それが人生の転換点だった   作:ファンファン

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GWって休みじゃないんですか?


1―7 ある夏休み前の1日

 暑い。冷房をいれてなければ干上がるんじゃないかと錯覚するぐらいには暑い。もはや異常気象だ。そんな日でも小学校には行かなければならない。あの炎天直下の学校に行くのは普通に辛い。

 じゃあ行かなくていいのかと聞かれればそれは別問題。そんな事をすればアイに負担がかかる。未だにいつからうちの前にいるのか分からないし、教えて貰えてないが、この暑さの中じゃ少しであっても待たせるのはマズイ。

 

 

「……暑さ対策か」

 

 

 暑さ対策といえば色々とある。だがその中で実行出来るものを抜粋すれば出来るものはかなり限られる。

 今のところ考えていたのは帽子被るとか、水筒を持っていくとか、日傘さすとか、団扇か扇子持っていくとか……冷却シートとかあれば大分楽なんだけどな。

 水筒はどうにか出来る。帽子も一応あったし、扇子もあった。だから対策は出来る。でもそれでも暑いものは暑い。

 

 しかしうだうだ言っていても仕方ないので、前日に準備したものを持って家を出る。先程まで涼しかった世界から灼熱の世界へ向かう。

 

 

「おはよう、青哉くん!」

 

「おはよう、アイ」

 

 

 外にはいつも通りアイがいた。帽子を被っていてとても良い。いつか、髪を伸ばして白いワンピースに麦わら帽子というこてっこての服装をしてくれないだろうか。なんとなく似合っている気がするんだが……。

 

 

「今日も暑いねー」

 

「ああ、少しでも違和感があったら直ぐに言えよ。最悪救急車呼ぶし、そうでなくても色々用意してあるからな」

 

「青哉くんが私の事すっごく大事にしてくれてる……私、そろそろ我慢できなくなっちゃうかも……でもだめだよね。まだ青哉くんが望んでないもん」

 

 

 アイが不穏な空気を出しているが、ここは聞こえなかった振りをする。俺の心の準備が出来ていないし、これはかなり重要なことだ。心苦しいが、先送りさせてもらう。でも、早く結論を出さなければ……。

 少し考え込んでしまった俺は、アイの瞳に白と黒の星が同時に浮かんでいることに気づいていなかった。そして、少しテンパっていたことが事件を引き起こした。

 

 

「……え? なんて?」

 

 

 どうしてこうなった。緊張してかなりウザイ言い方になってしまった。なんならスルーの方がまだマシだっただろう。失敗だ。失敗した。ありとあらゆる意味でもう生きていけない。ごめん、アイ。こんな俺をどうか見捨てないでくれ……。

 

 

「ううん、なんでもなーい」

 

「そ、そうか、それならいい……何かあればなんでもすぐに言えよ?」

 

 

 アイはなんて優しいんだろうか。俺のイカれた発言を優しくスルーしてくれるなんて。女神か天使か……誰かがアイを救おうとするのも納得だな。俺もなんだけど。

 

 

「うん、()()()()()()()()()()()すぐに報告する!」

 

「ほんと、何かあってからじゃ遅いからな……」

 

 

 わからない違和感はさておき、熱中症を始めとした体調不良や病気というのはもっと気を配るべき事柄だ。身体にどんな悪影響があるか分からない以上、なるべく早く解決するしかない。アイには健康に過ごして欲しいものだ。

 

 

 

☆★☆

 

 

 

「もうすぐ夏休みだー! 楽しみだね、アイちゃん!」

 

「もうそんな時期なんだね、金床さん」

 

 

 そう、夏休みが迫ってきたこの時期。学校が休みという甘美な響きに心を躍らせる子は多い。かく言う俺も楽しみではあるのだが。

 

 

「金山さんだ……夏休みと言っても、あんまり出来ることがなぁ」

 

「僕に案があるんだけど、夏休み、みんなで行きたいところがあるんです」

 

「行きたいところ?」

 

 

 田端がそう言ってきた。みんなと言うのはいつもの4人組だ。入学の時からずっと同じ面々で関わっているためである。そういった点ではアイがここまで関わっているのは珍しいと思っている。

 さて、行きたいところとは一体何処だろうか。行けるところだといいんだが。

 

 

「今度、向こうにある川沿いでお祭りがあるらしいってお父様とお母様が言っていたんです。花火も上がるらしいですし、楽しそうだなって」

 

「花火大会か。俺は全然いいと思うぞ」

 

 

 あの川、花火大会出来たのか。でもこれは好都合だな。アイと出かけられるとは。これは是非とも楽しんでもらわないといけない。

 ところで田端くんや。今お父様お母様って言った?

 

 

「花火なんて1年ぶりだよ!」

 

「花火は大体1年ごとだと思うぞ」

 

 

 夏以外ではあんま見ないからな、花火。ただ夏以外でやらないという訳では無い。秋や冬、春だってやるところ自体はある、らしい。俺は見たことない。

 

 

「私も花火はあんまり見たことないなー。最後に見たの、いつだっけ」

 

「よし決まりだ。俺たちは夏休み、花火大会へ行く……と言いたいところだが、みんな行けるのか?」

 

 

 アイを花火大会に連れて行くのは是非ともやりたいが、予定が合わない可能性があるし、何より夜に外出出来るのかという問題がある。子供たちだけだと流石に許可は出ないだろう。

 

 

「私は大丈夫だよ!」

 

「私も大丈夫だと思うよ。どうとでもなると思うし」

 

 

 金山さんはともかく、アイのそれは本当に安全な方法なのだろうか。何かやらかすんじゃないかと心配になる。

 しかし、保護者代わりの人。田端に聞いてみるのが先決だな。

 

 

「そうか……なあ田端。保護者というか、そういう立ち位置をしてくれる大人は来てくれるのか? もちろん両親でもいいんだが」

 

「えっと、一応仲の良い信頼できる人が来てくれると言っていたので、大丈夫だと思います」

 

「……田端はその人のことを知ってるのか?」

 

 

 仲の良い信頼できる人って、ワードがもう不安だな。実際はちゃんとした人が来るとは思うが。しかし、両親自体は来れないんだな。

 

 

「はい! 昔からよくしてくれて、叔父さんみたいな人なんです」

 

「おじ……叔父か。まあ田端が面識あるならいい。それならおそらくは大丈夫だろう」

 

 

 田端はよほどその人のことが好きなのか、いつもより元気がよく、声も張り切っている。ただ、叔父さんみたいってなんだ? 叔父じゃないのか。伯父かもしれないけどそうじゃなくて。もし予想が当たっているならその人は……ま、今はいいか。

 

 

「じゃあ決まり! 私、今から楽しみだなぁ」

 

「花火大会……青哉くんと2人きり……ふふっ」

 

 

 金山さんが純粋に期待しているのに対し、アイはどことなく黒いものが見える気がする。でも、2人とも楽しみにしているということは間違いないな。

 

 

「ありがとう、菫堂くん。僕だけじゃこんなに話、進められなかったよ……」

 

「そんな事ないだろ。田端が話を出してくれたから俺はそれに乗っかっただけだ。むしろ俺が感謝してるね」

 

 

 花火大会のことなんて欠片も知らなかった。手紙とか掲示板とかですら見たことがない。本当に感謝している。このままだと夏休みに何もせず終わるところだった。まあイベントが無いというだけで会うなりなんなりしないという訳では無かったが。

 

 

「そ、そんなことは……」

 

「ある。あるとも。大人しく感謝されとけ」

 

「う、うん。わかったよ」

 

 

 にしても田端、素の時は気が弱すぎるような。なにかに影響されてる時は役者顔負けなぐらい変わるのに。……ふむ。

 

 

「はい、授業始めますよー」

 

 

 先生が来てしまったので、各々自分の席に戻っていく。と言ってもそこまで遠いわけではないから時間はかからない。どうでもいいことだが、先生が慣れてきたのかラフになったというか、いい感じに気が抜けてるような感じがする。本当にどうでもいいが。

 

 

 

★★★

 

 

 

 今日も今日とてアイと一緒に帰り、何事も無く帰宅。妙にテンションが高かったからか、いつも以上にキラキラしていた。

 

 

「じゃあまた明日な、アイ」

 

「うん。また明日、青哉くん!」

 

 

 施設まで行って別れる時もキラキラしていた。なんなら輝きが溢れるぐらいだった。眩しかったけどまあそれは可愛かった。そして瞳の白い星がとんでもない事になっていた。

 瞳の星で思い出したが、他の人にはあの()()()()()は見えていないのではという疑問が浮かんだ。それがどうという訳ではないが、もしそうなら俺の特権だと思った、ただそれだけ。なんの確証も無い。

 

 家に帰ると珍しく明かりがついていた。靴も置いてあり、どうやら父親が帰っていているらしい。丁度いいから花火大会の件を聞いてみることにした。変なボロが出るのは嫌だが、反応を確かめるのに使える。

 

 

「っ……ねえ」

 

「……なんだ?」

 

 

 リビングのソファに座ってテレビをつけ、何かの書類を見ている父親。かなり緊張する。今の俺からすると、ほとんど関わったことないのに同じ場所に住んでる赤の他人気味な父親(?)だからな。

 

 

「今度やるらしい花火大会に行ってもいい?」

 

「……好きにしろと言ったはずだ」

 

「わかった、ありがとう」

 

 

 俺が聞くと言葉は返してくれた。しかしこちらを向くことはなく、とても興味なさげだった。なんなら早く行けオーラが漂っている。

 言質はとったのでさっさと自分の部屋に引っ込む。これ以上あの空間に居たくない。この部屋は正確には自分の部屋らしき部屋だ。置いてあるものがものだからそれは間違いじゃないと思うが。

 ふう。よし、楽しく話せたな……は? え、思ってたよりヤバいんですが?

 

 

「なんだ、あれ」

 

 

 これが親子の会話か? もしかしたら不器用なのかとかそんな一般的な希望すら無かったよ。なんなら悪意が滲んでたよ。俺としては別にどっちでもいいけど。

 

 

「好きにしろと言ったはず、か」

 

 

 態度はともかく、好きにしろか。これ放任越したんじゃない? いやまあ都合はいい。どういう意味かはわからないが、自由にやれる範囲は広がった。それに、これは前から予想していたことだったりする。

 この数ヶ月の間、俺の部屋にある机の上に何回か封筒が置かれたことがあった。その封筒の中にはいくらかのお金だけが入っていた。天からの贈り物だってもう少しなにかあるだろうと思ったものだ。

 

 しかし、今回の発言から考えると、これは所謂お小遣いと同じ扱いなのではないだろうか。もちろん、ただのお小遣いとは思っていない。もしこれがただのお小遣いなら、相当なお金持ちになる。流石にそれはないだろうが。

 明らかになにか裏がある。だけど何もわからない。純粋な善意で無いことだけが確か。なんとも難しい状況だ。どこまで行っても都合がいいのに変わりは無いんだが、そのうち障害になりそうな気もしている。

 

 

「今は中立なだけの敵、かもしれないな……」

 

 

 敵になりえる奴らにお願い事なんぞしたくはないが、やらなければいけないときがくる。それも、そう遠くないうちに。話すとするなら母親(?)か。なんとなく、あっちの方がやりやすそうだし。

 

 夏休み目前だというのにも関わらず、この家には重い雰囲気がまとわりついていた。




ちょっとアンケートをとりたいと思います。実際どう書くかは未来の事なので分かりませんが、テストも兼ねて参考までに。

アイは料理が……

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