よくあるテンプレの話 作:るるぶ
第一話
「私、アイドルやることになりました!」
「は?」
昼休み、俺は唐突に隣の席の女子に謎の宣言をされた。
「いいと思うよ、顔はいいもんなお前」
「ひどーい!そんなこと言ってるとモテないよ」
「うるせぇ」
毎日の様に繰り返しているやり取り、もう慣れたものなので適当に受け流しながら思う。
確かに彼女──星野アイ──はアイドルに向いているとは思う。
お世辞抜きにこいつは容姿がずば抜けて良い。このレベルの美人と人生で一度でも会話したことのある人間が、この世に果たしてどれくらいいるだろうか。
それだけでもアイドルとしては充分なのだが、特に彼女の場合、アイドルとして適性が高いのは、彼女の嘘を付くレベルの高さだ。彼女の嘘つきのレベルは年を重ねるごとに上昇しており、長年の付き合いの俺ですら時々、何が嘘で、何が本当か区別が付かなくなる。
そんな彼女がアイドルをやるのだ、やり方を間違えなければ売れることは間違いないだろう。
しかし、彼女はそのような仕事に拒否感があったはずだ。俺がふざけてアイドルを勧めたときは
「私には無理だよ」
そう彼女はハッキリ答えていた。
だから、彼女がアイドルになるなんて、天地がひっくり返る様な事でも起きない限り無いと思っていた。
「というか、なんでアイドルになる気になったんだ?アイはそういう仕事避けてると思ってたんだけど」
「いや~、スカウトされて見事に口説かれたんだよね~」
どうやら、こいつは俺に本当のことを言うつもりはないらしい。
正直、俺としては彼女に向いてるとは思っていたので賛成ではあるが、実は勘違いや騙されていて、変な勧誘に乗ってしまったのではないかと少し心配になる。
彼女は嘘つきの達人のくせに、嘘をつかれると案外簡単に引っかかることが意外とある。特にそれが自分に向いたベクトルの嘘の時はその傾向にある。それがわざとなのか、ほんとに騙されているのか俺には未だに判別が付かない。
「どこの事務所に所属するんだ?」
「確か、苺プロダクションだったかな?」
えらく単純な名前だなと内心で突っ込んでしまう。
帰ったら調べてみるか。
「ま、応援ぐらいはしてやるよ」
そう言うと彼女は満面の笑みで返してきた。
「ならグレンは私のファン一号だね!」
「はいはい」
と、そこで予鈴の鐘が鳴る。
「次の時間て何だっけ?」
「いい加減それくらい覚えろよ、数学だよ」
「うへ~、やだなぁ」
そう彼女が授業に対して、誰しもが人生で数回は口にするような台詞を吐いていると数学の先生が入ってきた。
私には幼馴染み的な人がいる。
友人と呼べる唯一の人。
彼は、柊グレンは、私ほどではないが、かなり顔のレベルは高い。
彼の優れた所は顔だけではない、運動神経や勉学、その他もろもろの事も何でもこなしてしまう。天は二物を与えずと言うが、彼には一体何物与えたのやら、と未だに呆れ返る事がある。
でも、本当に彼の恐ろしい所はそこではない。
彼は時々、未来が見えているかの様なアドバイスをしてくる事がある。
何故そんな事ができるのか何度か彼に聞いた事があるが、
「なんとなくだよ、なんとなく」
と、毎度はぐらかされる。
そんな彼は私以外の特定の誰かと一緒にいる事はないが、色々な人に話しかけられる事が多い。
正直、少しそれが羨ましい。
そんなスーパー人間と付き合えたらどんなにいいだろうか、そう思うのは年頃の女の子なら別におかしな事ではない。
実際、彼に告白をしたと言う噂も時々耳にする。
まあ、一度として成功したと言う話は聞いた事がないが。
そんな彼と何故私は仲が良いのか、きっかけは確か小学生三年生の頃だっただろうか。
母親が逮捕され、施設に預けられた私は今までいた小学校から、少し離れた小学校に転校する事になった。元々、仲のいい友達が一人もいなかったので特に寂しいと言った事はなかった。
ただ、周囲の人達は既に友達がいて、そんなクラスに入っていくのが少し億劫だったのを今でもよくおぼえている。
「星野アイと言います。よろしくお願いします」
「そしたら、星野さんは柊君の隣の空いている席ね。柊君は彼女の面倒を見てあげてくださいね」
自分の席が示されそこに向かう。
第一印象は'大人っぽい男の子'だなと思った。
「柊グレン。よろしくな」
本当は書くつもりなかったんですが、どうしても落ち着かなかったので書き始めました。失踪確率100%です。