イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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02-80話:完成!海賊船

 連日連夜、島をあげての宴が続いた。

 勿論、私も遠慮なく飲み食いさせてもらいました。おいしい料理は取り分けて、収納貝にも貯えたりもしている。(のち)に酒のつまみで食すのだ。

 

 そんな宴続きの日々の最後の夜のことだ。

 ルフィは当然の如く食いっぱなしの状態で、ウソップはやぐらの上で与太話を始め、サンジはナンパをしまくり、ゾロはひたすら飲んでいた。

 ナミはアーロン一味の刺青を消してもらうためにバカ騒ぎには参加していない。同時に、新しい刺青も入れるらしい。

 

 そんな中、私は一度、船に戻ってきていた。

 理由は2つ。一つは今回の1件で、どうやら私まで手配されるらしいから、変装というかかつらの準備をしてたわけ。

 私の外見的特徴と言えば、真っ先に挙げられるのはこの髪の色だと思う。それ以外の特徴といえば、特にない(はず)。強いて言うなら、『赤髪』に似てるという事だろうけど、そんな情報が出回ったとしたら、写真が無くてもアウトだものね。

 だからたぶん、『赤い髪の女』というのが出回る情報だと思われる。

 な・の・で…。

 黒髪のかつらはボブとロングを持っていたので、ボブの髪を切ってルフィと同じような髪型にしてみました。

 これをかぶって、胸を小さくすれば、確実にバレずに済むと思う。

 

 なぜに変装するかと言えば、これまで貯えた宝を換金しようと思っているからだ。

 これが2つ目の理由。

 奪った宝はそれぞれそのまま小さくして持っていたんだけど、換金をスムーズに済ませたいので、おおざっぱでも、種類毎に分けて目録を作ろうと思ったわけ。

 ここで役立つのは、ご存じエイタ。

 傍目には、分類しているのは私でも、全自動(オートパイロット)を使っているので、私が寝てても手は動く。

 きちんと分類できる事が確認出来たので、もう一度、宴へ繰り出す事にした。

 分類、目録作成は、今晩行う予定である。

 

 戻ってみると、私たちに用意された席には誰もいない。

 ルフィはいずこ?

 

 あいつ、生ハムメロン食べたのかな?そこにあるけど…

 食べたのならば、私が食べればいいかと思い、とりあえず取り分けておく。

 そして戻ってきたルフィは……両手にたっぷりと骨付き肉を携えていた。

 

「そんなに肉を持ってるなら、これはいらない?」

「生ハムメロン!!」

 

 差し出した皿に、そのまま食いつかれました。

 

「皿から直接口で食べんじゃねェよ!!お前は犬か?」

 私がちょっと怒りながらそう言っても、ルフィはどこ吹く風だった。

 

「そりゃあ、両手が塞がってるからな!」

 

 ダメだこりゃ…食べ物に関しての事はルフィに何言っても無駄ね。

 まぁ別に、私に実害があるわけじゃないからいいんだけどさ。

 

「そういえば、あんたはさっき、どこに行ってたの?」

 私が船から戻って来たときいなかったわよね?まぁ、その肉をもらいに行っていたのはわかるけど…

 

「生ハムメロン探してたら、食いもんが何も無ェ所に出ちまったんだ。なんか、見晴らしのいい丘あってよ。風車のおっさんとナミの母ちゃんがいた。」

 

 なるほどね。墓はなくとも、あのシーンはあったわけだ。

 

「ナミの笑顔を奪うな、だってよ! そんなことしねェのにな!」

「まぁ、そうね。」

 もちろん、そんな事をするつもりは無いけどね。

 

「6曲目! ウソップ応援歌!」

 私たちが割りと静かに会話してる一方で、櫓のウソップは絶好調だ。

 

「ウソップが楽器覚えたら、音楽家代理になれるんじゃない?」

 普通なら、そんな努力をウソップがするわけないけれど、あのワードを使えば何とかなりそうな気もするのよね?

 

「別に、イオリでいいだろ?」

 いや、別に…音楽家代理で仕事した事ないからどうでもいいんだけど…

 仕方が無い、ブルックとの出会いまで我慢するか。あと二月(ふたつき)もないんだし。

 

「なァ、イオリ」

 

 ハァ~、と長い溜息を吐いてたら、ルフィが肉を食いながら声を掛けてきた。

 

「ん?」

 

「お前さ、実はあの時、何気に怒ってたよな?」

「あの時…って?」

 いや、ルフィに『あの時』とか聞かれるとね…。ぶっちゃけ、普段の会話でもイラっとする事あるからさ。

 

「アーロンの手下をやってた時だ」

 あァ……『あの時』ね。

 うん、アーロンの言い草があんまりにもアレだったもんだから。

 私より、ベルメールの方が怒ってたけどね?

 

「驚いたぞ! 覇気を使うとあんなふうにできんだな?」

「確かにあの時、覇気を使って先読みはしてたけどね。あぁ、そういえば、そんなの今まで見せたことなかったっけ?」

 

 私の疑問にコクリと頷くルフィ。肉を齧りながらだけど…。

 おまえはラッキー・ルウか?

 

「丸っきり先読みしてるみてぇだった。だからあいつらも、手も足も出ねェ状態で終わったんだろーな」

 

 まぁ、それはあるかも。

 

 ルフィには、その事を是非とも覚えておいてほしいわね。きっと空島の時に役に立つと思うから。

 そこまでに覇気が発現したなら儲けもんだけど…

 

 

 そんな宴の夜も明けた、次の朝。

 

「あっしらは、本業の賞金稼ぎに戻りやす。兄貴たちには色々お世話になりました」

「ここでお別れっすけど、またどこかで会える日を楽しみにしてやす」

 

 私たちがメリー号に乗り込む中、ヨサクとジョニーが陸に残って決めポーズを取っている。

 でも、多分私たちってもうすぐ手配されるし、賞金稼ぎのコイツらとはもう会わない方がいいと思うんだよね。

 まぁ、こいつらの場合、あまり高額の賞金首は狙わなそうだから、会いに来る事はあっても、狩りに来る事はないでしょう。

 狩る気で来たとしても、別に問題ないだろうし…

 

 そんな2人と別れの挨拶を済ませていると…

 

「船を出して!」

 1人遅れていた、ナミが道の向こうから叫び、駆け出した。

 

「何のつもりだ?」

 

「出してくれって言うんだから、出せばいいんじゃない?」

 と、言いつつ私は現在進行形で帆を張っている。

 ナミは見送りに来てくれていたココヤシ村の人たちの波を縫うように駆け回り、最終的にはメリー号へと飛び乗った。

 勿論、村人たちの財布をスるのは忘れてない。

 

「みんな、元気でね!」

 

《やりやがった、あのガキャーーー!!!》

 

 村人たちがナミにかける言葉は、怒りながらも温かい。いつでも帰って来い、とか……。

 しめっぽくなく、かといってあっさりしてもいない、賑やかな船出だった。

 

「じゃあね、行ってくる!!」

 ナミの笑顔も、晴れやかだった。

 

 

 さて。もう1つ、忘れちゃいけないことがある。

 

「ルフィ、ペンキ買っといたわよ。海賊旗描くんでしょ?」

 

 そう、まだこのメリー号には、あの麦わら帽子を被ったドクロが揚がってない。

 ペンキは買っていないと言ったので、タイミング的に今になりました。

 

 ルフィと私が手配もされるみたいだし、もう船に海賊旗があってもなくても関係ない。

 

「お、サンキューな!!」

 ほんとは、ずっと収納貝の中にあったんだけどね?

 

 そんな事はおくびにも出さずに、ルフィの言葉に軽く笑って応えておいた。

 

「マークはもう考えてあるんだ! 貸してみろ!」

 ルフィは引っ手繰るようにペンキを受け取ると、黒い布にサラサラと描きだした。

 

 どんなマークが出来上がるのか、と全員が興味津々で見ていると……

 

「どうだ!」

「「…」」

 

 ……出来上がったのは、何ともコメントしがたい。

 なんと言ったらいいのか解らないような代物だった。

 

 線は歪み、全体的にぐんにゃりしていて…… つまり早い話が…

 

「ルフィ……あんた、自分に画力が無いって、自覚してる?」

「失敬だな、お前!」

 ルフィは憤慨してるけど、周囲の面々は私の味方だった。

 

「こんな旗を掲げた海賊船には、乗りたくねェな」

「ここまで下手に描けるのも、ある意味才能よね」

「海賊旗ってのは、『死の象徴』だろ……? これで誰が恐怖を感じるってんだよ」

「いや、ある意味恐怖だろ、これは」

 サンジ、ナミ、ウソップ、ゾロの順にさんざんなコメントが続いた。

 四面楚歌の状態に、流石のルフィもヘコんだようだ。

 でもまぁ、本当なんだから仕方がない。

 

 そして下手すぎるルフィに代わり、ウソップが旗を描くことになった。

 途中調子に乗って、マークを変えようとしかけたから、その時はきっちり注意させていただきました。

 布とペンキのムダ使いは許さない。

 ウソップは無駄に絵が上手かった。その上手くなった理由が壁に落書きをし続けてきたかららしい。

 悪ガキだったのね?

 まぁ、ウチら(悪ガキ3人)に比べりゃかわいいもんだと思うけど…

 誰かな?おめェもそんなに変わんねェだろ!とか言ってんの?

 しかも、私の方が(たち)が悪いだと? えっ?マジで!?

 

 旗2枚にそのマークを描く。そしてその旗をマストの上に掲げ、さらに帆にも大きく描いた。

 

 そう、これでこの船は原作を知る者にはお馴染みの姿になった。

 

「これで『海賊船』ゴーイング・メリー号の完成だ!!」

 

 船長ルフィの宣言に、デッキの上は俄かに活気付いた。

 私もニッコリ微笑んだ。

 やっぱり、こういうのは気分が高揚するね。

 

 次なる場所はローグタウン。さて、換金いくらになるかしら?

 

 ……こんな事言ってるから経理担当って思われちゃうのかな?

 まぁ、別にいいんだけどね。

 

 

 

 




閑話 媒酌人、イオリ

「ゲンさんは、ベルメールの事どう思う?」
 3日間の村を挙げての宴の最中。
 ベルメールとゲンさんが揃っていたところへ私は赴き、そう言った。

「どう…とは?」
「女として。もっと言えば伴侶として」
「「!!?」」
 二人が驚いた顔をする。しかもゲンさんの顔が赤い。

「ちょっと、イオリ!何言ってるの?」
 ベルメールが抗議の声を上げるけど、私はそれを無視して質問を投げた。

「ベルメールなら海軍大佐になって帰ってくるのに1年かからないと思うの。そしたら39でしょう?ベルメールは…自分の子供、ほしくない?」
「そ…そりゃあ…」

「じゃあ決まり!」

「わしはまだ何も…」
「イヤ?それなら他を探すけど?…」
 トーンを落として抗議するゲンさんに、悪いとは思うけれども間髪入れずに言葉を返す。

「他を?こら待て誰がイヤだと…!!」
「はい、じゃあ決まりって事でいいわね!!ベルメール。結婚式には招待してね?必ず来るから!!」

「…すごく強引な媒酌人ね。」
「…」
「ベルメールが幸せになれるんだったらどう思われたってかまわないわよ!これまで苦労した分、幸せになりなさい。」

「ほんと、あなたは何歳よ?」
「フフフ…100は超えてるかな?」
「また、冗談ばっかり!」

 実は、冗談じゃないのよね…



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