よくあるテンプレの話 作:るるぶ
アンケート答えてくださった方々、ありがとうございました!
「落ち着いて聞いてください。彼女は、妊娠してます」
その言葉を聞いた瞬間、俺の思考が停止する。医者の言葉が停止した頭の中に反響する。
にんしんしてます、
にんしんしてます、
にんしんしてます、
にんしんしてます、
にんしんしてます....
妊娠してるの!???
医者から告げられた言葉を聞いてから体感一分ぐらい経過しただろうか、ようやく俺は現実を認識できるようになった。
そして、その事実が聞き間違えでないかを確かめるために確認する。
「え、妊娠ですか?」
「はい、二ヶ月ほどですね」
医者は即答してきた。二ヶ月、てことは初めてしたときにはもう....。
段々と冷静になってきたが、同時に事の重要性を俺に伝えてくる。
17歳現役アイドルを妊娠させた。しかも、俺も17歳。確かに収入は俺の方はかなりあるが、俺に関しては学生なので平日は夕方くらいからしか育児を手伝えない...。それに、アイはここの所、かなり忙しくなってきている。
え、やばいやん。
まじやばくね。(某ドラゴン幼女ボイス)
脳内で、現在の状況のヤバさをなんとか受け止めている中で、ようやく隣にいるアイに俺の意識が向いた。
この事態を彼女はどう受け止めているだろうかと、彼女に視線を向けると、そこにはすごく嬉しそうな彼女がいた。
すると、彼女は俺の視線に気付いたのかアイも俺に視線を向け、口を開いた。
「やったね、グレン!!」
そう言いながら彼女は俺に抱きついてきた。
「お、おい、少しは体に気を遣え...」
なんとか俺が絞り出せた言葉これだけだった。
俺としても、アイが妊娠したことは正直な気持ちとしては嬉しい。
生ませてやりたい。
だが、現実はそんなに甘くない。
俺もアイも学生で、彼女に関してはアイドルでもある。そんな俺たちが子育てをして行くには周囲の協力は不可欠だ。
しかも、頼れる人間となるとかなり限られてくる。
俺はまだしも、アイに子どもがいることが漏れればアイのアイドル人生は終了だし、彼女の所属している事務所もかなりの損害を被る。
なにより、俺が子育てをできるのか、という強烈な分がある。
アイはどう考えているのだろうか。
ぐるぐると色々な事考えながら嬉しそうに抱きつくアイを見下ろすと、
「元気な子達だね」
何処か懐かしさを感じさせる視線を俺たちに向けながら、目の前に座る医者が話しかけてきた。
「あはは...」
乾いた笑いでなんとか返事をする。
「にしても、その年で妊娠とは、随分と遊んでいたようだね。仲が良いのは良いことだ」
「は、はぁ...」
「私も学生の頃はブイブイ言わせていたから、君たちの気持ちはよくわかるよ」
すると、隣にいる看護師が口を開いた。
「その結果、17歳で子どもができたんですよね」
まじかよ。
「何でまたバラすかな君は」
「で、息子も孫も17歳で子どもができてしまってね。君のご両親も17歳の時だから、これはもうなにかの呪いだね」
そういえば俺の親もそうじゃん...。
ならしょうが無いよね、遺伝です、遺伝。遺伝子には逆らえません(思考放棄)。
この話を聞いて、なぜか嬉しそうにアイが言った。
「これはもう運命だね!」
「....」
ほんとにこいつは能天気だなと、今回ばかりはかなり羨ましく感じる。
「だが、よく話し合う事だね。後悔しないように」
「はい」
そうだ、コレに関してはきちんとアイと話し合わなければいけない。
場合によっては中絶することを選ばねばならないのだから。
俺たちは病院を後にし、家に帰宅した。
部屋に入るとソファーに少し間を空けて隣り合って座る。
しばらくの間、静寂のみが部屋に訪れた。
アイも病院では浮かれていたが、家に向かう時は無言だったので、自分なりに色々と考えたのだろう。
彼女と付き合い始めてから、基本的に俺はアイの意見に流される事が多かったが、今回はしっかりと話し合わなければいけない。
逃げることは許されない。
覚悟を決め、静寂を俺から打ち破った。
「アイは生むつもりか?」
彼女も真剣な問いだと理解しているのだろう。俺の方をまっすぐ見ながら答えた。
「うん、当然だよ」
ハッキリとした意思表示だ。そんなの当たり前とばかりに答える。
「アイドルはどうする」
そう、アイが生む気なのはわかっている。だが、問題はアイドルを続けるのか、辞めるのかだ。しかし、おそらく彼女の事だ、きっと──。
「アイドルも続けるよ」
そう言いながら、ソファーに置いてある俺の手を握る。
「それがどんなに大変で、危険な事かわかっているのか」
攻める様にして彼女に問う。
「うん、少なくとも私なりには真剣に考えたよ」
「俺たちは学生で、アイに関してはアイドルだ。お互いに忙しいから、他の誰かを頼らないといけない。なにより、既に俺という爆弾を抱えているのにさらに増えるんだぞ。それでもか」
確認するように、わかりきった事実を述べる。
「それでも私はこの子達を産んであげたい」
強い意志を確かに感じる返事だ。
「そうか...」
「グレンは、グレンはどうなの?」
次は俺が答える番と言うことか、
「俺は...」
答えを言い出せない。
理屈では産むべきでないとわかっている。
学生が子どもを産む大変さも、想像の範囲ではあるが、わかっている。
また、前世で多くを殺めた俺が、誰かを育てるなどして良いのかという葛藤もある。
「グレンが嫌なら、私は諦める。その時の決断の罪も一緒に背負うよ」
そう、産まないと言うことは赤子を殺すのと同義だ。法的には許されても、自分を許せるかは別の問題だ。
「だから、正直に答えて欲しい」
前世の両親に一度聞いたことがある。
”どうして俺たちを産もうと思ったのか”と訪ねたことがある。
だってそうだろう、かつての世界では、日々を生きていくので精一杯だった。俺達を産むのはリスクの方がデカかったはずだ。なのに、なんで産んだのか。
その時に母は笑いながら答えた。
「産みたかった、それだけ」
当時は困惑したし、怒りもした。苦しさばかりが広がる世界なんて誰が好むというのか。
でも、今ならなんとなくわかる気がする。
きっと、産むときは強い明確な理由があったわけではなく、なんとなくだったのだろう。
でも、生まれた瞬間に何かが変わった。その何かは俺にはわからないが、その変化があったから命をかけて育ててくれた。
利己的な理由で産んだのだろう。
今の両親だってそうだ。
昔から、あの二人はお互いの事しか考えていないはずなのに、俺をなんだかんだと育ててくれて、今も仕送りもしてくれている。
どちらの両親も、外部的な問題は沢山あったはずだ。
それでも俺を産んだ。
なら答えは決まっている。
「俺も、産んでやりたい」
彼女の瞳を見つめ返しながら答える。
「いいの?」
最後の確認とばかりに聞いてくる。
「ああ」
そう答え、俺も彼女の手を握り返した。
その手はいつもより暖かかった。
「でも、そうなるとこれからあんまりできなくなっちゃうねー」
「最初に考えることがそれか、馬鹿タレ!!」
「あー、デコピンした!!酷い!」
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