よくあるテンプレの話   作:るるぶ

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日常回です。難産でした。




第十話

 

俺は今、次回作の小説のネタに頭を悩ませている。

 

なんとなく書きたい光景は決まっているのだが、そこに至るまでの流れが思い浮かばない。

 

どうするかと、自分で淹れたコーヒーを飲みながら考える。

 

ここまで何も浮かんで来ないのは初めで、困り果てる。

 

さて、どうしたものか...。

 

すると、背後に何かを感じ、振り向こうとすると視界がふさがれた。

 

「だーれだ」

 

誰だもなにも、鍵を閉めているはずのこの家に入れるのは一人しかいない。

 

「手を放せ、アイ」

 

「ぶー、ノリが悪いんだから」

 

不満そうに彼女は答える。観念したのか、すぐに手を放してくれた。

 

相変わらず、彼女の行動の全てが人を惹きつける。アイドルを始めてからその傾向は強くなり、さらに拍車がかかっている。

 

誰かを騙すという点においては、この少女は既に世界レベルなのではと思う。

 

彼女の方に振り向き、彼女に尋ねた。

 

「なんのようだ?」

 

「今日のレッスンが休みになったから、遊びに来たの!」

 

暇つぶしかよ、迷惑な奴だな。

 

「何かしよーよー」

 

駄々を捏ね始めやがった。この状態の彼女を相手にしてもしょうがないので、無視を決め込む。

 

「むー、なら邪魔してやる!」

 

そう言うと彼女が抱きついてきた。この野郎、俺が降参するまで諦めない気だな。彼女との根比べが5分ほど続いたが、全くペンが進まないので、降参の意識を彼女に告げる。

 

「わかったよ、執筆も進まないから気晴らしに何かしよう」

 

すると、途端に満面の笑みに変わる。

 

「やったー、グレン大好き!!」

 

俺の降参を確認した彼女は、ようやく俺から離れてくれた。まったく、色々当たってたこっちの身にもなれ。表情に出さないの苦労するんだぞ、と内心で愚痴を吐く。

 

昔からではあるが最近は特にスキンシップが過剰なのだ。こないだなんか、俺が風呂に入ってるのに彼女まで入ろうとしてきて大変だったんだからな。

 

本当にしょうがない奴だと呆れ果てる。

 

「で、何するんだよ」

 

すると何も考えてなかったのか、少し考えるそぶりを見せ、何か思いついたのか、俺に提案して来た。

 

「タイトル忘れちゃったんだけど、こないだオススメしてくれた映画を観ようよ!」

 

本当に何も考えてこなかったんだなこのアホは。

 

「"千年女優"のことか?」

 

「そう!それ!!」

 

"千年女優"とは、昔のアニメ映画の事で、個人的に好きなアニメ作品の1つだ。アイの様な人間がこの作品を観るとどう感じるのか非常に興味があったので、前から勧めていたのだが、未だに見てなかった事がこのやり取りでわかる。

 

まあ、それ自体は別に気にしない。俺だって、人に勧められたものの半分近くは触れる事なく忘れているから。

 

だから、この作品についてアイは忘れていると思っていたので、勧められた事自体を覚えていただけでも驚く。

 

「じゃあそれ観るか」

 

そう言うと、テレビと向かい合った位置にあるソファの前に移動し、腰を下ろす。少し間を空けてアイが隣に座ったかと思うと、いきなり膝の上に倒れて来た。

 

「何すんだよ」

 

「膝枕!!」

 

せめて許可を取ってからやってくれ...。

 

「♪」

 

こっちの気も知らないで、彼女は嬉しそうに俺の膝を枕代わりにして、手元にあるリモコンを操作し、映画を観始める。

 

全く、いい加減ここが誰の家だかわからせるべきかな、と思案しながら、この状況も悪くないのかと受入れ、映画に集中する。

 

この映画の特徴は虚構と現実を混在させた所にある。

 

フィクションとノンフィクション。

 

それを行き来する中で描かれる主人公の人生。

 

彼女の語る内容は、どこまでが真実で、どこまでが嘘なのか。

 

この作品を理解するのに何回見返した事だろうか。

 

映画も中盤に差し掛かる。

 

ふと、彼女の様子が気になったので視点だけ下に落とすと、かなり真剣な顔で映画を観ていた。こいつがこんなにも真剣に何かを観る(まあ、俺に膝枕をされているわけではあるが)という光景は初めてな気がする。

 

すると、俺の視線に気付いたのか、彼女もこちらに視線を向け、口を開いた。

 

「膝、疲れた?」

 

「少しな」

 

「そこは嘘でも疲れてないって言うところだぞー」

 

「うるせぇ」

 

そう返すと、彼女は膝枕を辞め、普通に座り直した。すると、無言で彼女は自身の膝を叩いた。

 

──次は私の番。

 

その様な幻聴が聞こえた気がする。映画に早く集中したかったので、抵抗する事なく彼女の膝に委ねる。

 

想像よりも心地良く、少しずつ眠気が襲って来た。

 

そういえば、今朝は早くに起きたたんだったかなと霞んだ頭で思い出しながら、俺は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

映画をこんなにも真剣に観たのはいつぶりだろう。

 

そもそも、私自身、あまり映画を見ない。なんなら、物語に触れる事もしない。私は人の名前を覚えるのがとてつもなく苦手で、それは作品の中でも発揮されてしまう。その為、登場人物の多い作品ほど観るのがしんどくなる。

 

でも、この作品はたった1人に注目して観れば良い事がすぐにわかった。だから、そこまで抵抗感なく観る事ができる。

 

そして、同時にこの作品から目を離せないのは、この作品が魅せる嘘のせいだ。

 

何が本当で、何が嘘かわからなくなる。

 

果たして本当に主人公のいう"あの人"とは存在するのだろうか。

 

観れば観るほど頭は混乱する。

 

だが、その混乱が心地よい。

 

映画も終わり、グレンと感想を共有しようと視線を落とし、口を開こうとする。

 

すると、グレンの寝顔が私の瞳に写った。

 

何度か目にした光景だが、愛おしさは増える一方だ。

 

普段は仏頂ズラのくせに、寝ているグレンの顔はこんなにも可愛い。そのギャップに、さらに私の心は彼に魅力される。

 

アイドルを続けてそろそろ二年ほど経ち、最近になって、私のこの気持ちが'愛してる"事なのだと言う事がわかって来た。

 

突然、下の方からボソボソと声が聞こえた。

 

「うぅ...アイ...そんな事ばかりしてると結婚できないぞぉ...」

 

一体どんな夢を見てるのだろうかと不思議に思い首を傾げる。だいたい、私はグレンと結婚するのだから問題ない。

 

にしても本当に可愛い。

 

寝顔をこっそりとスマホの写真で撮る。

 

もしバレたら怒られるだろうなと思いながら、同時に、彼のご両親を除けばこの顔をこの距離で拝んだ事のあるのは私だけだろうという優越感が私を満たす。

 

ああ、こんなにも愛おしいのに、私はまだ彼と付き合えてすらいない。

 

いつか、いつの日か、彼と付き合えたらなと甘い想像に浸りながら、彼の耳元で囁く。

 

「グレン、愛してる」

 

 




ええい!いやらしい雰囲気にしてくる!!

私が思うに、星野アイってアニメやドラマとか映画、小説をあまり楽しめないタイプだと思うんですよね。そう言う妄想の元、今回の話はできました。
そろそろ二人をくっつけないと25話までで収まらない...。


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