ウマ娘~come back to Derby~   作:タンドリー

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第6R 激突!VSテオファニー

『さぁ第四コーナーをカーブして直線に入った!前に出るのは二番ドントタイムか』

 

 デビュー戦から約一ヶ月。ツナグの姿は再び京都の芝一八〇〇メートル、黄菊賞のターフ上にあった。

 

『大外からツナグだ!四番のツナグがやってきた!先頭は四番のツナグでゴールイン!!!』

 

 二バ身以上もの着差をつけての完勝に、淀の客席は大いに沸く。圧倒的な強さを見せ、ツナグは見事トゥインクル・シリーズで二勝目を挙げたのだった。

 

「お疲れ様、ツナグ。今回もいい走りだったぞ」

 

 控室に戻った所で流が声をかけると、青鹿毛の少女はズイッと右手を出してくる。

 

「おっと、そうだったな」

 

 流も笑って右手を出し、二人でハイタッチを交わす。先月のデビュー戦時から始めた、二人の勝利ルーティーンである。提案者はツナグで、曰く「こういう青春っぽいこと、したかったんです!」とのこと。それを二回連続で達成でき、彼女もご満悦のようである。

 

「それでトレーナー、次のレースはどうしますか!」

 

 タオルで汗を拭いながら、やる気満々な様子でツナグが尋ねてくる。

 

「おいおい気が早いな。まぁそう言うと思って、既に考えきてあるぞ」

 

 流はスマホを操作し、来月のスケジュール画面を出した。

 

「十二月後半に行われる、ラジオNIKKEI杯だ」

 

 ジュニア級最後を締めくくるレースとして流が選択したのは、G3ラジオNIKKEI杯ジュニアステークスであった。阪神レース場で行われるジュニア級限定のレースで、距離もこれまでより一ハロン長い二〇〇〇メートルとなっている。そして、このコンビとしては初めて挑む重賞レースでもあるのだが……

 

「G3、ですか」

 

 トレーナーのチョイスに、ツナグは少し不満そうな声を出した。それもそのはず、十二月にあるジュニア級限定のレースには、全てのウマ娘とトレーナーの目標であるG1、朝日杯フューチュリティステークスと阪神ジュベナイルフィリーズがある。普通に考えれば両レースのどちらかに出走したいと思うのが当たり前であり、デビューから二連勝している彼女にはその資格が十分にあった。

 

「君の考えている事もわかる。でも、俺も嫌がらせをしたくてG1を避けたんじゃないんだ」

 

 流はG1両レースではなくラジオNIKKEI杯を選んだ理由として、次の三つを挙げた。

 

 一つは、先月デビューしたばかりのツナグにとって、まだまだG1に挑むには経験と実力が足りないこと。

 二つ目は、両レースとも距離がマイルであるため、ツナグの適正には合っていないと判断したこと。

 三つ目は、ラジオNIKKEI杯にはツナグと同期のテオファニーが出走予定であること。

 

「特に三つ目はかなり重要だ。ほぼ同じ時期にデビューし、実力もあるテオファニー。彼女と走ることは、来年のクラシックを戦う上で自分の実力を測るいい機会になる。G1に出ずとも、絶対に俺たちの糧となるはずだ」

 

 ウマ娘を育てる上で、流は彼女たちに「勝つ感覚」を覚えさせることを重視していた。「こういう風にポジションを取って、こういう風に勝つ」という明確なイメージを描けるようになれば、レースでどんな状況に陥っても、必ず勝ち筋を見出せるようになる。それができるようになるためにも、まずはG3でツナグを勝たせておきたい。それが流のプランであった。

 

「もちろん、G1に出走するのも悪い判断じゃない。最終的に決めるのは君だ」

 

 ここまではあくまでトレーナーの一意見。最後は自分自身に決めさせるのも、流の育成方針の一つだった。

 

「私は……」

 

(どうしよう。叶うならG1で走ってみたい。でも……)

 

 ツナグはもう一度考える。誰もが夢みるG1の大舞台と、自分にベストな条件であるG3。どちらにも心惹かれるが故に、中々決められない。いっそトレーナーに決めてもらう方が楽ではあるが、流はあくまで自分で決めろと言う。悩みに悩み抜いた末、ついに少女は決断した。

 

「決めました。私、ラジオNIKKEI杯に出ます。“英雄を超える”という夢のためにも、負けたくありませんから!」

 

 英雄を超える。途方もないその夢を叶えるには、近道を()()()()()()()()()。確実に積み重ねていくためにも、ツナグは流のプランを選んだ。

 

「わかった。それじゃあ行こう!ラジオNIKKEI杯へ」

 

「はい!!!」

 

 

        ***

 

 

 十二月。寒風が肌を刺す中、観客たちは熱い視線をパドックに送っていた。

 

『さぁただ今お送りしているのは本日のメインレース、G3ラジオNIKKEI杯ジュニアステークスのパドックです。五番アンタレスハイに続いて入ってきたのは一番人気、現在二連勝中の七番、テオファニーです!』

 

 拍手に迎えられながら、テオファニー威圧感たっぷりに姿を現す。観客の前に立った鹿毛のウマ娘は颯爽とジャージを脱ぎ捨て、歌舞伎の見得のようなポーズを取った。

 

(決まった!一晩考えてきた甲斐があったぜ)

 

「なんか面白いポーズしてるな、あの子。今日のレース大丈夫か?」

 

「でもでも、ここ二戦の勝ち方はかなり凄かったよ!私は期待しちゃうなぁ」

 

 当人の思惑とは全く嚙み合っていない反応ではあったが、なぜかテオファニーは満足気にパドックを降りていった。

 

『順番が前後しましたが、続いて二番人気のウマ娘。同じく二連勝中のツナグです!』

 

 先ほどよりも大きな拍手で、ツナグはパドックに迎えられた。それでも彼女は動じることなく、丁寧なお辞儀をして観客の前を通りすぎていく。パドックを出て地下バ道へ向かうと、入口付近でテオファニーが待ち構えていた。

 

「よぉ、ツナグ。最初のパドックはお前の勝ちだぜ」

 

「そんな勝負してないよ……」

 

 ツナグのツッコミを意に介さず、テオファニーが詰め寄ってくる。

 

「だが、レースはぜってぇ負けねぇ。勝つのはアタシだ」

 

「その言葉、そっくりそのままお返しするね」

 

 互いの目線が交差し、激しく火花を散らす。

 

 空気が凍てつく宝塚。ターフに現れた二つの新星が今、阪神で激突せんとしていた――

 




(注)現在の競馬番組表では、11月の第4週にG3ラジオNIKKEI杯京都二歳ステークス。12月の最終週には2歳戦のG1ホープフルステークスが行われています。ですが、本作品ではモデルとなった競走馬の現役時の番組表をモデルに、ストーリーを構成しています。

 今回は二話連続投稿です!次の話もよろしくお願いします!
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