イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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エクスプローラさん、誤字報告ありがとうございます。


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02-83話:結構好き

 買い物は、結構な量にのぼった。

 縮小率を下げ、収納貝を使っていないので当然と言えば当然だけど……。

 ぶっちゃけ、食料の保存量はとてつもなく多い。4人家族であれば、1年くらい食うに困らないだけの量を既に確保している。もっとも、ルフィが本気を出せば1ヶ月で食い尽くせると思うけど…。

 今回の買い物分だけでも一味のメンバーで1ヶ月は持つと思う。

 だから、食料が底を尽くなんていう悲惨な事態にはならないはずだ。

 何度も言うけど、ルフィが本気出さなければ…ではあるけどね。

 

「何でおれが持つ分がこんなに多いんだよ」

 隣を歩くウソップが不満声を上げた。

 

「お前らの方が力はあるだろ?」

 ウソップとサンジが持つ荷物の比率は8:2ぐらいである。

 サンジが一緒に買い物に行って、女性には荷物を持たせないってさ。

 

「当然でしょ?これはウソップを鍛える為なんだもの」

「何だそりゃ?なんでそんな事になってんだよ!!」

 だってほら、お前が一番力ないじゃん?ヘタすりゃナミにも負けるわよ?

 

 そうして歩いていると道中、ゾロとナミに出くわした。3方向からそれぞれ歩いてきたのに同時に顔を合わせるって、すごいわね。

 でも、ここにはヤツが居ない。

 

「で、ルフィは?」

 なので私が聞いてみた。

 

「処刑台を見るって言ってたわよね?」

「処刑台のある広場って、ここだろ?」

 そう、全員が揃った場所は広場だった。処刑台もしっかりと見える。って…

 

 あそこでロジャーは死んだのかぁ~

 ってことはこの広場、22年前には色んな大物が集結してたのよね~。

 若かりし頃の現七武海の一部とか、四皇、ドラゴンとかも…

 なんだかロマンを感じるわ。

 歴史の重みを感じたり、その時に思いを馳せて感傷に浸ってみたり…

 普通ならそういう事だって出来るのに…

 どっかのバカのせいで、台無しだ。

 

「処刑台の上でどっかのバカが、拘束されているように見えるんだけど?」

 私の指し示した指の先に目をやり、全員が仰天した。

 

「「「「な!! 何であいつが処刑台に!?」」」」

 そう、原作通り、ルフィがバギー一味によって捕まっていたのだ。

 

「これよりハデ死刑を公開執行する!!」

 ルフィと同じく処刑台の上にいるバギーが、高らかに宣言した。同時に、広場を占拠するバギー一味が沸き立つ。

 ルフィとバギーが何かを話してるみたいだけど、ここからではその詳細は聞こえない。

 

「あいつ……バギー!」

 バギーとの面識があるナミが声を溢し、ゾロが苦々しげな顔をした。

 

「おい、何だよあいつは!?」

 状況が全く掴めないらしいサンジが慌てたように聞いてきた。

 

「懸賞金1500万ベリー、『赤鼻』のバギー。オレンジの町ってとこでルフィがぶっ飛ばした海賊よ」

 ごく簡潔に纏めて説明した……ら。

 

「いや、『道化』のバギーだろ!?」

 ウソップにツッコまれた。あぁ、そうだったっけ…

 別にどうでもいいじゃんね?

 

「海賊、モンキー・D・ルフィは『つけ上がっちまっておれを怒らせた罪』により死刑だ! 光栄だろう、海賊王と同じ死に場所だ! ここでテメェに、現実の無情さをハデに教えてやる!」

 

「おい、そんなことより、さっさと救助に行くぞ!」

 ウソップや私のコントを見かねたらしく、ゾロが刀に手を掛けながら飛び出す体勢になった。

 たしかに、あの拘束は、自力じゃ解けなさそうな感じね。助けに行く必要はありそうだ。

 

 それよりも…

 

「ナミとウソップは1度船に戻ってちょうだい!」

「ま、待てよ! ルフィはどうすんだよ!」

 ウソップは大慌てだ。

 

「ルフィは、ゾロとサンジ…私に任せて!!救出しても、逃げられなかったら意味が無いわ。これだけの騒ぎになってるんだから、海軍もきっと動き出してる。船を押さえられたらどうしようもないでしょう?」

 

 その発言に、ナミがハッとした。

 

「そうだわ! もうすぐこの島に嵐が来るのよ!」

「何だって!?」

 上空を見上げて見ても、私には感じる事は出来ない。

 鍛えようがあるなら鍛えてみたい気もするけどね?

 

「気温と気圧が下がり続けてるし、東の空に大きな積雲も見つけたわ!嵐の前兆よ、船が流されちゃったら話にならないわ!」

 

「それだけじゃなさそうよ? 広場のバギー一味の中に、リッチーとモージーの姿が見えない」

 言うとナミ以外、ゾロも含めて首を捻った。リッチーとモージーの意味が解らないんだろう。

 

「バギー一味の副船長、『猛獣使い』のモージとその飼いライオンよ!!サンジが見かけたって言ってたライオンに乗った着ぐるみ男がそいつらよ!!とにかく、副船長がこんな局面にいないのは、何か他に目的があるって事!そして、最も可能性が高いのは、私たちの足である船を壊してしまうこと!!」

「「!!?」」

 

 私はウソップの肩を叩いた。

 

「船はナミに任せて、ウソップはソイツらをやっつけて!大丈夫!!私だって回し蹴り1発で倒せたくらいだし。何とかなるわよ」

 

 グ、と親指を突き出してみたけど、ウソップの足は震えている。

 

「お前の回し蹴りを常人と一緒に考えるな!」

 おやおや?

 

「もしかして…ウソップちょっと、ビビってる?」

「!? ビ、ビビってるわけがあるかァ! おれは勇敢なる海の戦士だぞ!!」

 うん、本当にソレ、損な性質ね!

 

「まぁ、魚人よりは手強くないわよ。…多分ね。じゃ、よろしく!!」

 

 急いでほしいので、ウソップとナミから荷物を取り上げ、ナミと一緒に船へと向かってもらう。サンジが持っていた荷物も小さくして収納貝へ入れ、私たちはルフィのもとへと向かう事に。

 

「おれは! 海賊王になる男だ!!」

 あらま。もうそこまで行ってたか!? 

 これは急いだ方がいいかも…

 

「「その死刑待て!!」」

 ゾロとサンジは素直に正面突破しようとしてるけど、それじゃあ邪魔してくれって言ってるようなもんでしょう。

 なので私は、側面から回り込む事にする。(ソル)での高速移動を捉えられるヤツなどここには居ない。あっさりと私は処刑台の下まで辿り着いた。

 

 とりあえず、処刑台を壊さないとダメよね。

 原作通りに行けば、何もしなくても雷で助かる可能性が高い。でもそれは絶対って訳じゃない。

 しかし、私が嵐脚を繰り出そうと構えた直後に、ルフィは笑った。

 

「イオリ! ゾロ! ナミ! ウソップ! サンジ! 悪ィ。おれ、死んだ」

 …って、何をあっさり言っとんじゃァ!!

 

「アホかァ!!」

「「バカなこと言ってんじゃねェ!!」」

 私が怒号と共に処刑台の足を嵐脚で破壊したことと、ゾロとサンジが叫んだことと、そして…原作通り、雷鳴が轟いたことは、全てがほぼ同時だった。

 

 雷はバギーが持っていた刀を直撃したらしく、ヤツは綺麗に黒コゲになっていた。ルフィは超至近距離にいたはずなのにピンピンしてる。さすがはゴムって事か?

 

「なはは、やっぱ生きてた! もうけっ!」

「このどアホ!!」

 能天気に笑うルフィを、取り合えず殴っといた。

 

「イオリ!?おまえいたのか!? あり?…髪の毛、元に戻ってねェか?」

 換金後に元に戻していた事を言っているのかな? やっぱり、あれがかつらだってことは知らなかったか…。

 

 そんな私たちの近くでゾロとサンジが神の有無について話しており、バギー一味は、アルビダも含め、驚愕した目でルフィを見てる。

 

 

「…」

 視線を感じて振り返ってみると、バギーがこちらを見ていた。

 バギーの復活早いわね?結構タフじゃない。

 

「さっき処刑台が傾いたのは、もしやあなたの仕業で?」

 なんで、丁寧な口調なのかな? しかも何だか顔が赤いけど…?

 って、この人、私のファンだった!!

 

「あなたには手を出すつもりはありません…だが、テメェは絶対許せねェ!!」

 私とルフィに対する口調が全く違うけど…

 どちらかと言えば、私のほうが恨まれて当然の事してるんだけどな?

 財宝全部頂いちゃったし、海図も記録指針も頂いた。現在は、バギーと一緒に行動しているアルビダについても同じ事が言える。2つの海賊団は、財政破綻していてもおかしくない状況だと思う。

 言っちゃなんだけど、ルフィは二人をぶっ飛ばしただけなんだし…。

 

 あれあれ?私って、もしかして… 実はとっても悪い奴なんじゃ?

 

「広場を包囲! 海賊たちを捕えろ!」

 しまった!!こんな事やってる場合じゃなかったわ!!

 それにしても海兵来るのが早いわね。流石スモーカーの采配ってか?

 

「バギー、今は海軍から逃げることを最優先にして、取り合えず見逃してくれない?この場はルフィは諦めるってことで」

 

「…………チッ!」

 バギーは面白くなさそうだったけど、やっぱり海軍から逃げるのには賛成らしく、舌打ちをしながらも否定はしなかった。

 

「じゃあ私たちは先に逃げるね!みんな行くわよ!!」

 

 言って私は、海軍が押し寄せてくる方角とは反対の方へと走り出す。

 既にバギー一味と海兵たちが揉み合っているのが見える。

 私たちを追うにしても、まずは奴らをなんとかしないといけないはずだ。

 

 ただ…だ捕するかどうかはわからんけども…

 

「懸賞額で言えば、私たち、麦わら一味のほうが上になる…。場合によっては私たちを優先して捕えようとしても不思議じゃない!」

「じゃあ、あいつらよりもおれ達を捕まえようとするわけか?」

「かもしれないって事!急いで逃げないとね。」

 

 追ってくる海兵はの数はどんどん多くなってきている気がする。

 この島に何人いるんだ?海兵は…

 島の大きさからすれば、100人程度だと思ってたけど、どうやら低く見積もっていたようだ。

 少なくとも200人はいると見たほうがいい。しかもこれまでの海兵たちより訓練が行き届いているのか、動きがいい。

 

「待てェ!」

 待て!と言われて待つヤツなんていない。それが海兵と海賊ならばなおの事。

 

 しかし、なんだって、ここまで統制を取れる人が、未だにこんなところで大佐をしてるんだろう? 政府機関もそうだけど、時々、人事の仕組みを疑問に思う。

 誰に忖度してるか知らんけど、そういう事はダメじゃんね?

 普通の会社だったり、平和な時代の軍隊だったらまぁいいよ。でも今は大海賊時代なんだろ?現場の指揮者は資質によってそれ相応の地位と権力を与えて、適した場所に配置してしかるべきだと思うんだけど?

 《だったらお前が、海軍入れ!!》

 とか、どっかの英雄じじいに言われそうだけど、そんな事になったら、あたしゃ、海軍潰すか、政府潰すかしちゃいそうだぞ?

 ってか、あの人自身がそれやっちゃいそうな気もするし…

 

 確かに命令違反を起こす子を、簡単に昇進させるわけにはいかないのかもしれんけど、力によって部下を抑えているわけでも無いのにこの統制力は、正直すごいと思うけど?

 本部将官クラスにも、あまりいないんじゃないのかな?まぁ、私は実際目にした事ないけどさ。

 

 な~んて言ってるけど、私も忖度してるかも?

 結構好きなの、あの大佐(スモーカー)

 ※注:別に憧れたりはしていません。単に好きなキャラって感じ。

 

 

 

 

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