イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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02-55話:ウソップとの出会い

 夜が明けて、朝食を作ってから船を出した。ちなみに男どもはまだ寝てる。

 今日は2月9日。船出してから3日目の朝である。

 

 朝食は、サンドイッチとコーヒーにした。操船しながらでも食べれるからね。

 ナミは少し、浮かない顔をしている。昨日の事を引きずっているのだろうか?

 

 ルフィとゾロが起きてきて、朝食を食べ終えた頃、島が見えてきた。

 

「島に着いたな!」

 特になんのイベントも無く、あっさりとシロップ村のある島に到着した。

 

「…」

 船を着けた海岸の直線上に4つの顔が見える。あれは…隠れているつもりなんだろうか?

 

「陸は久し振りだ」

 珍獣島のときは下船しなかったゾロだけど、1日陸に降りなかったからって久しぶりって事も無いんじゃない?

 

「で、あれはどうする?」

 正面に見える4つの顔には、当然ながら全員が気づいていた。ツッコんだほうがいいのかわからず、代表して私が聞いてみたんだけど…

 

「「「見付かった~~~~~~~!!!」」」

 こちらの意見が出る前に、ちっこい3人が逃げだした。

 

「おい、お前ら! 逃げるな!!」

 哀れウソップ、置き去りだ。

 あれ?もっと鼻が長かった気がするんだけど?これから伸びるのかな?

 

「………………」

 固まっているウソップ。何とか言ってくれないかな?

 それとも、ここはツッコんだ方がいいのかしら?

 

「……おれはこの村に君臨する大海賊団を率いる、人呼んでキャプテン・ウソップ!!」

 ウソップは、まるで何事も無かったかのように啖呵を切った。

 

「この村には手を出さない方が身のためだ! おれには8000万の部下がいる!」

「ウソでしょ?」

 ツッコみました。ナミがツッコむ前に…。だって、ツッコミ所満載なんだもの。

 

「げ、バレた!?」

 衝撃を受けた顔で口を滑らせるウソップ。ダメでしょそれじゃ!!そこは、さらっとかわして不敵な笑みを浮かべるなりしてハッタリかまさないと!!

 

「バレたってことは……やっぱりウソなんじゃない」

 今度はナミが呆れながらツッコんだ。

 

「バレたって言っちまった!? おのれ策士め!」

 ホントにこれは、コントか何か? 別にいいんだけどさ。

 

「はっはっは、お前面白ェな!」

 既にルフィは腹を抱えて笑っている。けれどその様子に、ウソップは憤慨した。

 

「おれをバカにするな!おれは誇り高き男なんだ!人はおれを『ホコリのウソップ』と呼ぶ!」

「それもウソでしょ」

 

「これはウソじゃねぇよ!」

 あら、それはウソじゃなかったのね?本当にそう呼ばれているかは…

 別にどうでもいっか。

 

「しかしあれだな。男女二人ずつなんて珍しいな。誰が船長なんだ?」

 ウソップの質問に、ルフィがおれだ!と胸を張る。

 

「そうか。だよな~!」

「ん?それはどういう事かな?」

 なんか今、女が船長だと悪いみたいな感じに聞こえたけど?

 ウソップは、別に女性に対して偏見を持っていないと思う。それは知ってるんだけど、なんかこう…イラっとしたわけさ。

 

「ふつうそうだろ?女が船長だと弱そうじゃねぇか!」

「…ほう?」

 イオリの変化にウソップは気づかず、言葉を続けた。

 

「ただでさえお前らは、男女比率が半々だからな!なおさらそう思われちまうだろ?」

「…」

 私は、自分の頬が緩むのがわかった。

 

「!!?」

 その私を見て、ルフィが目を剥く。

 

「ちょっと、何するのよ!」

「おいルフィ!?」

「いいから下がれ!沈みてェのか!?」

 

 なによルフィ?何でナミとゾロ引っ掴んで後退してるのさ。しかも意味わかんない事言ってるし…。

 私はウソップに微笑みを向けた。なぜかウソップの顔色がすぐれない気がするが、まあそれも、今はどうでもいい事ね。

 

「”女”が船長だったらなんだって?」

「い、いや…別にそういう意味じゃ…」

「”そういう”ってどういう事かな?」

「……」

 

 5分ほどの口撃で、ウソップは生気の大半を削られていた。

 口撃が緩まったタイミングを見計らい、ルフィがイオリの肩に手を置いた。

 

「もう…いいんじゃねェ…かな?」

「そうね。少しは懲りたでしょうから、これくらいでいいかな?」

 

 イオリの言葉を聞いて、強張っていたルフィの表情が和らいだ。

 その後ろで、ナミとゾロがひきつった笑いを浮かべていた。

 

 

”これくらい…って…。ウソップの目が死んじゃってますけど?”

《エイタ、うっさい!》

 

 ~ ~ ~ ~ ~

 

 ウソップの目に生気が戻ってから、私たちは場所をシロップ村のメシ屋に移して、事情を説明した。

 あの後からずっと、ウソップは私と目を合わせようとしてくれない。怯えられている感じがするけど、やり過ぎちゃった?

 

「そうか、仲間と船を探してるのか」

 聞き終えたウソップは、話の内容を簡潔に纏めた。

 

「この村で船を手に入れられるとしたら、あそこしか無ェな」

 

「おばさん、肉追加!」

「おれには酒をくれ」

「聞けよ!」

 話の途中でお代わりを要求したルフィとゾロに、ウソップがツッコんだ。

 

「……この村には場違いな豪邸が1軒あってよ。そこの主なら持ってるはずだ。…まぁ、主と言っても、病気で寝たきりの娘なんだけどな」

 

 ウソップの話によると、そのお屋敷の女の子は1年前に両親を亡くし、今はたった1人で莫大な遺産と多くの使用人に囲まれて暮らしているらしい。

 

「金があって贅沢できても、こんなに不幸な状況はねェよ」

 そうぼやきながらウソップが天を仰ぐ。

 

「やめましょ!」

「!?」

 ナミがテーブルを軽くたたきながら言った。

 

「この村で船を手に入れるのは諦めましょ。別の町や村を当たればいいわ」

 

 そうだな、と真っ先に賛成したのはルフィだった。

 

「別に急いじゃいねぇしな。イオリ!肉いっぱい買っといてくれよ!!」

「はいはい…」

 

 既に大量に買い込んでますけどね。多い分には困らないから追加しようと思ってたのよ。地物の食材とかも買おうと思ってる。現金もけっこうあるから、換金しなくても買い出しには支障はない。それと、お酒も買っとかないとね!

 

 船長が決定を下したことで、ゾロも特に反対意見は無いようだ。

 

「ところでお前ら……仲間も探してるって言ってたな?」

「うん、だれかいるか?」

 ウソップは不敵に笑うとグッと自分を親指で指した。

 

「おれが船長(キャプテン)になってやってもいいぜ?」

 

「「「「ごめんなさい」」」」

 全員そろって頭を下げた。

 

「はえェなおい!!」

 だって……ねぇ?

 

 取り合えず、ウソップはお笑い要員として有望だ! という事はわかったのでした。

 

 

 

 

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