予定通りとはいかないものだ。
出会いはともかく、友達のなり方がね?
~ ~ ~ ~ ~
「(なんだってこんな所に女のガキがいるんだよ!!しかもこいつら…谷底にいるはずじゃ…)」
エースはグレイターミナルへと向かっていた。吊り橋を渡りしばらくしたところで狼の唸り声を聞いたのだった。
群れの数は20匹ほど。驚いたのは既に数匹の狼が動けなくなっている事だ。
「(あれは、とどめを刺しとかねぇと厄介だな。)」
人間に殺されそこなった動物は賢くなるとともに人間に対して憎悪を抱く。大けがを負ったものほど狂暴になるのだ。
「(それにしてもあのガキ…素手で戦ってんのか?)」
「一度にかかってきなさいよ!単騎で向かってくるから殺られるんでしょ?」
「(狼に向かって何言ってんだあいつ?通じるかよ)」
とエースは思ったが、狼たちは一斉に女に襲い掛かった。
「なっ!!」
助けに入ろうか迷った挙句、エースは一歩も動くことが出来なかった。見とれてしまったのだ。その戦いに…
エースは見た。いや、正確には全てを見る事は出来なかった。あまりにも彼女の動きが速過ぎたからだ。
襲い掛かったのは16匹。四方から襲い掛かった最初の4匹は回し蹴りで2匹が、次いで振り下ろした右裏拳で1匹、そして横に薙ぎ払われた手刀の一撃によって沈んだ。
次の瞬間、彼女の体が揺らいだかと思うと姿が消えた。突進してきた狼は標的を見失い数匹が頭をぶつけ、その場にうずくまった。上に飛んでいたようで、降りてきた彼女はその足でそれらを踏み抜く。
まだ数は自分たちの方が上だ!そう考えたのか一匹が吠えた。狼たちが輪になり、その輪を狭めながら彼女に近づいていく。普通なら恐れるところ、女は呆れたように包囲する狼ではなくその後ろの一匹を見つめた。
「剃!」
「!!?」
一瞬だった。恐らく頭であろう一匹があっさりとその命を刈り取られた。手刀の一閃。それによって狼の首は地面に落ちた。そして、包囲しようとしていた狼達は一目散に逃げだしたのだった。
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「すげェなおまえ!助けようかと思ったけど、全く必要なかったな。」
「…君は?って、質問するなら名乗らないとね。」
「?」
「私はイオリ。この辺に小屋でも作ろうと思ってたら襲われちゃった。君は?」
サボの時とは逆になっちゃったかな?まぁ先に声をかけて来たのは向こうなんだから名乗ってもらっても良かったんだけどね。
「おれはエースってんだ。この先に山賊がいんだけどよ。そこで世話になってる。ってかおれが世話してやってる感じだけどな。」
うん。知ってる。知ってて会いに来たっていうのが正しい。知ってたらおかしいから言わないけどね。でも、本気でこの辺に小屋建てようかと思ってるんだよね。そうなるとダダン家はご近所さんかしら?
「問題ないと思うんだけど、この辺に小屋とか建てても大丈夫よね?」
「何でおれに聞くんだよ?この辺りは猛獣とかもいるけど、まぁお前なら心配ねェんじゃねェか?」
いや別に、そっちの意味で大丈夫か聞いたんじゃないんだけどな?まぁいいか。どうせここの辺に来る人なんていないんだし。
「そっか。じゃあ建てよっと!」
「建てよっておまえ、えっ!?」
― ドーン ―
と、小屋が出来上がりました。
エースがポカーンと小屋を見ている。何のことはない。収納貝を取り出しそれを開け、中から小さな小屋を取り出して能力を解除しただけ。
小屋をつくったのは職人さん。いろいろ習って自分でも作れるとは思うけど、一応数年住む予定なのでプロに作ってもらったものに住む事にした。
適当な理由をつけて庭に建ててもらった。それを小さくして収納貝に入れておいたって訳。
「一瞬で…家が建った!??」
理解が追い付かないんだろう。ムリもないよね?能力者なんて知らないだろうし…。エースは驚愕の表情のまま私を見つめた。
「悪魔の実って知ってる?」
とりあえず聞いてみる事にした。一応有名なモノではあるし、海賊を目指しているなら知っていても不思議じゃない。ガープに聞いている事も考えられる。
「おまえ、なんかの能力者なのか?」
知ってたみたいね。よかったぁ~、友達になる前にバケモノ判定されなくて。
「うん。」
「今、小さい小屋をでっかくしたよな?モノをでっかく出来んのか?」
なにをキラキラした目で問いかけてくるかな?でも残念。逆なのよね!
「何を期待してるか知らないけど残念ね。私の能力は『ミニミニ』よ。なんでも縮小できるの。この小屋はもとものこの大きさで小さくして持ち歩いていたの。」
「ちぇっ!なんだよ期待させやがって。」
「何がよ?」
「だってよ。物をでっかくできるんだったら腹いっぱいメシが食えるだろ?」
「!!?」
エースは何を言った?え?ちょっと…今、何って言ったの?
「…なんてこった!」
「あ?」
ショックだった。なぜ今までそれに気づかなかったんだろう?
既に私は大食いのレッテルを貼られている。それは仕方のない事だ。けれどこの能力の使い道を知っていたなら…それは免れていたはずの事…
ああ、なんてこったい!エースぅ~!!なんでもっと早く教えてくれなかったの?
「なんでお前が落ち込んでんだよ!落ち込みたいのはこっちなんだぜ?」
「あんたの望みは叶うわよ!食べ物じゃなくてあんたを小さくすれば済む事じゃない!!そんな事よりショックよ!なんでそれに気づかなかった私!?」
「!!」
なにニコニコしとんじゃコラ!!これは私の能力だよ!そもそもお前、まだ友達にもなってねぇじゃんか!!
「イオリ!おれたち友達だよな!!」
「はぁ?」
だよな!ってなにさ?
こいつ…友達になる
ってか、いいの?よく知らないやつ友達にしちゃっていいの?
おまえ、人に知られちゃまずいと思ってる秘密があんだろ?メシの為にそれをふっとばすのかぁ?
これが、私とエースとの出会い。
まぁはい。いいですよ。私はもともとあなたと友達になるつもりでしたよ?でも何コイツ?
やばいなぁ…なんか振り回されるそうな感じがする。
~ ~ ~ ~ ~
エースと一緒にグレイターミナルにやってきました。
そして今、目の前にサボが居ます。
「えっ!?何で二人が一緒に居るんだ?」
いい具合にサボが驚いてるね。まぁそうだろう。私だって驚いたよ。だってコイツ、自分から友達になろうって言いやがったんだもん。
「さっき森で会って友達になったのよ。サボと友達なんだって?」
「なんだサボ、イオリの事知ってんのか?」
「エース、おまえ…」
えっ!なにサボのその顔!?微妙に喜んでる感じ…。
ああ、そうか!エースが少し普通になった(友達を簡単に作れた)ことがうれしいのかな?でもね、ちがうのよサボ。コイツが私と友達になった理由は…
「サボ、こいつすげェんだぞ!メシが腹いっぱい食えるんだ!!」
「えっ!?」
ほらね。エースの目当てはメシです。友達じゃなくてメシ!!ルフィはエースに引っ張られたんじゃないの?原作でメシメシ言うのは実はエースの責任じゃない?
「サボには言ってなかったけど、私、『ミニミニ』の実の能力者なの。なんでも小さくできるのよ?」
「それが何で…メシ?」
だよね~。普通『ミニミニ』とメシは結び付かないわよね。私だってエースに言われるまで気が付かなかったもの。
*-*-*-*-*
「1/10!」
1/10にまで小さくしました。何をって?エースとサボの2人を!!
「どうだ、サボ!スゲーだろ!?」
我がことのように自慢するエース。エースがこんなに興奮してるのは自分が小さくなったことに対してじゃない。
「ホントにスゲーな!こんなでっかい肉初めて見た!」
そう、今小さくなった2人の目の前には、昼食にと思って持ってきていた骨付き肉がある。
エースに言った。あんたを小さくすれば望みは叶うと。食べる側を小さくすれば食べ物を大きくするのと同じ効果が得られるってわけさ。
身長120cm程度の6歳児を1/10まで小さくしたら、およそ12cm。私が持ってきたのはだいたい20cmくらいの骨付き肉。通常ならなんてことのないサイズだけど、12cmの小人から見れば自分よりも大きな肉の塊。さぞかし食べ甲斐があるでしょう。
エースとサボは(本人たちにとっては)巨大骨付き肉に喰らい付いちゃってます。あ~ぁ、あとで着てる服洗わないとね。たぶん油でベトベトだわ。
しかし…なぜこれに気づかなかった私!!ショックがデカくて二人のテンションについていけないよ。
ちなみに私は普通に肉を食べている。あぁ…この肉も、能力をつかえば100倍食べれたって事ね?
損した。損してた。なんてこった。あ~もうくやしい。…だめだ。もう…立ち直れないかも…
………
でも…あれよね? 気づいたんだから今後は
そうよ!今までだって損してたって訳じゃない。普通の大きさで食べてたんだもの、損じゃないわ!そうよ、損してない!!それにこれからは得をするのよ!!そう!得する事ができるのよ!!今、この時点で気づけたんだからそれでよしとしましょう!!
「よし!復活!!」
よかった。二人はまだ肉に夢中で私の葛藤には気づいてなかったみたい。しかも私、気づいちゃいました。ミニミニの有用性に。
逆転の発想ってやつ?食べ物と同じで相手を小さくすればこっちが巨大化できるのと変わらないって事!!これは実践でも使ってみないとね?
~ おまけ・イオリのひとり言 ~
エースと友達になる前に思考を読んで、エースがロジャーの子だという情報を入手しました。
友達になった後、サボと会って、「サボはエースの父親が誰か知ってるの?」と聞いて二人が驚いたところで思考を読んだ事と友達になったからもう思考を読まない事を伝え、私の秘密(ミニミニの能力)を教えて、さらには見聞色の相殺について話して、思考を読まれたくなかったら教えてやるから見聞色を身に付け鍛えろと言うつもりだった。
結果的に友達にはなれたけど、エース、おまえの警戒心はどこへ行ったんだ?
しばらくしてから考えていた通りの事をしたら、エースがサボを疑った。おもいっきり叱ってやった。