イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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02-50話:宣言通り

 原作ではモージがルフィに負けて、それを知ったバギーがいろいろあって3発目のバギー玉を撃っていた。

 モージはそこで伸びているので、奴らはまだその事実を知らない。

 つまり、バギー玉は飛んでこないと思う。

 とはいえ、放っておいたら同じことに成りかねない。それまで待つのも面倒なので、こっちから仕掛けてみるか。

 

「もう我慢ならん!!」

 あれ?目の前で家が吹き飛ばされていないのに、このイベントは発生するんだ?

 ブードルさんの演説が始まった。

 

「わしは町長じゃ! この町が潰されるのをただ見ているわけにはいかん! 男には! 引いてはならん時がある! そうじゃろ、小童ども!!」

 

「ああ、ある!」

 ルフィがニヤリと笑って答えると、ブードルさんはこの町の歴史を語り出した。ぶっちゃけ、どうでもいいので割愛させていただきます。

 ルフィなんて、相槌打っといて聞いちゃいない。

 

「まぁ気持ちは分かるけど、あなたじゃ単に奴らにやられるだけだから、私たちに任せてくれない?こっちにはこっちの目的もあるんだし。ルフィ、偉大なる航路(グランドライン)の海図はどこにあるのかわかる?」

「知らん!」

 予想通りの答えをありがとう。

 

「海図は、バギーが持ってると思うわよ」

 かわりに答えてくれたのはナミだった。

 

「赤鼻が?」

「どこで聞いたか知らないけど、それは禁句よ! アイツの鼻のことはツッコんじゃいけないの!」

 そういえば、バギーの手下どもも言ってたっけ。

 でもな~、手配書を見ても海賊旗を見ても、赤っ鼻のデカッ鼻な海賊としか言いようがないんだけど?

 

「そうなんだ! アイツ、デカっ鼻の赤っ鼻なんだ!」

 船長がこう言ってるんだから、問題なし!

 あいつはおれがぶっ飛ばす、とルフィは気合を入れている。

 

「ゾロはどうする?結構深手だったから置いてってもいいんだけど?」

 バギー玉が飛んでこないなら、ゾロはここで寝てても問題ない。カバジとは私が闘ればいいんだし。たぶん瞬殺だろうけどさ。

 

「誰を置いて行くって?」

 目を擦りながら、ゾロがブードルさんの家から出て来た。

 

「ゾロ?あんた、寝てなかったの?」

「騒がしいんだよ。起きちまった」

 そんなにうるさかったかな?まぁ、ルフィが家を貫通した時の音はデカかったけど?

 でも、マジで眠そうね。

 あ~、なる!

 

「薬の副作用?」

 鎮痛剤の副作用に眠気。貧血気味な事も拍車をかけているかも?

 

「戦り合うならおれも行くぞ…やられっ放しでいられるか!」

 原作よりはマシだからね。傷口は塞いだし、血は止まってるわけだから。

 

「自分が怪我人だって事、ちゃんと理解しなさいよ?あんまり動きすぎないように!」

 言っても聞かないだろうけど、言わずにはいられない。普通なら重傷と言ってもいい状態な訳だし。

 私の言には答えず、ゾロはいつもの黒手拭いを頭に巻いて既に臨戦態勢だ。

 まぁ、どうしても全力で戦わなければならない場面なら、回復アイテム使うけどね。

 

「ナミはどうする?」

「あ、お前!おれたちの仲間になれよ、海図や宝がいるんだろ?」

 ルフィがナミに片手を差し出した。

 

「…とりあえずは手を組みましょう。互いの目的のためにね」

 パンと軽いハイタッチをルフィと交わし、ナミは私を見た。

 

「とりあえず…ね。私にも私の目的があるの。」

「…わかったわ。さっきはコレのお守りって言ったけど、一応、私は副船長って事になってるの。」

 コレ、のところでルフィの脇腹を小突いてそう言うと、ナミは怪訝そうな顔をした。

 

「副船長?船医じゃないの?」

 多分、迷うことなくゾロの治療に当たったからだろう。一応医療技術も習得しているけれど、それは違う。

 

「副船長よ。ただ、兼任にコック代理と船医代理と操舵手代理と音楽家代理とルフィのお守りがあるけどね?」

「あんたどんだけ背負わされてんのよ!」

 ナミはビシィッとツッコんだ。切れがいいな。

 

「まだマシになったのよ?さっきまでは、航海士代理も付いてたんだから!」

 ナミの目に強い同情の色が見えた気がした。やっぱり、無理があるよね?この設定…。

 

「さっさと行くぞ!」

 拳の骨を鳴らしながら、ルフィは()る気満々だ。

 

「あ、ちょっと待ってね!」

 私はリッチーとモージを持ち運びやすい大きさにまで小さくした……ら、ナミとブードルさんが目を丸くした。

 

「今、何したの!?」

 そういえば、ナミにも教えてなかったっけ。

 

「私はミニミニの実を食べた縮小人間なのよ。ちなみに、ルフィはゴムゴムの実を食べたゴム人間」

 うにょーん、と隣に立ってるルフィの頬を引っ張ってみせた。

 

「あんたたち、悪魔の実の能力者なの!?バギーと同じ!?」

「……」

 

 バギーと同じって…。確かにそうなんだけど、人から言われてみると、何か嫌な響きね、ソレ。

 私は1匹と1人を手のひらに乗せ、トレーナーのフードを被る。大き目のフードなので目深に被れば顔が隠れる。

 

「暑くないのか、それ?」

 キョトンとした顔でルフィが聞いてきた。

 

「暑いけど、いろいろと都合があるの!それくらい察しなさいよ!!」

 ルフィにはそんな高等な事、ムリだろうけどね?

 

 ブードルさんは、私たちについて来た。余所者だけを行かせるわけにはいかないと言ってきかないので仕方なく…。

 そして今。私たちは大勢の気配のする酒場の前にいる。

 宣戦布告も兼ねて、まだミニサイズのままのリッチー&モージを放り投げた。

 

「解除」

 丁度酒場の屋上にまで飛んでいった辺りで元の大きさに戻す。

 バギー一味にしてみれば、副船長コンビが急に降ってきたように感じただろう。

 リッチーはネコ科だから無事に着地したと思う。モージーは知らんけど…

 喧騒が私たちのところにまで届き、ルフィが大きく息を吸い込んだ。

 

「デカっ鼻ァ!!!!」

「誰がデカっ鼻だコラァ!!」

 即答ですね。完全に条件反射な気がする。当然だと思うけど、言われ続けているんでしょう。

 

「お前をぶっ飛ばしに来たぞー!」

 ルフィの宣言に、バギーの顔がやっと見えた。

 

「私は宝を頂くわ!戦うのはまかせたから。」

 ナミがそう言って、立ち去ろうとする背中に声をかけた。

 

「あとで私も手伝うわ!だけど勘違いしないでね?ここにある宝はこの町の人たちに返すのよ?なぜならバギーのモノになる前は、この町の人達の財産だから!」

「あ…」

「納得してくれる?」

 納得せざるを得ないだろう。だってナミの故郷はそういう状態なわけだからね。いざとなれば、他の町を犠牲にする事もするかもしれないけど、それは本当にどうにもならない時だろう。ナミが奴らと同類に落ちる事をヨシとするはずがない。

 

「じゃ…じゃあ私、バギーの船に行くわ!」

「無駄よ?既に宝は頂いちゃったから。」

「うそでしょ!?」

「問題ないでしょ?航海士さん!」

「…」

 

「よくもまぁノコノコと戻って来やがったなぁ、貴様ら!」

 バギーは怒り心頭らしい。モージーから話を聞いて、いろいろ勘違いした結果かな?

 

「ぶっ飛ばすって言っただろうが! 赤っ鼻ァ!!」

 ルフィの返しは、なんというか…。相手を怒らせる才能ってやつ?当然だけど、バギーが切れた。

 

「ハデに打てぇ! 特性バギー玉ァ!!」

 大砲に砲弾は装填済みだったのか、すぐさま砲弾が飛んで来た。騒ごうとするナミとゾロは、問題無い!と私が制した。こちらにはルフィがいるからね!!

 

「ゴムゴムの……風船っ!」

 息を吸い込み大きく膨張したルフィは砲弾を腹に受け、狙いを定めて酒場の中心部に弾き返した。

 

 はい、実は…。ルフィの砲弾返しは練習して、狙いを定められるようにしています。なんなら別の方向へ撃つことも可能。

 飛んできた時よりも威力を増した砲弾は、ドォォォォン、と着弾・破裂し酒場を吹っ飛ばした。

 

「残るは二人ってとこかしら?」

 感じる気配そのものは減ってないから、誰も死んではいないのだろう。健在そうな気配は2つだけ。バギーとカバジだと思う。

 予想通り、巻き上がっていた煙の中から現れたのは、部下を盾にしたバギーとリッチーを盾にしたカバジ。モージーは…気絶中みたい。

 

「旗揚げ以来最大の屈辱ですね。船長、ここは私にお任せを」

 リッチーを放り投げ、一輪車に乗ったカバジが剣を片手に突っ込んで来た。

 

「私はバギー一味参謀長、『曲芸』のカバジ! 覚悟しろ!」

 剣をまっすぐルフィに突き立てようとしたが

 

「剣士の相手はおれがする」

 間にゾロが割って入り、その切っ先を受け止めた。

 ちゃんと傷を縫っておいたのが効いたのか、傷口から新たな出血が溢れるなどということは無かった。

 けど、だからってケガが治っているわけではない、やるならさっさとケリをつけて貰いたい。

 …って、ゾロさん?もう刀3本抜いてるの?

 

「曲芸・火事おやじ!」

「チッ!」

 カバジが火を吹いたため、ゾロは後ろに飛び退いてそれを避け、すぐに体勢を立て直して構えた。

 

「鬼……」

 え、もうですか!?カバジはまだ『火事おやじ』しか技を見せてませんけど?

 いや、別にいいんだけどね?

 ゾロの怪我を思えば、別にそれで問題ないんだけど、なんでまた、こんな急展開?

 

「斬り!!」

「ぐはぁっ!」

 ゾロの三刀流の前に、カバジはあっさり斬り伏せられた。

 いやいや、開始1分も経ってないんですけど!?

 

「おれは剣士と名の付くヤツに負けるわけにはいかねぇし……もう二度と、油断するわけにもいかねぇんだよ」

 私の方をちらっと見て、ゾロがそう言った。

 なるほど…。治療後に私に宣言したもんね。

 

「我々…バギー一味が……コソドロなんかに……!」

 カバジが倒れぎわにそう吐き捨てる中、ゾロは手拭いを取った。

 

「コソドロじゃねぇ。…海賊だ! 悪ィが、おれは寝るぞ……眠ィ」

 貧血な上に薬が効いているんだろう、ゾロはフラフラと近くの民家の軒下まで行くと壁にもたれかかり、眠り始めた。

 

「ルフィ。私は一応、ゾロの傷の様子を診ておくわ!」

 私の出番は無いだろうから、その方がいいだろう。

 

「私はお宝を探しておくわ。海図を奪うのはまかせたからね?バギーが持ってるはずだから!!」

 探しておく。という事は、納得してくれたみたいね。

 

「あぁ、あいつとはおれが闘る」

 ルフィの視線の先には、バギーがいる。

 ナミは素早く建物の裏手に回り、壊れた酒場の裏にあたる場所にある小屋へと向かう。

 私はバギーに顔を見られないように気を付けながら、ゾロの所へと向かうのだった。

 

 

 

 

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