イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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02-58話:重要な任務

 ヤツらが何を企んでいるのか? を知るために、私たちは取り合えず、ジャンゴの去って行った方へと向かい、例の海岸の崖の上にたどり着いた。

 そう、クロとジャンゴの密会現場を見下ろせる場所である。

 ちなみにクロは結構ヒドイ状態だ。メガネはひび割れてるし、頭に包帯巻いてるし、顔は青黒く腫れ上がってるし。

 

 は~い! あれは私がやりました!!

 

「あんた、一体どうしたんだ?」

 ジャンゴの開口一番はそんな労りの言葉だった。それに対しクロは、口元を引き攣らせている。

 

「無礼な小娘がいたんだ。後で思い知らせてやる」

 おやまぁ、無礼な小娘ときましたか。でもその後のセリフは、そっくりそのままお返しするわ!

 

「それで……計画に支障は出てないだろうな?」

「ああ。いつでもイケるぜ。お嬢様暗殺計画」

 どうでもいいんだけど、いくら誰も来ないだろう場所だからって、こんなに堂々とこんな会話をするなんて…

 警戒心が無いというより、バカなんじゃないの?

 

「はんはふへいはふ!?」

 ルフィの発言を訳すと、『暗殺計画!?』だろう。

 私は今、ルフィを取り押さえてます。口も塞いでます。でないとコイツは大声で喋るだろうし、今にも飛び出して行ってしまいそうだから。

 私たちは現在、原作通りに崖の上から見物中だ。けど、ゾロにナミに私、そして何故かお子様3人組まで付いてきた。君たちは帰った方が良かったと思うんだけどな?

 しかし…、ベラベラと勝手に暴露してくれてますなぁ…。

 

「おれは政府に追われること無く大金を手にしたい……平和主義なんだ」

 言葉を知らないばかちんが!!何が平和主義者だ!!ジャンゴにも笑われてんじゃん!

 カヤの両親が死んだのは事故って言ってるけど、それも怪しいもんだ。

 

「どちらにせよ、おれたちの海賊船が沖に停泊してもう1週間になる。さっさとしてくれ。いい加減あいつらのしびれも切れるころだ」

 

「ねぇ」

 話を粗方聞き終えたタイミングで、ナミが小さな声で聞いてきた。

 

「何? 今私、ルフィを抑えるのに手いっぱいなんだけど?」

 ルフィときたら、すぐにでも飛び出さんばかりに暴れてるんだもの。

 

「盗み聞きなんてしてないで、今ここであいつらを倒しちゃえばいいじゃないの?」

「ダメよ!」

 私は首を振った。

 

「聞いたでしょ?あいつらには率いる海賊団があるのよ。(トップ)を失えば、残るのは統率もない荒くれ者の集団になってしまう。そいつらが勝手に村を襲う方が怖いわよ。海賊団ごとまとめて潰さないとダメなのよ。」

 この二人をあっさり倒すところを見せれば恐れて逃げるかもしれないけれど、単にトップが潰れたとなれば、どんな行動を起こすかなんて予想もつかない。

 

 明日の朝に計画の決行。それがヤツらの打ち合わせの最終的な結論だ。

 私たちが聞いていたことにも気付かずに、クロたちが別々にこの場を離れてから、私はルフィを解放した。

 

「ぶはっ! 何で止めるんだよ! あいつらぶっ飛ばす!」

「ぶっ飛ばすのは止めないし、むしろ賛成だけど。私とナミの話聞いてた?あいつらだけぶっ飛ばしてもダメなの!!」

 そんな傍らで、ウソップとお子様3人組はガクブル状態だ。

 

「あ、あの羊、ホントに悪いヤツだったんだ!」

「大変だ!村が襲われる!」

「どうしよう、みんなに知らせなきゃ!」

「カヤが……殺されちまう!」

 みんなの顔色が真っ青だ。子供3人はわかるけど、ウソップもかいっ!!

 おめェはも少し怒ってもいいんじゃないのか?

 

「なら、さっさと教えて避難させればいいんじゃない?コレを見せれば、村の人も信用してくれると思うわよ?」

 言って私が差し出したのは、さっき見せたクロの手配書だ。

 

「それとも戦う? それなら私たちも加勢するけど……ねぇ?」

 3人に同意を求めると、真っ先に頷いたのはルフィだった。

 

「おう! あいつぶっ飛ばす!」

「悪くねぇな……ここの所、訓練ばっかで実戦に飢えてたんだ」

「お宝は私のものよ!」

 ナミだけ何だか動機が違う気がするけど……とにかくみんな、やる気ではあるみたい。

 

 ウソップは、しばらく逡巡した後、ボソリと呟いた。

 

「ここは、今まで海賊に狙われたことも無かったような平凡な村なんだ。それが狙われてただなんて知ったら、みんなが怖がる」

 バッと顔を上げ、高らかに宣言した。

 

「おれは勇敢なる海の戦士、キャプテン・ウソップだ! この村はおれが守る!」

 どん、と胸を張るウソップ。カッコいいわね!……足が震えてるけど。

 でもそれを、情けないとは思わない。むしろ、恐怖に立ち向かおうとする者を、私は尊敬しさえする。

 

「そして!お前たちがどうしてもって言うなら、おれの部下としてこの戦いに参加させてやってもいいぞ!」

「そこは素直に、手を貸してくれって言ったらいいんじゃないの?」

 少し呆れたように私は言った。

 

「お願いします」

 そういう切り替えの早い所が、ウソップのいい所かしらね!

 

 ウソップはそのままお子様3人組に向き直った。

 

「キャプテン、おれたちもやります!」

「おれたちだって村やカヤさんを守りたいんだ!」

「逃げるなんてウソップ海賊団の名折れです!」

 心意気は立派だと思うけどね。君たちにはまだ無理よ。9歳なんでしょ?

 9歳なんて言ったらさ……

 ・・・・・・うん?

 

 私はコノミ諸島を襲った海賊と戦ってたし、カノンは既にCP0から恐れられてたし、ユナは会社つくって大きくしてたし…。

 エースやサボも、コルボ山の猛獣楽々狩ってたし、ルフィだって9歳になる頃は、似たようなものだった気がする……

 

 あっれぇ?

 9歳っていったら、戦闘力的にはもう大人じゃん?

 

 いや、ちがうって! 比較対象がおかしいぞ!?

 ルフィだってコルボ山に連れてこられた時は普通の子だったじゃん!

 

 そうでした。私たちと比べちゃあかん!!普通の9歳児は猛獣なんかと戦えないや。

 フーシャ村でずっと過ごしていたら、ルフィだって無理だったと思う。

 

 

 ウソップはちょっと考えてたみたいだけど、やがて大きく息を吸い込んだ。

 

「ウソップ海賊団!」

「「「はい!」」」

「カヤを守れ!」

 なるほどね。ここでそのセリフが出てくるわけだ。

 

「この件で1番危険なのはカヤだ! お前たちに、1番重要な任務を与える! お前たちは明日の朝、カヤの屋敷付近に待機して、カヤに万一のことが起こらないように見張るんだ!」

 1番重要な任務。そんな風に言われたら子供らだって断れないだろう。

 

「「「はい!」」」

 案の定、3人は敬礼と共にその任務を受け入れたのだった。

 

 

 

 

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