シャムとブチの猫かぶりは、原作通りとだけ言っておこう。
私はとにかく、ルフィを起こさないといけないからね。
しかし…どうしてくれよう、このゴムは!!てめーは何度同じ手に引っかかるんだ?
チャクラム見なけりゃ、催眠術にかかる事は……
あれ?……単純・純粋ルフィはもしかして…言葉だけでも催眠にかかっちゃうとか?
う~ん…だとすると、一概にこの状況を、ルフィが悪いと決めつけちゃうのはかわいそうなのかもしれない。でもなァ…
私がムカついちゃったので仕方がないわね!ルフィには捌け口になってもらいましょう!!
「起きなさい!」
今回私は、ルフィの眉間に手加減なしのデコピンを放った。もちろん覇気は使っていない。
「おわっ!?」
ルフィは驚いて跳ね起きる。ただし、船首の下敷きになっているから、半身はまだ地面にめり込んだままだ。
「何だ!?びっくりした!!」
普通の人間なら頭蓋骨陥没ほどの衝撃を受けて『びっくりした』の一言で済むんだから、ゴムってすごい。
「ルフィ?」
目をパチクリとさせていたルフィが、私の顔を見て固まった。例の微笑みを向けているのだから当然ね。
「何が起きたか、覚えてる?」
「んー、催眠術師を見て……覚えてねェ!」
はい。見てたって言いましたね。このヤローは…
「あんたは催眠に掛かって暴れたの!!その結果として敵の数が減ったのはいいわよ。でもね、チャクラムを見なければ催眠術には掛らないのに、どうしてそれを見てるのかしら?同じ失敗を繰り返したらどうなるのか、知ってるわよね?」
「ごめんなさい」
「素直でよろしい」
私ははルフィの上に乗っかっていた船首を蹴り飛ばした。
さて、ルフィが解放されたわけだけど、ゾロの方はというと。
「その刀を返せ」
シャムに刀をネコババされていた。
「何だ、あいつ」
立ち上がったルフィがキョトン顔になってるけど…
「あんたが眠らされてる間に出て来た敵戦力よ!」
「ごめんなさい」
あんたは、もうちょっと反省しなさい!
一方で緊迫した空気のゾロとシャム。
「戦う前に、この邪魔な荷物を何とかしなきゃな」
言ってネコババしていたゾロの刀2本を放り投げるシャム。
「…剃!!」
私は刀の落下地点に向かい、刀が地面に落ちる前にキャッチした。
一本は、私の友達兼師匠のくいなの形見の和道一文字。ゾロにとっての宝だけれど、私にとっても同じくらい大事なものだ。ぶっちゃけ私も頭にきてる。この怒りはブチにでもぶつけてやるか!
「ゾロ!」
私はキャッチした刀をゾロに投げ返した。ゾロもそれを易々とキャッチして、腰に戻すと3本の刀を抜いた。
「テメェら……覚悟は出来てんだろうな?」
ゾロは結構切れていた。刀に手を出された剣士の怒りか?
「チッ。刀3本使ったからって、何になる!」
シャムが毒づいたが、負け惜しみにしか聞こえない。
「刀3本使うのと……三刀流は、違うんだよ」
ゾロの迫力に圧されたせいか、ブチも早々に参戦することにしたらしい。
「キャット・ザ……」
空高く飛び上がり、シャムと対峙するゾロに狙いを定める。だけどそれはムリ!
「残念!敵は1人じゃないんだなぁ!!」
「な!?」
私は空中のブチの更に上空に回り込んだ。いくら高く飛んでも、ただの跳躍と月歩を比べれば、機動力は圧倒的にこちらが上だ。
「嵐脚……」
ゾロに当たらないように気を付けて、と。
「ま、待て!」
私が何をしようとしているかは解らなくとも、自分が狙われている事は肌で感じているんだろう。 ブチは随分焦っている。
無理もない。普通なら空中では落下以外に移動など出来ない。つまり逃れる術など無いわけだ。
「白雷!」
原作で出て来たCP9の技は全て試した。習得できなかったものも結構多いけどね。
これは敵の上から嵐脚をほぼ垂直に放つ技だ。
嵐脚も私が本気で撃ったら大惨事になってしまうので、かなり弱めで撃ちました。
軽く撃っただけだけど、ブチを沈めるには充分すぎた。
「うっぐぅぁ!!」
斬撃をどてっ腹に食らい、ブチはそのまま意識を飛ばしてしまったらしい。
当然、その身体は重力に従って落下する。嵐脚による加速も加わり、ブチは轟音と共に地面に落ちた。
あーあ、めり込んじゃった。
完全に意識を失っていると思う。死んではいないけど、催眠で強化、なんてのは無理だろう。
幸いにもあおむけなので、窒息する事も無いだろう。
「ブチィ!!」
かぎ爪を以ってゾロと切り結んでいたシャムが、相棒の惨状に気を取られてゾロから気を逸らした。
甘いわね。ただでさえゾロに軽くあしらわれていたのによそ見とは…
「虎……」
当然、その隙を見逃すようなゾロではなく。
「狩り!!」
「!!!」
技1発。それによって、シャムも沈んだ。
ニャーバンブラザーズはあっさり片付いた。
「い、一撃!?」
「ニャーバンブラザーズが、2人とも……!」
希望に目を輝かせていたモブたちも、あからさまにショックを受けている。
「イオリ!!おれもあいつらぶっ飛ばしたかったんだぞ!」
着地した私を待っていたのは、ルフィの怒りだった。
おめェなぁ…、文句言える立場だと思ってんのか?
「まだ主犯のクロが残ってるわよ!そういえば、あの2人は船番だって言ってたわよね?じゃあ、今船はもぬけの空かな。」
ルフィの怒りを軽くかわして、ナミに視線を送ると、ハッとした顔をして、こちらに駆け下りてきた。
転ばなくてよかったね?
「一緒にいくでしょ?
ナミが私のところまで来たので、そう言ってあげた。
まぁね。結局ナミに協力するつもりなんだし、私がもらってもナミが手に入れても同じ事でしょ?
私とナミが、船に向かおうとルフィの横を通り過ぎると、坂の上に新たな気配が近づくのを感じた。
「!!」
「どうしたの?」
坂の上を見上げる私にナミが声をかける。私はルフィに向かって言った。
「良かったわねルフィ。主犯がお出ましみたいよ?」
気配を感じる。言外にそう言うと、ルフィは好戦的な顔をした。
「それじゃ、私はナミと一緒にお宝を頂いてくるわね!!」
無人の船に入り込むのに、わざわざこっそりする必要は無い。私はナミを抱えて軽く跳躍すると船に乗り込んだ。
「何だこのザマはァ!!」
そんなクロの怒声を背中で聞きながら。