それが人生の転換点だった   作:ファンファン

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最近色々ありましたが、生きてます。


2―1 最近のいつもと今後の予定

 あれから暫くの月日が経った。季節は既に冬。もうすぐ二学期も終わりという頃。アイの演技指導は順調に進んでいた。

 

 簡単には想像できないものをやらされたり、一定秒数で何種類もの感情を表現したり、体力作りに走ったり、パルクールもどきをしたり、芸能界についての座学だったり。

 

 ……なんで今のアイがそんな事を知ってるんだろうか、という疑問は浮かんだが、その答えは得られなかった。アイ曰く「まだ秘密」らしい。そう言われたら追求出来ない。今はまだそこまで重要って訳でもないと思うし。

 知るべき事ではあるだろうが、無理やり話させてまで知るべきとは判断出来なかった。なるべくアイに何かを無理強いしたくないからな。もちろん、必要なことであればきちんと聞く。

 

 

 また、役者をすることの準備も着々と進んでいる。早水さんとの話し合いはかなり緊張したが、成功した。というか、どうやら早水さんは俺を引きずり込もうとしていたようで、後は親の許可だけという所まで進めていた。何それ怖い。老練な手腕で若い芽を、という事だろうか。

 

 自分の中である程度納得がいく所までいったら、いよいよ親の説得。もう少し先になりそうだが、理想は年内……だな。再来年頃に起こるであろうあの出来事までになんとか安定させたい。

 まあ、安定させても養うとかそういう事が出来る訳では無い。成人後なら一考の余地はあったが、まだ子供だし。目指しているのはあくまでもアイの助けになり、救うことなのだ。それで良くなるとは簡単に思えない。むしろ障害が増えて大変な事になるだろう。しがらみはいくらでもある。

 

 

 そして今一番のピンチは、来る出来事に対して何をすればいいか分からないということだ。手の打ちようがない。

 普通であれば、なにか事情があったんだ、とか声をかけて捨てられたわけじゃないというのを強調して行くべきなのだろうが、アイの場合は違う可能性が大きい。

 

 アイの母親は、アイに対してDVをしていた可能性がある。それ故にアイが母親に対して良い感情を持ってるとは考えにくい。実際はどうかなんて分かったものではないが。

 それでも、どうすれば少しでもアイの負担を軽くして、助けになれるのかを考える事は無駄じゃないはず。未だ答えに近づけた気はしないものの、少なくとも友達として、何かの支えにはなれていると信じている。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

「……うん、取り敢えず及第点かな。あんまりやり過ぎても良くないんだよね?」

 

 

 アイがそう言って近づいてくる。テレビレベルの知識ではあるが、過度な負荷は悪影響を及ぼすはずだ。年齢関係なくそうだろうが、子供の時の方が影響が大きそうだ。

 

 

「そのはず、だ。はぁ……十数キロ走った後にダンス3セットって、正気か?」

 

 

 1度ベンチの方へ行って休む。普通の子供にやらせる量じゃないよな。体力作りにも限度ってない? 限界ギリギリって感じはしないけども。慣れてきただけだったらどう思えばいいのやら。

 

 そういえば、このダンスはなんなのだろうか。アイが実際にやってみせたものを真似しているが、振り付けにかなり見覚えがある。ただ、思い出せない。軽く調べたり聞いたりしたが、それでもわからなかった。こう、脳に刻み込まれてるような気がするんだけど。それこそ何度も何度も見続けてきたような、そんな感覚。

 

 

「これでも少ない方だったと思うんだけどなー。でも、こんなに小さくなかったし……もしかしてやり過ぎ?」

 

 

 アイが疑問を浮かべている。何を参考にしてるのか分からないが、対象年齢は本当に合っているのだろうか。ダンスそのものは体力作りと運動能力の向上だと思ってるけど。

 

 

「いや、これぐらいならギリギリ、本当にギリギリセーフだと思うぞ。アフターケアは出来る限りやってるし」

 

 

 クールダウンにストレッチ。少しでも異常があればアイシングしたり、たまーにマッサージモドキをしたり。知ってるのも出来ることもこれぐらいだ。

 一応個人的に早水さんのツテでそっち系の人に意見を聞いたが、概ね同じ意見だったからそのまま取り入れてる。この量本当かよ。ちょっと疑った。

 

 

「……こうして考えると、やっぱ早水さんおかしいよな」

 

「そうだねー。いくら業界関係者だとしても、手が広いし早い。流石社長さんだね」

 

 

 アイに思いっきり聞かれてた。脈絡無かったのになんで普通に返されたんだろうか。……最近こういう事が増えてきた気がする。もしかして心読まれてる?

 

 社長はあれぐらい出来ないとなれないものなんだろうか。まあいくつかの会社持ってるらしいし、間違いなくやり手だろうけど。

 

 

「そういえばそろそろ冬休みだけど、その間もうちに来るのか?」

 

「その予定だったんだけど、ちょっと難しそうなんだよね」

 

 

 そう言って少し眉をひそませるアイ。難しそうということは、やはり施設の方だろうか。今までのアイの感じからして、自由なら絶対来るだろうからな。

 

 

「やっぱり向こうの?」

 

「そう。年末年始は向こうにいないとダメかもしれないんだよ。だから、暫く会えなくなるかも」

 

「そうか……」

 

 

 有り得るだろうと思っていたこととはいえ、本当に会えない。しかもしばらくの間となると、かなりくるものがある。

 

 

「もっと青哉くんと居たいんだけどなぁ」

 

「俺もその気持ちは一緒だぞ?」

 

 

 アイと居ると楽というか、安心するというか。楽しいし、ポジティブな感情しか湧き上がってこないんだよな。

 そんなことを考えていると、アイが悪戯っ子のような表情でこちらに顔を寄せてくる。

 

 

「本当? 行動で示してくれないと分からないかも」

 

「ここでは勘弁してくれ……また今度、な?」

 

「むー、しょうがないか。じゃあ、今度のお休みね」

 

 

 諦めてくれたのか、いまこの場では何も要求されなかった。しかし、今度ねと約束を付けられてしまった辺り、罠にはめられているような気がしてならない。

 

 ……改めて、俺、随分アイに対して入れ込んでるよなぁ。救いたいって何故か思って、そこから更にぼんやりと助けたいって思ったのが始まりだったのに。

 ここまできたら、認めてしまってもいいのではないだろうか。今はもう、理由無く助けたいのではなく、好きだから助けたいのだと。……仮に認めたとして、それを表に出すことは無いだろうけど。

 いつまで一緒に居られるのか分からないし、最近思い出したもの(記憶)によれば、中学生か高校頃に……俺の心の防衛のためにもここで辞めておこう。

 

 暫く休憩して落ち着いてきた頃。アイから話を切り出された。

 

 

「クリスマスは無いけど、初詣は行くんだよね?」

 

「その予定だな。田端たちも神社で合流するらしいし」

 

 

 クリスマスは残念ながら予定が合わなかったが、初詣はみんなで参加。1番近い神社に参拝する予定だ。ちなみに、今回も早水さんが来るらしい。もう今後は早水さん前提でいいかもしれない。そうでなくともよく会うことになるはずだからな。

 まだ先の話だが、活動を始めることが出来た場合、早水さん肝入りの人がついてくれるらしい。……なんかおかしいぐらいに恵まれてるよな。跳ね返りが無ければいいけど。

 

 

「初詣……行った気もするし、行ってない気もするなぁ。あんまり覚えてないだけかも」

 

 

 妙に嘘っぽいアイの言葉。何故か笑っている。残念ながら俺にはまだ心を読むことは出来ないが、悪い思い出という訳では無さそうだ。

 

 

「極論祈るだけと言えばそうだから、そんなものかもな。こっちの方は出店あるらしいし、別の方向でも楽しめそうだけど」

 

 

 とは言っても長居する予定は無いんだよな。夏祭りの時と大した違いは無いし。おみくじはデカイけど、それぐらいじゃないだろうか。あとは……甘酒?

 

 

「へー、そうだったっけ。まあ、私は青哉くんがいればなんでもいいかな」

 

 

 興味があるともないとも言えない雰囲気を出しながらアイはそう言った。こちらにじーっと視線を向けている。

 

 

「それは嬉しいな。ただ、もう少し周りにも興味を持った方がいいと思うけど……さて、そろそろいい時間だし、帰るとするか」

 

 

 秋も過ぎ、冬になった今では日が落ちるのが早い。夏の頃とは大違いだ。その分、外に居られる時間も減ってしまう。

 

 

「もうこんな時間なんだ。相変わらず青哉くんといると早い……これは、私と青哉くんが一緒にいる時だけ世界が速くなってる?」

 

 

 諸々の片付けをしていると、横でアイがとんでも理論を展開していた。こんなに可愛い顔してたまに……割と頻繁にかもしれないけど、変な事言い出すんだからビックリするんだよな。それもいいんだけど。

 

 

「なんかとんでもない事言い出したな……」

 

「だってそうじゃない? 2人でいるときだけすぐに終わっちゃうんだよ?」

 

 

 そう言ってベンチに座っている俺の横に来て抱き着いてくる。今汗かいてるし外だしあんまり近づくものじゃないって。

 

 

「確かにそう感じるけども」

 

「でしょ? 遅くなって欲しいのとは違うけど、すぐ終わっちゃうと寂しいなー」

 

 

 そう話すアイの表情は本当に寂しそうだった。そこには、どうしようもなくても、どうにかしようとしたくなる魔力がある。俺はそれが無くてもどうにかしようとしてるけどな。

 

 

「俺も寂しいが、やらかして今後を失う訳にはいかないだろ? 一緒に我慢だ、我慢」

 

「……私、これでもずっと我慢してるんだけどなー。でもそれとこれとは話が別か」

 

 

 アイがそんなことをボソッと言ったが、何かしてしまっただろうか。それともアイの今の状況の話? どちらにせよ、力になれるならなりたいな。

 

 

「何かあったなら相談に乗るぞ? なんでも言ってくれ」

 

「青哉くんがそれ言う? でもそうだね、まずは……」

 

 

 何故か俺にヘイトが向いた後、言葉を一度切って立ち上がる。アイはそのままこちらを向いて、手を差し出してきた。

 

 

「手を繋いで帰ろ?」

 

 

 そんなことを言うアイは、満面の笑みをこちらに向けていた。この笑顔を見てしまうと、どんなことがあってもなんとかなるように思えてしまう。

 何かの相談事らしきものも誤魔化されてしまったが、多分大丈夫だろう。原因は俺のようだし、深刻じゃない。後で自分の行動精査しよう。

 

 

「……ああ」

 

 

 差し出された手を握って立ち上がる。今はまだ同じくらいの大きさの手。手を繋ぐことはよくやっているとはいえ、まだ慣れない。

 手を繋いでいる間、アイはかなり上機嫌で、ずっとニコニコしている幻覚さえ見えてきた。何はともあれ、嬉しそうで何よりだった。




 ぼちぼち投稿はする予定なので長い目で見てください。元々こんなに書くつもりはなかったので……そういえば。今更ですが、アニメ2期決定おめでとうございます。

アイとのイチャイチャ

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