魔法使いの間で指パッチンが流行っているのは私のせいではない   作:かりん2022

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何も我慢しない令嬢

鋼の世界に行って、死ぬほど勉強して錬金術師になった。

目的は、元の世界への道。

そうして、私は両足を失い、真理を得た。

その後は紆余曲折あり、天寿を全うし。

 

私は、またもや転生をしていた。

ナーロッパで、貴族令嬢として。ただし、足がないものとする。

どうせ転生するなら、現代が良かったな……。

 

いや、生まれた時、お母様にめっちゃくちゃ泣かれたらしい。

今も、私を見ると涙ぐむ。

私としては欲しい物も買ってもらえるし、礼儀作法はある程度免除だし、逆にラッキーだと思ってるんだけどね。なにせ通行料。転生したとはいえ、知識を覚えている以上、足を返してもらえるとは思ってはいない。太ももが少し残っているのがありがたいくらいだ。

 

ふむふむ。

魔法と魔法式錬金術のある世界、か。ナーロッパだわ。

魔法式錬金術はかなり興味ある。

私は部屋に引きこもり、両親に甘えて材料を貰いながら、研究に勤しんだ。

義足も早々に作った。

お洒落な鎧っぽいものにした。ちょっとしたギミックも追加してある。

 

楽しい貴族ライフを送っていると、婚約者が決まったと憤慨した様子の父が言ってきた。

兄も怒っている。なんでや、めでたいことやろ。

 

「お父様、お兄様、怒ってらっしゃるの?」

「ああ、ケイシー。お前は頭がいいから、頭のいい子を婚約者にと思って声を掛けたのだがね。とんでもない見込み違いだったのだよ。かといって、取り消しも中々できなくてね。お茶会をする事になってしまった」

「いくら頭が良くてもあれではね。嫌なら断ってもいいよ。全く商家上がりとバカにして!」

 

 お父様とお兄様はプリプリと怒っている。別に婚約者なんていらないのに。

 とはいえ、なんらかの形で家への還元は必要か。いや、お父様に頼まれて取引先の義手義足を作ってはあげてるけどね。月一から多くて週一回のペース。

 んー。この世界観だと、女の子は結婚必須だしなぁ。仕方ないか。

 

 

「お茶会ぐらい、構わないわよ。お相手はどなた?」

「侯爵家の嫡男の長子、エルリックだ」

「まあ! エルリック! ふふふ、なんだか運命を感じてしまうわ。ええ、会いましょう」

 

 私は思わず、その名前に笑ってしまった。

 キョトンとする2人の前で、私は笑いを抑えきれずにいた。なんだか、錬金術の上手そうな子な気がする。

 どうせ絶対に結婚が必要なら、少しでも好きになれる部分がある方がいい。

 さてさて、うちは財力はあるとはいえ、男爵家。失礼のないようにしないとね。

 というかお父様とお兄様、侯爵家相手に勇気あるなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は、繊細で美しい細工の鎧のような義足をつけて、それが一番目立つようなふんわりした足のよく見える服を着た。ドレスっぽいが、ドレスではない。ドレスと燕尾服の中間と言えばいいだろうか。

 動きやすさを重視しつつも、母ゆずりのふわふわした可愛さを全面に出した服。

 足だけ鎧では変かと思い、腕も繊細な草花の細工をした小手をつけた。気分は女騎士である。

 

「可愛いよ、ケイシー」

「ありがとう、ケイオスお兄様」

 

 兄にエスコートされ、茶会の会場に向かう。

 

「初めまして。私、ケイシー・ロウ・トレーディアと申します。今日はお茶会に来ていただいて、ありがとうございます」

「これは……驚いたな。予想以上に美しいお嬢さんだ。私は、ガーデン・フレア・ウィザーディアだ。この子は息子のエルリック・フレア・ガーデン。ほら、挨拶なさい」

「……足があるじゃないか!」

「……はっはっは」

 

 ケイオス兄様が静かに切れている。

 とはいえ、私は輝くような赤毛に赤い髪のイケメンにテンションが上がっていた。

 なんだなんだ、好物件ではないか。私は面食いなのよ。

 

「ふふふ。この足、私が作りましたのよ!」

 

 私が笑ってあえてはしゃいで義足を外してみせると、ケイオスお兄様は慌てて義足を嵌めた。

 

「こら、レディはお淑やかにしないといけないよ、ケイシー」

「なんと、まさかその美しい義足のデザインを?」

「設計から細工まで、全て私がしましたのよ」

「小さなレディが手伝っているという話は聞いていたが、まさか、本当に?」

「妹は「本当の」天才なんです。料理も上手だし、とても美味しいお茶を入れてくれるのですよ」

 

 あら、お兄様ったら。お前とは違うんだ、という皮肉が漏れてましてよ。

 しかしそうか。この子も天才と呼ばれているのか。何が得意なんだろう?

 

「貴族の令嬢が料理を?」

「妹は何かを作るのがとても好きなんですよ。ただ、私では妹のいう事の半分もわからなくて」

 

 目を丸くして聞くガーデン様に、お兄様は恥ずかしげに笑って見せた。

 エルリック様は興味を持ったようだった。

 

「魔導学は修めているのか」

「専門ではないので、せいぜい人並みですが」

「何が専門なんだ」

「真理式錬金術を」

「真理式?」

「妹は新たな系統の錬金術を修めているので」

「その年で自分の流派を? すごいな」

 

 ガーデン様が感心する。

 

「ぼ、僕だって、魔導学なら誰にも負けない! 今日だって、研究ノートを持ってきたんだ」

「あら。じゃあ、お互いに研究を見せ合いませんか?」

「あ……。僕は、僕は、魔法が使えなくて。魔臓を小さい頃の病気でダメにして……」

「魔臓は私の錬金術に関係ありませんわ」

 

 本を交換して、ふむんと私は考えた。

 ちょっと魔臓器修復は錬金術では怖くてできないが、魔法式錬金術の方ならどうにかなるかもしれない。

 

「でも、エルリック様が魔臓器を求められるのでしたら、治療方法を研究しておきます。錬金術は得意ですし、真理式では厳しいでしょうが、魔法式錬金術ならできるかもしれません。そっちも勉強したいと思っていましたし」

「……随分簡単に言うんだな」

「後5年したら、フィールドワークを兼ねて冒険者になろうかと思っています。どうせ足なしを嫁にもらう人もいないだろうし」

「はあ!? だって、足がないのに!」

「義足見えてます? 今は派手ですが、ズボンと靴で誤魔化せば普通の足に偽装もできるでしょうし。私、何も我慢しませんわ。魔力がなくたって、エルリック様が魔導学を学ぶのと同じ。というか、実際に研究する人と戦う人が別で当然だと思いますし。まあ、錬金術は使う当人が理解してないときついですけど」

「魔導学だってそうだ、バカにするな」

「これは失礼」

「選り好みしなければ、君のお婿さん候補はたくさんいるし、冒険者は反対だよ」

 

 お兄様が心から心配そうに言う。

 

「ちゃんと準備すればできますわよ」

「出来るのとやらせるのは別問題だ」

「た、戦えるのか!?」

「戦えなくては冒険者にはなれませんわよ」

「割と妹はなんでもできるので」

 

 こっちは元軍人やぞ。戦闘は得意です。

 その後は、共通の話題である魔導学について話しながらお茶をした。

 

 婚約? 凄い勢いで望まれたので、エルリック様の気が20歳まで変わらない場合に限り結婚するとした。

 後10年はあるし、これで悪役令嬢ものみたいにはならないはずだ。

 私なんかがイケメンに愛されるはずがないと弁えてもいる。

 まあ、10歳で転生者の私とまあまあ対等に話せるんだから、友達でいるのはやぶさかでもない。

 天才というのは、嘘かもしれないが、少なくとも秀才ではあるようだ。

 話していて退屈しない相手というのは重要である。

 

 それとほぼ同時にお城からお茶会のお呼びが来た。

 義足があるなら是非お茶会に来て欲しいとのことだった。

 

 義足なんて珍しいから、子供達に囲まれるお仕事が始まるよ……。

 




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お題箱
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