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「んん! よいよ! これがおれとお前の戦いの証だ!」
どうやら、ラブーンのペイントは終わったらしい。それじゃ、新しい手配書のことでも教えてあげようかしら。
出来上がったラブーンの『証』は、ウソップが手伝っただけのこともあって、結構イイ感じになっていた。
「おれたちが戻ってくるまでに、頭ぶつけて消したりするなよ!」
ルフィの言葉にラブーンは返事を返す。賢いよね。何にせよ、これでラブーンの自傷行為は止まるはず。グッジョブ、ルフィ!!
さて、問題の手配書だけど……。
「おー、上がった!」
予想通りというか、ルフィはめっちゃ喜んでいる。
にしても、今の時点で7000万なら頂上戦争の頃はいくらになってるんだろう?
まぁ今は、それ以上にエレファント・ホンマグロの方が気になってたりする。
サンジが調理してるはずだけど、どんな味になってるんだろう?
「あーーーーーーー!!!」
ナミの絶叫が聞こえたから様子を見に行ってみると、コンパスを見て固まっていた。
「コンパスが壊れちゃった! 方角を示さない!」
その発言に、一緒にこっちに来ていたクロッカスさんが呆れ顔になった。
「何だ、記録指針のことを話していなかったのか?」
頷くと、溜息を吐かれた。
いや別に、黙ってたという事でなく、タイミングとしては双子岬でするのがいいかなぁ…って思ってて…
「
聞き慣れない単語に、ナミが首を捻っている。と同時に私に向けられる視線。
説明しろっていう事ね?
「グランドラインは、点在する島々が多くの鉱物を含んでいるせいで常に磁気異常を起こしてるのよ。だから、この海でコンパスは正確に方角を示さない。ついでに言えば、天候も海流も風も恒常性が無い。どう、怖いでしょ?」
正直、目的が無ければ絶対に、お近付きになりたくない海である。ナミもその意見には頷いた。
「そうね……海で方角を見失えば死ぬわよ。」
「そこで必要になるのが記録指針ってわけ。」
「記録指針……聞いたことないわ」
まぁ、そうでしょうね。グランドラインの外では必要ないし、そもそも使えない。だから扱っている店だって少ない上に、リバースマウンテンの近くに限られてる。
店頭に置いてあるようなモノじゃないから、必要としなければ、めったにお目にかかれるモノでもないからね。
目的があってグランドラインに入る人は、そもそも記録指針じゃなくて永久指針を求める。冒険家か海賊くらいじゃないかな?値段的には永久指針より安いから、賞金稼ぎも買うかもね?
ちなみに余談だが、この話をしながら私はせっせと手を動かしている。何をしてるかと言いますと、さっきサンジが置いた、エレファント・ホンマグロの料理の皿から、自分の分を取り分けている。後で食べるんだ!!
放っとくとルフィが全部、食い尽くすからね。
「グランドラインの島は多くの鉱物を含むって言ったけど、そのせいかある種の法則に従った特殊な磁気を帯びてるんだって。その島と島の間で引き合う磁気を記録させて航海の指針とする。それが記録指針の役割よ。」
「つまり、変なコンパスか」
エレファント・ホンマグロの鼻を齧りながらルフィが口を挟んできた。
「まぁそうね。もっと言うなら、さっきルフィが甲板で拾ってたアレが記録指針よ」
「? これがか?」
言ってルフィが取り出した記録指針。
「何でアンタが持ってるのよ!」
そして何故か、ナミにノリで殴られるルフィ。
当然それは、あの2人組みの持ち物である。
「文字も何も書いてないのね」
上から下から横からと観察するナミがポツリと呟いた。
「島の方向を示すだけで、方角を示すわけじゃないからね。」
文字が書いてあったとしても何の役にも立たない。球体だから逆さにしようと指針の示す先は次の島だから。
「グランドラインの航海では、頼りになるのは唯一、記録指針の指し示す方角のみ。航海の初めは、このリヴァース・マウンテンからの7本の中から1本の航路を選ぶんだけど、それらの磁気はやがて引き合い、1本の航路に結びついてグランドラインを1周すると言われてる。そして、グランドラインで最後に辿り着く島の名が、『ラフテル』。歴史上でも、その島を確認したのは海賊王の一団だけと言われてる」
この説明……正しくないよね?
正確に言うなら、1周ではなく、半周だと思う。魚人島で一度一つになるんだし…
しかも後半は、3つの中から一つ選んで進む事になる。
そもそも単にグランドラインを進むだけでは、ラフテルに辿り着く事は出来ない。ちょっと考えればわかる事だ。
そんな簡単(でもないけど)な事なら、ロジャー以外に誰も辿り着いていないのはおかしいから。それとも…
この説明には、何か伏線でも潜んでいるのだろうか?
原作では、クロッカスさんが言っていたのだから、あり得るかも…
まぁ、考えたところで答えは出ないんだけど…
「海賊王の一団……」
ナミの呟きに反応し、未だにエレファント・ホンマグロに夢中なルフィ以外のこの場にいるメンバー……
ナミ、ウソップ、サンジがクロッカスさんを見た。
「おい、じいさん! そこにあんのか、ワンピースは!」
ウソップが興奮したようにクロッカスさんに詰め寄った。
「……さァな。その説が最も有力だが、誰もそこに辿り着けずにいる」
クロッカスさんが本当に知らないのか、それとも知っているのか。それは解らないけど、上手いことボカしてくれた。
「じゃあイオリ! お前は何か知らないか!?」
ウソップは随分と興奮しているらしく、私に話を振ってきた。
「あのねェ…いくらグランドライン生まれだからって、流石にラフテルのことなんて私が知るわけないじゃない。」
呆れたように言うと、ウソップはあっさり引き下がった。まぁそりゃね。
海賊王の船に乗っていて、色々知ってるであろうクロッカスさんが目の前にいるんだし。
それに実際、私はラフテルやワンピースのことなんて知らない。
私が知る限りでは原作もまだそこまで行ってない。
私に聞くのは早々に諦めたウソップだったけど、その分クロッカスさんに食い付いていた。
「じいさん、もったいぶるなよな! いいじゃねェか、それぐらい教えてくれたって!」
「ウソップ!」
ウソップがさらに踏み込もうとしたのをルフィが遮った。
「それ以上聞くな!」
「何でだよ! そもそもワンピースは実在するかも解らないって言われてる代物だぞ!」
「花のおっさんに答えだけ聞いても、つまんねェだろ! ここでおっさんに何かを教えてもらうぐらいなら、おれは海賊をやめる!!つまらねェ冒険なんて、おれはしねェ!!あるかどうかは、行けば解るんだ!!」
キッパリとした宣言に、ウソップが怯んだ。そして渋々引き下がる。
ルフィらしいっちゃルフィらしいけど…
でもここで、そのセリフが出ちゃうとさ…この後なんか違う流れになりそうな?
半周したところで、もう一回同じ事やるのかしら?まぁいいんだけど…
「ルフィ。その考え方は私も良いなと思うけど、みんなが話している間に一人で全部って…、ちょっと…これはないんじゃない?」
言って指差したのは、空になった皿。私の分は先に取り分けといたので無事だけど、それ以外は全滅だ。
「骨まで無ェし!!」
ウソップは顎が外れそうになるくらいに驚いている。しかし、サンジが受けたショックはそれ以上だったみたい。
「クソゴム!!おれは、ナミさんとイオリちゃんに食ってもらいたかったんだァ!!」
大丈夫よサンジ。私は取り分けといたそれをちゃんと食べてますから。
お目当てのもう一人であるナミは、記録指針の観察に忙しくてエレファント・ホンマグロに興味無いみたいだけど?
そして悲劇が起こった。
「げふっ!」
怒れるサンジがルフィを蹴り飛ばし、……運悪く、ナミが腕につけていた記録指針が割れた。
《………………》
「……あんたら」
ナミのどこか静かな声に、サンジが何故か嬉しそうに目をハートにさせて振り向いた……が。
「海で頭を冷やしてこい!!」
ルフィと揃って、海に蹴り落とされていた。
それにしても…サンジの蹴りよりルフィが飛んだ。
えっ!?ナミって実は、とんでもなく強いのでは?
「どうすんのよ、記録指針はグランドラインでの命綱なんでしょ!?」
「大丈夫、私も1個持ってるから!」
「持ってんのか!」
半ばパニックに陥っていたナミに、ポケットから取り出した記録指針を見せたら殴られた……ノリって怖い。
「どうして持ってるのよ、そんなの」
ノリで殴られ、怒られるって…なんでそんなん事に?
確かに入手は困難だって、言ったけどさ…
「いずれグランドラインに入ることになるのは、解ってたからね。ある海賊から奪っといたのよ。」
私は頭をさすりながら答えた。
「ある海賊?」
きょとん顔で聞き返すウソップに、私は笑顔で返した。
「懸賞金1500万ベリーで、赤っ鼻でデカっ鼻で、『ハデに』が口癖の海賊!」
当然、そんな特殊な条件に当て嵌まる海賊は1人しかいない。
「……奪ったのか、そいつから?」
クロッカスさんが、もの凄くビミョ~な顔をしている。それが誰だか解るからだろう。
「はい、奪いました」
「…バギー…なんて哀れな……」
クロッカスさんが何故か涙を流してる。バギーって、そんなに不憫なのかな?
「じゃあ、今まで何でそれを言わなかったの?」
記録指針を受け取りながらも、ナミは腑に落ちない様子だ。
「グランドラインに入ったら、タイミングを見て言おうと思ってたのよ。でもルフィが別のを拾ってるのを見たから、これは予備として持ってようかな?って思ってね。早速の出番になっちゃったけど…。あ、エレファント・ホンマグロ、食べる?」
ナミとウソップに皿を差し出した。
結構美味いよ、エレファント・ホンマグロ。2人も舌鼓を打っている。ついでと言ってはなんだけど、クロッカスさんにも少しあげた。
「それなら、私の物も1つやろう。備えあれば憂い無しとも言うしな」
クロッカスさんのご厚意により、さらにもう1つ記録指針を受け取ることになったのだった。
そしてそんな最中、海の方では何かの爆音がした。気配を探るとあの2人組の近くにもう2つ、小さな気配を感じた。おそらく動物2匹かな?
それからさらに少し経つと、海に落とされたサンジがその2人組みを連れて来た。
ちなみにルフィは、溺れた為に目を回している。
2人組みは、自分たちをウィスキーピークにまで連れて行って欲しい、と言ってきた。私に言って来たのは、船長が目を回してるからだろう。
さて、どうしたものか。私が答えても進路的には問題ない。
ビビとしても、イガラムと合流したいだろうから、そこに行くのは当然だろう。
でも…イガラムは私が誰だかわかるだろうか?
二人がペアなら、どうにかなったかもしれないけれど、ビビが戻ったとして、情報共有がすぐに出来るとは思えない。
おそらく、イガラムは、あの手配書を見ているか、あるいは見る事になる。だとしたら、まずは私たちを排除しようとするのでは?
なんとなくだけど、落ち着いて話が出来るようになるのは、Mr5ペアを倒した後になるのではなかろうか?
私が黙ったまま考え込んでいると、ウソップが、お前らは何者なのかっていう基本的な事柄を聞いた。
「王様です」
答えたMr9の頬をナミがツネっていた。
コイツは仲間でも友達でもないので、思考を読ませてもらったけど、任務失敗の言い訳を考える事で忙しいようだった。それと、私たちを自分たちの拠点に連れて行って、捕縛しようと考えてるみたい。
私は溜息を吐いた。
「まぁ、あなたたちの記録指針を私たちが拾っちゃったから、頼まざるを得ないわけよね」
「でもあんたたちの記録指針、壊れちゃったわよ?」
ナミが綺麗に割れている記録指針を見せながらからかうと、Mr9は激昂した。
曰く、下手に出てりゃ調子に乗りやがって、らしいけど……別に、調子に乗ってたつもりは無いんだけどな?
元々は自分たちのものだった記録指針を壊されて憤慨する気持ちは解るけど、落とした方も悪いと思う。
「壊れたのはあくまであなたたち記録指針であって、私たちは他にも記録指針を持ってるわ。ウィスキーピークに、行きたいの?行きたくないの?」
聞くとMr9は、ハッとしたように顔を上げた。
「「い、行きたいです! 船に乗せて下さい!」」
ビビも一緒に頭を下げていた。しかしあれね。ビビの演技もなかなかな気がする。
さすがに2年近くも潜入すれば磨かれるか…。命がけだしね。
「だ、そうだけど。どうする、ルフィ?」
ルフィが起きたのは気配でわかってた。船長が起きたなら、進路は船長が決めるべきだと思って聞いてみた。
「いいぞ。乗っても」
特に考えることも無く、ルフィはあっさりと引き受けたのだった。
次の目的地がウィスキーピークに決まったので、クロッカスさんにお願いして、薬をいろいろと分けてもらっといた。ケスチアの薬とかね。
ウイルキーピークの次の島、リトルガーデン対策だ。
薬をくれる際に、クロッカスさんから質問された。
以前ドラムへの永久指針をお前に譲ったが、あれはどうしたのかと…
持っている事を伝えると、さらに質問が続いた。
「では、なぜ薬が必要なんだ?ドラムに向かえばいいんじゃないか?」
「そうですけど、恐竜…食べた事ないんですよね」
「お前は…」
結局、食い気かと、呆れられてしまった。
修行中に行っても良かったんだけど、あの二人って、覇気が使えるじゃない? だから恐竜狩るだけじゃ済まない気がしたので、やめといたのよ。
だから、リトルガーデンには行ってみたいと思っている。楽しみにしてたのよね。