よくあるテンプレの話   作:るるぶ

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先に謝っときます。前半は重たいです。


第九話

 

世界がいつからそうなったのかは知らない。

 

ただ、人類が生きていくには明らかに不利な環境になった事だけは、あの世界に生まれた者ならば誰もがハッキリと理解できた。

 

子供の頃に父から聞かされた話によれば、かつて人類は飢餓や貧困、暴力などあらゆる社会課題のほとんどを、この世界の隅から隅に至るまで取り除く事に成功し、人類という一つの集団は黄金期を迎えたそうだ。

 

しかし、やがて訪れた停滞期を乗り越えられなかった事により、人類は徐々に衰退し、ついには滅亡一歩手前に至った。

 

かつての栄光は見る影もなく、今の人類は常に崖っぷちで、そんな状況ですらお互いに争い合っている。

 

俺達一家はある大きなコロニーに身を寄せていたが、内部抗争の果てに崩壊し、負けた派閥に属していた俺達は出て行くしかなかった。

 

ある日、父が死んだ。

 

食料が尽きてしまい、それを探しに行く中で襲ってきた連中と戦い、死んでしまった。

 

ある日、母が死んだ。

 

俺と妹にご飯を優先して食べさせた事で、栄養失調となり、だんだんと弱り、死んでしまった。

 

ある日、妹が死んだ。

 

まだ10歳にもならない体には高熱というだけで厳しかったのか、突然倒れ、死んでしまった。

 

両親は良く俺達に愛してると言ってくれたし、俺も家族を愛していた。

 

なのに生き残ったのは俺一人だけ。

 

生き残った俺はある組織に所属する事になり、そこで一人の女性と出会った。

 

心が擦り切れていた俺は、彼女と仲良くなり、互いに愛し合った。この時間が永遠に続きます様に、今度は愛した人を失わない様にと願いながら。

 

でも、世界は非情で、俺は再び愛した人を失った。

 

そして、俺が愛したいと思った人たちも死んでしまった。

 

俺が愛した事で、愛そうとしたことでみんな死んでしまった。

 

俺は昔から、何故か未来に起こる事がわかる。

 

きっとこの力の対価として、俺は呪われたのだろう。

 

俺が愛した人は不幸になる。

 

誰かを愛する事を辞めた俺は、結果的に多くの人を救った。

 

皮肉な事だ、誰も愛さない人間が、最も人を救ったなんて。

 

これだけ多くの人を救っても、結局、俺はひとりぼっち。

 

そうして、誰に見送られる事もなくその生命を終える。

 

──ようやく解放される。

 

そう思いながら、俺の意識は闇に包まれた。

 

肉体と意識が分裂するのを感じながら、その事について、どこか他人事の様な気持ちになる。

 

──これが死か。

 

終わりに身を委ねていると、突然、何かに掴まれるのを感じた。

 

無数の何かに引っ張られる。

 

──もう、終わらせてくれ。

 

その願いは叶わなかった。

 

次に目を開けた時、見知らぬ女の腕の中に俺はいたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─嫌な夢を見た。

 

そう思いながらベッドから身を乗り出す。身体中汗まみれだ。時刻を見れば、まだ午前5時。この時間ならシャワーを浴びてから家を出ても問題ないだろう。

 

そう考えながら、右腕を何かの下から引き抜き、寝ぼけた頭のままベッドから出た俺は、着替えを持ってシャワーに向かう。

 

今世が始まってから、前世の夢なんて見ることはほとんどなかった。何がそうさせたのか、決まっている。

 

昨日あったあの男だ。

 

かつて出会って来たイかれた奴らと比べれば、たいした存在ではないが、それは前世においての話だ。

 

今、俺がいるこの社会にはあれは害悪でしかない。

 

かつての俺ならば真っ先に消すことを考えていただろう。

 

だが、それはかつての話で、その手段はもう取らないし、取りたくない。だから、放っておいてやる。

 

でも、もしも、本当にアイに手を出す様なことがあったなら──。

 

そんなことを考えながらシャワーを浴び終わった俺は、下着だけを履いて部屋でくつろぐ。すると、先ほどまでいた寝室からガサガサと何か音が聞こえた。

 

そちらの方を向くと、

 

野生の星野アイが現れた!!

 

え?なんで??

 

わけがわからないよ!(某白い生物ボイス)

 

思い出せ俺、何があった。昨日は何が合った。

 

脳の回転速度が過去最大に到達する。

 

昨日、あの男が帰った後、俺とアイは二人でアイスを食べ、買い物をし、うちで夜ご飯を食べた。

 

そこまでは良い。

 

いや、良くないかもしれないがとりあえず置いておく。

 

そのあとはどうなった?

 

え?

 

もしかして俺やっちゃいました?!

 

「もー、なんで先に布団から出ちゃうかなぁ」

 

「ええい!なんでお前がいるんだよ!!」

 

「え、忘れちゃったの...」

 

彼女が悲しそうに顔を背ける。その姿を見て、罪悪感が俺を襲う。

 

「え...もしかして俺...」

 

まさか、そうなのか。おれはしてしまったのか、だとしたら──。

 

「うっそでーす!グレン引っかかった〜」

 

俺の顔を見ながら腹を抱えて笑う彼女。

 

よし、◯そう!やってやる!今日こそやってやる!日頃こき使われた恨みを晴らす時が来た!!

 

ひとしきり笑い終わると彼女は言った。

 

「本当に覚えてないの?グレンが疲れたとか言って、片付け終わった後、お風呂入って先に寝たんじゃない」

 

そういえばそうだった気がする。

 

「夜も遅かったから、そのまま泊まったの」

 

なるほど、それは確かに納得がいく。納得は行くが、

 

「ならなんで俺のベッドで寝るんだよ!!ソファとかあるだろ!」

 

こいつが俺の家に泊まるのは珍しくない。だが、今までは彼女が俺のベッドを占領し先に寝てしまうので、渋々、俺はソファで寝るという構図になっていたので、この様な事態にはならなかった。

 

しなかった。

 

「だってグレンと一緒に寝たかったんだもん...」

 

ボソボソとつぶやくように、少し頬を赤ながら彼女は言う。

 

くそ、なんだこの生き物可愛いな、ちくしょう。

 

「あーもう、次回から気をつけてくれよ」

 

「善処しまーす」

 

こいつ絶対、反省してないな。

 




前半の内容、最初書いたときはちょっとあまりにも絶望的な過去になってしまったので、少し軽くしました(軽くなってない)。

Q.主人公の未来予知的なもので、愛する人達を救えなかったんですか?
A.使い方次第では行けたかもしれないが、基本的には無理です。そこまで便利ではない。

Q.アイは睡眠薬を盛ったりしましたか?
A.まだ、盛ってはいません。(つまり睡眠薬は持ってます)。

Q.なんで襲わないんですか?
A.最終手段であり、できる限りやりたくない奥の手だと思ってもらえればいいです。

次回はオール日常回です。 はずです。(まだ0文字)
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