それが人生の転換点だった   作:ファンファン

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お祭りとかの屋台の食べ物って美味しそうに見える……と思うんです。

※5月12日少し修正しました


1―10 花火大会 中

 話を終えた後、予定通り屋台を回ることになった。屋台はかなりの数が出ており、離れないよう気をつけながらも、みんなかなりワクワクしていた。

 

 

「ねえねえ、あれ何ー?」

 

 

 金山さんが指差した先には、輪投げの屋台があった。景品は少しショボイが、普通の輪投げだ。ショボイと言っても子供向けっぽいから当たり前なんだけど。

 

 

「あれは輪投げだ。ここのは……あの数字の書いてあるところの棒に輪っかを投げ入れるゲームだな」

 

「へー、あ、射的だ! やってくるー」

 

「なんで輪投げ聞いたんだよ……」

 

 

 射的をやっている場所を見つけて走っていってしまった。迷子になられると困るので、追いかけてそのまま全員で射的をやった。あの大きめのやつって銃1本でいけるんだろうか。2本以上ならまだ分かるんだけど。

 そのまま射的を終え、屋台巡りを再開する。成果としては、小さめの駄菓子を多く落とせたという感じ。みんな複数落とせたのは運が良かったのか、実力があったのか。一応初射的だよな?

 

 

「じゃあ、あれはなんですか?」

 

 

 田端が指差した先には、串焼きの屋台。焼き鳥もそうだが、牛串ってめちゃくちゃ美味しそうだな……。

 

 

「あれは串焼きの屋台だな。あそこは焼き鳥もあるが、肉系とかフランクフルト辺りを単品で売ってることが多い……ちょっと買って来るわ」

 

 

 そう言ってさっさと買う。屋台の串モノって妙に美味そうに見えるんだよな……ついでにアイが欲しそうなものも買っていった。すぐ側にいるんだから直接聞けばいいんだが、さっきから少し大人しいからそっと手を引くだけで話しかけられていない。

 ちなみに田端たちの分は早水さんが買っていた。後でゆっくり食べることにするはずなのだが、その量大丈夫なのだろうか。

 

 

「じゃあじゃああれは?」

 

 

 アイがいつもより控えめに指差した先には、焼きそばの屋台。屋台の焼きそばの特別感は異常だと思う。こういう時の屋台なら全部そうとかいう身も蓋もない意見は却下だ。そう思わないという意見も今は却下だ。

 

 

「あれは焼きそば……焼きそばは知ってるだろ。給食で出たことあるし」

 

「あっ、バレた?」

 

「バレるも何もないって……買うか」

 

 

 もしかして、アイは焼きそばが欲しいのではないだろうか。もちろん流れに乗っただけの可能性はあるが、遠回しの誘導かもしれない。でもアイなら直接言うよな……ま、1個買って食べないなら俺が食うか。分け合って一緒に食べることも出来るし。

 

 焼きそばを買って、また屋台巡りを再開する。ここ

以外にも色々と買ったはいいが、少し量が多いか? まあ早水さんが抱えてる量に比べれば些細なものだ。

 もう結構時間が経った気がするが、確認出来ない。腕時計、今度買ってこよう。流石に体内時計で数時間数えるのは練習しないと無理。合ってるかわからないし。

 

 

「では、あれは何ですかな?」

 

 

 早水さんが指差した先には、型抜きの屋台。何人かがちまちまと爪楊枝で掘っている。今時珍しい……んだよな?

 

 

「あれは型抜き、か。珍しい……早水さん?!」

 

「はっはっは。博識ですな」

 

「博識って……何してるんですか……」

 

 

 何がおかしいのか、大きく笑う早水さん。混ざって屋台を聞いてきたぞ、絶対知ってるだろうに。むしろあなたが説明すべきじゃ……そんなこと口が裂けても言えないけど。

 

 そんなこんなで屋台を完全に巡り終わり、ひと段落つく。早水さんに時間を聞くと、花火までもう少しらしかった。

 もう一度移動というのも面倒だし、荷物も多くなってきていたので、先に花火がよく見えるという場所に移動して買ったものを食べることにした。晩御飯の時間としてはちょうどいい時間だ。

 

 

 

★☆★

 

 

 

 花火の観賞スポットの1つに移動した。まだ時間はあるし他にもスポットは沢山あるようだが、ここにも少なからず人がいる。でもこの辺り、場所が区切られてるような感じがするんだが、気のせいだろうか。俺が現実逃避しているだけかもしれない。

 

 素人でもわかるぐらいにいい感じの場所に着くと、早水さんがどこからともなくレジャーシートとミニテーブルを出してきた。俺たちが全員座れるぐらい大きい。全然ミニじゃない。

 そういえば、あなたかなり身軽な格好だったと思うんですけど、どこから取り出したんですかね。屋台で買った物もどこにしまってたんだ? 金山さんの分、最終的にとんでもない事になってた筈だけど……。

 

 とにかく、ありがたくそのテーブルを使わせてもらい、晩御飯という名の屋台で買ったものを食べることにした。俺とアイが隣合って座り、テーブルを挟んで田端と金山さん、早水さんが座っている。

 皆お腹が空いていたのか、待ちきれないという様相だった。アイもいつもより食べ物に意識がいってる時間が長かったと思う。

 

 

「この焼き鳥、美味しいですね!」

 

「この焼きとうもろこし美味しい! こっちのお好み焼きも、こっちも……」

 

 

 準備を終えてすぐに田端と金山さんは食べ始めた。相当お腹が減っていたのか、勢いも凄い。特に金山さん。でもりんご飴とチョコバナナは今同時に食べるものじゃないと思うんだ、俺。

 

 

「花山さんって、食べた物どこに入ってるんだろうね」

 

「金山さんだ……それは考えるだけ無駄だから、気にしなくていいやつだぞ」

 

「相変わらず晴香はよく食べますな」

 

 

 よく食べるってレベルじゃない。何あれ吸い込まれてる。お好み焼きとかたこ焼きの山がドンドン消えていくし、焼きとうもろこしなんて10秒もかかってないんじゃないか?

 ちなみに早水さんは2人の世話をしながら器用に食べていた。こちらも残像が見えるような気がする。

 

 

「こっちも食べ始めよう。アイ、食べたいものどれでも食べていいぞ」

 

 

 何せそこそこ買ってしまったからな。普段節約っぽい事してる代わりだ。今日はなるべく楽しんでもらいたい。アイもお小遣い的なものは貰うことが出来ているらしいが、色々買える程じゃない。俺も浪費は避けるべきだが、少しぐらい買ってあげたいじゃないか。

 

 

「いいの? じゃあ……焼きそば食べようかな」

 

 

 アイが少し逡巡してから選んだのは焼きそばだった。やはり食べたかったのか、それとも別の理由なのか。わざわざ聞くことじゃないと思い、大人しく焼きそばを渡す。

 

 

「はいこれ。あとこの辺のは勝手に食べてもいいからな」

 

「うん、青哉くんありがとう……これが、青哉くんが私に買ってくれた焼きそば……えへへ……」

 

「おう……さて、俺も食べるか」

 

 

 アイの言葉の前半以外を聞き流しながら、たこ焼きを口の中に放り込む。このたこ焼きも美味い。大きさは小さめだが、中のタコが大きめで存在感がある。食べやすい。

 

 

「ね、青哉くん」

 

「どうした、アイ」

 

「あー」

 

 

 アイに呼ばれたので返事を返す。なんだろうと見ると、口を開けて待っているアイがそこに居た。何を求めているかは分かる。だけど、それをしようとするとなにか良くないことをしている気分になってくるのがアイの悪い所だ。俺が勝手に感じているだけかもしれないけど。

 少し逡巡した後、今食べようとしていたたこ焼きをアイの口に入れる。ちょっと手が震えた。

 

 

「……はいよ」

 

「もぐもぐ……うん、美味しいね、青哉くん!」

 

「ああ……くっそ負けた気がする」

 

 

 とても良い顔で笑いかけてくるアイ。可愛くて、なんでも許してしまいたくなる……そんな雰囲気を醸し出している。まあ可愛いことに間違いはない。でも本当に美味しそうにしてる。なんか嬉しいな。

 そんなこともありながら、無事に食べ終わることが出来た。こういう場所でご飯を食べるのはかなり新鮮だな。アイも満足そうに見えるし、良かった。

 

 

 

☆★☆

 

 

 

 晩御飯を食べ終わり、諸々を軽く片付け、身体を少し休めた後。ようやく花火がうち上がろうとしていた。周りのスペースはどんどん埋まっていき、少し遠くに見える橋付近には密集し過ぎなぐらい人が集まっていた。大丈夫か……? 警備員いたし大丈夫だろうけど。

 

 

「花火ってどんな感じなんだろうね!」

 

「僕も初めて見ます……!」

 

 

 田端たち見た事ないのか。結構意外だ。それなり以上の生まれだろうし、そういうのにも出ざるを得なさそう……逆に外に出せなかったのか? そう考えれば見え隠れする世間知らず感も分かるな。

 

 

「そうなのか? 田端たちなら見た事ぐらいありそうだが……まあ俺も初めてだけどな」

 

「私も初めて見るなー」

 

 

 ん……今のは嘘? でも半分本当に聞こえたんだよな……ま、いいか。アイと一緒に見れるんだし。俺も多分本当に見た事ないし。

 

 

「そろそろ始まりますな……」

 

 

 早水さんがそう言った瞬間、雲一つない夜空に、大きく花火が打ち上がった。満開の花だ。

 

 

「綺麗……」

 

「凄い……」

 

 

 田端と金山さんがほぼ無意識にそう呟いた。視線は花火に釘付けにされていて、口が開いている。かくいう俺も本物の花火の迫力に感動している。知識や想像よりもずっと凄い。

 

 

「綺麗だね、青哉くん」

 

「ああ、想像以上に綺麗だな……花火見て言ったんだよな?」

 

「もちろん」

 

 

 アイにめちゃくちゃ近くで話しかけられたのでアイの方を向くと、こちらを見ているアイがいた。事故らなくて……瞳孔開いてないか? 花火のことなのか聞くと同意が返ってきた。だから花火の事なんだろう。そうに違いない。

 しかし、花火の明かりに照らされたアイの横顔……破壊力高い。横っていうか真正面だけど。

 しばらく見合った後、アイから目線を外し、花火を見る。こうして話したほんの少しの間も花火は上がり続けている。大小様々、色とりどりの花火だ。

 

 花火はその後も次々と打ち上がり、星やハートのような形のものに、様々な花を模したものもあった。最後の特大花火が打ち上がるまで、皆が皆、花火に夢中になった。

 その最中、誰かに手を重ねられたのでお返しにしっかり握り返した。その手はとても柔らかく、こんな暑い夏でもずっと感じていたいような暖かさだった。




打ち上げ花火です。
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