あ~、すっきりした!
女だからって侮ってたら痛い目見るよ! って事を体現させてやった!!
今後は十分、気を付けるよーに!!
Mr5とミス・バレンタインは、虚ろな目で地面を眺めるようにして気を失っていた。
2、3分、叱りつけてただけなのにな?
あれ?15分過ぎてるや。ま、いっか
「…」
「ん?」
ビビがポカンとした顔で、私と2人を見ていた。
「どうしたのビビ?」
声をかけてもビビはフルフルと首を横に振るだけだった。
このシチュエーションってなんだか覚えがあるんだけど? なんだったっけ?
ビビはなにやら困惑しているような顔をしている。少し顔が青い気がするのはどうしてだろう? あら、もしかして…私、怖かった?
ルフィとゾロの喧嘩も終わったようで、この町はずいぶん静かになった気がする。
「とりあえず、あっちの様子を見に行かない? さっき騒がしかったのが何だったのか気になるし、イガラムが心配してるんじゃない?」
そう言うと、ビビは私の前まで進み出た。
「イオリさん。まずはお礼を言わせて、ありがとう。まさか、オフィサーエージェントを倒せる人がいるなんて、思ってもみなかった。」
「まったく…そんな奴らがいる組織に、たった2人で潜り込んだのは誰よ。ずいぶん心配したんだからね!」
「ご、ごめん…」
「ほら、行こう!」
私はビビの手を取り、半ば引き摺るようにして歩き出した。すぐにビビも自分から足を動かして付いて来てくれた。
「イオリさん…のほうがいいのよね?」
「…ええ、それでお願いね。」
そう言えば、私のほうが年上だからと、さん付けしてくれてるのかな?
ビビとユナは公式な場でないかぎり、”さん”付けは外していた。そもそもユナは一般人なんだから、公式の場ではビビに対しては”様”付けするか”王女様”って言わないとダメだからね。
さて、向こうはどんな結果になっていますやら…。
ルフィとゾロの喧嘩の現場に辿り着いてみると。
「どうすんのよ、このバカども!!」
拳を握って仁王立ちするナミと、その前で頭にでっかいコブを作りながら正座させられているルフィとゾロがいた。
な~んだ。結局勝者はナミって事か。ある意味原作通りに進んでたわけね。
そして、少し離れたところで、この世の終わりのような顔をして倒れ伏しているイガラム。
あれ?なぜにルフィは膨れたまんま?
あの状態で本気のゾロと闘り会ってたって事? それはそれで凄いんだけど…
「何なの、この…カオスな状況は?」
「…って、イオリ!?」
私が声をかけて、ようやくナミは私が背後に立っているのに気付いたらしい。
「イガラム!」
私と一緒に来たビビが、イガラムの姿を見つけて駆け寄った。
「ビビ様!? ご無事でしたか!!」
完全に放心状態だったイガラムがガバッと飛び起き、ビビと抱き合う。
「それにしても、ここら辺だけ壊滅状態じゃない?ここで何が起きたのよ」
わかってますけどね? それでも本人たちの口から事実を聞かずにいられない。
私は3人に説明を求めた。
周囲は酷い状態だ。倒壊した建物、えぐれた地面。局地的な災害に見舞われたと言われても納得できそうな惨状だ。
「全部こいつらのせいよ!」
ナミは憤慨した様子で正座させている2人を睨み、次いで私にも訝しげな視線を向けてきた。
「そういうアンタこそ、何であの子と一緒なの?」
あの子、と言ってビビにも視線を向けるナミ。私はちょっと苦笑した。
「追われてたから助けてあげたのよ。そしたらこっちで大きな音がして…。で、気になったから、様子を見に来たって感じ?」
原作知識があったから…。なんて事は言えないので、起こったことを簡単に説明したら、何故か感極まった様子でナミに抱き着かれた。
「ありがとう!さすがイオリね。10億ベリーの可能性が残ったわ!!」
「10億?」
バンバンと背中を叩きながら『私の味方はあんただけ』とか言ってますけど?
原作知識で知ってるけど、この時点ではビビも知らない事だから、金額だけを聞いて察するのにも無理がある。
なので私の口から出た言葉は疑問形。ナミからは、後で説明すると言われた。
「それで、ここでは何があったの?」
聞き返すと、ナミは真面目な顔つきになった。
「それがね……」
ナミの話を聞いたところ、私の予想通りの内容だった。
3バカは飲み食い潰れ、ゾロとナミは狸寝入りをしていた。ゾロは辺りが静かになった時点で行動を開始。バロックワークスの賞金稼ぎどもを倒した。本来なら、そこで一件落着となるはずが、別の事態が幕を開ける。
新たに現れた2人組(Mr5ペア)によってアラバスタ王国の王女ビビと護衛隊長イガラムは抹殺されそうになったのだ。
ビビは逃走したものの、追いつかれ抹殺されるのは時間の問題。イガラムが満身創痍ながらもゾロにビビの救助を頼むも、事情がさっぱり呑み込めないゾロはそれを拒否。
しかしそこで、金の匂いを嗅ぎ付けたナミが話に乗っかった。
けれどナミ本人がビビを助けられるはずもなく、ゾロを使おうとしたが、ゾロはこれも拒否した。
ここまでは、ほぼ原作通りの流れだ。けれど、原作とは決定的に違う事がある。それは一味の資金の管理をナミでなく、私がしている事だ。
原作でのナミはここで、ローグタウンでの借金をネタにゾロに言うことを聞かせた。
※注:原作のあの時点では一味の活動資金はそもそも無くて、ナミのポケットマネーからお金を貸しました。ローグタウンでサンジが食料調達したのも実は彼のポケットマネーだったのでは?と思っている。
しかし、ゾロが刀調達の資金を要求したのは私だった。
そうつまり、ゾロにはナミに対して借りが無かったのである。それが無ければ、基本的に人に使われることが嫌いなゾロがナミの命令を聞くはずも無い。
私がビビを助けに行ったのは、この事がわかっていたからだ。2人の喧嘩についてはすっかり忘れてましたけど…
ゾロがこの場所でナミと言い争っていた為に、Mr5ペアの居る場所ではなく、ここで喧嘩が勃発したらしい。
思った通りの事だった。もっとも2人の喧嘩については、忘れてなくてもどうしようもなかったけどね?
2人の喧嘩はしばらく続いたけれど、やがてナミがブチ切れて鉄拳を以て鎮めたとのこと。
しかしその時には辺りは静かになっており、ビビは仕留められたと思ったらしい。
あぁ、なる…。それでナミがキレててイガラムが絶望してたわけか。
「そういえば、あの2人は?」
説明し終えたナミが、Mr5ペアについて聞いてきた。
「取りあえずぶっ飛ばしといたわ」
その後追い打ちもかけたけどね!
「そう」
あいつらに関しては正直どうでも良かったのか、ナミの答えはあっさりしていた。
「ぶっ飛ばした!? バロックワークスのオフィサーエージェントを!?」
この場でただ1人驚愕しているイガラムに、ビビが話し聞かせる。
「本当よ、イガラム。流石は4000万ベリーの賞金首というか……」
ビビが私に視線を向ける。そんな微妙な顔で見ないでくれる?
「あれくらいの相手なら、私じゃなくても、ルフィやゾロやサンジなら、問題なく倒せてるわよ」
チラと視線を向けると、当然だと言わんばかりにゾロが頷いていた。
ビビは、そういう事じゃないという感じの顔をしてたけど?
「なぁ、何がどうなってんだ?」
一方で、全く状況が飲み込めていないらしいルフィ。ついでに言うなら、ルフィの体型は風船のごとく膨れたままだ。
ルフィの疑問を受けて、ナミが真剣な顔になった。
「そうね、私も詳しい事情を聞きたいし……とりあえず、あなた」
ナミは私に目配せした後、ビビに視線を向けた。それに対して訝しげな顔をするビビ。
「ちょっと、私たちと契約しない?」
「契約?」
目をパチクリさせているビビは、王女でも犯罪組織の一員でもない、ただの年相応の女の子に見えた。