それが人生の転換点だった   作:ファンファン

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 もう出す機会が遠いものは前書き後書きで出した方がいいんじゃないかと考えてしまう今日この頃。
 なんとなくこんなもの、で書いている部分があるので、あまり気にしないで読んでください。


1―16 目指すモノ 望むモノ

 ここ最近ずっと考えていたことがあった。アイを救うとして、今はまだそばにいられる。だが、数年後やその先は?

 アイがアイドルになった後なんて特にそう。一般人とアイドルという差。その違いで遠く離れていってしまうのではという懸念と一抹の恐怖。

 今考える事としてはあまりに先の話で、でも何もしなければ変えられない程近い未来の話。ただ、どうすればアイの傍に居られるのか、何かあった時にすぐ助けに入れるのか……全く思いつかずにいた。

 

 今までの、たった数ヶ月の短い期間だとしても、その間の出来事を思い出すと妙な焦燥感に襲われる。早くしなければ手遅れになるという、虫の知らせにも似たなにか。

 必要なのは、来るべき時にアイの傍にいる方法。それさえあれば、それに向かって進むだけ……そのはずだ。

 

 模索していくうちに、2つの道が思い浮かんだ。ひとつはこのまま生きていく道。アイをこちら側から助けようとしながら、あちら側には触れられない道。

 もう1つは危険な道。どちらからも助け、救える可能性はあるが、下手を打てば命に関わるような道。

 誰かに背中を押されるように、停滞していた思考から1歩踏み出した。微かな希望に縋るように……その先に未来があると信じて。

 

 

 

☆★★

 

 

 ある日の帰り道。前々から考えていたことを実行する。アイに頼み事をするのだ。その方が良い気がしたからという理由になりえない理由で。この頼み事をする相手としては微妙なライン。俺の知るもう1人のアイ(原作のアイ)がそういった事をやり始めたのだってもっと先のはずなのだ。それでもアイに頼むべきだと、ナニカが囁く。

 おそらくは、あの記憶の影響だろうと思う。そうでなければ、個人的リターンなんてほとんど無いはずのものを目指すことはしないはずだ。

 

 

「なあアイ。1つ頼み事があるんだけど……」

 

「どうしたの青哉くん、なんでも言って? 青哉くんのためならなんでもするよ」

 

 

 そう言ってくれるアイ。相変わらず優しい。優しいんだけど、こうやって頼り続けたらいつかダメになるんだろうな……普段も頼るより頼られるを目指してるけど、気をつけよう。

 

 

「俺に演技を教えてくれないか?」

 

「……どうして、教えて欲しいの?」

 

 

 そういう言葉が返ってきた。教えられるかどうかではなく、どうしてと。こちらを見てるのにも関わらず、表情は見えない。謎の緊張感に襲われる。

 

 

「結論から言えば、まあ、役者になりたいと思って」

 

 

 俺が選んだ案は、役者になること。あくまで俺の知識だが、アイドルの傍に行けるのは、アシスタントなどの裏方か、共演者、同業者だけだ。ファンなどを入れるのであれば、もっとあるとは思う。でもそれじゃ一般人と変わらないし……色々と、な。

 しかし、年齢を考えればアシスタントとかはまず無理だ。裏方はそう簡単に参加出来るものじゃないし……何分こちらは未成年。まず普通に働けない。法に触れまくってる。

 でもだからと言ってもたもたしていれば、何かあった時に手遅れになってしまうかもしれない。

 

 そこで役者だ。今の年齢でも映画や演劇関係なら通る。ある種の例外規定みたいなものだと俺は思っているが、それを利用したい。そうすればあちら側でもアイに近づける。

 また、本当に著名ならたった一人でどれだけの利益を出して、どれだけの人を動かせるのか。そんな理想は叶わずとも、障害があってもやる価値は少なからずある。

 

 それに、あの記憶によれば、アイが映画などに出演していたこともあるようだし、同じ芸能界にいれば何かしらの機会をつくってそちら側で会うことも出来るだろう。目指せ共演者……でいいのかはわからない。とにかく自然に接触しやすいように、だ。

 ……まあ、アイドルが男と2人で会うとかは間違いなくスクープものだから、どう転ぼうと色々工夫は必要だろうけど。

 

 

「役者……その世界は、きっと簡単なものじゃないんだよ? 大変な事も多いし、時間も沢山使うことになる。それでも、やるの?」

 

 

 アイからの、おそらく警告。それは真に迫ったものがあり、微かに抱いていたいくつかの雑多な疑問は消え去った。ただ、アイの目は誰かを止めようとする人の目では無かった。

 

 

「ああ、やる。俺の目的のために、何がなんでもやる」

 

 

 これがきっとアイの助けになって、救うことに繋がると信じて。

 

 

 役者になって、一定以上の影響力があればかなり動きやすくなる。そうすれば、色んな物事へのやりやすさに繋がる。芸能界には芸能界のやり方があるのだから。その為には実力とコネ、歴が必要。これぐらいしなければ、アイに並ぶ事なんて出来ないだろう。

 いつ役者になるのか、なれるのかは不明だが、早いに越したことはないし、実力もあるに越したことはない。その為には、やらなければならないことが多い。

 

 特にあの親をどうにかしないといけないんだが、目星は既につけてある。あとはあの人に連絡してちょっと色々してもらわないと。まさか、事務所も携わってるとは思ってなかった。あの時の話、絶対わざとだったろ。

 

 これ、アイに頼んで大丈夫だったのか……他に頼もうと思える相手はいないけど。アイのためにやるつもりなのに、アイに頼むのは、どうなんだ……だめだ、変なことは考えないようにしよう。

 

 

「そうなんだ……うん、わかった。私に出来ることは全部やるし、私の知ってることは全部教えるよ。でも、これは演技であって演技じゃないってことは、ちゃんと伝えておくね」

 

 

 アイはそう言ってくれた。どういう意味なのかは薄らとしか予想出来ないが、きっとそのうちわかるだろう。とにかく、アイが了承してくれて良かった。

 

「わかった。それでも本当にありがたい」

 

「……ねえ、青哉くん。その目的って、聞いてもいい?」

 

 

 アイにそう聞かれた。なにか大切なものを確認するかのように。……なんでやるのかという、今はまだとても言えないものを。気恥ずかしさと、話すべきじゃないという直感。それらが今だけは秘密にしろと、警告に似た何かを送ってくる。

 

 

「……まだ秘密だ」

 

「……えー、教えてくれないの?」

 

 

 そう言ったアイは少し拗ねたように見える。でもどこか嬉しそうだった。今、喜ぶ要素あった? もしかして……アイを頼ったから、とか?

 

 

「いつか、その時が来たら、教える。じゃ、また明日!」

 

「あ、青哉くん!」

 

 

 意味深っぽく中身の無いことを言って俺はその場から逃げ出した。これ以上居たら変にせっつかれそうだったし、羞恥心が凄くてとんでもない顔になってたかもしれなかったし……これ以上アイに恥なんて晒したくないし。

 この後アイが追ってくることはなかったが、急に変な事を言った自覚はあるので、明日が不安だ。朝、来てくれるよな……?

 更に、いつ何をやるかなどを一切話し合ってないことに気付いて焦った。明日へのヘイトが更に上がった。

 

 翌日。いつもより良い笑顔で少し雰囲気が変わった上に、妙に距離が近いアイから話を振ってくれたのでなんとかなった。近いというか距離がなかった気もするが、気の所為だろうか。

 よく考えたら、何を教えるかって俺の考えることじゃなかった。やっぱりどうかしているのかもしれない。

 

 ……まだ遠い未来で、俺の知る未来(絶望)を回避してアイを救う事ができた時。その時には、この記憶について話したい。隠し事なんてない方が、きっと合ってるはずだから。……少なくとも俺は、そう感じている。

 

 

 

☆★★

 

 

 

 少年が少女に頼み事をした日の夜。月明かりがいつの間にか雲に隠された空の下。部屋の窓から外を見る少女の表情はどこか暗く、その場にいないにもかかわらず、視線は()()()()()宿()()()少年に向けられていた。

 

 

「……ごめんね、青哉くん。私が教えられるのは、演技じゃなくて嘘なんだ。通じるから、許して欲しいな」

 

 

 彼女の言葉は少年に届くはずもなく、闇に溶けて消えていった。その懺悔と期待は、いつかの未来において何をもたらすのか。

 

 

「でも、なんで役者になろうとしてるんだろう。青哉くんは……ううん、別にいいよね。違うのは教えて貰ってたし、会える時間は減っちゃうかもしれないけど、良い事があるかもだし。それに、あれは本物だったもん」

 

 

 少女は少し悩んだ後、暗い表情をやめ、少し嬉しそうな表情になった。そしてそのまま更に思考に耽る。

 少女から見た少年は、歪に出来上がった異常な才能を持っていた。全く有り得ない仮定として、少年が少年でなくとも、少女は少年のことを覚えていただろうほどのもの。

 

 

「うーん、役者……なら、私も頑張らないとかな。少し方向は違ったけど、一応ある程度は出来るし……でも色々とあれかもしれないし……」

 

 

 少女は少しづつ思考を加速していった。少年やその他の要因によって強化された脳は、少女にとって大いに役立っていた。それこそ、本来の少女なら有り得ないことが出来るぐらいに。

 

 

「青哉くんは多分、今の時点でかなりの演技が出来るよね。青哉くんの本気の嘘って本当に凄いもん。私でも油断したら見逃しちゃうかもしれないぐらい……本当に見逃すことなんて絶対にないけどね」

 

 

 少女は不敵な笑みを浮かべ、瞳には黒き星を宿す。それらには、獲物の一切を逃すことのない、狩人を思わせる雰囲気が付随していた。

 

 

「だとしたら、まずそれを人に見せるようにすればいいんだよね。それなら私と同じ様に……私と、同じ……青哉くんと、また……えへへ」

 

 

 身体をゆらゆらさせながら、何かを妄想する少女。普段の少女の姿からは想像がつかず、しかし想像がつく行動。黒き星は知らずの内に消える。

 

 

「それにしても、またあの言葉を聞けるなんて本当に思ってなかったなあ……嬉しいよ、青哉くん」

 

 

 郷愁の念を抱かせるような雰囲気を纏う少女。少女の瞳には、空が映っていない。

 

 

「……やっぱり、ちゃんと言うべきだったのかな。でも、それは本当に大切な人に、大切な時にって言ってた。それは多分、()じゃないんだよね。早く、全部伝えたいのに……」

 

 

 何かを待ち望むように、何かを悔やむように、そしてどこか寂しそうに表情が歪む少女。そのまま視線も下がっていく。しばらく俯き何かを経た後、再び面をあげる。

 

 

「……青哉くん、私のために役者をやってくれるのかな。だとしたら、すっごく嬉しい。あの時の青哉くんも凄くカッコよかったもん。それに、思い出してないみたいだったけど、あれは……」

 

 

 少女は僅かに唸り声をあげながらも、冷静に推測していく。そして何かを決意したのか、一瞬だけ真剣な雰囲気を纏い、その後いつも通りの表情に戻った。

 

 

「うん……やっぱり、アイドルになろうかな。青哉くんと居られるならアイドルもやらなくていいかも、なんて思ってたけど。アイドル自体が嫌だった訳じゃないし、役に立つ事もありそうだし……」

 

 

 誰かに軽口をたたくような雰囲気で言う少女。その内容は、簡単に決めて実行出来ることでは無かった。しかし、その言葉には既に経験した者だけが持つ特有のモノと、絶対的な自信がこもっていた。

 

 

「青哉くんってイジワルだよね。こんなに難しいことさせるなんて、ほんとに……」

 

 

 少女の表情は滲んで、どこまでも笑顔だった。

 

 雲が晴れ、夜空に浮かぶ月が再び姿を現す。その月は見事な満月で、見る者全てを魅了する魔力を持っていた。

 

 

「まだ時間はかかるけど……待っててね、青哉くん」

 

 

 そう言った少女は、視線はそのままに、月明かりに照らされていた。ふてぶてしくも自信に満ち溢れ、同時に未来を夢想するような表情をして。

 

 

★★★

 

 

 この日は、間違いなく重要な1日だった。しかし、それを知るのは当事者だけ。誰にも知られることの無い、秘された1日。仮にそれを知る何者かがいるのならば、それはきっと、神に他ならない。




 これにて第一章、完結です。なんか微妙な所じゃない?とかツッコまないで下さいお願いします。
 次回はおそらく閑話らしきものが入ります。そして、その後第2章に入る予定です。


 それはそれとして……第1回、アンケートを取ります。前回はテストなので、第1回じゃなくてプレです。よければ投票してってください。(あくまで参考程度です)

アイとのイチャイチャ

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