「海賊がなぜ、おれ達の邪魔をする?」
「答える必要なんてないわね。」
「ずいぶんと、舐めた口をきいてくれるじゃないか。まぁ別に、興味もないが、邪魔をするというのなら、2人まとめて始末するだけだ。」
そのセリフ、そのまま熨斗付けてお返し致します。
「気をつけて!彼らはオフィサー・エージェント!組織でも上位の実力者よ!!」
トップがクロコダイルで、次がダズ。その後ボンちゃん、ロウソク、怪力バットで、その下か…
この2人が、そんなに強いようには思えないんだけど?なんとなく、能力頼りな感じを受ける。ってか、それすらちゃんと、鍛えてないんじゃね?
私がビビの前に現れたのは、ちょうどミス・マンデーがMr5の爆発ラリアットによって沈んだところだった。
ビビの前に立ちはだかった私を見て、Mr5が言ったのがさっきのセリフ。
思った通り、ゾロはここには来ていない。
だよね~!!
イガラムに頼まれたところで、ゾロは動かないだろうと踏んでいた。
そもそも、ゾロはそれほどお金に執着していない。必要最低限、飲み食いできればそれでいいんだから、恩賞とか言われたところで動かない。
ナミが儲け話に乗っかるとしても、ナミに借金(というのかあれは?)という借りが無い以上、ゾロがナミに”使われる”事もない。
ルフィや私の指示なら従うかも知れないけれど、ゾロから見てナミは同列扱いだからね。
何気にゾロって、海兵向いてるんじゃない?なんとなく、スモーカーと気が合いそうな…
《あっ!ヤバっ…》
私がある事に気づいた、まさにその時だった。
― ドゴォン!! ―
物凄い破壊音が聞こえてきた。
「!? 何だァ!?」
「あ、あそこよ!」
Mr5ペアにとっては予想外の事だったんだろう。一時的に任務を忘れて音のする方向を見つめていた。ミス・バレンタインが指差した先では、土煙が上がっている。
あ~ぁ…… 何やってんだかなぁ…
ある程度、原作通りに進んでいたのだから当然か…。私は深いため息を吐いていた。
見聞色で確かめるまでもない。あれはまさしくあの2人の喧嘩によるものだろう。
本筋と絡まないような場所で、何やってんだろうね。あの2人はさぁ…
「…Mr5、別に私たちには関係なさそうね」
「そうだな、ミス・バレンタイン」
呆けてたMr5ペアがこちらを向いた。
「それでは我々は、速やかに任務を遂行するとしよう……アラバスタ王国王女、ネフェルタリ・ビビの抹殺を!」
何言ってんの?そんな事、私が許すはずがないじゃない!!
「と、その前に…目障りな海賊を消す必要はあるか…」
私の事なんて、露ほどにも思わない小物だってか?
思考を読んでみれば、ルフィと私の手配書は見てないらしい。ならば、私たちを小物の海賊団と見ても仕方がないか…
「鼻空想砲!」
「嵐脚!」
放たれたハナクソは、軽い嵐脚によって斬らせてもらった。刀で斬る気も、もちろん触る気もありません。
斬られたハナクソは、左右に分かれて爆発した。
「「!?」」
「ユ…イオリさん、あなた…」
確かビビは、ユナの強さを知らなかったわね。
でも、原作通りなら私の手配書、見てるんじゃなかったっけ?
それよりも今、『ユナ』って言おうとしなかった?ちょっとやめてよね! こいつらに知られたら、監禁するか殺すかしないといけなくなっちゃうんだから!!
「もともと一人で世界を回ってみようと思ってたからね。身を守るために武術も学んでるわよ。それに手配書見たんでしょ?一応それなりに強いつもりよ?」
「あの手配書……4000万ベリーってなってたけど…」
あ、見たのは一つ前の手配書なんだ。”手配書”の後の
「フン、なかなかやるじゃないか。」
「あなた、この町の平社員を斬りまくってた剣士の仲間でしょ?」
その発言はつまり、ゾロの所業を見てたって事じゃないの?その仲間だと知った上でこの対応っていうのはまさか…
……私が女だからって舐めてやがんのか?
「キャハハ、この女は邪魔ね。私の能力で地面にうずめてあげるわ」
傘をたたみ、帽子を脱ぎながら宣言するミス・バレンタイン
これは完全に、私が原作ゾロのポジションになっちゃったみたいね。でも、そんな事はどうでもいい。
”女”だからと舐めているのなら、目にもの見せてやろうじゃないの!
ムカついたので、私はこいつらボコると決めました。
こいつらをどうしようと流れに影響は出ないだろう。まぁ出たら出たで対処すればいいんだし。
「鼻空想砲!」
「指銃・撥!」
Mr5のハナクソを、今度は空気の塊をぶつけて爆発させた。
カル-も含めて全員が驚いているみたいだけど、ミス・バレンタインがその爆風で上空に飛んだ。
「キャハハ、覚悟なさい!!爆風にも乗れる私の今の体重はわずか1Kg!!さらに…」
ルフィとゾロの喧嘩はまだ続いている。
なんだか、さっきよりも激しさが増したような気がするんだけど?もしかして、ゾロが本気になったのかな?
ナミも居るだろうに何をしてるんだか…
私の行動を知っているならともかく、儲け話が消えちゃうぞ?
「…って、無視してんじゃないわよ!!」
別に無視してたわけじゃない。あんたの事は使おうと思ってるんだから…。さっさと攻撃してきなさいよ。
「イオリさん、避けて! あの女は……」
「大丈夫よ」
私はウエストポーチから、小さな十手を取り出した。
「いい!? 私の能力は1㎏から1万㎏まで、体重を自在に操ることなのよ! くらえ、1万㎏ブレス!!」
上空で体重を変化させた、ミス・バレンタインが降ってきた……けど。
「無視してもらってた方が良かったんじゃない?」
見てれば簡単に避けられる攻撃だった。なにせ、自然落下なもんで、ほぼ直線で落ちてくるだけ。2、3歩動くだけで躱せてしまうような攻撃だ。
でも、私は躱すだけで終わらせるつもりはないのよね…。
「解除」
能力を解除すると、私の手の上に大きな十手が現れた。両手で握り、野球のバッターのような構えを見せる。
「ちょっ…冗談でしょう!!?」
落ちながら、ミス・バレンタインが慌てている。さすがに私が何をしようとしているのか分かったようだ。けど、落下するだけの彼女にはもう成す術はない。
軽くするなりして、落下速度を落とすとか、いろいろ手はあるとは思うけど、そこまで頭がまわらないのだろう。
勿体ない。私が仲間だったら、もっと有効な使い方を教えてあげるのに…
さて…
「しっかり受け止めなさい!!あなたのパートナーを!!」
「!!?」
私は落ちてくる1万㎏ある物体を、十手のスイングでMr5めがけて打った。
※注:手加減は忘れていません。
「「ああああああああ!」」
2人はぶつかって吹っ飛んでった。さらに建物にぶつかり瓦礫に埋もれた。
Mr5が潰れてないか心配だったけど、2人の気配は弱っているけど消えてない。
そして、2人にとっては残念だけど、私の怒りも消えてない。
「信じられない…オフィサーエージェントを一方的に…」
後ろでビビが何か言ってるのが聞こえるけど、今はこいつらのほうが重要だ。
嵐脚で、瓦礫を吹き飛ばして、そこから2人を引きずり出した。
「さて、これで終わりだなんて思ってないわよね?あなた達にはた~~~っぷり、反省してもらうから!!」
瓦礫の中から出してあげるなんて、私ってなんてやさしいのかしら?
という意味も込めて、微笑みかけると2人は顔を青くした。
地獄の門が、大きく口を開けていた。
*ー*ー*ー*ー*
「別に、女性蔑視の発言なんてしてませんよ?女だからってバカになんかしませんって!だって、パートナーは女性なんですから、そんな考え持ってません!!」
さんざん言い訳を続けたMr5は、けれど私に対しては”女”だからと侮っていた。
それを指摘したところ黙り込み、口撃を甘んじて受け入れた。甘んじて受け入れたからと言って、何かが変わるわけでは無いけれど…
割が合わなかったのはミス・バレンタインの方だった。
イオリの事を侮ってはいたけれど、それこそ別に女性だからというわけではない。自分たちより強い海賊が、こんな所にいるとは思わなかっただけの事だ。それなのに、結果としてはMr5と同じお仕置きである。それゆえ彼女の心が折れるのは早かった。
イオリの口撃は、最初のうちこそ怒った原因についてのモノだけれども、そのうち過去の悪事や過ちをつらつらと並べ、ダメなところを言い聞かせるというものに移行する。それはまるで、過去の傷口を抉って塩を塗りつけるような行為であろう。それが途切れる事なく続くのだ。しかも次々、延々と…
口撃された者はだんだん気力が萎えていき、ついには生気を失っていくのである。
ちなみに、イオリ自身はその事をちゃんと認識していなかったりする。
彼女は、怒った原因について、そういう事はイケないと言い聞かせているだけのつもりでいる。ただ、それにしては時間の経過がおかしいと思う事はある。2,3分ほどで言い聞かせられるような内容が、気づいたら十数分が経過している…という具合にだ。
彼女の不幸(?)は、それを誰にも教えてもらっていない事。
エースですら、怖くて指摘する事が出来なかったのだから。
おそらくいずれ、エイタが指摘してくれる………かな?