イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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02-71話: VSミホーク

「オイ、何のつもりだよそりゃあ」

「おれはうさぎを狩るのに全力を出すようなケモノとは違う。多少名を上げた剣士がいたところで、ここは”赤い土の大陸”と”偉大なる航路”により四つに区分される海の中でも最弱の海『イースト・ブルー』。あいにくこれ以下の刃物は持ち合わせていないのだ」

 ミホークが取り出したのは、原作通りのおもちゃの剣だった。

 

「てめェ…人をバカにすんのもたいがいにしろよ!!」

 

 ズズズ…

 

「!!?」

 ソロの持つ、3本の刀が黒刀の如く黒くなっていく…

 それを見て、さすがのミホークもゾロに関心を示した。

 

「まだ未熟とはいえ…。まさか、東の海で覇気を使う者と出会うとはな。」

「へっ!やっとやる気になったかよ!!」

 

「さすがにオモチャではキツそうだ。」

 と、言いながらミホークがオモチャの代わりに抜いたのはナイフというか短刀だった。

 原作と状況が違うとはいえ、見下す者に『夜』は抜かないと言う事か…。

 

「武装硬化は覚えたとはいえ、付け焼刃だものね。」

 それにしても、訓練ではちゃんと出来てなかったのに、本番で3本とも武装硬化するとは恐れ入る。 …気合だってか?

 

「ふざけやがって!!」

「世の中の広さを知るがいい!!」

 ミホークの言葉に気圧されながら、ゾロは必殺の一撃を構える。

 

「三刀流…鬼斬り!!」

 

 ― ガキィッ!! ―

 

「!!?」

 ゾロの驚愕の表情がハンパない。

 

 刀身で受け止められたなら、まだ納得できただろう。

 けど、まさか、切っ先の1点であの技を受け止めるなんて…

 どんな動体視力をしているのやら。

 

 やれと言われれば私も出来ると思うけど、3回に1回くらい失敗するんじゃないかな?

 それよりも…覇気だけでなく、力もミホークのほうが上みたい。

 

 力も技も、そして覇気までも上回る相手に勝つ事は……

 無理ね。

 

 さすがは七武海。だけど、現れた時ほどの大きな気配は感じない。

 今の気配の大きさは、出航時のエースくらいだと思う。

 意識してやっているかは知らんけど、たぶん抑えているのだろう。

 

 エースと言えば、ジンベエに勝ったらしい。

 さらに白ひげにも小さいながらキズを負わせたらしく、息子達からすげーすげーと声をかけられたとか。

 白ひげからも、めちゃくちゃ褒められて、毒気を抜かれてしまったらしい。

 ジンベエとも、とても仲良くなったとの事。

 要するに思いっきり喧嘩したら仲良くなった的な?

 白ひげも含め、あの海賊団は男の子の集まりみたいな、そんな印象を持ってしまった。

 (情報は全てカザマからもたらされたものです。)

 

 

 私がゾロなら、あの状態から蹴り技を出すけど、それだと剣士と言えなくなっちゃうか…

 ゾロが大剣豪を目指す以上、剣士相手に邪道な技を使うはずもなし。

 ならば、結果はもう見るまでもない。

 

 私はその戦いに背を向けた。

 

「イオリ?」

 私が立ち上がってその戦いから背を向けた事に、驚いたナミが声をかける。

 

「治療の準備をしておくわ。もう、結果は見えたから。」

「えっ!?」

 ゾロは負けると結論付けて、私は治療の準備に取り掛かる。

 

 さて、まずは…。

 ここにゾロを連れてくるんだから、言葉をルフィに届くようにしておかないと…

 

 スピーカーをゾロとミホークが居る辺りに向け、声を拾う為の電伝虫を用意する。

 それと、こっちが本命。治療の準備だ。

 

 デッキの上にコンロを出して、巨大な鍋に水を入れ、それを小さくして火にかける。

 すぐさま沸騰する鍋を、元の大きさにもどして弱火にかけたままにする。

 煮沸消毒用のお湯はこれでOK。

 

 麻酔もあるし、縫合用の針も糸もある。この日の為に?培った医療技術を使うのだ。

 

 ミホークの事だ。切り口はとてもきれいなはず。

 すぐさま縫合すれば、おそらくキレイにくっつくのでは?と思っている。

 野営で手術を行う為のテントと簡易ベットも用意した。

 

「うわあああああああ」

「ゾロ!!!」

「アニキー!!!」

 ルフィ、ウソップ、ヨサク達の声が聞こえる。どうやら決着が着いたようだ。

 

 見ると、斬られたゾロが気を失って海に落ちようとしていた。

 

 おいおいおい…

 おめェが今、口から離した刀はくいなの形見じゃねェのかよ?

 

 私は剃刀でゾロの所まで飛ぶと、和道一文字とゾロの手を掴み、反転してメリー号のデッキまで戻った。

 一瞬、ミホークと目が合った気がしたけど、なんか驚愕してなかったかしら?

 

 ちなみにルフィはミホークに体当たりをかまして躱されていた。うん。原作通り。

 

 ゾロはデッキに置いたタンカの上に乗せた。すぐさま治療に移るのではなく、この後の小イベントの為にこのままにする。

 

「ナミ、悪いんだけど、人手を確保するからゾロを見といて!!」

「え、うん!わかった!!」

 

 私はウソップとヨサクとジョニーの所まで行って、3人を小さくしてメリー号のデッキへ運んだ。

 運んだ3人は元の大きさに戻すと、すぐさまゾロに駆け寄った。

 

「ゾロ!!」

「アニキ!!返事してくれ!!」

 

「イオリ!!ゾロは無事か!!?」

 ルフィの声が聞こえた。

 

「大丈夫よ!気を失ってるだけ!!少し弱っているけど命に別状はないわ!!」

「ほんとかよ!ほんとに大丈夫なんだろうな?」

 ウソップが私に怒鳴ってるけど?

 

「私はちゃんと医師から医術を学んだの!!大丈夫。心配ないわ!!」

 すると、目を覚ましたゾロが空に刀の切っ先を向けた。

 私はゾロの口元に電伝虫を近づける。

 

「…ル…ルフィ?…聞こえる…か?」

「ああ!!」

「不安にさせたかよ…おれが…世界一の…剣豪くらいならねェと…お前が…困るんだよな…!!ガフッ!!」

 

「アニキ!!もうしゃべらねぇでくれ!!」

「アニキ!!」

 

「おれは、もう!!二度と敗けねェから!!!あいつに勝って大剣豪になる日まで!絶対にもう、おれは敗けねェ!!!文句あるか、海賊王!!」

「しししし!!ない!!」

 

「ゾロ、気は済んだ?」

「これは…おれの声が…ルフィに届くように…か?」

 ゾロが電伝虫を見て言った。

 

「負けは見えてたからね?」

「おめェは……先読みしすぎだろ?」

 

― パン!! ―

 

 私は手を叩いた。

 

「はい、じゃあ、治療の準備するわよ!!」

 

「イオリ!おれはなにすりゃいいんだ!!?」

「倉庫に新しいタオルがあるから、あるだけ運んで!!運んだら半分くらいをそこの鍋で煮て頂戴!!」

「わ、わかった!!」

 ウソップが倉庫に駆けていく。

 

「ヨサクとジョニーはゾロをあのテントに運んで!!私とナミで船を戦闘の余波が来ないところまで動かすから!!治療している最中は、敵が乗り込んできた時の対処をお願いね!!」

 

「「了解です、(あね)さん!!」」

 なんで、姉さんやねん?

 

「ナミ、すこし船を動かわよ!!」

「わかった!!」

 バラティエから少し離れたところへ船を移動して、私は治療にとりかかる。

 

 アルコール度数の高いお酒ではなく、ちゃんと医療用のアルコールを準備した。

 

 まずは麻酔ね。一応、全身麻酔をしておくか。

 ゾロなら麻酔無しでも大丈夫な気もするけど、一応ね?

 

 海に落ちていないので、原作よりは感染症の危険も少ないと思う。

 煮沸消毒したタオルで血を拭き取り、アルコールをしみこませたガーゼで手早く消毒する。

 見ると、やはりとてもきれいな切り口だった。これならうまくやればくっつくかも?

 どちらかというと、刺し傷のほうが怖いんだけど?

 

 これはもしかして…ゾロが逃げずに口から血を吹いた場面のあれか?

 

 しかもこれ…

 オモチャの剣の方が良かったんじゃねェの?

 

 これは本当にダメなヤツだよ。もうちょっとで心臓じゃん?

 ってか、すこし切っ先刺さってません?

 

 あぶなっ!マジあぶなっ!!

 これは私が、武装色を教えたタイミングがまずかった?

 もしかして、もっと後にしとけばよかったかしら…

 

 とりあえず、本気(マジ)でヤバいので、少しだけ献ポポ使わせていただきました。

 

 えっ?何で全部、献ポポ使って直さないのかって?

 それを言ったら仙豆使えばいいんじゃね?って話になるじゃんさ。

 

 持ってる量に限りがある以上、無駄な消費はしないのです。

 ぶっちゃけ、うちの一味の男どもに使う事は、ほぼ無いと思ってますけど?なにか?

 

 縫合が終わり、消毒をして包帯を巻く。鎮痛剤と抗生剤の点滴と、せっせと貯えておいたゾロ自身の血液を輸血する。

 海賊稼業にはケガはつきもの。なので毎日、みんなから、200~400mlずつ血液を採取していたのです。

 収納貝に入れておけば長期保存が出来る。自分の血液があれば一番安心だからね?

 よし、終わった!

 

 見ると、ヨサクとジョニーが、結構活躍してくれていた。

 やはり、最強ではなく最大だな。彼らが永く、賞金稼ぎをやっているからとはいえ、複数人で襲い掛かってやられてしまう海賊も情けない。

 強いのは幹部連中だけないんじゃないの?まあ、強いと言ってもたかが知れているけど。

 

 それよりも…

 何で”鷹の目・ミホーク”がメリーのデッキにいるのかしら?

 

「…」

「…」

 おいこら!…ちょっと待ってよ!何で私を見ているの?

 しかもその手が、背負う『夜』に伸びてない?

 

 って、まさか!!?

 

「っ!!武装硬化!解除っ!」

 私は咄嗟に、小さくして持ち歩いている刀に武装硬化を施して、縮小を解除した後抜きました。

 

― ガキンッ!! ―

 

 普通に斬りかかられましたぁ!!

 

 てめぇ、このやろ!いきなりかよ!!

 

 止めたけどね!

 ちゃんと見えてたからしっかり受け止めたけどね?

 

 それでも、すっごい心臓に悪いじゃん!

 目の前だよ? 剣が折れてたら私真っ二つじゃんよ!!

 

「何でいきなり斬りかかってくんのよ!!」

 私は剣をはじいてミホークから充分に距離を取ってから問い詰めた。けど……それに対するヤツの答えは。

 

「つい」

「つい!?」

 何それ!?そんなん理由になるか!!

 

「…まさかとは思うけど…『赤髪』に似てるからとか言わないよね?」

「よくわかったな。貴様がヤツに似ていたものでな。」

 

 バカ野郎!!そんな理由で斬りかかってくんじゃねェよ!!

 普通死ぬぞ?そこに真っ二つになって転がってんぞ!!

 しかもおめェ今、武装色使ってやがったじゃんか!!

 

「どうだ?一つ手合わせしてみるか?」

「しないわよ!!」

 私が手合わせを承諾するものと思っていたのだろうか?ミホークは少し驚いた顔を見せた。

 

「…なんだ、つまらん。聞くが、ロロノアを鍛えたのはお前か?ヤツの覇気は付け焼刃のように感じたが、貴様のそれは洗礼されていた。」

「…ゾロを育てたのは別の人よ。私はここ数日、彼に覇気を教えただけ…」

 基礎練も教えたけどね。まぁ教わったものをそのままだけど…

 

「ほう…2,3日で武装色を発現したと?」

「たぶん、以前から気づかず使っていたとは思うけどね…」

 

「なるほどな…。その刀、かなりの業物と見た。が…お前は剣士では無いのだろう?」

 生粋の剣士から見たら、私が剣士でない事はバレバレらしい。そしてその見解は正しい。

 そもそも私がいろいろ武術を学んでいるのは、それらと相対する際の方法を身に着けるためだからね。

 

「私は基本、徒手空拳だからね。」

「それでもかまわんぞ?」

 何をニヤニヤしとんじゃコラ!!

 

「いや、だから…手合わせなんかしないってば!!」

 ミホークは酷く落胆したような表情を見せた。

 さっきも断ったじゃん!!そんな残念そう顔してもダメです!!

 

「そうか…。邪魔したな。ロロノアの成長を楽しみにしてるぞ!」

 つまり、私に鍛えろと? まぁそのつもりですけどね。

 

 ミホークは踵を返して船から降りていった。多分、横に棺船でも停泊させてあるんだろう。

 

「…」

 良かったよ。下手な対応してたら船を真っ二つ…なんて事にもなりかねないもんね。

 ってか、とっとと帰って昼寝の続きでもしなさいよ!!

 

 まったく…

 

 棺船が離れていくのを見送って、私はようやく安堵の息を吐いたのだった。

 

 

 

 

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