イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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02-76話:島民の参戦

 せっかく付いてきてくれたのだから、役に立ってもらおうと思ってヨサクとジョニーを呼んできた。 二人にはアーロンパークの入り口で見張りを頼みたかったからだ。

 

 原作通りにココヤシ村の人たちがアーロンバークに来た場合、中には入らないようにしてもらうのだ。 VSクリーク海賊団の際には、何気に活躍してもらったし。

 一般人を押し留めるぐらいは安心して任せられる。

 

 アーロンパークに向かって歩いていると、途中で待ち構えている人が居た。

 

「…」

「あたしも行くわ!!」

 軍服を着た一人の女性が、私に向かってそう言った。

 

「イオリ、誰だか知ってんのか?」

 少し首を傾げて、ルフィが私に聞いてきた。

 

「彼女はベルメール。ナミとノジコの母親よ。」

 答えると、全員が驚いた顔を見せた。

 逃げたのではなく、これの準備をしてたという事か…

 

 私はベルメールに視線を向ける。

 

 こうなる事は分かってた…と、言わんばかりの顔だった。

 それをナミに言わなかったのは、他に解決手段が無かったからだろう。

 

 希望が無ければ、生きていることが辛くなる。

 ナミのやってた事は、ココヤシ村の人々にとって、生きる希望になっていたに違いない。

 たとえそれが無駄な事だとわかっていたとしても…

 

 けれど、それが無駄だとわかった時に、ナミを助けようと決めていた。

 その顔にはそんな決意が見て取れた。

 

「ベルメール…。私たちがこれからどこへ向かうか、わかって言ってるのよね?」

 さん付けは…もういいよね?

 

 ベルメールは私を見て、決意した目で頷いた。

 冷やかす者も、帰れと邪険にする者もそこにはいなかった。サンジでさえ、彼女の決意を感じたようだ。

 

 よくよく見れば、昔よりも遥かに大きくなった気配がそこにあった。

 アーロン一味の幹部…とまでとはいかないものの、下っ端であれば十分相手取れるかのような…

 海軍に復帰できなかったというのに、よくぞここまで鍛えたものね。

 独学で、しかも一人で…

 

 8年か…。

 

 ベルメールであれば、本部の大佐くらいにはなれてたかも知れない。

 今更だけど、ムリにでも復帰させた方が良かったかしら?

 その場合、ミカン畑がどうなっていたのか知らんけど… あ~、ノジコが居るか。

 

「幹部連中の対戦相手は決まっているの。私がその他大勢を相手することになってるから、それを手伝ってもらうわ。」

「イオリ…ありがとう!足手まといにならないように頑張るわ!!」

 

「じゃあ、行くわよ!!」

 

 

 そして、私たちはアーロンパークに辿り着いた。

 

 開戦の狼煙は、ルフィがアーロンパークの壁を吹っ飛ばしたことで上がった。

 

「アーロンってのは、どいつだ?」

 その言葉に反応したのは、長いギザギザ鼻の男……アーロンだ。

 

「アーロンはおれだが……テメェは何だ?」

 まだこちらがしたことと言えば、そこの壁を壊したことぐらいだ。

 だからアーロンの様子も訝しさが先に立っていて、まだあまり苛立ちは見えない。

 ベルメールを見て少し驚いたようだけど…

 

「おれはルフィ。海賊だ」

 すたすたとアーロンに向かって歩くルフィに、魚人が2人立ち塞がった。

 

「おい待て」

 

「まずはおれたちに話を通してからグフゥッ!!」

 

「道を塞ぐな!邪魔するな!!」

 邪魔だったから、2人纏めて蹴り飛ばした。あいつら下っ端クルーだろうから、私の担当だもんね。

 ちなみにベルメールは私のすぐ後ろについて来ている。数名なら後ろから来たヤツをまかせようと思う。

 

 同胞が人間に一撃で昏倒させられた事にアーロンは驚いているけど、別に大したことじゃない。

 

「……海賊がおれに何の用だ」

 同胞に危害を加えた私を鋭い目で睨みながらも、目前まで迫ったルフィに問いかけるアーロン。

 そして、次の瞬間…

 

「!?」

 何の前触れも無く、ルフィはアーロンを殴り飛ばした。アーロンの方も全く身構えてなかったからか、あっさりと吹っ飛ばされて私たちが入って来たのとは反対の壁に激突する。

 けど、ダメージは殆ど無いみたい。気配でわかる。

 魚人って、タフさも10倍なのかしら? だとしたら、も少し(ちから)入れても平気かな?

 

「ア、アーロンさん!?」

 アーロンが吹き飛んだことで、下っ端たちが騒いでいる。

 

「……テメェは一体……?」

 身を起こしたアーロンが、ルフィに視線を向けて聞いた。一方のルフィはというと、

 激怒、というのに相応しい表情を浮かべている。

 基本的におおらかなルフィがここまで怒っているのを見たことは…あまり無い。

 

「うちの航海士を泣かすなよ!!」

 もしも相応の訓練をしていたら、今のルフィはきっと、覇王色の覇気だって放っていたかもしれない。

 それぐらいの怒気を感じた。

 

「貴様、アーロンさんに何を……!」

 

「「嵐脚!」」

「!!?」

《グハッ!!》

 頭に血を上らせたらしい下っ端たちに、私とベルメールが『嵐脚』を放つ。

 

「驚いたわ。いつの間に嵐脚(これ)を覚えたの?」

「前にあなたの技を見たからね。頑張って練習したのよ。独学だけど…」

 私のと違って相手は切られていないけど、ベルメールの嵐脚もそれなりの威力を見せていた。

 見取り稽古で六式使えるようになるとか、すごいんだけど?

 この子、復帰してたら将官クラスになってたんじゃ?

 

「さっさと進みすぎだって!!」

 追いついて来て、そう言ったのはサンジだった。続いて、ゾロ、ウソップ……ウソップは何だか、足が震えている。

 

「ウソップ、大丈夫?」

「!? お、おぅよ! 武者震いってヤツだ! 策は立ててきた! 勝算はある!」

 多分、武者震いってのは強がりだろうけど、策があるっていうのは本当だろうから、大丈夫でしょう。

 

「航海士? ……ナミのことか?」

 アーロンって(ルフィに比べて)察しがいいわね。

 

「そうだ!」

 ルフィが宣言すると、アーロンは笑い出した。

 

「シャハハハハ!! お前ら、本気であの女を引き入れようってのか? あいつは金のためならどんなことでもする女だ……テメェらも裏切られるのがオチだぜ!!」

 隣でベルメールがすごく怒っているのが分かる。

 ダメよ?ベルメール。あんたはあいつに勝てないし、私もムカついてるけど、ルフィに任せてるんだから。

 

「テメェらは、所詮は下等種族だ!何が出来る!」

 水中で呼吸が出来るから、自分たちの方が進化した種族だ! と言うアーロン。

 でもね?進化の過程が違うんだろうから、どっちが上かなんてわからないと思うんだけど?

 能力者でない海軍本部の猛者たちが、人間と呼べるモノかは知らんけど、魚人が最強というのは違うと思うよ?

 そもそもお前、中将時代の黄猿に捕まってるし、たぶん能力無しでも勝てなかったでしょ?

 

「お前らなんか、アーロンさんが相手にするまでも無ェ! エサにしてやる! 出て来い、巨大なる戦闘員よ!!」

 ハチの口ラッパによって、何かが呼ばれる。

 何かって、モームだろうけどね。

 

「出て来い、モーム!!」

 大きな水しぶきを上げて水面から身を出したのは、巨大な牛っぽい生物。間違いない、モームだ。

 

「やれ、モーム!!」

「ブモォォォォォォ!!」

 何か殺気立ってますけど?

 

 ― ドンッ!! ―

 向かってきたモームの鼻先を押さえて止めた。私が!

 

「な! 人間の女がモームの巨体を、腕1本で・・・!!」

 ハチが驚いてるけど、別になんてことないっしょ?

 ありゃ? ベルメールまでビックリしてる?

 

「登場してすぐのところで悪いけど…、あんたは大きすぎて邪魔なのよ。消えて…頂…戴!!」

「ブモォ!!」

 左腕で止めていたモームの喉元を、左足で”頂”のところで蹴り上げて、続けざま右足で”戴”のところで蹴っ飛ばす。

 さらに…

 

「嵐脚・乱」

「ブモォ~~~!!」

 飛ばされていくモームに追い討ちをかけた。これでもう、モームは戻って来ないだろう。

 

「いい気になるな、下等種族がァ!」

 モームが吹っ飛ばされたからだろうか? 下っ端たちが殺気立っているようだ。

 しかし…東の海では、相手の強さが図れないやつばっかりね。モームのやられ方を見て、それでも自分たちが敵う相手と思うのだから驚きだ。それとも単にバカなのかな?

 まぁ、どのみち見逃すつもりはないけどね。それに、いい感じでムカついている事だし、捌け口になってもらいましょうか。

 

 向かってきた奴らは、私とベルメールで倒していった。

 仲間が倒されるのを見て躊躇しだして、ほとんどのやつ等が遠巻きに動きを止めた。

 

「じゃあ、後は私が殲滅するわね!」

 肩で息をするベルメールに断りを入れて、私は掃討するべく残った奴らへの攻撃を開始する。

 

「剃!!」

 

「グッ!」

「ガァッ!」

 次の瞬間、やつらは次々にと倒れていく。

 大したことはしていない。剃でヤツらの隙間を縫うように移動して、指銃で急所を撃ちぬいているだけの事。

 それまでとスピードがまるで違うから、ヤツらは自分の身に何が起こっているのか正しく認識出来ていないようだ。

 

「ルフィ…一体、何がどうなってんだ?」

 ヤツらだけじゃなかったか。ウソップも目を丸くしてる。

 どうやらあいつの目には、私の姿が消えたかと思ったら、次々と魚人たちが体のどこかしらから血を噴いて、倒れていってるようにしか見えないらしい。

 

「あいつ、剃で走り回りながら、指銃(しがん)でやつらの身体を打ち抜いてるんだ」

 一方で、ルフィは正確に把握できているみたい。

 ベルメールもはっきり…とまではいかないけれど、私の動きを追えてる感じだ。もしかして、剃も使える?

 ゾロとサンジもベルメールと同じ感じ程度かな?何が起こっているかは解ってはいるようだけど、正確には捉えられていないみたい。

 サンジなんて、すごく驚いている気がする。まだ一度も鍛えてあげていないから仕方ないか…。

 

 私を正確に捉えているのはルフィ以外にもいたらしい。それはアーロンだ。酷く驚いた顔をしているのが見える。

 

 そして、皆が驚いてる間に私の戦い…という名の蹂躙は終わりを告げる。

 

「これで最後!」

「グアァッ!!」

 最後に残っていた魚人を打ち抜き、ベルメールのそばまで戻って私は止まった。

 

「あ~あ…」

 返り血は避けてたつもりだったけど、指銃を撃った手は無理だった。両腕は肘まで奴らの血でベットリだ。

 ノースリーブにしといて正解だったわ。

 

 とりあえず、これは洗わせてもらおうかな?

 

 ベルメールにウエストポーチから小さいバケツを取り出してもらい、能力を解除して大きくしてからプール?の水(海水)を汲み上げ手を洗う。

 

「はい、完了!!」

 私(たち)の担当分は無事完了しました。

 

 さて、後は観戦でもしましょうかね。

 

 願わくば、アーロンが全力でぶっ飛ばされますように。

 

 

 

 

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