イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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02-60話:坂道の攻防

 海岸付近にクロネコ海賊団の船、ベザン・ブラック号が見えてきた、

 さて、迎え撃つとしますか。

 

 今回私は、けっこう手伝おうと思ってる。なぜなら奴らの目的が村を襲う事だからだ。

 逃がして村に被害が出るのはいただけない。

 それと、今回は誰も大けがを負わせず終わらすつもりである。

 

「何だ、誰かいるぞ!?」

  船から降りてきた男たちが、坂の上で立ち塞がる私たちを見て驚いていた。

 

「忠告だ、今の内に引き返せ!お前たちの企みは既にバレている!この村には、このおれの8000万の部下がいる!!」

 まずはウソップがハッタリをかました。

 でもねェ…戦闘中のハッタリは、明らかにウソって解るウソじゃダメだと思うよ?

 こんなのに騙されるヤツなんて、ルフィかジャンゴくらいのもんでしょう。

 

「何ィ!?8000万!?」

 ね?あいつは騙されるのよ。だから自分の催眠術にすらかかるんだから…

 

「ウソに決まってんでしょ、船長!」

「げ、バレた!?」

 なんでまた、バレたって言っちゃうのかな、ウソップくん?

 

「同じ失敗を繰り返すなんて、ダメダメね!」

 それは失敗から学んでないという証拠。そもそもこの島に、8000万人なんて暮らせないでしょうが!!

 相手の規模を見てちゃんと考えなさいよ!800人で十分だと思うけど?

 

「何だ、その人を哀れむような目は!」

 いや、だって色々可哀相なんだもの。ユナの会社だったら落第点もらっちゃうぞ?

 

「テメェ、よくもおれを騙したな!」

 ジャンゴが怒ってるけど、騙される方もどうかと思う。

 

「船長、あの小さな船に、宝がありました!」

 えっ!?あれ?…お宝はウエストポーチ(ここ)にあるんだけど?

 

「おそらく、200万ベリーはあるかと!」

 

「あっ!!」

 ナミが何かを思い出したように小さく叫ぶ声が聞こえた。

 あ~なる!ナミの乗ってた船にあった宝箱ね。要するにバギーの手下3人から詐欺でせしめた宝ってわけだ。

 それはまさしくナミの宝だから、お前らがもらえるもんじゃないけどね?

 そしてもちろん、お前たちからも宝を全部頂くけどね!!

 

「それはおれの宝だ! だがやる!」

 ウソップが更なるハッタリを思い付いたらしい。

 

「この村を諦めれば、それに免じて宝をくれてやろう!」

「ふざけんな、このバカ!!」

 ナミの棒がウソップの頭に直撃した。

 

「あれは私の宝よ、1ベリーだってあげないわ!」

 そうだよね?ウソップも、人のモノを勝手に交渉の材料につかったらあかんでしょ。

 

「その宝は当然頂くが、それでおれたちが買収されるいわれはない」

 ジャンゴは冷静だった。

 

「解ったら、ワン・ツー・ジャンゴで道を開けろ。ワン・ツー・ジャンゴ!」

 しかしあいつが催眠術師だと知ってる私たちは、そのチャクラムから目を逸らした。

 ルフィをのぞいて…

 

「ルフィは何で、道を開けているのかな?」

 私はちょっと、いやかなりイラっとした。見事に催眠術に掛かりやがったルフィに対して!

 いや、もうね…笑みが浮かんきちゃうわけよ!

 するとルフィは、ハッと意識を戻した。

 

「!? な、何でもないぞ!!」

 あら、ずいぶんあっさり戻ってきたわね?腹は立つけどルフィが単純なのはわかってるから、一発ぶん殴って許してやろうと思ってたのに…

 見るとジャンゴも自分の催眠術に掛かっていた。あいつもルフィと同じで純粋で単純なのかしら?

 

「ルフィ!あの宝はナミのモノよ!取り返してやって頂戴!」

「よろしくたのむわ!」

「わかった!まかせとけ!!」

 私とナミの言葉を受けて、ルフィが船に向かって飛んで行く。

 

「ゴムゴムの~大鎌!」

 グッジョブ、ルフィ!!しっかりと雑魚クルーを多少潰してくれた。

 

「ゴムゴムの銃!」

「ぐはぁっ!!」

 船で宝を抱えていた男が、ルフィにぶっ飛ばされる。

 ただのモブがガチで(ピストル)を食らうことになるなんて、かわいそうに…。

 

「取り返したぞ!」

 はい、ご苦労様!!

 どん、と胸を張るルフィに私とナミは賞賛の拍手を送ったのだった。

 

「な、何だアイツ!?」

「手が伸びたぞ!」

「足もだ!」

 ざわざわとモブたちが騒いでいるけど、説明してやる気はない。ルフィはたぶん、聞かれたら胸を張って答えるだろうけどね?

 

「チッ……ヤツに構うな! おれたちはとにかく村を襲わなきゃならねぇんだ!これがキャプテン・クロの計画だということを忘れるな!」

 ジャンゴの一喝に、モブたちは自分の役割を思い出したらしい。一発で部下を鎮めるあたり、ジャンゴは、何だかんだ言ってもそれなりに上に立つ器といえるだろう。まぁ今の状況だと、単にクロが怖いだけって事かもしれないけれど…。

 

「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」

 モブたちは一斉に村へと突撃しようとした。けどそれも無理な話。

 

「どわっ!」

 前しか見ていなかったせいで足元がお留守になっていた連中が、坂に撒かれていた油に滑って転倒した。

 原作では、あのゾロが滑り落ちてたし、しばらく登れなかったじゃない?考えてみれば、モブに登れるわけがないのよね。

 

 私が指揮してるなら、5、6人に倒れてもらって、そいつら踏んでいくように指示出すけれど、そんな事は誰も考えていないのかしら?…って、踏まれる奴はたまったもんじゃないから、命令でもなければだれもそんな事は言わないか。ヤブヘビになるかもしれないしね。

 

「必殺・鉛星!!」

 油の上でわたわたしていた男たちに、ウソップがパチンコで攻撃を仕掛けた。

 

「重油にしておけば火をつけて一発終了だったのにな…」

 あ~、でも臭いでバレちゃうか。それに火の手が上がれば、さすがに村の人たちも気づくかもしれないし。

 

「何怖いこと考えてんのよ!」

 私の呟きはナミに聞かれていたらしく、ツッコまれた。

 

「冗談だってば!それに火を使ったら、村の人に気づかれちゃうでしょ?」

「本気だったんじゃない?」

「半分ね?……指銃・撥!」

 

「ぐっ!」

 1回のパチンコで放てる玉は1発のみ。ウソップも頑張って連射しているけれど、全員を沈められているわけじゃない。

 なので私も軽めの撥で手伝う事にする。軽めの攻撃でも足元が油塗れっていう状態なら、効果は充分。勝手にすっころんでくれた。

 

 って、あれ? もしかして…

 岩でも準備しておいて、坂の上から転げ落としても良かったのかな?

 もしくな岩を小さくしておいて、ウソップがパチンコで撃った後に大きくすれば…

 もしかしたらそれで殲滅できたかも?

 

「おいテメェら! 何やってやがる!!」

 ジャンゴが苛立ったように叫ぶ。

 

「そんな子供だましに引っ掛かりやがって! ……よし、テメェらこれを見ろ!」

 ジャンゴは再びチャクラムを取り出した。

 

「ワン・ツー・ジャンゴでお前らは強くなる! あんな油なんて、飛び越えられるぐらいにな!」

「何? 思い込みで強くなろうってんの? バッカみたい」

 ナミは呆れているけれど、催眠をバカにしてはいけない。

 

「気を付けた方がいいわよ!要するに、火事場のバカ(ぢから)が発揮できるようになるんだからね!!」

 ウソップとナミ、そしてゾロが不思議そうな顔をした。

 マジで気を付けたほうがいいと思うんだけど?

 

「人間は通常、肉体に掛かる負荷なんかを考えて、(パワー)を無意識的に押さえてるのよ!」

 確か、武道の達人ですら、50%の力しか引き出せないとか。

 もっともこの世界でその常識が通用するかはわからんが…

 何が言いたいのかというと。

 

「ワン・ツー・ジャンゴ!!」

 

「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」

 大幅なパワーアップをすることが出来るってわけだ。

 モブの1人が思い切り振るった腕が崖に当たり、崖は大きな音を立てて抉れた。

 いやいや…どんだけパワーアップしてるのさ?モブがこれって…

 

「何てパワーだ!」

 ゾロが、驚きの表情を浮かべた。

 

 私はというと、目を細めてバカな子を眺めていた。

 あ~あ…さっきはすぐに戻って来たのにな~

 

「……そーね」

「何よ、そのやる気のない声は!」

 顔色を悪くしたナミに食って掛かられた。

 けど、それに対して言い返す気にもなれない。

 だってさ…

 よく見てみなさいよ!なんだか私、脱力しちゃうんだけど?

 

 でも、今回の催眠に関しては、ルフィの選択は正しいかもね?

 あの子は選択してああなってるわけじゃないけどさ。

 

「お前ら、下がってろ。おれたちがやる」

 言われたナミもウソップも、素直に下がろうとした。

 

「おい、イオリ!……どうした?」

 ゾロも私の様子に気付いたらしい。どんな様子かって?疲れ果ててうなだれてます!

 

「どうしたも何も、見なさいよ、アレ…」

 私の視線の先には…

 

「うぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 またも見事に催眠に引っ掛かったルフィがいた。

 

「え?」 

 ジャンゴが間抜け面を晒した。

 

「な、何て単純なヤツなの!」

 下がるのを中断したナミも呆れている。ちなみに、ウソップも同様だ。

 

「ゴムゴムの~~銃乱打!!!」

「「うぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

 残像が見えるほどの拳の嵐に、折角パワーアップしたモブが大量脱落した。残った者たちも、その衝撃に催眠が解けてしまったみたいだ。

 

 モブがあのパワーアップだものね。ルフィがこうなるのもうなづける。さらにルフィの催眠のかかり具合はモブたちを遥かに凌ぐ。パワーアップの程も想像以上だ。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 まるで暴漢に襲われる乙女かのような悲鳴を上げて逃げまどうモブたち。さらに…

 

「ぬぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 ルフィはベザン・ブラック号に飛びつき、そのまま…

 

「船首をもぎ取りやがったぁ!!!」

 バキバキと、力任せにその黒猫の飾りが付いた船首を引き剥がした。

 

「随分とデカイ凶器を手に入れたわね。」

 そのまま振り回したら、全滅させれるんじゃない?

 

「いや、そういう問題か!?」

 私が素直な感想を口にしていると、ウソップにツッコまれた。

 なんでみんなにツッコまれなきゃならないんだろう?別にボケてる訳じゃないのにな。

 

 ジャンゴも流石にこれはマズいと思ったらしく、再びチャクラムを取り出し、ルフィに向けた。

 

「ワン・ツー・ジャンゴでお前は眠くなる! ワン! ツー! ジャンゴ!」

 ルフィはまたも見事に催眠に掛かり、パタッと眠りに落ちた。抱えていた船首の下敷きになっているけど、見る限り、普通に寝てるみたいだから問題ない。

 

「何か、ほぼ全滅って感じね」

 ナミはもう戦闘態勢を解きつつあった。

 

「そうね。一般クルーはだいぶ数も減ったし、ウソップとナミで足止め出来ると思うからまかせるわ。 !! ゾロ!…どうやら、お出ましみたいよ?」

 

 ベザン・ブラック号でこちらに動いてくる2つの気配を感じた。シャムとブチのニャーバン兄弟(ブラザーズ)だろう。

 

「おいおい、船が壊されてるぜ!」

「こりゃどういうことだ!」

 その声に、残っているモブたちが歓声を上げた。ずいぶんと人気がある事で…

 

「ようやく骨のありそうなヤツでも出て来たか?」

 今まで全く活躍の場が無かったゾロが笑う。なんだか悪人面に見えるけど?

 

「降りて来い、ニャーバンブラザーズ!」

 ジャンゴは得意げにヤツらを呼び寄せた。

 

「賞金首のお出ましね。あいつらは一旦ゾロにまかせるわ!私はルフィを起こしてくるから」

「おう、まかせろ!」

 ゾロが応える。

 

 船からニャーバンブラザーズが飛び降りたのを見て、私は剃でルフィの元へと移動した。

 

 

 

 

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