友は、魔王   作:圧倒的遅筆野郎

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神代の雫

国王陛下の第一子が誕生されたそうだ──ハイラル王国はそう俄かに活気付いていた。

 

御子の名はゼルダ。

魔を打ち払う力を持つとされる姫巫女の家系。

そして何より王冠を継ぐ者。

 

彼女にはこのハイラル全土の期待が寄せられていた。

 

 

 

──────────

 

 

 

「陛下が遂に待望の御子を授かった。しかも神話と同じ様に女児だ」

 

父は一安心といった感じでそう言った。

初代ハイラル王国を興した血は、必ず後の王家に受け継がれる事はどれほど身分が賤しい者であっても必ず聞かされる話だ。

 

ただ、伝説や神話を疑問視する声は当然あった──伝説や神話に権威の拠り所を求めた王家内部でも。

 

「ですが不安なのは王国内部でも姫巫女の力を疑問視する輩が大勢いるのです。

どうにかして力の証明をしなければなりませんよ」

 

「そうだな、そこだ。

だが姫様は生まれたばかり、今は何ともしようがあるまい」

 

「いっそ、噂でも良いので奇跡が起きた事をばら撒きましょうか?」

 

「莫迦。姫様の退魔の力が確定していない時期にその噂を流すのは下策も下策だろう」

 

「民草を思いやる自覚を蔑ろにした積りなど毛頭ありませんが、記憶の風化が原因でしょうね」

 

「一度実害に会ってみれば当事者意識が芽生えるであろう、と言いたいのだろうが口を慎む様に。

……成程、確かに王朝交代や滅亡の直接、或いは間接の理由に唯の一度も魔王が顕現した事実は記載されていない。神話や伝承でしか残っていないからこそ、疑り深い者も出てくる、か。

まぁ任せてくれ、どうにかするさ」

 

疑問視される理由の一つに、ハイラルの大地に住み、同じ女神を唯一の存在として信仰を共有する他種族、それこそ長命なゾーラ族などでも、魔王顕現の記録は無いのだ。

 

かつて暴政を布き、外戚と官僚の抗争を激化させ、その存在を徹底して抹消されたハイリア古王朝ですら、最後は人の手によって滅亡した──とはっきり記載されている。

あらゆる種族の視点で描かれた長大な歴史にも、終焉の者の憎悪だけは確認できない。

 

──父を見送った文官は、一つの結論に行き着くのは当然であった。

 

それは、ハイラルは神代の祈りと呪いを人の世として一度も経験していない可能性。

終焉の者の復讐を、神を知らぬ人は一度も被っていない──つまり、このハイラル王国が初めて魔王と相対する可能性。

 

人々の記憶を住処にし、口伝いに住処を拡大する伝承だけが頼り。

悠久の時を経て、原形を失った、ただの創作でしか無くなっているかも知れない伝承を信じて、姫と勇者を陣頭に立てるのだ。

 

「……大博打も大概にして欲しいよ、全く」

 

 

 

──────────

 

 

 

それから17年後──

 

ハイラル王国の産業育成と他種族間の仲介貿易を積極的に推進した文官は、魔物と瘴気に覆われた魔王と相まみえることとなる。

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