魔法科高校の遊戯王   作:アルピ交通事務局

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魔法科高校の遊戯王5

 

「ゲームだと?」

 

「口癖みたいなもので気にしないでください」

 

 黄金の秤を出した遊作は不気味な笑みを浮かび上げた。

 遊作の発言に少しだけ戸惑う摩利だが直ぐに冷静になり遊作は口癖の様なものだから気にするなと言っておく。

 

「この黄金の秤はなにかしら?」

 

「不正防止の為の秤です……」

 

「CADって事なの?」

 

「まぁ…………広く分類すればそうなりますね」

 

 黄金の秤を気にする真由美。

 魔法師の杖とも言うべきCADなのかと気にするのだが、遊作は具体的には何なのかを言わないでおく。なにせこの秤は祖父が昔、エジプトでどの時代かは確かではないがピラミッドが建設されるファラオが居た時代の王家の墓から盗って来た盗掘品なのだから。

 

「先に達也の方から問題を解決すればいい。俺の方は割と直ぐに終わるからな」

 

 ここで勝負をしてもいいのだが、先ずは達也の方の問題を解決しよう。

 遊作は達也に順番を譲ると30分後に模擬戦をする事が決まる。

 

「それで理知的な勝負とは何なんだ?」

 

 CADの調整等があるので席を外す達也と深雪。

 残された摩利は自分に仕掛けてきた理知的な勝負がいったいなんなのかを遊作に尋ねる。

 

「別に難しい勝負(ゲーム)じゃないですよ、サイコロを投げて出た目が大きい方が勝利する。至ってシンプルなゲームです」

 

「待て……まさか運に身を任せろと言うのか?」

 

「それこそまさかです。此処は魔法科高校、魔法の使用はありとします。ただし投げたサイコロにしか魔法は使ってはいけない。遅延で発動する魔法を使うなどの妨害行為に当たる行いは一切禁止……殴り合いなんて原始的な勝負よりも随分と理知的でしょう」

 

 遊作の持ちかけた勝負はあまりにもシンプルな内容だった。

 サイコロを投げて出た目が大きい方が勝利するという小学生でも出来る本当にシンプルな内容だ。敷いて違うところがあるというのならば、魔法を使ってもいいルールである。

 

「成る程、確かに殴り合いよりは理知的な勝負だな……真由美、悪いが少し席を外させてもらう。CADの内部に入っている魔法だとこの勝負に相性が悪い」

 

「ええ、わかったわ」

 

 そんなこんなで摩利も席を外す。

 

「遊作くんは準備をしなくていいの?」

 

「もう既に準備は出来ていますので問題は無い……と言いたいですが万が一があるので失礼します」

 

 遊作も席を外し、CADを調整する事が出来る部屋に向かう。

 と言っても、遊作はCADの調整はしない。出来ないのではなく既に遊作が仕掛けた罠に摩利が嵌っているから。真由美達もその事には気付かない。この程度の子供騙しならば祖父や友ならば簡単に気付く事が出来るのだが、誠に残念な事に気付かない。

 

「服部くんはこの学校で五指に入るほどの実力者です……心配では無いでしょうか?」

 

「いいえ、心配は御無用です」

 

 30分後、第3実習室に達也達は集う。

 服部は実力者であることを市原は認識しており、殴り合いになれば負けるのではないのかと危惧するのだが深雪は何一つ心配をしていない。達也ならばきっと勝つ事が出来るだろうと信頼しきっている。

 勝負は一瞬で決着がつくと深雪は思っていると真由美が試合開始の合図を告げ、達也は拳銃型のCADを服部に向けると服部は倒れた。

 

「し……勝者、司波達也」

 

 いきなり倒れた服部に対して動揺しつつも軍配を上げる摩利。

 いったいなにが起こったのかと聞いてみれば、九重八雲という人間から指導を受けている事を深雪から教えられ摩利は驚く。

 

『交友関係は広い方なんだな……しっかし3種類ぐらいのサイオン波を纏めて飛ばすとかやるぅ』

 

「っ……気づいたのか?」

 

「え、え?どういうこと?」

 

「振動数の異なるサイオン波を放ち船酔いに近い状態にした……振動魔法を3連続で撃つとはスゴいな」

 

「そんな事が出来るのに二科生なの?」

 

「多変数化は評価されない項目なので……」

 

 Aiと遊作は達也が具体的に何をやったのかを見抜く。

 真由美は高度な技術を持ち合わせているのにどうして二科生なのか疑問を抱くのだが達也がやった事はあくまでも学校側が評価しない部分である。こういうことが出来る奴が居るのだから魔法科高校の入試の実技に問題があるんじゃないのかと遊作は考えが、試験は定められたものを測るのであってそれ以外を評価すれば、一部の特例を認めた事になってしまうとすぐに思い当たり考えるのをやめた。

 

「先程は身贔屓等と言ってしまって申し訳無い。テストでは測れない本当の力というものがあるという事が分かりました……目が曇っていたのは私の方だ。許してほしい」

 

「いえ、分かってくれてなによりです」

 

 服部は素直に負けを認めて達也の強さを認めた。

 深雪は達也が周りから認められる事を我が事以上に喜びをみせる。兄が周りに認められはじめて何より嬉しいのだろう。

 

「さて、次は私達の番だな」

 

「あの、渡辺先輩と遊作くんはなにをして戦うのですか?」

 

「サイコロを振って出た目が大きければ勝ちのシンプルな勝負です」

 

 達也が終われば今度は遊作に話題は移り変わる。

 深雪は早々に退出してしまったので具体的に遊作と摩利がどんな事で勝負するのかを知らない。市原に尋ねてみると遊作が言ったルールを教えてくれる。

 

「それだけですか?」

 

「はい。投げたサイコロにしか魔法を使ってはいけないのと妨害行為等は一切禁止と色々とルールはありますが、シンプルな勝負だそうです」

 

「……そうですか」

 

 運任せでなく、魔法に頼っているところが魔法科高校らしいのだが実にシンプルな勝負である。

 なにか裏があるんじゃないのかと深雪は疑いを持つのだが、何処にもルールの穴の様なものは存在していない。

 

「さて、ここは先に渡辺先輩がサイコロを振ってもらいます」

 

「ああ、いいだろう」

 

「待って!」

 

 緊迫した空気が流れる中で遊作はサイコロを取り出して摩利に渡すのだが真由美が待ったをかけた。

 突然の待ったに摩利は驚くが真由美は気にせず遊作が摩利に渡そうとしたサイコロを取り上げる。

 

「コレはなにかしら?」

 

「……ッチ」

 

「コレは……一二三賽じゃないか!!」

 

 遊作が摩利に渡そうとしたサイコロは目が1,2,3しかない一二三賽だった。

 バレてしまったと遊作は聞こえるかどうかレベルの舌打ちをする。

 

「会長…中々に目ざといですね」

 

「それはこっちの台詞よ……その様子だと四五六賽も持っているんじゃないかしら?」

 

「はぁ……仕方がないですね」

 

「なにが仕方がないだ!!そんなイカサマを認めてたまるか!!」

 

 大きな数字を出した方が勝ちの勝負で自分は一二三賽、遊作に四五六賽を使われたら最初から勝ち目は無い。

 遊作観念しては摩利に渡そうとした一二三賽をポケットに戻し正真正銘のどこにでも売っている仕掛けも何も変哲のないサイコロを取り出す。

 

「すまないが皆で確認してくれないか?」

 

 摩利は1から6まであるサイコロだと確認をしたのだが、もしかしたらイカサマが施されたサイコロじゃないかと真由美達にサイコロを渡す。

 真由美、市原、中条、服部、深雪の順にサイコロを渡して確認するが誰一人としてイカサマが施されているといった指摘はしない。

 

「大丈夫です。重しが入っていたり磁石が入っていたりして重心がズレたり出る目を固定されたりするイカサマサイコロではないみたいです」

 

 最後に達也もサイコロを確認する。達也の目から見ても極々普通のサイコロであり、イカサマの仕掛けは何処にも施されてはいない。

 全員のチェックが通ったので摩利はサイコロを握り締めるのだが遊作は待ったをかける。

 

「この勝負(ゲーム)、渡辺先輩が勝てば俺は潔く風紀委員に入ります。しかし渡辺先輩が勝つことが出来なければ風紀委員の件は最初から無かった事にして他の誰かからも俺を勧誘するのを禁ずる……投げたサイコロにのみ魔法を仕掛ける事が可能で、妨害行為等は禁止。このルールで問題が無いならばCADを千年秤に乗せてください」

 

「……なにか秤にイカサマをしているんじゃないだろうな?」

 

「逆です、この秤は勝負を成立させる為にあります……この勝負を認められないというのならばCADを秤に乗せなくても結構です。その代わりに俺を風紀委員に誘うのは最初から無かった事に」

 

「分かった分かった……司波、君は目が良いのだろう。万が一があるから見ていてくれ」

 

「はい」

 

 一度堂々とイカサマをしようとしただけに摩利の警戒心は強い。

 遊作は疑われて当然の事をしたので特に後悔はしていない。摩利は腕輪型のCADを千年秤の片方側に乗せると今度は遊作が腕輪型のCADを千年秤のもう片方に乗せ……丁度真ん中にピタリと止まる。

 

「真ん中に……」

 

「イカサマはあったか?」

 

「いえ、今のところは無いです」

 

 摩利も遊作も腕輪型のCADを装着しているが機種が若干異なる。

 少しだけ重さの誤差が出てもおかしくはないのだが千年秤はピタリとど真ん中で動かない。周りの面々は特に気にしていない。摩利の言っていたイカサマを遊作がしている素振りは特には無く、摩利は全員からチェックを受けたサイコロを投げると同時に魔法を起動した。移動系の魔法を使ってサイコロが転がらない様にしてサイコロの出目を操作する。

 

「よしっ!」

 

 摩利が出したのは6の目だった。

 サイコロ(6面ダイス)において最も大きな数字を出した事にガッツポーズを取る。

 

「馴れない勝負でミスをするかと思ったが意外ですね」

 

「ふっ、この程度の勝負ならば幾らでも受けて立とうじゃないか」

 

「そうですか」

 

 投げたサイコロに魔法をかけて出る目を出すのは意外と難しいのだが、摩利はいとも容易く6の目を出した。

 コレで勝負は決まったなと摩利は勝利を確信するが遊作は何一つ気にせずにサイコロを手にする。四五六賽に切り替えないのかと一応の警戒をしてみるがサイコロを変えるという素振りは一切見せない。遊作は1度イカサマをしようとしたが為に警戒心を持っているのだが遊作はイカサマらしいイカサマをせずにサイコロを持ち上げた。

 

『まさか、ここまで簡単に行くなんてな』

 

「黙っていろ……」

 

 遊作はAiを黙らせるとサイコロを投げる……そして魔法を起動する。

 サイコロは重力に身を任せて地面に落ちると……真っ二つに割れた。

 

「……は?」

 

 移動系の魔法か加重系の魔法を使って出目を操作すると思っていた摩利から呆けた声が飛び出る

 サイコロを破壊したのは振動系の魔法なのだろうが何故そんな事をしたのかと摩利だけではなく周りの面々も疑問に思い…直ぐにその意味が分かった。真っ二つに割れたサイコロはそのまま倒れ……1と6の目を繰り出した。

 

「達也、俺が出した数字を言ってくれ」

 

「…………7だ」

 

「渡辺風紀委員長、貴方が出した数字は6。それに対して俺が出した数字は7……俺の勝ちです」

 

 1と6の目を出した。1+6は7であり、達也はコレを狙っていたのかと気付き遊作が出した目が7である事を認めた。

 

「待て待て待て待て待て!!」

 

 その判定に摩利は待ったをかける。

 

「こんなのはありなのか!!どう見ても」

 

「サイコロにイカサマはないのかと全員で確認した物を投げた。サイコロに使った魔法もここに居る面々ならば簡単に使える魔法だ……どの部分がイカサマなのか教えてもらおうじゃないですか」

 

「っぐ……」

 

 遊作は摩利がサイコロを振る際に妨害行為は一切していない。皆でイカサマが施されていないかとサイコロ本体を確認した。

 妨害行為はしてはいけないが使う魔法を移動系や固定系、加重系の魔法ではいけないと言うルールは何処にも無いのである。摩利はイカサマだズルだと言おうとしたが、遊作は何一つルールを犯してはいない。その為に摩利も上手く言い返す事が出来ない。

 

「俺の出した目は7だ……1+6は7、幼稚園児でも分かるシンプルな算数だ。勝てない勝負をすると思ったか?イカサマサイコロで勝つと思ったか?渡辺風紀委員長、最初から6を出そうと狙いにいった時点で貴方に勝ち目なんてものは無かったんですよ」

 

「……認めない!認めないぞ、こんなのは!」

 

「……だったらこの1を無かった事にしよう。それで不満は解消されますか?」

 

「この1の出目は無しで、遊作、君が出した目は6の目だ!!」

 

「成る程……達也、お前に判定してもらってなんだが今回の出目は6にしてもらう……これ以上はなにも追求しないでいいな?」

 

「ああ、二言は無い!」

 

「だったら俺の勝ち……いや、貴女の負けで終わりだ。約束通り俺は風紀委員にはならない。帰らせてもらう」

 

 勝負は決したと落ちているサイコロの破片と黄金の秤こと千年秤をカバンにしまう遊作。

 

「ちょ、ちょっと待て!私の負けとはどういう意味だ!」

 

「……そういうことか」

 

「……あぁ!!そういう事ですか!」

 

 遊作が帰ろうとするので待ったをかけようとする摩利。

 ここで達也が、次に深雪が遊作が言っている事がなんなのかを理解する。

 

「渡辺先輩、貴女は最初から負けてたんですよ」

 

「どういう意味だ?」

 

「遊作さんは渡辺先輩が勝てば自分は風紀委員になる、勝つことが出来なければ風紀委員にはならないと約束を取り付けました……勝負の結果はどうですか?」

 

「…………っ、引き分け!!」

 

 ここでやっと摩利も意味を理解する。

 遊作の出目は7で遊作の勝ちだったが摩利が駄々を捏ねたので6になった。摩利が出した数字は6,対する遊作が出した数字も6。どちらも同じ6の数字であり引き分けであり……摩利は勝つことが出来ていない。摩利は勝たなければ遊作を風紀委員にスカウトする事は出来ない。遊作に引き分けに持ち込まれて勝つことが出来なかったので摩利の敗北である。

 

「イカサマのサイコロも7の出目も全てフェイク、このルールを気付かせない為にあったのか!?」

 

「まさか。イカサマのサイコロで勝てればそれで良し。7の出目を認められればそれで良し。それら2つで勝てなければ引き分けにしておけばいい……この勝負を受けた時点で貴女が勝つ道は最初から無かったんですよ」

 

「っ!!」

 

 嵌められた。

 完全に遊作に嵌められたと摩利は言葉も出せない。最初から自分が勝つことが出来ないゲームを仕掛けられており、その事に気付かずに自分は乗ってしまった。

 

『確かにお前の魔法は素晴らしかった!発動速度も処理能力も!だが、しかし、まるで全然!このオレを倒すには程遠いんだよねぇ!!』

 

「おい」

 

 去り際にAiが摩利を煽る。

 最初から勝つことが出来ないゲームを仕掛けており、どれだけ強い魔法を行使しようとも遊作に敵う事が出来なかった。

 

「……クソっ……クソっ……」

 

 遊作が完全に第3実習室を去った後に摩利は床を強く叩く。

 最初から自分が勝つことが出来ない勝負に嵌められており、それに気付くことすら出来なかった自分の未熟さを悔やむ。

 

「困ったわね……」

 

「教師推薦枠の件ですか?」

 

 遊作の勝利いや、摩利の敗北で終わった。のだが真由美は困った素振りを見せる。

 市原は教師推薦枠を遊作に出来ない事に困っているのかと尋ねてみるのだが真由美は「それもあるけど」と言葉を濁す。

 

「……言い方は酷いかもしれないけど、遊作くんを風紀委員にして首輪を付けるっていう理由があったんだけど……まさかここまでやってくるなんて思いもしなかったわ」

 

 昨日、いきなり警察に通報しようとした遊作はハッキリと言ってなにをしでかすかわかったものじゃない。

 風紀委員にしておけば抑え込む事が出来たのだが、肝心の摩利との勝負は摩利の負けで終わりを告げてしまった。

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