イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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03-91話:ビビ救出

「海賊がなぜ、おれ達の邪魔をする?」

「答える必要なんてないわね。」

 

「ずいぶんと、舐めた口をきいてくれるじゃないか。まぁ別に、興味もないが、邪魔をするというのなら、2人まとめて始末するだけだ。」

 そのセリフ、そのまま熨斗付けてお返し致します。

 

「気をつけて!彼らはオフィサー・エージェント!組織でも上位の実力者よ!!」

 トップがクロコダイルで、次がダズ。その後ボンちゃん、ロウソク、怪力バットで、その下か…

 

 この2人が、そんなに強いようには思えないんだけど?なんとなく、能力頼りな感じを受ける。ってか、それすらちゃんと、鍛えてないんじゃね?

 

 私がビビの前に現れたのは、ちょうどミス・マンデーがMr5の爆発ラリアットによって沈んだところだった。

 ビビの前に立ちはだかった私を見て、Mr5が言ったのがさっきのセリフ。

 

 思った通り、ゾロはここには来ていない。

 

 だよね~!!

 イガラムに頼まれたところで、ゾロは動かないだろうと踏んでいた。

 そもそも、ゾロはそれほどお金に執着していない。必要最低限、飲み食いできればそれでいいんだから、恩賞とか言われたところで動かない。

 ナミが儲け話に乗っかるとしても、ナミに借金(というのかあれは?)という借りが無い以上、ゾロがナミに”使われる”事もない。

 ルフィや私の指示なら従うかも知れないけれど、ゾロから見てナミは同列扱いだからね。

 何気にゾロって、海兵向いてるんじゃない?なんとなく、スモーカーと気が合いそうな…

 

《あっ!ヤバっ…》

 私がある事に気づいた、まさにその時だった。

 

 ― ドゴォン!! ―

 

 物凄い破壊音が聞こえてきた。

 

「!? 何だァ!?」

「あ、あそこよ!」

 Mr5ペアにとっては予想外の事だったんだろう。一時的に任務を忘れて音のする方向を見つめていた。ミス・バレンタインが指差した先では、土煙が上がっている。

 

 あ~ぁ…… 何やってんだかなぁ…

 

 ある程度、原作通りに進んでいたのだから当然か…。私は深いため息を吐いていた。

 見聞色で確かめるまでもない。あれはまさしくあの2人の喧嘩によるものだろう。

 本筋と絡まないような場所で、何やってんだろうね。あの2人はさぁ…

 

「…Mr5、別に私たちには関係なさそうね」

「そうだな、ミス・バレンタイン」

 呆けてたMr5ペアがこちらを向いた。

 

「それでは我々は、速やかに任務を遂行するとしよう……アラバスタ王国王女、ネフェルタリ・ビビの抹殺を!」

 何言ってんの?そんな事、私が許すはずがないじゃない!!

 

「と、その前に…目障りな海賊を消す必要はあるか…」

 私の事なんて、露ほどにも思わない小物だってか?

 思考を読んでみれば、ルフィと私の手配書は見てないらしい。ならば、私たちを小物の海賊団と見ても仕方がないか…

 

「鼻空想砲!」

「嵐脚!」

 放たれたハナクソは、軽い嵐脚によって斬らせてもらった。刀で斬る気も、もちろん触る気もありません。

 斬られたハナクソは、左右に分かれて爆発した。

 

「「!?」」

 

「ユ…イオリさん、あなた…」

 確かビビは、ユナの強さを知らなかったわね。

 でも、原作通りなら私の手配書、見てるんじゃなかったっけ?

 それよりも今、『ユナ』って言おうとしなかった?ちょっとやめてよね! こいつらに知られたら、監禁するか殺すかしないといけなくなっちゃうんだから!!

 

「もともと一人で世界を回ってみようと思ってたからね。身を守るために武術も学んでるわよ。それに手配書見たんでしょ?一応それなりに強いつもりよ?」

「あの手配書……4000万ベリーってなってたけど…」

 あ、見たのは一つ前の手配書なんだ。”手配書”の後の()はきっと、あの絵かな?

 

「フン、なかなかやるじゃないか。」

「あなた、この町の平社員を斬りまくってた剣士の仲間でしょ?」

 その発言はつまり、ゾロの所業を見てたって事じゃないの?その仲間だと知った上でこの対応っていうのはまさか…

 ……私が女だからって舐めてやがんのか?

 

「キャハハ、この女は邪魔ね。私の能力で地面にうずめてあげるわ」

 傘をたたみ、帽子を脱ぎながら宣言するミス・バレンタイン

 これは完全に、私が原作ゾロのポジションになっちゃったみたいね。でも、そんな事はどうでもいい。

 ”女”だからと舐めているのなら、目にもの見せてやろうじゃないの!

 ムカついたので、私はこいつらボコると決めました。

 

 こいつらをどうしようと流れに影響は出ないだろう。まぁ出たら出たで対処すればいいんだし。

 

「鼻空想砲!」

「指銃・撥!」

 Mr5のハナクソを、今度は空気の塊をぶつけて爆発させた。

 

 カル-も含めて全員が驚いているみたいだけど、ミス・バレンタインがその爆風で上空に飛んだ。

 

「キャハハ、覚悟なさい!!爆風にも乗れる私の今の体重はわずか1Kg!!さらに…」

 

 ルフィとゾロの喧嘩はまだ続いている。

 なんだか、さっきよりも激しさが増したような気がするんだけど?もしかして、ゾロが本気になったのかな?

 ナミも居るだろうに何をしてるんだか…

 私の行動を知っているならともかく、儲け話が消えちゃうぞ?

 

「…って、無視してんじゃないわよ!!」

 別に無視してたわけじゃない。あんたの事は使おうと思ってるんだから…。さっさと攻撃してきなさいよ。

 

「イオリさん、避けて! あの女は……」

「大丈夫よ」

 私はウエストポーチから、小さな十手を取り出した。

 

「いい!? 私の能力は1㎏から1万㎏まで、体重を自在に操ることなのよ! くらえ、1万㎏ブレス!!」

 上空で体重を変化させた、ミス・バレンタインが降ってきた……けど。

 

「無視してもらってた方が良かったんじゃない?」

 見てれば簡単に避けられる攻撃だった。なにせ、自然落下なもんで、ほぼ直線で落ちてくるだけ。2、3歩動くだけで躱せてしまうような攻撃だ。

 でも、私は躱すだけで終わらせるつもりはないのよね…。

 

「解除」

 能力を解除すると、私の手の上に大きな十手が現れた。両手で握り、野球のバッターのような構えを見せる。

 

「ちょっ…冗談でしょう!!?」

 落ちながら、ミス・バレンタインが慌てている。さすがに私が何をしようとしているのか分かったようだ。けど、落下するだけの彼女にはもう成す術はない。

 軽くするなりして、落下速度を落とすとか、いろいろ手はあるとは思うけど、そこまで頭がまわらないのだろう。

 勿体ない。私が仲間だったら、もっと有効な使い方を教えてあげるのに…

 

 さて…

 

「しっかり受け止めなさい!!あなたのパートナーを!!」

「!!?」

 私は落ちてくる1万㎏ある物体を、十手のスイングでMr5めがけて打った。

 ※注:手加減は忘れていません。

 

「「ああああああああ!」」

 2人はぶつかって吹っ飛んでった。さらに建物にぶつかり瓦礫に埋もれた。

 Mr5が潰れてないか心配だったけど、2人の気配は弱っているけど消えてない。

 そして、2人にとっては残念だけど、私の怒りも消えてない。

 

「信じられない…オフィサーエージェントを一方的に…」

 後ろでビビが何か言ってるのが聞こえるけど、今はこいつらのほうが重要だ。

 

 嵐脚で、瓦礫を吹き飛ばして、そこから2人を引きずり出した。

 

「さて、これで終わりだなんて思ってないわよね?あなた達にはた~~~っぷり、反省してもらうから!!」

 瓦礫の中から出してあげるなんて、私ってなんてやさしいのかしら?

 という意味も込めて、微笑みかけると2人は顔を青くした。

 

 地獄の門が、大きく口を開けていた。

 

 

 

 *ー*ー*ー*ー*

 

 

 

「別に、女性蔑視の発言なんてしてませんよ?女だからってバカになんかしませんって!だって、パートナーは女性なんですから、そんな考え持ってません!!」

 さんざん言い訳を続けたMr5は、けれど私に対しては”女”だからと侮っていた。

 それを指摘したところ黙り込み、口撃を甘んじて受け入れた。甘んじて受け入れたからと言って、何かが変わるわけでは無いけれど…

 

 割が合わなかったのはミス・バレンタインの方だった。

 イオリの事を侮ってはいたけれど、それこそ別に女性だからというわけではない。自分たちより強い海賊が、こんな所にいるとは思わなかっただけの事だ。それなのに、結果としてはMr5と同じお仕置きである。それゆえ彼女の心が折れるのは早かった。

 

 イオリの口撃は、最初のうちこそ怒った原因についてのモノだけれども、そのうち過去の悪事や過ちをつらつらと並べ、ダメなところを言い聞かせるというものに移行する。それはまるで、過去の傷口を抉って塩を塗りつけるような行為であろう。それが途切れる事なく続くのだ。しかも次々、延々と…

 口撃された者はだんだん気力が萎えていき、ついには生気を失っていくのである。

 

 ちなみに、イオリ自身はその事をちゃんと認識していなかったりする。

 彼女は、怒った原因について、そういう事はイケないと言い聞かせているだけのつもりでいる。ただ、それにしては時間の経過がおかしいと思う事はある。2,3分ほどで言い聞かせられるような内容が、気づいたら十数分が経過している…という具合にだ。

 彼女の不幸(?)は、それを誰にも教えてもらっていない事。

 エースですら、怖くて指摘する事が出来なかったのだから。

 

 おそらくいずれ、エイタが指摘してくれる………かな?

 

 

 

 

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