を仲間にするって決めたんだ!」

 ほらね。ルフィがますますあんたの事を気に入っちゃった。

 私も一応サポートしますか。ゾロの誤解も解いておきたいし…

 

「信念に恥じることなんてする必要ないわよ。あなたはあなたのやりたいようにやればいい。ただそれを、1人でやるか仲間と共に進むかってだけのこと。それに、海賊だけど外道じゃないわ!私たちはピースメインだからね。やってる事は今のあんた(賞金稼ぎ)と変わらないわよ。まぁ今の海軍は敵と認識するでしょうけどね?」

「…」

 

「それよりも、このまま捕まったままなら、処刑される事になるけどそれでもいいの?『世界一の大剣豪』になるんじゃなかったの?」

 

「チッ…おめェはその事を知ってるんだったな。その通りだよ。おれはこんなところで死ぬわけにはいかねェんだ。…わかった!なってやろうじゃねェか、海賊に!!」

 原作とはタイミングが違うけど、ゾロが仲間になる事を決意した。

 

「やったァ!!仲間になってくれんのかよ!!」

「わかったら、さっさとこの縄を解け!!」

 私は刀を取り出し縄を斬ると、鞘に入れてゾロに差し出した。

 

「私の刀を貸しておくわ」

「どっから出した?」

 ゾロがビックリしてる。

 

「そういえば言ってなかったわね。私はミニミニの実の能力者なの。ここ(といって、ウエストポーチを叩く)にいろいろ入れてるのよ!」

「悪魔の実の能力者かよ」

 ルフィもだけどね?

 

「二刀流のところ、1本で悪いけどね?」

「おれは三刀流だよ!」

「あら、1本増えたんだ。…なるほど!あの刀を加えたわけだ。」

 別に、シャレじゃないからね?

 

 二刀流や三刀流と聞いて、ルフィがスゲースゲーと言っている。

 実際に見たらもっと凄いと思うけど。

 

 

 ゾロの刀を取り戻す為に、私たちはヘルメッポの気配のある方へと向かった。

 

 向かうのは、海軍支部の建物だ。こっちにバカ息子の気配がする!

 って私が言ったからだろうか?

 ゾロが胡散臭そうな顔をしている。ルフィはもう慣れてるから、すんなり向かってくれているけどね。

 

 これは、早くに、覇気について教えてやった方がいいかもしれない。

 カンのいいゾロならば、3日もあれば武装色を発現出来る気がするし…。

 ゾロが使えるようになれば、ルフィも本気で取り組んでくれるんじゃないかな?

 

 ルフィの武装色も、一応発現はしている。だけど、ゴムゴムの技を鍛えるのに手いっぱいで、覇気はあんまり鍛える事が出来ていない。

 まあ、東の海で会う自然系(ロギア)と言えば、スモーカーだけなので、特に問題はないと思うけど…

 

 ~ ~ ~ ~ ~

 

 原作通り、屋上に人が大勢の気配が集まっている。銅像を建てるのは海軍の行事なのかな?個人的なイベントな気がするんだけど…

 個人的なイベントではない証拠に、ヘルメッポは部屋にいるみたい。

 

 私が、『屋上に気配が集まってる』ってボソッと言ったら、途端にルフィは屋上へと飛んだ。ゴムゴムのロケットで…

 

「…」

 

 いやいや、屋上に人が集まってるなら、建物の中は手薄だろうに…。

 あいつは、ここに何しに来たと思ってるんだ?ゾロの宝を取り返す為なんだから、向かうは気配の多い場所じゃなく、ヘルメッポなんだけどな?

 

 ちなみに、屋上からは大きな音がして、なんだか騒然としているようだ。

 横を見ると、ゾロは屋上の方を見て目を剥いている。

 

「あれはなんだ?手が伸びやがった!!?」

「ルフィはゴムゴムの実の能力者だからね。」

 仲間になったので教えてもあげた。ゾロはまたも驚いた顔を見せた。

 さて、ルフィが屋上でバカやってるおかげで、建物の中の気配は屋上へと集まっていくのがわかる。

 

 …ヘルメッポの気配は…あそこか。

 

「ゾロ!バカ息子の部屋は……!?」

「?」

 ってダメだ! こいつを一人で行かせてもたどり着けないんだったっけ…。

 いや~、すっかり忘れてたわ。私が連れてかないと…

 なんてこったい。さっそくお守りの対象が増えちまったぜ。

 方向音痴以外は大丈夫だと信じたい…

 

 中からまわるのもめんどくさい。窓は少し開いているようなので、私はゾロを抱えて月歩で飛んだ。

 ゾロがまた、驚いてるけど、後で説明すると言って黙らせた。

 いろいろ教えておかないといけないみたいね。いちいち驚かれるのもめんどくさいから

 

 そして、窓をあけて中へと入ると、ヘルメッポの悲鳴が響いた。

 刀は壁にたてかけてあったので、あっさりと回収完了。私の刀を貸さなくてもよかったみたい?

 ヘルメッポは部屋から慌てて逃げていった。

 屋上では騒ぎが大きくなっている感じ。

 

「屋上に応援に行くぞ!!」

「ごめんゾロ!、私は別の用事があるの!!ルフィはあなたに任せるわ!!」

 ゾロは少し首をかしげたけれど、『おう!』と応えて走り出した。

 

 ゾロの刀は取り戻したし、私の刀は返してもらった。まあ、問題はないでしょう。

 

 たぶんゾロは、ルフィの元までたどり着けないだろう。屋上に行くと言っていたはずが、階段降りてったし…

 方向音痴、極めたり…ってか?

 

 ゾロはそのまま、縛られていた場所へと走り、それを見つけたルフィが屋上から飛び降りて、ゾロの後を追う。

 銅像を壊されて怒るモーガンは、海兵たちにルフィを追わせた。

 さらに、コビーもヘルメッポもその場に居合わせ、ゾロが縛られていないという事を除き、このイベントは、ほぼ原作通りに終了したのだった。

 

 

 

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