よくあるテンプレの話 作:るるぶ
私がアイドル活動を始めてからそろそろ二年が経ち、私達のグループは順調に売れていた。
最近は特にお仕事が増えてきたので、グレンに前ほどは会えていない。
前回会ったのは一週間前なので、そろそろグレニウムが不足して来てしまった。
そのため、今の私の精神状況はすこぶる悪い。
まあ、それをグレン以外の誰かに悟られる事など決してないが、この感情を発散できる相手がいないというのは難儀なモノだ。
B小町のメンバーとも上手く仲良くなれない私は、仲の良いと呼べる存在は未だにグレン一人だけ。
でも、別に良い。彼さえ私のそばに居てくれれば私としては問題ない。
むしろ、彼が居なくなったら私は何をするかわからない。
私の世界で唯一の友達。
ただ、そろそろお付き合いしたいなと考える事が増えてきた。
既に周囲から見れば(見る人がいれば)付き合ってる様な感じかもしれないが、未だに告白はできていない。
彼は誰かを愛する事を恐れている。
その原因を探ろうと思ったが、彼は頑なにその事を話そうとしない。
その事が少し悲しいが仕方ない。
どうしたものかと考える。
いっそのこと既成事実を作ってしまおうかとも思う。
彼はきっと拒まないだろう、だが、それはきっとお互いに何かの遺恨を残す事になりそうであまりやりたくない。
そもそも、こんなに彼と付き合う方法を考える様になったきっかけはメンバーの一人が彼氏ができたと言う話をしていた事がきっかけだった。
彼とどんなデートをしたのかを楽しそうに彼女が他のメンバーに話していたのをよく覚えている。
それを私は聞いてないふりをしながら内心でグレンとの想像を膨らませる。
似たような事は今でもできるだろうが、やはり友人としてではなく、彼氏と彼女という関係でしてみたい。
憧れが私の胸の中で強くなっていくのを感じた。
私が自主練を終えて更衣室で着替えようとすると、中から話し声が聞こえてきた。
「え!別れたの?!」
「うん...他に好きな人できたらしくて...」
「信じられない!」
「最低じゃんそいつ」
彼女達は別れた経緯について話していた。私は彼女達と仲良くないなので、恋愛関係の話をされた事がないし、した事もない。どう仲良くすれば良いのかわからない。
でも、私も女子なのでこう言う話には興味がある。
その為、入り口でこっそり聞き耳を立てていた。
要約するとこう言う事らしい。
付き合っていた相手は少し前から浮気をしており、そっちと付き合いたい気持ちが強くなったので振られたそうだ。理由は気軽に会えないからだとか。
ふと思う。
高校に入ってからグレンにその様な相手はできていないだろうか?
グレンの家に行くたびに他の女が来ていないか確認してはいるし、今のところそれらしきものはない。
また、彼のスマホの履歴などを確認しても、学校の知り合いらしき人は何人かいるが、基本的には私とのやり取りがメインになっている。
大丈夫、大丈夫なはずだ。
しかし、一度生じた不安は中々消えるものではない。
むしろ、どんどんと肥大化していくのを感じる。
嫌な想像ばかりしてしまう。
更衣室から彼女たちが出てくるのを感じ取った私はとっさに隠れてしまう。
誰もいなくなった更衣室で一人着替えながら私は強く決意する。
確かめないと──。
そんなもやもやを抱えながら、社長に家まで送ってもらう。
窓をぼんやりと眺めながらどう話を聞き出すか考える。
彼は私ほどではないが嘘をつく事は得意だ。何か聞かれたくない事、答えたくない事があった時に誤魔化したり、なあなあにする。
証拠もないし、あくまで私な想像をしてしまっただけに過ぎない。
そんな状況化で、何かを聞き出す事はできないだろう(聞き出さなけれいけないことがあればだが)。
そんなこんなで、本当かどうかもわからない、私がただ不安なだけという理由からの思考を巡らしていると、ある光景が視界に入った。
よく、"時が止まった様に感じる"と言った表現を耳にするが、まさかそれを私が体験する日が来ようとは思いもしなかった。
それも最悪の形で──。
グレンが知らない女と話している。
グレンが知らない女と笑顔で話している。
グレンが知らない女と二人で話している。
なんで?
裏切ったの?
たまたま?
先ほどまでの嫌な妄想が徐々に現実味を帯びてくるのを感じる。
多分、この事をグレンに言ってもはぐらかされるだけだろう。
──ああ、決めた。
こうなったのなら仕方がない。
本当はやりたくなかった。
本当に?
いや、私はこの手段を取る理由が欲しかったのかもしれない。
今夜、私はグレンを襲う。
どうなろうが、私から離れられない様にする。
絶対に逃がさない──。
グレンを待つ間、この思いを紛らわすために空の鍋を混ぜる。
カラカラ、
カラカラ、
カラカラ、
カラカラ、
カラカラ、
カラカラ、
カラカラ、
カラカラ、
カラカラ、
カラカラ、
カラカラ、
カラカラ、
カラカラ、
カラカラ、
カラカラ、
カラカラ、
カラカラ、カラカラ、カラカラ、カラカラ、カラカラ、カラカラ、カラカラ、カラカラ、カラカラ、カラカラ、カラカラ、カラカラ、カラカラ、カラカラ──。
「ただいま」
彼が帰って来た。
「おかえりー」
私は返事を返す。
それから、グレンと夕食を作り、ご飯を食べ、後片付けも済ませる。
「グレン〜、白湯入れたよー」
「ああ、ありがとう」
彼は何一つ疑う事なく差し出されたものを飲む。
少し時間が経ってから、ようやく薬が回って来たのだろう。グレンが眠そうにして、そのままソファーに横になった。
きっとこの決断を後悔する日が来ると思う。
もっと良い手段があったとかもしれないと嘆く日が来るかもしれない。
彼と話し合い合えば、解決できる事なのかもしれない。
でも、この先もこんな想いを抱える事があるくらいなら、今日で終わらせる。
Q.前回のラストについて二人はヤッたんですか?
A.彼がかなり早く目覚めてしまったのでまだしてません。まだ。
ちゃんとハッピーエンドを迎えさせるので安心してください。