よくあるテンプレの話   作:るるぶ

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多分、あの内容で待たされたくないと思うので急いで書き上げました。

次回から更新ペースが少し落ちます。すいません。


第六話

彼は何も言わずに私を家の中に入れてくれた。

 

そのまま彼に着いて行き、彼の部屋に入った。そして彼に引かれるがまま、彼に続いてベッドを背もたれにして座り込む。

 

夕陽の光が部屋に差し込み、静寂が場を包み終わる頃、ようやく私は口を開いた。

 

「私ね、今日、お母さんに会ったんだ。」

 

「ああ」

 

彼は相槌をただ返すだけだった。

 

私の心は凄く苦しいはずなのに涙が全く出て来ない。

 

「お母さんはなんだかんだ、私を愛してくれてると思ってたの」

 

「でも、違った」

 

「私、愛された事なんてなかったんだ」

 

「私が勝手に騙されていただけで、一度たりとも私は愛された事なんて無かったの」

 

「笑える話だよね」

 

結局、お母さんに私は騙されていただけで、私の夢が叶う事なんて決してあり得なかったのだ。

 

私はなんてアホなんだろうか。

 

今考えてみれば、あんなのは嘘だとわかるのに、そんな事にすら気づけなかった。

 

 

私、なんで生まれてきたんだろう──。

 

 

私が話を終わると、少し間を空けてから彼は話し出した。

 

「大変だったな」

 

うん。

 

「辛かったな」

 

うん。

 

「悲しいよな」

 

うん。

 

「愛してほしかったんだよな」

 

うん。

 

「だけど、俺にはお前の事を愛してやる事はできないんだ。ごめん」

 

 

 

 

──え

 

その言葉を聞いた時、胸が裂けるような錯覚に陥る。

 

こんな事を彼に言われるだなんて全く思いもしなかった。

 

きっと私は心の何処かで望んでいたのかもしれない。

 

彼に「愛してる」と言われる事に、だから無意識に彼の家に向かっていたのだろう。

 

しかし、そんな儚い願いは崩れ去った。

 

冷静に考えればそうだ。

 

彼はハッキリと言葉にしたことは無かったが、いつも”愛する”という行為を恐れていたではないか。

 

だから彼は周囲の女子達からの告白を一度として受け入れなかった。

 

私だけが、感じ取れたこの事実を私は忘れていた。

 

いつもなら隠し通せる。

 

他の誰かなら隠し通せる。

 

でも、今はダメだ。

 

彼だけはダメだ。

 

絶望とはこの感情の事を言うのだろう。

 

私の周囲は真っ暗で、光なんて全く見えない。

 

暗い、暗い、海の底。

 

悲しみが、私という世界を一瞬で覆い尽くしていく。

 

この場にいる事も辛くなり、一刻も早くこの地獄から抜け出すために立ち上がろうとした。

 

すると、突然彼に腕を捕まれた。

 

振り返ると、彼は何か覚悟を決めたような目で私の瞳を見つめて来る。

 

私を包み込むように、そして、宣言するように強い意志を込め、彼は続けてこう言った。

 

 

「でも、お前が誰かに愛されるまで、そばに居てやる事はできる」

 

私という世界に、光が差し込むのを感じる。

 

「俺は誰かを愛する事ができない」

 

知っている。

 

「だから、お前を愛してはやれない」

 

わかっている。

 

「その代わり、お前が誰かに愛されるまで、誰かを愛せるようになるまでお前のそばにいてやる」

 

ならどうして、

 

「だから、ひとりぼっちなんて言うな」

 

どうして、そこまでしてくれるの。

 

「だって、俺はお前の友達だろ」

 

「少なくとも、俺はそう思ってる」

 

「アイは違うのか」

 

そんな事ない、私にとってもグレンは大切な存在で、世界にたった一人の友達。

 

それを伝えたいのに言葉が出ない。

 

さっきまでは勝手にこの口は動いていたのに、今は動かせない。

 

私は必死に彼の言葉に返そうとして、自分の額に何かが流れるのを感じた。

 

それはかつて私が捨てたモノ。

 

私がこの世界で生きていくためには邪魔だったモノ。

 

それが止めどなくあふれ出る。

 

止まらない。こんなにも止めたいと思っているのに、全く言うことを聞いてくれない。

 

「あああああぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

涙の止まらない私を彼は優しく抱擁する。

 

何時ぶりだろうか、涙を流したのは。

 

誰かの腕の中で泣いた経験のない私を、彼はまるで子供を慰めるように、私の頭を撫でながら受け止めてくれた。

 

この瞬間を私は一生忘れないだろう。

 

 

 

 

 

その後、帰ってきた彼の母親に驚かれたが、彼がうまく誤魔化してくれた。

 

すっかり外も暗くなってしまい、そのことを心配した彼のお母さんが彼に施設まで送るように言ってくれた。

 

彼と彼のお母さんの関係を少しうらやましく思いながら二人で家を出る。

 

彼に寄り添いながら施設への帰路を歩く。

 

彼は私の方を向くことなく、私は彼の方を向くことなく、それ故、お互いに言葉はない。

 

そんな中、私は自分の中で急激に大きくなるものについて考える。

 

この感情は一体なんだろうか、今までに一度としてこんな気持ちになったことはない。

 

ドロドロとしていて、とっても黒い。とてもおぞましいモノのはずなのにこんなにも心地が良い。

 

彼に私が書き換えられていくような錯覚すら覚える。今までの私がどこかに消え、新しい私が生まれてくる。どこまでも黒く、黒く、黒く染め上げていく。

 

こんな大きなモノが私の中に生まれつつあることに驚く。

 

彼が突然足を止めたことで現実に戻され、施設の前に着いたのを確認する。

 

私が彼の腕から手を離すと、彼は別れの言葉を告げた。

 

「また明日な」

 

たった一言なのに、こんなにも私を満たしてくれる。

 

「うん、また明日!」

 

私が返事を返すと、彼は家に帰るために私に背を向けた。

 

その背中を見届けなが彼の背中を見つめる。

 

この感情の正体はわからない。でも、一つだけ確信を持って言える事がある。

 

 

この思いは私だけのものだ。

 

 

”彼は”私のものだ。

 

 

決して、離さない。

 

 

 

 





星野アイ、闇化完了。

個人的にはまどマギの明美ほむらが堕天する時を想像しながら最後の方を書きました。
にしても、一度上げてから落として、再度上げるなんて鬼畜なことしますね()。
今回の件で不安になる方もいるかもですが、ちゃんと二人は幸せになります。

します。

補足

彼女はアイドルになることを決意した根本的な原因は、最後に現れた感情の正体が"愛"なのか確かめる為です

次回から「アイドル活動と高校生」編になります。
え?高校生だって?ハイ、つまり若干年齢がずれます...。

結局、今回の章は割と重たくなったので、次回からは二人をイチャイチャさせたいです。(させられるとは言っていない...)
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