イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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クラスター・ジャドウさん、誤字報告ありがとうございます。


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02-47話:律儀な男

 溺れている人を見つけたら、浮力のある物を投げて持たせる事を第一とする。これが海難救助の基本である。

 

「助けてくれー!」

 とりあえず、前方に浮き輪を投げて、(内緒だけれど、念動力で)溺れている人の近くに落としてあげた。

 

「おいおい、あんなやつらに関わってる場合か?」

 舳先に立つゾロが振り向いて、舵をとる私に向かって呆れた声をかけてきた。

 

「見事に進路上にいるからね。でも止めるつもりはないわよ?時間と手間がもったいないもの!」

「確かに…このまま進めば、ぶつかるな。」

 ぶつかったとしても船には問題ないけどね。当然、武装硬化しますから…

 

 続いて、救命ボートにロープをつけて、船にロープを固定。救命ボートを降ろしてそれを船で引っ張る感じにした。

 ※救命ボートは小さくして舵の近くに置いてました。

 結構スピードは出ているので、これに乗るのは至難の業かも知れないけれど、根性出せばなんとかなるっしょ!

 それより船にぶつからないかの方が心配だ。船ではなくあの人たちが…

 武装硬化したらこの船、凶器ですもの…

 

 私は大きく息を吸い込み、投げ込んだ浮き輪を掴んだ男たちに向かって声を張り上げた。

 

「悪いけど急いでいるの!!救命ボートを引いているから、勝手に乗って!乗れなかったら諦めなさい!!」

「「「えーーーー!?」」」

 

 止まってまで救助してあげるつもりはありません。急いでいるのは、ルフィが鳥につれていかれたからではないのです。

 だから言ってるじゃないさ!今日は忙しいんだって!!

 

「「「うおぉっ!!」」」

 

 間一髪で船を避け、ど根性で救命ボートに乗り込む3人組。

 うん、やっぱり死ぬ気で頑張ればなんとかなるもんだ。

 

「テメェら、殺す気か!?」

 救命ボートから、憤慨した声が聞こえてくるけど、それだけ叫べるんなら問題ないわね。

 一応、武装硬化してたけど、衝撃も何もなかったので、全員無事に避けていたという事だ。

 3人は暫く呼吸を整えてたけど、少しして息が落ち着いてきた頃、卑しい笑みを浮かべた。

 

「殺されたくなけりゃ船を止めろ。おれたちは『道化』のバギー一味のモンだ!」

 やっぱりバギーの手下だったんだ…

 

「止めるのか?」

「止めないわよ。そもそもこのスピードで引かれてる救命ボートで粋がってたところで、何にもできやしないわ。むしろ止めたほうがめんどくさいもの。」

「…」

 ん?

 でも、なんでゾロはそんな事を私に聞いたのかしら?

 

 確かにゾロは舳先に居て、私のほうがヤツ等に近いけど…

 それに、既にルフィはみえなくなっちゃったから、ゾロが舳先に居る理由もない。

 後ろに戻ってきてもいいのにね?

 

 そんな感じでゾロに声をかけると、舳先から舵の近くに戻って来てこういった。

 

「船長がいねェ今、この船に関する決定権はおめえにあんだろ? 副船長!」

 なるほど、舳先に居たのも私に言われて、その後の指示がなかったからって事なんだろう。

 こういうとこだよね。律儀というかなんというか…。筋が通っているのはいいんだけどね。

 悪く言ってしまうと、融通が利きにくい。という事だ。ある意味、ルフィと同類よね。

 

 自分たちを思いっきり無視しながら話を進める私たちに、3人組が明らかに気分を害している様子。もっとも、実害は出ていないし、出せるはずもない。

 ゾロに言った通り、かなりのスピードで引かれる救命ボートに乗る3人が、こちらに対して何か出来るわけもない。

 船につないでいるロ-プは、すぐにでも切れる位置にあり、私はヤツ等に見えるようにしてナイフを持っている。陸地の見えない海上で、救命ボートで放り出されたいのなら、どうぞご自由に!という状態だ。

 まぁ、オレンジの町が見えてきたら、ロープは切るつもりだけどね?

 見えたらだから、救命ボートでたどり着く頃には、一仕事は終えれるだろう。

 

 そう、一仕事。

 私は、バギーの船からお宝を頂くつもり。たぶん食料とかもあるでしょう。

 シェルズタウンでけっこうな量を買い込んだけど、安心は出来ないのよね。

 それともう一つ。

 原作で、バギー一味はこの後”偉大なる航路(グランドライン)”に行こうとしていた。

 海図の話が出ていたけれど、偉大なる航路の知識があるバギーは、それが役に立たない事を知っている。必ずあれを持っているはずだ。

 そうあれ、記録指針(ログポース)!!

 それをもらっておこうと思っているわけさ。

 

「で?…お前らは何で溺れてたんだ?」

 暇なのだろう。ゾロが救命ボートの3人組に声をかけた。

 

 こちらに対して何かしてやろうとするのはもう諦めたのか。男たちはゾロの誘いにのって語りだした。

 酷い女の話。そう、ナミのことだ。しかし…そのやり口は泥棒というより詐欺師なのでは?

 遭難者を装って、宝をエサに相手をおびき出し、その隙に船を奪う。さらにスコールまで計算に入れているとすれば、そりゃもう悪辣だ。

 でも、すごいよね。肌で天候を知る能力は航海士としては強力な武器だろう。

 

「その娘、航海士に欲しいなぁ…」

 あら、私ったら、ずいぶんとしみじみしたと声、出しちゃったわね。

 

「何だ、随分切実そうだな」

 ゾロが聞いてきた

 

「何なら、ゾロも1回やってみればいいわよ?航海士代理兼操舵手代理兼コック代理兼船医代理兼音楽家代理+ルフィのお守りを!」

「無理だな」

 ゾロが即答した!?そして諦めた!!

 まだ2日目なんですけどね?それでも結構きてますよ?たぶん、ゾロが諦めたのは最後の1個だと思う。

 半日見てただけで、こりゃダメだと諦めたんだな。

 これは、ゾロの人を見る目が凄いのか、ルフィのダメさ加減が酷いのか?

 …後者よね。きっと…

 

 私たちがそんな話をしていると、救命ボートの3人組が目を剥いてゾロを見ていた。

 

「ゾロ…ってまさか、あの”海賊狩り”の!?」

「それがどうした?」

 ゾロが肯定した事で、3人組は完全に大人しくなった。

 やっぱり女は舐められちゃうのかな?まぁいいや。それよりも、情報を得ておきましょうかね。

 

「あんたたち『道化』のバギー一味って言ってたけど、バギーって、バラバラの実を食った赤っ鼻な海賊のこと?」

 私が話を振ると、3人組は酷く驚いていた。

 

「どこでそんな話を!?」

「ま、情報源は色々ね」

 赤っ鼻は原作知識だけれど、クロッカスさんやシャンクスにはいろいろ聞いている。やっぱりシャンクスはからかって遊んでいたらしい。

 

「どこで聞いたか知りやせんが、船長の鼻のことは言わない方が身のためですぜ!以前、船長の鼻をバカにしたガキがいたんですが、船長はその町を丸ごと消し飛ばしちまったんだ!」

 あ~、なんかそんな事があったような気はする。だから心が狭いって思っちゃったのよね。

 

「バラバラの実ってのは?」

 ゾロも話に加わった。

 

「悪魔の実の1つよ。ルフィのゴムゴムや、私のミニミニと同じ、ね。

 バラバラの実は、切っても切れないバラバラ人間。戦うことがあったら気をつけなさい。剣士にとっては相性が悪い相手になるから。」

 ゾロはふ~ん、と興味なさげだ。いやいやお前、ちゃんと話聞いといてほしいんだけどな?

 東の海でゾロが負う怪我は、バギーの不意打ちとミホークの太刀だったと思う。

 ミホークのはともかく、バギーのは油断さえしなければ、充分回避可能だと思うんだよね。

 いくらゾロの回復力が凄いからって、しなくていい怪我ならしないでほしい。

 

「けどまぁ、凄い組み合わせだな」

 ゾロはゴロンと寝転びながら言った。凄いって何が?

 私の疑問が顔に出たのか、ゾロが続ける。

 

「悪魔の実なんざ、ただの噂だと思ってたんだが、それを食ったヤツが2人で海賊団を結成するとはな」

 なんだ、そういうことか。私とルフィの事ね?

 

「私がルフィの船に乗るって決めたときには、もう2人とも能力者だったからね。」

 けどまぁ、言われてみれば珍しいかもしれないわね。

 

「乗るって決めたっつっても、そんなに前の話じゃねぇんだろ?」

 ヒマだからだろうか、ゾロは珍しく話に食いついてきた。

 

「ずいぶん前の事よ?10年くらい前だから、ゾロと仕合う前かな?」

「あぁ?」

「私は、海には出るつもりだったけど、海賊とか賞金稼ぎとかそういう細かいことは決めてなくて、船長になる気も無かった。反対にルフィたちは海賊船の船長になるって決めてて。で、二人の兄は心配なかったんだけど、末っ子が心配だったから、私がお守りするって言ったわけ。ちなみに当時、ルフィ8歳、私は9歳」

 おおまかではあるけど、そんな感じ。

 

 あれ、何かゾロが変な顔してる。

 

「二人の兄?末っ子?」

 あ~、なる。言ってなかったもんね。

 

「ゴメン、言ってなかったけど、ルフィと私は姉弟なのよ。4人兄弟の3番目と4番目。歳は1歳違いだけど、私は誕生日が過ぎてるから、今は17と19」

 

 驚いてる驚いてる。ゾロのこんな顔、滅多に拝めないかも!

 

「……全然似てねぇな。外見も中身も」

「でしょうね。」

 血はつながってないからね。でも、中身が似てたら大変だよ。

 ってかゾロが苦労すると思うけど?

 

 

 

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