イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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03-87話:更新

 とりあえず、拘束しないまでも2人の武装解除は行った。

 ほどなくラブーンは鎮まり、またその間に、クロッカスさんが海賊王のクルーだという話をルフィにもした。当然ながら、ルフィは目を輝かせている。

 ちなみに。

 

「なんでまた、こんなものを持ってたんだか…」

 まぁ、答えてくれなくても、何をする為のものかも知ってるけどね?

 バロックワークス2人組が持っていたバズーカは、私の手元にある。

 ラブーン、というかクロッカスさんへの砲撃を認める気は無い。

 

 ミス・ウェンズデーはビビだ。ビビというのはアラバスタの王女の事で、ユナの友達でもある。

 そして、ビビは……

 

 ユナが昔、海賊になるかも?という話をした時…『こんな感じで顔を変えればいいじゃない?』と言って、手で目を吊り上げ造った顔を見た事があった。

 イオリの顔を見た途端、記憶がよみがえり、今更とは思いながらも顔を背けていたのである。

 ※ちなみにビビは友達なので、思考を読む事はしていません。

 

「…」

 この反応は、覚えている……みたいね。

 

「ちょっとこっちにいらっしゃい!」

 私はビビを連れて、船の先端へと向かう。ナミがついて来ようとしたけれど、『まかせて』という意味を込め、手で制して止めた。

 

 

「この顔は、忘れていてほしかったんだけどな?」

「まさか…こんな形で会うとは思わなかった。でも、イオリって?」

 ビビが名前について聞いて来た。ここでウソを言うつもりは無い。

 

「この身の名前よ。ユナだと有名過ぎるし、会社に迷惑がかかるもの。」

「そ、そうよね…」

 

「「……黙っててくれる?」」

 二人で同時に同じ言葉を発していた。

 私はともかく、ビビはまだ、組織にバレたくないのだろう。

 でも、既にバロックワークスの社長が誰だか掴んだというのに、これ以上何を調べようというのだろう?

 確かに、ここでバレると、イガラムが危ないかもしれないけど…

 

 まぁいいや。ビビの希望通り、黙っておく事にしましょうか。

 そうすれば、航路は原作通りになるはずだし。

 本当は事情を詳しく聞きたいところだけど、あまり時間をかけるのはよろしくない。とりあえず、昔会った事がある。という事で口裏を合わせる事にして、私たちはみんなの元に戻った。

 

 

「何話してたの?」

 ナミが聞いて来た。

 

「昔、あるパーティでこの子と会った事があったのよ。見覚えがあるなと思って確認したらそうだった!」

「ミス・ウェンズデー…本当に?」

「ええ、本当よ。びっくりしちゃった!」

 本当の事だから、ビビもすんなり話を合わせてくれていた。

 

「ふ~ん…」

 ナミは一瞬、怪訝そうな顔をしたけど、すぐにいつもの表情に戻った。

 バレてない…とは言い難いけど、私に気を使ってくれたみたい。

 

 

 その後、戻ってきたクロッカスさんから、二人の事を聞き(ゴロツキと言われてた。)、次いでラブーンの事についても、私が昔聞いた詳細な話をみんなも聞いた。

 私が聞いた時は50年なんて切りのいい数字じゃなかったけどね。

 約束の地で待ち続けるクジラ、ラブーン。

 

「仲間の生還を信じている……」

 自分の胃の中にいるクロッカスさんの言葉が聞こえたわけじゃないだろうけれど、ラブーンが再び吼えたらしい声が響いてきた。

 

 原作ではルフィがクロッカスさんを勧誘してたけど、そんな場面は無かった。

 どちらかと言えば、私がクロッカスさんに師事していた事を聞いて、私に今まで見せた事のない憧れというかキラキラした目を向けて来た。なので、私は『船医代理』だという事をしっかりと、ルフィに告げたのだった。

 

 外に出たら出たで、クロッカスさんに言われてルフィが2人組を海に投げ捨てたり、ルフィが甲板で記録指針を拾ってたりと、細かな所は原作通りに進んでいった。

 

 クロッカスさんはラブーンの傷を見ながら仲間の海賊団のその後について語っていたけど、原作を知る身としては、それほど気になる事じゃない。

 むしろ今の私は、ルフィの行動にこそ注意を払っている。なぜか?

 メインマストを折らせてなるものか! 船長が何やっとんじゃって話だよ。

 ウォーター・セブンでサニー号を手に入れるためには、メリー号での航海がこれ以上無理だと判断する必要がある。けれど、その為に、メリー号が修復不能な状態になる必要は無いのです。

 竜骨にある程度のダメージが入る必要はあるかも知れないけど、航海出来ないほどまで壊れる必要は無いと言える。要は、この船が”偉大なる航路”を想定した設計ではない。という事を理解して、船を乗り換える判断が出来ればいいのだ。

 それにもし、壊れて乗れなくなった場合でも、メリー号を燃やす必要も無い。

 コビーに手製の小舟をミニ化して渡したみたいにメリー号もミニ化すれば、乗ることは出来なくなっても捨てていく必要は無いのよね。

 

 ルフィが動いた!

 

「離せよ、何で止めるんだ!」

 メインマストに飛びついて、それを折ろうとしたルフィを捕まえて、私はルフィを羽交い絞めにした。この行動は、本日2度目…。

 ルフィのセリフも1回目と同じ!ほんと、直情的というか、思い立ったらすぐ動くというか…。原作知らなかったら、私にだって止めらんないよ!

 ちなみに、みんなはラブーンに注目しているから、私たちの動向には気付いてないみたい。

 当たり前か…。船長がこんな事するなんて、普通は誰も思わないもんね。

 

「あんたバカ? マストを折る気だったでしょ? 船長が自分の船を壊そうとすな!」

「だってあいつ、デカすぎるんだ! 普通にやっても効かねェ!」

 確かに言ってる事はわかるけどね。あそこまで、でかいクジラにダメージを与えるとしたら、既に負っている怪我を狙うか、目玉を狙うか…。今のルフィに出来る事は、それくらいしかないだろう。大きさが違い過ぎるからね。

 でもさ…

 

「デカすぎるっていうなら、小さくする事考えなさいよ!!」

「あっ…」

 おめェ、忘れてただろ?私が縮小人間だって事…

 ラブーンのあのサイズじゃ多少小さくしたところでたかが知れてるけど、攻撃を通す分には充分だ。それに気付いたらしく、ルフィは抵抗を止めた。

 

 どれくらい小さくするか?という質問に、ルフィは暫く唸った後、胸をどんっと張って言い切った。

 

「イオリに任せた!!」

 それは、丸投げという。

 

 その後。

 ルフィは私がこっそり(?)1/3サイズにまで小さくしたラブーンと大喧嘩を繰り広げた。何で1/3かって? 

 適当ですよ。だってわかんないじゃん!そんな事…。小さくし過ぎると、動物虐待になりそうだし……

 でも、中々いい勝負だったりする。

 ちなみにラブーンの全長は約400m、1/3サイズでも130m以上あるのよね。

 その応酬は暫く続き、やがて……。

 

「引き分けだ! おれは強いだろうが! おれとお前の決着はまだ着いてないから、 おれたちはまた戦わないといけないんだ! お前の仲間は死んだけど、おれはお前のライバルだ! おれたちはグランドラインを1周して、今度は元の大きさのお前だって倒せるぐらいに強くなって戻るから! そしたら、また喧嘩しよう!」

 

 ラブーンは、仲間は死んだという言葉に反応しても可笑しくなかっただろうけど、黙ってルフィの言葉を聞いていた。

 クジラが泣くところなんて初めて見たわ。目が大きいのでよくわかる。

 そしてラブーンは大きく鳴いた。新たな約束…待つ意味が出来たからだろうか?

 

 ルフィが約束の証としてラブーンにペイントをするというので、ウソップに手伝ってやってと頼んでおいた。船の修理という役目が無いウソップは、あっさり引き受けてくれた。

 

 ~ ~ ~ ~ ~

 

 ナミは航海の計画を立てており(海図を見ながらだから、役に立たないだろうけど…)、サンジはエレファント・ホンマグロの料理に取り掛かる。ゾロは昼寝で、私はクロッカスさんとお茶してました。

 

「ニュース・クー?」

 上空に気配を感じたので見上げたら、ニュース・クーが飛んでいた。

 

「1部買おうかしら」

 懐から小銭を取り出して翳して見せると、ニュース・クーが降りてきた。

 金を渡して新聞を受け取りふと前を見ると、クロッカスさんが驚愕顔で私を見ていた。

 そういえば、クロッカスさんの前で覇気を使うの初めてかも?ってか、今ので気づいたとかすごいわね。 とりあえず、覇気を3種持ってる事は話しておいた。さらにビックリしてたけど…。

 ニュース・クーから買った新聞は後で読もうと思って机に放ったら、中からバサリと何かが落ちた。

 何か、とは言っても、このシチュエーションじゃ手配書でしかないだろう。

 クロッカスさんが落ちた手配書を拾ってくれていた。そして、それをチラッと見て……微妙な顔をした。

 

「これは、お前じゃないか?」

 え、ウソ?この前、手配されたばっかりなんですけど!?

 

「私はこの前、初頭手配されたばっかりで……」

 受け取って見てみると、それは確かに似てない似顔絵が描かれた私の手配書だった。しかも、手配額が上がってる?

 何で!?次に更新されるのはアラバスタの後じゃないの!?

 

 まさかと思って新聞を振ってみると、落ちてくる手配書がもう1枚

 

「ルフィまで…」

 そう、それはルフィの手配書だった。しかも、こっちも手配額が上がってる。

 新たな手配書は。

 

 『麦わら』 モンキー・D・ルフィ  懸賞金7000万ベリー

 『紅髪』 イオリ  懸賞金6500万ベリー

 

 グランドラインに入って早々に、一味のトータルバウンティが億を超えてしまった。

 しかもルフィも私も、既にベラミー越えてんじゃん。これなら、ホテルでバカにされずに済むじゃんね!

 あ~でも、サーキースは新聞見てないうちにバカにしてたから、あのシチュエーションはなくならないか。

 …いやいや、そんなことより何でよ!?私たち何かした!?しかも何で私のほうが上昇幅がデカイのさ。

 

「あっ!!」

 スモーカー倒しちゃいましたね、そういえば……。

 東の海にいたけどあいつは本部大佐だったっけ…。それを倒しちゃったら、額も上がるわ。しかも、私の方が、色々やらかしちゃってた。

 なんてこったい。どーしましょー……。

 今更騒いでもどうにもなんないか。いいや別に。手配額が上がったって、海賊にとっちゃ嬉しいだよね? 後でルフィにも教えてあげましょう。

 

「問題ないです。」

「無いのか」

「はい」

 写真の部分は絵のままだし、まだエースみたいなバカみたいな額になってないし。

 でも、ヤバいわね。このままいくと、エースの二の舞に…

 いや、大丈夫だ。きっと。たぶん。絶対と言いきれないのが悲しいけど…

 

 

 

 

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