よくあるテンプレの話 作:るるぶ
書き切れる様なレベルにしないと私の場合無理なんです...。
──昔のお母さんはすごい人だったらしい。
なんでも、一度は世間から凄く注目を浴びる存在だったそうだ。
”らしい”と言うのはお母さんが逮捕されてから警察がそう話しているの偶然、聞いたからだ。
「昔は毎日テレビで見かけたくらいだったんだけどなぁ」
でも、私はそんなお母さんを知らない。
私にとってお母さんは恐ろしい存在。
お母さんの機嫌が悪いときはよく殴られた。
お母さんの機嫌が悪いときはよく蹴られ、踏まれた。
お母さんの機嫌が悪いときは物をよく投げられた。
お母さんの機嫌一つで全てが決まった。
泣いてしまうとさらにひどい目に遭うので、どんなに痛くても泣くのを我慢するようになった。そして、気づけば私は涙を流せなくなっていた。
割れたガラスなんかがご飯に入っている事は何度もあったし、そもそも、ご飯がない日もあった。
家を空けることなんてしょっちゅうで、知らない男を家に連れ込むこともあった。
その男にも暴力を振るわれた。
私が物心ついた頃からそうなっていたので、実際にいつからママが荒れ出したのかは知らない。
小さい頃の私の世界はこの狭い家の中だけだった。
だから、私はこの世界が地獄だと思っていた。
そんな地獄と外の世界を唯一繋ぐ物があった。
テレビだ。
テレビに映るモノはいつも輝いていた。
画面の向こう側にはいつも私の知らない世界が広がっていた。
特に私の心に残ったのは、ある家族に密着したドキュメンタリーだ。
その番組では、大勢の子供達に囲まれ、家族で仲良く話している映像が写っていた。
それが、かつての私には理想郷のように思えた。
でも、勝手にテレビを観るとひどい目に遭うので、お母さんがいないときに、一人で、こっそりと観ていた。
そんなお母さんでも、機嫌がいい時には
「愛してる」
と言ってくれたから、こんな目に遭っていてもお母さんは本当は私を愛しているのだと信じていた。
実は、私の何かが悪くて、お母さんは私に厳しく当たるのだと。
私が変われば全てが良い方向に行くのだと。
いつかは画面の向こうのようになれるのだと。
だから、お母さんの愛に応えようと本音を押し殺し、嘘を吐くように自分を演じ始めた。
母の望む様な自分を演じれば、酷い目に遭う事も減ったし、ご飯もある程度は食べれる様になった。
少しずつ、少しずつ、希望が見えて来たある日。
お母さんがなかなか帰って来なかった。
夜になって、警察の人達が訪ねて来て事情を説明された。
「君のお母さんは物を盗んだから逮捕されたんだ」
今でも、私を見つめるあの警察官達の悲痛な顔をよく覚えている。
あれた家とみすぼらしい格好をした子供。その警察官達は哀れむような目を向けながら淡々とやるべき事をこなしていった。
それからの事はハッキリと覚えていないが、特に引き取り手のなかった私は施設に預けられ、気づけば学校は転校することになり、
彼と、柊グレンと、出会う事になった──。
「お母さん?お母さんだよね!」
そう呼びかけると心底不機嫌そうな顔で、まるでゴミを見る様な顔で、こちらを向いて来た。
「誰?」
抗うように私は答える。
「私だよ!アイだよ!!」
「ああ、なんだ、まだ生きてたのか」
その瞬間、私の頭は真っ白になった。
今私は何を言われたのか、
─まだ生きてたのか─
聞き間違えに決まっている。
「今更、私になんのようがあるのよ」
「お母さん、外にいるって事は出所したんでしょ?!なんで迎えに来てくれなかったの?」
私は祈るようにそう聞いた。
「なんであんたなんかを迎えに行かないといけないの」
確かにお母さんは私に暴力を振るっていた。
「え、だって、私、お母さんの子供だよ。愛してるって言ってくれたじゃん!」
それでも信じていたのだ。
「は、馬鹿な子だねぇ。あんなの嘘に決まってるじゃない!」
いつかは仲良くなれるのだと。
「ずっとあんたなんて生まなければ良かったと後悔してるよ!」
だからこんなの嘘に決まっている。
「都合がいいから言ってただけ」
だって、お母さんは私に”愛してる”と言ってくれて──
「あんたなんか一度だって愛したことない!!」
何かが割れる音がした。
結局、私は今まで誰にも愛された事がなかったのだと、目を背けていた事実を目の当たりにして私は逃げ出した。
走る、走る、走る。
とにかく走る。
自分でもどこに向かってるかわからないが、今はただ、この悲しみから逃げたい。なのに、どんなに走っても悲しみは減らない。
─生まなければ良かった─
むしろ、先ほどのお母さんの言葉がより強く自分の心を蝕んでいく。
─あんたなんか一度だって愛したことない!─
あぁ、なんで私の人生はこんななんだろう。
きっと神様は私のことが嫌いなのだ。だからこんな目に遭う。
そんな思考がグルグルと頭の中を巡っていく。
ふと、足が止まった。自分でも何故だかわからず前を見ると、そこには見覚えのある家があった。
体が勝手に動く。
インターホンを押す。
声が出ない、しかし、少し時間が経つと ガチャリ とドアの開く音がした。
私より既に背丈が一回り大きく、金色の髪を持つ少年が私を見下ろす。
そこにはグレンがいた。
次回第一章完結です。
やっぱり、文を書くって難しいですよね。
書きたいことや思ってることの半分も言葉にできていない気がします。
厚みのある言葉を書けるようにしたいなぁ