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ウィスキーピークへの記録もたまっていよいよ出航というときになって、クロッカスさんは最終確認をしてきた。折角の航路をそいつら(Mr9&ビビ)のために決めていいのか、と。
対するルフィの回答は、実にサラッとしたものだった。
「気に入らなかったらもう1周するからいいよ」
それでクロッカスさんは納得したらしく、もう何も言わなかった。
私の事は呆れた顔で見てたけど…
「クロッカスさん、色々ありがとうございました。行ってきますね!!」
薬もいろいろもらったし、大変お世話になりました。
次に会えるのは、原作通りに進むならなら、頂上戦争後の2年の間くらいかな?
「ああ、行ってこい。食いすぎには注意しろ!」
ちょっと…。みんなの前で、そんな事言わないでほしいんだけど?
ほら、ナミとかビビが首を傾げてるじゃないさ!!
「行ってくるぞ、クジラァ!!」
その呼びかけに、ラブーンも吼えて応えた。
私たちはクロッカスさんとラブーンに見送られ、双子岬を後にしたのだった。
出航してしばらくは川沿いに進むだけなので、この海について話しておきたいからと、ナミと二人で女部屋に戻った。
「はいこれ…」
「え!?何よこれ…」
女部屋に入ってすぐにナミに箱を渡した。
「プレゼントよ…何かの記念日って訳じゃないけど…」
ナミの誕生日って、なかなか祝うタイミングが無いのよね。7月3日なんて、冒険してる間には巡ってこない日なんだもの…
「…何が入っているの?」
小さい箱だから、宝石とかを期待してたりして?
「まぁ、たいしたもんじゃないわよ。ベットの上に置いてみて」
「?」
ナミがベットの上に置いたので、私は能力を解除する。
「解除!」
箱が大きくなり、ナミが顔を輝かせる。そして箱を開けると…
「へェ…わたしの好み、ちゃんとわかってんじゃん!!」
洋服3点と防寒着、部屋着とバスローブ。気に入ってくれてよかったわ。
実はビビのもあるんだけど、今渡すのはちょっと変だもんね。
異常だと言った通り、着替えをいくつか持ってラウンジに戻った。ナミも私に倣って今あげた防寒着とかを持って行く。
~ ~ ~ ~ ~
双子岬を出てしばらく航海すると、気候は冬になった。
甲板には雪が積もってるけど、実はそこでゾロが寝てたりする。
普通なら凍死しそうな気もするし、そうでなくても風邪はひくと思うんだけど?
原作では、ドラムで普通に凍えてたわよね? あれは…、寒中水泳後で濡れたままの状態で雪山だったからかしら? 普通に雪に埋もれるだけなら問題ないとか?
真っ白な雪にルフィとウソップは大はしゃぎで遊んでいる。雪像を作っているけれど、上手い下手がはっきり分かれた。
それにしてもウソップ、美術の素質がありそうね。絵も上手いし。
私はというと、ナミやビビと一緒に船内にいる。
「何でいきなり冬になんてなるのよ……」
ナミは文句を言いながらも、記録指針から目を離さない。
この海、特にこの1本目の航路の異常さは出航直後に話しておいた。後になって180°旋回させるのなんて面倒だからだ。
と言っても、今は私が舵担当なので、面倒くささはあまり変わらない。
「冬ならまだいいわよ。上に何か着れば済むんだもの。夏だったら脱ぐのにも限界があるじゃない?」
私は、夏よりも冬の方が過ごしやすいと思っている。夏でもカラッとしてれば好きだけどね。
「まぁ、そうだけど…」
防寒着を渡しておいたので、それを着ながらナミが言う。
ビビにも私の防寒着を貸してあげた。ナミが何か言いたそうに見てたけど…
ちなみに私の服装は、シャツとズボンとコートだったりする。
外で遊んでるルフィやウソップや、男どもは全員いつもの服装だ。よく寒くないわね。
あぁ、でも。
「ナミさん、恋の雪かきいかほどに?」
サンジはマフラーしてた。
「止むまで続けて、サンジ君!」
「イエッサー!!」
目をハートにして精力的に雪かきするサンジに、ナミは何気に酷かった。本人が喜んでるみたいだから、まあいっか。
「あのー、もう雪かき終わらせても…」
「あれ?ただで船に乗せてもらうのは悪いからって、言い出したのはどちらさまでしたっけ?」
「つ、続けます!!」
サンジと同じく雪かきをしているMr9が何か言ってたけど、手伝うと言ったのは自分なんだし、自分の言葉にはちゃんと責任を持ってもらわないとね?
まぁ最初、原作通りにふんぞり返っていたから、私が例の微笑み向けてやったんだけどさ。
普通にしてたら放っておいてやったのに…。パートナーのビビなんか、恐縮しながら大人しくしてたのに。
ちなみにビビはというと…
「どうぞ、温かいお茶です」
自分だけ、何もしないのは悪いからと、お茶を入れてくれてたりする。
…あとでバレたら、ナミに何言われるかわからないわね。ビビには私の事は黙っておいてもらわないと…
「ありがとう」
受け取って飲んでみると、なかなかにおいしい紅茶だった。入れるのうまいわね。まぁ、ビビはもともと自分の事は自分でする子だから、王女の割には料理とかもしてたし。これくらいは訳ないか。
「おーい、風が変わったぞ!」
外からウソップが言うので出てみたら…
「春一番か…」
「何で!?」
暖かく吹く風を感じていたら、ナミが絶叫していた。
多分、今までの常識がことごとく壊され続けているんだろう。
なまじ気象についての知識が豊富なだけに、グランドラインの異常さに翻弄されている。
そこからは、まさにドタバタ劇が繰り広げられた。
ゾロは起こしても起きないし、氷山に船がかすって水漏れするし、不意に強風が吹いて、帆が破れそうになるし……
とりあえず、こんな状況下で『イルカが見えたから行ってみよう』とかほざいたバカゴムはぶん殴って沈めておいた。
意外にも、Mr9が随分と一生懸命働いてくれていた。
そんな騒動がいくつも続き、落ち着けたのは気候がポカポカとした陽気な感じになった頃だった。
「ん~~~~」
ゾロがようやく目を覚ましたようだ。
「おいおい、いくら気候がいいからってダラけすぎだぜ?」
ルフィと私以外の全員が疲労困憊で倒れているのを、ゾロにはダラけているように見えたらしい。
ちなみに私がそんなに疲れていないのは、たぶん体力の差だと思う。ルフィの場合は状況を心から楽しんでいたからだろう。
「ん? 何でこいつらがこの船に?」
Mr9とビビを見付け、ゾロは首を捻っている。そういえば、ルフィとラブーンのケンカの後からゾロはずっと寝てたんだっけ。
2人を町に送る途中だ、とルフィが答えたことでゾロは一応納得したらしい。
そして、2人をニヤニヤとした悪人面で見て苛めてる。
「おーおー、悪ィこと考えてる顔だな」
お前の方が…と言いたくなるね。2人に名前を聞くゾロは、絶対にもう気付いていると思う。バロックワークスのこと…。
「!!」
ゾロが思いっきりナミに殴られた。何だろう、ナミの後ろに業火が見えるような気がする。
「……大丈夫?」
3段コブが痛そうだったので、私はゾロに冷えた濡れタオルを渡してあげた。
「大丈夫に見えるか? 何なんだ、いきなり……」
「あれだけ騒いでたのに起きないんだもの。何度も起こそうとしたのよ、一応…」
事実である。途中で諦めましたけど。
ゾロはちょっと微妙な顔をした。
「何だと? ……だからって殴るこたァ無ェんじゃねぇか?」
「私に言われてもねェ… 殴った本人に言いなさいよ!」
言ったらまた殴られるだろうけどね?
「……それもそうだな。あぁそうだ、忘れるとこだった」
そう言って、ゾロは懐から札束を取り出した。
「クロの武器……『猫の手』っつったか? あれを売った金だ。新しい刀はタダで手に入ったからな。丸々残ってるぜ!」
やっぱりタダでもらってきたんだ、その2本。
受け取った金は、結構な金額だった。思った通り、『猫の手』は結構珍しい品だったらしい。
ゾロとそんな会話をしていると、1本目の航海はとりあえず無事(?)に終わったらしい。
霧の先に島が見えてきた。サボテンの形が特徴的な、ウィスキーピークだ。
Mr9とビビは島が見えてきた途端、船から飛び降りてしまった。一瞬、ビビが躊躇していたように見えたけど…
島が近付くにつれ、一味の興奮は増していた。特に、冒険好きなルフィが。
「聞いてくれ、急に持病の『島に入ってはいけない病』が……」
ウソップは青い顔で腹を押さえている。
「大丈夫?腹痛?吐き気?いろいろ注射は取り揃えてるけど?」
「治りましたァ!」
ビシッと敬礼するウソップ……何故に?
島が目の前だから飲み薬より即効性のある注射を使ってあげようとしただけなのに…
さてはウソップ…注射嫌いだな? これはまた、ウソップ攻略ネタが出来たかも。
ま、いっか。本人が治ったって言ってるし。それにおそらく仮病だし…
島の周りは霧が濃くて中々島内が目で確認は出来なかったけど、随分とたくさんの人が出迎えに来ているらしいというのは気配でわかった。
そして霧が晴れてくると…
「ようこそ、歓迎の町・ウィスキーピークへ!」
何とも盛大な歓迎を受けた。あからさまに怪しい!というか、怪しすぎる。
何でこの状況に疑問を持たない?この3バカは…。
ちなみに3バカとは、ルフィ・ウソップ・サンジである。
ルフィとウソップはともかく、何でサンジまで?
あぁ、若くて美人な女性の集団を見たからか…。ほんとにもう…この子はこうやって失点重ねていくのよね。
上陸してみると、真っ先に前に出てきたのは髪を巻きすぎの町長・イガラッポイ。要するに、イガラムだ。
口上によると、この町は酒造と音楽の盛んな町であり、訪れた客をもてなすのが誇りだという。
旅の話を肴に宴を開かせてくれないかというイガラム。
ノリノリの3バカと、呆れながらそれを見る3人。私たち一味は見事に二つに別れていた。
ナミはイガラムにこの島の記録はどれくらいでたまるのかという基本的なことを聞いたけど、イガラムは堅苦しいと言って教えてくれなかった。
グランドラインを往く旅人が、記録について聞いてるのに教えてくれないなんて、怪しんでくれと言うのと同義だと思うけど?
「宴だァ!!」
と、ルフィが盛り上がってるところ悪いけど。
「私は遠慮させてもらうわ」
1歩引かせてもらいました。
「えー、何でだよ! 酒も飲めるんだぞ!?」
ルフィが不満そうに口を尖らせているし、酒は魅力的だけど
「私は船番してるわ。これだけの人がいるんだもの……」
あとは言わずともわかるだろう。ルフィは首を傾げてたけど…
それらしい理由を付けてるけど、実際には酒場で飲みたくないからだ。
飲み比べとかやっても別に問題ないけど、時間がかかるのが面倒だ。それに、食料が少ないだろう場所で飲み食いするのも気が引ける。自分たちの船で飲んでいた方が気が楽だ。
イガラムはよっぽど私たちを纏めて酔わせたいのか、しつこく誘ってきたけど、私はやんわりと、でも断固として断った。
それに実際、船番として残るというのは宴を蹴るのに充分な理由だから、向こうとしても強くは出られなかったらしくやがて諦めた。
けどそうなると、私も賞金首だし、しばらくすれば誰かしらが襲撃にでもくるだろうけど、それは撃退すればいい。
しかし、見事にイガラムは私に気づかなかったわね。まぁ、ビビみたいに、この顔を見ていないのだから当然か…。
ビビは私の事をイガラムに告げるだろうか?
この事は、仲間の誰も知らない事だと伝えた時、ビビは驚いていた。
さて…どうなりますやら。