イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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02-82話:ローグタウン

 グランドラインの入り口に程近い島にある『始まりと終わりの町』、ローグタウン。

 そこは、かつて海賊王、ゴール・D・ロジャーが生まれ、そして処刑された町…。

 

「行く?」

 ナミのその問いかけに、ルフィは即座に頷いた。

 まぁ、ルフィが嫌だと言っても行くけどね。お宝を換金して、使えるようにしときたいから。

 ローグタウンへの上陸が決定したので、私はココヤシ村に居る時に準備した、かつらを身に着け胸を小さくした。

 あっという間に、私は黒髪美少年(自分で言うか?)になっていた。

 

 だが、しかし…

 

「お前誰だ!?」

 甲板に出て真っ先に私を指差して叫んだのは、ルフィだった。

 いや、まぁ確かに、雰囲気的にはわかんないかも知れんけど…。おまえ、私の顔見てわかんない?

 

「私よ、イオリ!」

「イオリ!?」

 驚愕するルフィ。

 

 そうだよ、私はおまえの義姉だよ!!

 

「どうしたんだ、その髪! 勿体無ェ!!」

 おまえ、どんだけ赤髪好きなんだ?

 それに、これはかつらだからね?別に切っちゃいないし染めても無いよ?

 

「イオリちゃん!?どうして胸が!!?」

 サンジはサンジで、別のところでショック受けてるし…

 

 一応私の能力については、みんなに説明しておいた。言ってなかったら、サンジとウソップはきっと、あれは盛ってたのか?とか言ってるんじゃないかな?

 まぁ別に、あえて小さくしたんだし、言われたところで傷つきゃしないけどね。

 

「上陸したら、これまでに奪ってきた宝とかを換金しようと思ってたんだけど、賞金首になっちゃったじゃない?換金する際に面倒ごとになったりしたら嫌だから、変装したのよ。幸い顔そのものは知られてないから、髪と女って事をごまかせば、バレずに済むでしょ?」

 

 そう考えると、あの二つ名も利用できる。

 なまじ髪の色が強調されているだけに、それが見当たらなければ怪しまれることも少ないだろう。

 

「あんたは上陸して何するの?」

「おれは処刑台を見に行くぞ! 海賊王が最期に見た景色、おれも見てみてェ!」

 ルフィは随分とワクワクしているらしい。

 

「なるほどね。みんなも上陸するだろうから聞いといて。気を付けてほしいことがあるの。現在、ローグタウンを取り仕切ってるのは、海軍本部大佐『白猟』のスモーカーってヤツらしい。東の海ではめずらしく自然系(ロギア)の悪魔の実の能力者。モクモクの実の煙人間よ。覇気が使えないと攻撃は一切通用しないから、見つからないように気を付けてね。もし遭遇しても、戦わずに逃げることを優先するように。取り合えず捕まらないことだけ考えてちょうだい。」

 

 言っても無駄か…。ナミとウソップ以外は私の話なんか聞いちゃいねぇ…

 船長が船長だから仕方がないとはいえ、大丈夫かな、この一味…

 ロジャーが最期に見た景色を見たいってことは、当然ルフィは処刑台に登るつもりでいるんだろう。

 そんなことして見付からないわけがない。

 

「おう! 解った!」

 おまえ。返事だけは立派だよね?

 なんだか私、姉というより保護者な気分だよ。

 

 そんなやり取りをしていると、ウソップが首を捻りながらガン見してきているのに気が付いた。

 

「どうしたのよウソップ…私の顔になんかついてる?」

 

「あー、いや……何ていうか」

 ウソップの言葉は、どこか歯切れが悪い。

 

「おれ、お前らは中も外も全然似てねェ姉弟だと思ってたんだけどよ……こうして髪の色が揃ってるところを見ると案外、外見は似てねェこともねェんだなって思ってよ」

 

「そういえばそうね。何となく、そこはかとなく」

 

 ウソップの意見に、ナミが同意している。いや、その傍でゾロとサンジも頷いてる。

 それにしても。

 

「そうかしら?」

 初めて言われたわね。ルフィと似てるって。ってことは、シャンクスとルフィも似てるって事かな?

 雰囲気っていうか行動もだけど…中身はけっこう似てると思ってたけど。

 

「それより、みんなはローグタウンでどうするつもり? もしよかったら、サンジには私と一緒に来て欲しいんだけど」

 

「おれ?」

 私は頷いた。ってか、どうしてそこで目がハートになるかな?

 

「換金するって言ったでしょ? そしたらその後その金で、食料を補給しようと思ってるの。しかも、大量に。でないと次の目的地までにルフィに食べ尽くされる可能性があるからね。」

 

 財布の管理を私がしている以上、換金は私の役目だろう。そして私の能力は、大量の買い物をする場合とても便利である。しかも収納貝もあるし。

 

「いいね、いっしょに買い物! 楽しくなりそうだな。」

 サンジも納得してくれたけど、何か…調子狂うわね。まぁいいや。どのみち買い物はしなきゃならないんだし。

 

「おれは武器屋だな。刀が2本要る……金は……」

 言って、私を見るゾロ。

 ミホークに折られたままだもんね。アーロンパークではヨサクとジョニーに借りてたけど。

 

「金より、これを持ってってよ」

 私はポケットからケースを取り出し、元の大きさに戻してゾロに渡した。

 

「クロが使ってた『猫の手』よ。これを武器屋で売って、その金で刀を買ってくればいいわ。ただ、出来るだけ安く買ってきてほしいかな? 何なら、1番安い刀のコーナーも見てから選んで欲しい。そういう所にも案外、掘り出し物があったりするから。稼いだ分から活動資金を抜いた金額を、全員で山分けっていうのが海賊船だし。一人の取り分を増やしたいからお願いね。」

 

 こんな事を言うのは『三代鬼徹』を見つけてもらうためだ。アレは確か、1本5万ベリーの群れの中に突っ込んであったはず。

 原作と異なり、もしもいいのが無かったら、私の2本貸そうかな?

 

 ゾロも頷き、『猫の手』が入ったケースを受け取った。

 よし、これでわざわざ換金のために武器屋に行く手間が省けた。

 

 後、ナミは服を、ウソップは装備品を買いたいらしい。2人にも軍資金を要求されたので、こちらには現在の手持ちの現金から出して渡した。

 各々の行動も決まったし、もうすぐ上陸だ!

 

 

 ローグタウンの換金所は、結構大きな所だった。商売繁盛しているみたい? とはいえ、客は専ら賞金稼ぎみたいだけど。流石はスモーカーのお膝元。海賊は滅多に来ないらしい。

 

「ほぉ、これはこれは」

 大量に持ち込んだからか、査定のために個室へ通してくれた。

 換金所のおっちゃんは、小さな虫眼鏡まで持ち出して次々に見ていく。

 

「よくぞこれだけ集めたものですな?」

「色んな海賊から奪いましたからね」

 感心したような口調に、私は丁寧な口調で答えた。その回答に、店のおっちゃんが顔を上げる。

 

「あなたは賞金稼ぎなので?」

 実際には賞金首である。

 

「まぁ、似たようなことやってますね」

 今回の収穫にはモーガンから奪ったブツもあるから、厳密には違うけど。

 いつも言ってる事だけど、ピースメインの海賊って、賞金稼ぎとやってることはほとんど同じだからね。

 

「これなら……これぐらいで如何でしょう?」

 おっちゃんがソロバンを見せてくるけど…

 

「それだとちょっと低すぎません?」

 パチパチ、とソロバンの玉を弾く。

 

「これぐらいにはなるでしょう?」

 その金額を見て、おっちゃんは目を丸くしている。

 

「いや、これはお高い……これぐらいならどうです?」

 パチパチ、と私が提示した金額よりは低いけれど、先ほど自分が示したものよりも少し高い額を見せてくる。

 

「そうはいっても、これで生活してますからね。ぼったくりってほどの値でも無かったでしょう?……じゃあこちらも妥協するとして……これならどうでしょう?」

 パチパチ、とおっちゃんが2度目に出した金額よりも少し高い額を出す。

 おっちゃんは暫く唸っていたけど、値切りはここで打ち止めになった。

 

「ありがとうございました~」

 金を手にして、私はサンジが待つ換金所の外へと出たのだった。

 

 サンジを見つけると……目を♥にして固まっていた。

 

「…………ナミに言うわよ?」

「はっ!! おれは何を!?」

 なんて素早い反応だこと…

 

「おれとしたことが……ナミさんという者がありながら、絶世の美女に心奪われかけるだなんて……!!」

 その呟きで、何となく事情は解った。

 つまり、スベスベの実を食べて容貌が激変したアルビダを見かけたという事か…

 

 アルビダか……私の変装を見抜けなかったんだから、ルフィはきっと、まったく気づかないんだろう、

 でも、あのアルビダの大変身だけは解らなくても仕方がないか。

 

「それで、全部いで幾らくらいになったんだ?」

 

 宝が売れた金額? それは……。

 

「びっくりするわよ?1億1000万ベリー!!」

 

 何と、ルフィと私の賞金額を足した額より高額だった。最初に提示された額は8000万ベリーだったりするから、3000万ベリー引き上げた事になる。もっとも最初の額は向こうのジャブって感じだったけど。1億は超えてるだろうと思ってたから、引き上げもすんなりできた。

 ちなみに、1番金額が大きかったのはアルビダの指輪だったりする。バギーのじゃないところがなんとも…。

 ダメじゃんね?お宝大好き男の名が泣くぞ?

 そういえば、クリークから奪った宝は小さくしたまま船におきっぱだった…まぁ、こんだけあればいいっしょ?

 

「へェ! そりゃあ、いい食材が買えそうだ」

「質だけじゃなくて、量も大事よ。ルフィがいるからね。」

 

 スーパーへの道すがら、歩きながら話した。

 ちなみにサンジは、絶世の美女(=アルビダ)だけではなく、変な着ぐるみマンを乗せたライオンも見掛けたそうな。

 間違いなく、リッチー&モージね。でも、モージのあれは、髪の毛なんだけど?

 

 余談だけれど、換金が終わったので、私はかつらを取って胸を戻した。途端にサンジの目が♥になっていた。

 

 

 スーパーに着くと、まず目を引いたのは大きな魚。ご存じ?エレファント・ホンマグロだ!!

 実は私、ずっとこれを食べてみたいと思ってたのよね!!

 

「イオリちゃんの能力があれば、これを運ぶのも楽だろうな……丸ごとくれ」

 前半は私に、後半は漁師のおっちゃんに向けてサンジが言った。

 そんな私たちの傍を、ウソップがスタスタと歩いていった。

 

「あれ、ウソップが居る。装備品買うって言ってたのに?」

 そんな呟きを溢していると、ウソップは真っ直ぐ卵コーナーへ。

 

「うぉ、卵が安い! でもお1人様1パック!」

 

「……主婦か、あいつは」

 サンジのツッコミに、私は無言で頷いた。

 でも待てよ。ひょっとしてアレで卵星でも作る気か?それなら装備品とも言えるけど…。

 それはともかく。

 

「卵がお1人様1パックだって。私たちも買いましょう!」

 確かにアレは安い! お買い得だ! 

 サンジにも異存は無かったらしく、あっさりと頷いた。

 

「そうだな。……それに、アイツは荷物持ちによさそうだ」

 同感ではあるけれど、実は荷物持ちなど要らんのです。

 原作の、冷蔵庫以上の量を収納貝1つに収める事が出来るうえ、食材は私の能力で小さくする事が可能なので、大量に買ったところで、持ち歩くのは収納貝1つで済む。

 収納貝の大きさは5cm程度。手のひらの上に乗るサイズである。当然、荷物持ちなど不要なのだ。

 

 仕方ない。ウソップを鍛えるためだと納得して、小さくするのはある程度の大きさで抑える事にするか。

 今回の買い物では、収納貝は使わんとこ。

 

 その後、サンジがメインになって食材を選び、私が小さくし、ウソップが持つという形が完成した。

 

 買い物はのんびりしたものだったけど…

 

 さて、これからが問題だ。

 バギー、スモーカー、そして……ルフィの父、ドラゴン。

 ドラゴンは敵じゃないけど、10年ぶりだ。

 ……向こうははたして、私のことを、覚えてくれているだろうか?

 

 

 

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