厄介な事には巻き込まれたくはないと遊作は常々思っている。
午後も校内の見学等のオリエンテーションで、魔法科高校というものがどういうものなのかを見て回った。そこまでは別に何事も無かった。精々Aiが声を出した程度でAi自身は音波を相殺して遮断する魔法を用いて声を遊作以外には聞こえない様にしていた。
このまま何事も無く平穏に今日が終わればいい、そう思っているとレオから一緒に帰ろうとの誘いがあった。断る理由も特にはないので下校を共にする事になるとエリカ、美月、達也もセットで来た。何時の間にやらグループが出来上がっているなと思いつつも下校する事になったのだが厄介な事が起きた。
「いい加減にしてください、深雪さんはお兄さんと一緒に帰るんです!!」
深雪に見惚れているバカ共もとい一科生達は深雪と下校をしたいと言っている。
それに対して深雪は兄である達也と下校したいのだが、深雪を取り巻こうとしている一科生達がそれを阻止しようとした。昼間の事もあってか、レオ達は一科生の態度に色々と思うところがあり我慢の限界が来たのは……1番大人しそうな美月だった。
「兄妹なら住んでる家も一緒で下校する道が一緒なんだから一緒に帰るのは当然の事だろう」
色々と思うことはあるが助け舟の1つでも出しておいた方がいいかと遊作は助け舟を出す。しかしコレが悪かった。
「家でも会話を出来るなら、下校時ぐらいは譲れ。補欠の
神経を逆撫でするかの様な事を言ってくる森崎。
ここまで典型的なタイプも中々には居ないものであり深雪が段々と不機嫌そうにしている事を遊作は気付くが森崎の好感度は二科生の面々にはガタ落ちであり自分もあまり好印象を持っていないので気にはしないでおく。
「同じ新入生じゃないですか。貴方達
言い争いは更にヒートアップする。
美月が一科生と二科生の違いについて色々と言ってくるのだが、そこで森崎は反応した。
「おい」
遊作は森崎がなにをしようとするのか気付いたが時すでに遅し。
森崎は拳銃型のCADを使おうとする。
「
魔法の起動式を展開する森崎。このままだと美月になんらかの魔法が当たってしまう。
どうにかして止めるべきかと遊作はとっさに思考するがそれより先に動いたのはエリカだった。エリカは警棒型のCADを取り出して森崎の拳銃型のCADを弾き森崎の魔法の発動を強制的に阻止した。
「この間合いなら二科生の私の方が早いわよ、一科生さん」
エリカが間合いを一瞬にして詰めて、警棒型のCADで拳銃型のCADを弾いて魔法を強制的に止めた。
「今のはどう見ても犯罪だが、事が事だけに見逃して」
「ブルームがウィードに劣るなどありえるかぁあああああ!」
「そっちがやるなら、こっちもやってやるぜ!!」
拳銃型のCADを向けた森崎に、退散しろと勧めようとしたのだがエリカと森崎のやり取りを切っ掛けに魔法を発動しようとする一科生達。
「……無理だな」
『遊作、こうなったらとことんやっちまえよ』
レオやエリカは戦うならとことんやると構え拳を鳴すのを見て遊作は考える。
当初は自体を軽くしようと思っていたのだが、こうも選民意識の高い馬鹿共が居るとは思いもしなかった。気にしようとしないでおこうと感情を殺していた遊作だったが、流石に我慢の限界というものがある。
「止めないと!」
深雪の後を追っている1人の女子生徒が魔法を使おうとした……その瞬間だった。女子生徒の魔法の起動式が弾き飛ばされる。
「えっ!?」
「やめなさい!自衛目的以外の魔法による対人攻撃は校則違反である以前に、犯罪行為です!!」
起動式を弾いた瞬間に現れたのは第一高校の生徒会長である七草真由美であった。
この乗じているトラブルに割って入ってきたのだが遊作は既に我慢の限界が来ている。
「君達は1ーAと1ーEの生徒だな。事情を聞くからついて来なさい」
「……お断りします」
「なに?」
暴動が起こっている中で真由美の隣に現れたのは風紀委員長の渡辺摩利だった。
今回の騒動について色々と事情を聴取するつもりなのだが遊作は断った。まさか断られるとは思わなかったのか思わず摩利は声をあげるのだが、遊作は特に気にすることはせずに携帯を取り出す。
「先程、生徒会長である七草さんが申し上げた通り校則違反である以前に犯罪行為です。一科生達が起動しようとしたのは紛れもなく魔法です、ならば警察に通報するのが筋です」
「なっ!?」
魔法師は世間的に差別されていて…風当たりが強い。
魔法科高校の入学式が始まって翌日に1年生が警察沙汰を起こしたとすればそれはもう色々と言われるだろう。しかし遊作が言っている事はなにも間違いは無い。
「コイツが向けてきたのは特化型のCADです。内蔵されている術式によっては人を傷つけるものもありますし、特化型のCADは主に戦闘で使う物……そこの女子も同じく魔法を使おうとしましたので、この場合、どちらも罪に問われるべきではありませんか?」
「そ、そんな。私はそんなつもりで魔法を使おうとしたんじゃ」
「待て、遊作。彼女が使おうとしたのは閃光魔法で威力を調整していて」
「その意識が悪い。自分達はエリートだ、自分ならば、この魔法ならば問題無いと人に向けている時点で同罪……いや、悪事であると認識すらしていないのだからなおさら質が悪い」
女子生徒……光井ほのかは暴動を止めるつもりで魔法を放とうとした。
達也はほのかの起動式から自分達に害意が無いのだと言うつもりであったがそういう問題じゃない。魔法を他人に向けて放つのは基本的には犯罪行為である、例えそれが軽い光の魔法だったとしてもだ。
「目立つのは好きじゃないが、コレは紛れもなく犯罪行為である事には変わりはない。今すぐに2人のCADを取り上げて内蔵してある魔法のチェック……騒動が大きくなれば殺傷性の高い魔法を使っていた可能性だってある」
「そ、そんなつもりは」
「無いとは言い切れないだろう。現にお前は魔法を使おうとした……いや、それを言えばエリカも同罪だ」
「あ、あたしも!?」
「手を出してきた相手を正当な手段で潰す事が出来た筈なのに喧嘩腰になっている……もう少し我慢を学んだ方がいい」
思わぬところで飛び火するエリカ。
我慢の限界が来たからやり返した、それではなんの意味も無い。やられたらやり返すをやってしまえば場合によっては同罪どころか怪我をさせてしまえばエリカは実刑を免れる事は出来なかっただろう。
「一科生、二科生以前に魔法師として人間として問題がありすぎる。今回はいい薬になったと潔く罪を受け入れろ……魔法師が特別な存在なんて考えている時点でお前の負けだ……残念だったな、お前の魔法科高校の学生生活は今日で終わりだ」
「ま、待って!」
「なんだ?こっちは色々と侮辱された上に攻撃されそうになったんだぞ。それを校則違反だなんだと言って曖昧な言葉で適当に誤魔化して最初から無かった事にするつもりか?」
警察に電話をしようとする遊作を真由美は止める。
色々と言ってこようとする前に遊作は逃げ道を潰そうとする。少なくともこの時点では遊作は危うく魔法を当てられそうになった被害者であり、色々な意味で遊作に有利であり真由美もどうすべきかと考える。
「全く、こんな事になるなら一科、二科のシステムが無い魔法科高校に進学した方がよかった……こんなんだから何時までたっても魔法師と一般人の間に溝が生まれるんだ」
「……俺は許す」
「……なに?」
110番にTELしようとする遊作だったが、達也は口を開いた。
許す、それはつまり今起こった出来事全てに対して怒る事はせずに罪も問わないと言う。
「確かにお前も危うく魔法を当てられそうになったが今回最も侮辱されたのは俺だ」
「だから見逃せというのか?」
「見逃すんじゃない、許すんだ……俺はここであった出来事は許す。被害届も一切出さないつもりだ……エリカ達はどうだ?」
「え……あ!……あたしも許すよ」
「オレも許すぜ」
達也がなにを言いたいのか察したエリカとレオ。
2人も今回起きた出来事を許すつもりであり、3人の視線は美月に向いた。
「……私は許しません」
「っ!?」
この中で最も許しそうであった美月が許さないと言う。
彼女もまた被害者の1人であり、遊作以外の誰かが許さないと言えばこの作戦は失敗に終わりどうにかして許す様に説得する方法を考えると美月の口が開いた。
「謝ってください」
キランと眼鏡を光らせる美月。森崎の呼吸は大きく乱れる、自分の感情に任せた行為で警察に捕まるのだけではなく、その事が大々的にメディアで取り上げられれば、自分の家はおしまいだと捕まった後の事を考えてしまい、呼吸が出来なくなっていく。そんな中で美月は森崎に詰め寄った。
「え、あ……」
「もう一度言います、謝ってください」
「……すま、ない……」
「私だけじゃないです。ここにいる二科生の皆に謝ってください、昼食とここでの件を……私はそれ以上はなにも言いません」
「……申し訳ありませんでした」
『誠意が籠もってないんじゃないねえの?』
「っ、誰だ!?」
「俺のCADに入っているAiの声だ……しかしまいったな」
被害者である4人が許すと言ったので、遊作はこれ以上は攻めることが出来ない。
どうせならば地の底にまで落としてやろうかと思ったのだが、他の4人が許すと言った以上責める事は出来ない。
『愉悦には浸る事が出来たし、いい薬になったんじゃね?』
「……4人が許すと言うならば俺は見逃す……深雪、達也と帰りたいんだろ。レオ達も一緒だが問題は無いか?」
「え、あ、はい!」
「じゃあ、帰るぞ」
「ま、待ちなさい!」
これにて一件落着と言ったところで帰ろうとする遊作達。
勝手に帰ろうとする事を真由美が止めようとするのだが遊作は切り札を切る。
「俺はあくまでも見逃すつもりで、これ以上藪蛇を突くと言うのならば通報させてもらうぞ……」
「っ……本来であれば生徒指導室まで連行するところですが、反省してるみたいですので、今回はこの場で終わらせます。魔法の行使は細かな制限があります。一学期で色々と教わるのでそれまで問題を起こさない自信のない人はCADの持ち込みをしないことをお勧めします」
あくまでも遊作は見逃すつもりでこれ以上藪蛇を突く様な真似をするならば通報するぞと脅す。
一般市民に今回のこの一件を知られれば被る被害は尋常ではない。
「君の名前はなんと言うんだ?」
立ち去ろうとする遊作に摩利は名前を尋ねる。
「王道遊我だ」
遊作は息を吐くかの様に偽名を吐いた。
いや、お前遊作じゃんと言った顔を二科生の面々は向けるのだが遊作は気にする事はせずに帰路に着く。
『結局問題を起こしちまったな』
問題を起こさずに平穏な魔法科高校の学生生活を送ろうと思っていた遊作だったが2日目にして厄介な事件を巻き起こしてしまった。
Aiはこれからの魔法科高校の学生生活が大丈夫なのか心配をする。
「こうでもしないと永遠と同じ事が続く……俺じゃなくて遊星でも通報していただろう」
『けどよ、生徒会に完全に目をつけられちまったぽいぞ?名乗ったのが偽名だって事ぐらいは直ぐにバレるだろうし……あんな態度を取ったら折角作ろうとした友達を失っちまうぜ』
「それはそれで好都合だ……少しだけだが分かった。彼奴等は自分達なら大丈夫だとか色々と慢心をしている。今回の一件も下手すれば揉み消されたかもしれない……間違った価値観を持っている……俺もだがな」
自分自身も周りも狂っている。遊作はその辺りについては自覚している。
今回の一件で一科生、二科生共に悪印象で折角作ろうとした友達も居なくなった。1人には馴れているから、それでいいかと気持ちを切り替えようとする。
「待ってくれ」
「なんだ、達也か」
切り替えようとするのだが達也が追いかけて来た。
「俺のやったことがやり過ぎだと思っているのならばお前の方が狂っているとだけ言っておく。皆が定めたルールを先に破ろうとしたのは一科生達なんだ」
「ああ……そうだな」
「……」
割とあっさりと自分の言葉を受け入れる達也に遊作は少しだけ意外そうにする。
「俺の認識も甘かった。自分ならば大丈夫、深雪にも被害が被らないしどうにかなると心の何処かで慢心していた……お前の取った行動はなにも間違っちゃいない」
「だろうな。少なくとも、一般人ならば先ず通報という手段を取る……達也」
「なんだ?」
「お前は交友関係は広い方か?」
「まぁ、それなりには広いが……それがどうした?」
「その中で魔法師じゃない友達と呼べる存在は居るか?」
「……いや、居ない」
「お前はきっとスゴい奴なんだろう。だからこそ間違っているという自覚を持たない。一般人と向き合う事をしていなかったら……さっきの上級生の様に狂った感覚を持つ……俺も狂っているから言えた義理ではないがな」
ハッキリと達也を狂っていると遊作は断言する。
自分自身も狂っている……狂っていなければ魔法科高校になんて入学はしないだろう。自分達は強いから問題無いという問題ではないのである。
「駅まで一緒に行かないか?」
「……騒ぎを大きくしようとしたんだ、他の面々にどの面下げて会えばいいのかが分からない。俺が居ない方が話に割って入る事が出来る奴が居るしな」
「……そうか」
ほのか達が達也を追いかけて来ている。自分に対して怯えた視線を向けていて達也に対して声をかける事が出来なさそうである。
自分が居れば厄介な事にしかならないと分かっているので遊作は達也達と行動を共にせず、そのまま家に向かって帰っていった。
中々に遊戯王に繋げる事が出来ねえ……
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