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溺れている人を見つけたら、浮力のある物を投げて持たせる事を第一とする。これが海難救助の基本である。
「助けてくれー!」
とりあえず、前方に浮き輪を投げて、(内緒だけれど、念動力で)溺れている人の近くに落としてあげた。
「おいおい、あんなやつらに関わってる場合か?」
舳先に立つゾロが振り向いて、舵をとる私に向かって呆れた声をかけてきた。
「見事に進路上にいるからね。でも止めるつもりはないわよ?時間と手間がもったいないもの!」
「確かに…このまま進めば、ぶつかるな。」
ぶつかったとしても船には問題ないけどね。当然、武装硬化しますから…
続いて、救命ボートにロープをつけて、船にロープを固定。救命ボートを降ろしてそれを船で引っ張る感じにした。
※救命ボートは小さくして舵の近くに置いてました。
結構スピードは出ているので、これに乗るのは至難の業かも知れないけれど、根性出せばなんとかなるっしょ!
それより船にぶつからないかの方が心配だ。船ではなくあの人たちが…
武装硬化したらこの船、凶器ですもの…
私は大きく息を吸い込み、投げ込んだ浮き輪を掴んだ男たちに向かって声を張り上げた。
「悪いけど急いでいるの!!救命ボートを引いているから、勝手に乗って!乗れなかったら諦めなさい!!」
「「「えーーーー!?」」」
止まってまで救助してあげるつもりはありません。急いでいるのは、ルフィが鳥につれていかれたからではないのです。
だから言ってるじゃないさ!今日は忙しいんだって!!
「「「うおぉっ!!」」」
間一髪で船を避け、ど根性で救命ボートに乗り込む3人組。
うん、やっぱり死ぬ気で頑張ればなんとかなるもんだ。
「テメェら、殺す気か!?」
救命ボートから、憤慨した声が聞こえてくるけど、それだけ叫べるんなら問題ないわね。
一応、武装硬化してたけど、衝撃も何もなかったので、全員無事に避けていたという事だ。
3人は暫く呼吸を整えてたけど、少しして息が落ち着いてきた頃、卑しい笑みを浮かべた。
「殺されたくなけりゃ船を止めろ。おれたちは『道化』のバギー一味のモンだ!」
やっぱりバギーの手下だったんだ…
「止めるのか?」
「止めないわよ。そもそもこのスピードで引かれてる救命ボートで粋がってたところで、何にもできやしないわ。むしろ止めたほうがめんどくさいもの。」
「…」
ん?
でも、なんでゾロはそんな事を私に聞いたのかしら?
確かにゾロは舳先に居て、私のほうがヤツ等に近いけど…
それに、既にルフィはみえなくなっちゃったから、ゾロが舳先に居る理由もない。
後ろに戻ってきてもいいのにね?
そんな感じでゾロに声をかけると、舳先から舵の近くに戻って来てこういった。
「船長がいねェ今、この船に関する決定権はおめえにあんだろ? 副船長!」
なるほど、舳先に居たのも私に言われて、その後の指示がなかったからって事なんだろう。
こういうとこだよね。律儀というかなんというか…。筋が通っているのはいいんだけどね。
悪く言ってしまうと、融通が利きにくい。という事だ。ある意味、ルフィと同類よね。
自分たちを思いっきり無視しながら話を進める私たちに、3人組が明らかに気分を害している様子。もっとも、実害は出ていないし、出せるはずもない。
ゾロに言った通り、かなりのスピードで引かれる救命ボートに乗る3人が、こちらに対して何か出来るわけもない。
船につないでいるロ-プは、すぐにでも切れる位置にあり、私はヤツ等に見えるようにしてナイフを持っている。陸地の見えない海上で、救命ボートで放り出されたいのなら、どうぞご自由に!という状態だ。
まぁ、オレンジの町が見えてきたら、ロープは切るつもりだけどね?
見えたらだから、救命ボートでたどり着く頃には、一仕事は終えれるだろう。
そう、一仕事。
私は、バギーの船からお宝を頂くつもり。たぶん食料とかもあるでしょう。
シェルズタウンでけっこうな量を買い込んだけど、安心は出来ないのよね。
それともう一つ。
原作で、バギー一味はこの後”
海図の話が出ていたけれど、偉大なる航路の知識があるバギーは、それが役に立たない事を知っている。必ずあれを持っているはずだ。
そうあれ、
それをもらっておこうと思っているわけさ。
「で?…お前らは何で溺れてたんだ?」
暇なのだろう。ゾロが救命ボートの3人組に声をかけた。
こちらに対して何かしてやろうとするのはもう諦めたのか。男たちはゾロの誘いにのって語りだした。
酷い女の話。そう、ナミのことだ。しかし…そのやり口は泥棒というより詐欺師なのでは?
遭難者を装って、宝をエサに相手をおびき出し、その隙に船を奪う。さらにスコールまで計算に入れているとすれば、そりゃもう悪辣だ。
でも、すごいよね。肌で天候を知る能力は航海士としては強力な武器だろう。
「その娘、航海士に欲しいなぁ…」
あら、私ったら、ずいぶんとしみじみしたと声、出しちゃったわね。
「何だ、随分切実そうだな」
ゾロが聞いてきた
「何なら、ゾロも1回やってみればいいわよ?航海士代理兼操舵手代理兼コック代理兼船医代理兼音楽家代理+ルフィのお守りを!」
「無理だな」
ゾロが即答した!?そして諦めた!!
まだ2日目なんですけどね?それでも結構きてますよ?たぶん、ゾロが諦めたのは最後の1個だと思う。
半日見てただけで、こりゃダメだと諦めたんだな。
これは、ゾロの人を見る目が凄いのか、ルフィのダメさ加減が酷いのか?
…後者よね。きっと…
私たちがそんな話をしていると、救命ボートの3人組が目を剥いてゾロを見ていた。
「ゾロ…ってまさか、あの”海賊狩り”の!?」
「それがどうした?」
ゾロが肯定した事で、3人組は完全に大人しくなった。
やっぱり女は舐められちゃうのかな?まぁいいや。それよりも、情報を得ておきましょうかね。
「あんたたち『道化』のバギー一味って言ってたけど、バギーって、バラバラの実を食った赤っ鼻な海賊のこと?」
私が話を振ると、3人組は酷く驚いていた。
「どこでそんな話を!?」
「ま、情報源は色々ね」
赤っ鼻は原作知識だけれど、クロッカスさんやシャンクスにはいろいろ聞いている。やっぱりシャンクスはからかって遊んでいたらしい。
「どこで聞いたか知りやせんが、船長の鼻のことは言わない方が身のためですぜ!以前、船長の鼻をバカにしたガキがいたんですが、船長はその町を丸ごと消し飛ばしちまったんだ!」
あ~、なんかそんな事があったような気はする。だから心が狭いって思っちゃったのよね。
「バラバラの実ってのは?」
ゾロも話に加わった。
「悪魔の実の1つよ。ルフィのゴムゴムや、私のミニミニと同じ、ね。
バラバラの実は、切っても切れないバラバラ人間。戦うことがあったら気をつけなさい。剣士にとっては相性が悪い相手になるから。」
ゾロはふ~ん、と興味なさげだ。いやいやお前、ちゃんと話聞いといてほしいんだけどな?
東の海でゾロが負う怪我は、バギーの不意打ちとミホークの太刀だったと思う。
ミホークのはともかく、バギーのは油断さえしなければ、充分回避可能だと思うんだよね。
いくらゾロの回復力が凄いからって、しなくていい怪我ならしないでほしい。
「けどまぁ、凄い組み合わせだな」
ゾロはゴロンと寝転びながら言った。凄いって何が?
私の疑問が顔に出たのか、ゾロが続ける。
「悪魔の実なんざ、ただの噂だと思ってたんだが、それを食ったヤツが2人で海賊団を結成するとはな」
なんだ、そういうことか。私とルフィの事ね?
「私がルフィの船に乗るって決めたときには、もう2人とも能力者だったからね。」
けどまぁ、言われてみれば珍しいかもしれないわね。
「乗るって決めたっつっても、そんなに前の話じゃねぇんだろ?」
ヒマだからだろうか、ゾロは珍しく話に食いついてきた。
「ずいぶん前の事よ?10年くらい前だから、ゾロと仕合う前かな?」
「あぁ?」
「私は、海には出るつもりだったけど、海賊とか賞金稼ぎとかそういう細かいことは決めてなくて、船長になる気も無かった。反対にルフィたちは海賊船の船長になるって決めてて。で、二人の兄は心配なかったんだけど、末っ子が心配だったから、私がお守りするって言ったわけ。ちなみに当時、ルフィ8歳、私は9歳」
おおまかではあるけど、そんな感じ。
あれ、何かゾロが変な顔してる。
「二人の兄?末っ子?」
あ~、なる。言ってなかったもんね。
「ゴメン、言ってなかったけど、ルフィと私は姉弟なのよ。4人兄弟の3番目と4番目。歳は1歳違いだけど、私は誕生日が過ぎてるから、今は17と19」
驚いてる驚いてる。ゾロのこんな顔、滅多に拝めないかも!
「……全然似てねぇな。外見も中身も」
「でしょうね。」
血はつながってないからね。でも、中身が似てたら大変だよ。
ってかゾロが苦労すると思うけど?