ようこそ不良品だらけの教室へ   作:きよぽん

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第3話:朝帰り

「にゃにゃ?!お、美味しい・・・負けた」ボソッ

 

 

オレのカレーを口にした一之瀬が、なぜか絶句した。ん?まさか辛口は苦手だったか。

 

 

いまは入学式当日の夜。ひげを剃る。そして女子高生を拾い手料理を振る舞う。なお、このあとお風呂とお泊まりもある模様・・・

 

 

「お肉の煮込み具合、野菜の大きさ、スパイスの調合バランス・・・完璧だ。凄い、凄いすぎるよ」

 

 

「あぁ、それはな・・・」

 

 

なにやら勘違いしている彼女に、真実を告げようとしたのだが・・・

 

 

「優しくてハンサムでお料理も得意・・・もう反則技のオンパレードだ」

 

 

「いや、だから・・・」

 

 

「むむむ・・・パクッ・・・綾小路君と仲良くなるには・・・モグモグ・・・この味を越えなくちゃいけないのかぁ・・・ムグッ・・・これは生徒会よりも、お料理研究会が先だなぁ・・・」

 

 

美味しそうにカレーを頬張る一之瀬・・・もはや言えない。まさかそれが『7プレミアムゴールド 金のビーフカレー』を、お鍋で温めただけのものだなんて。あと、どうでもいいが、食べながらぶつぶつ言うのはマナー上どうかと思うぞ。

 

 

その後は、ふたりで互いにクラスの情報を交換したり、好きなアニメの話で盛り上がったりした。これが、オレの追い求めていた青春・・・やはり、ホワイトルームでは学べないことが、ここにはある。いずれあちらにも、サブカルチャー講座を設けるべきだろう。

 

 

ちなみに彼女のお気に入りキャラクターは、艦これの金剛型4姉妹や俺ガイルの由比ヶ浜結衣らしい。ほぅ・・・確かに似ているな。主に声とか声とか。大事なことだから2回言ってみたが、使い方、合ってるよな?

 

 

さて、共通の趣味で親睦を深めたあとは、風呂の順番で少し揉めたが、結局一之瀬が先に入った。むろん、残り湯なんかに一切興味はない。(キリッ

 

 

そして現在、寝る場所をめぐって彼女を絶賛説得中である。

 

 

「やっぱり、私がベッドに寝るわけにはいかないよ。綾小路君のお部屋なんだから」

 

 

あくまで固辞する一之瀬。もちろん着替えなど無いので、仕方なくオレの学校ジャージを身に付けている。当然、彼女にはサイズが大きすぎて()()()()なのだが、それでも似合ってしまうのは美少女の特権だろう。なお、胸周りだけが()()()()なのは見なかったこととする。(特例措置)え?下着はどうしたのか、だって?そんなこと、本人に聞いてくれ。

 

 

「気にせずベッドで寝てほしい。まだオレも使っていないから、実質新品だ」

 

 

他人のベッドに抵抗感があるのは理解できるが、まさかこの状況で、彼女を床に寝かせるわけにはいかないからな。

 

 

「・・・わかった。ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えてそうさせてもらうね。本当は、ふたりで一緒に寝れば良いと思うんだけど・・・」ボソッ

 

 

嫌悪感からなのか、若干顔を赤らめた一之瀬が、しぶしぶといった感じでベッドに潜り込む。何かぶつぶつ言っていたが、聞こえなかったことにしておこう。(お約束)

 

 

「おやすみなさい」

 

 

就寝の挨拶をすると、すぐに寝息を立て始めた一之瀬。ずっと快活に振る舞ってはいたが、入学したばかりの慣れない環境下、しかも知り合ったったばかりの[[rb:異性 > オレ]]の部屋で一夜を過ごすのは、やはり相当緊張を強いられる事態だったのだろう・・・

 

 

彼女の眠りを妨げぬよう、オレも床に毛布を敷いて横になり、照明を落とす。眠るつもりはないが、休める時に休んでおくのはサバイバルの常識だ。こうして疾風怒濤の高校生活初日は、ようやく終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

念のため言っておくが、もちろん間違いは起きなかったからな。(あたりまえ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん・・・」

 

 

ゆっくりと意識が覚醒する。朝か・・・少しまどろんでしまったようだ。あの頃は徹夜の耐久訓練など日常茶飯事だったのに、この程度で寝落ちしてしまうとは、やはり思った以上に(なま)ってきているらしい・・・

 

 

自分の不甲斐なさを感じつつ起き上がると、何か見慣れないものが視界を掠めた。違和感の正体は、壁に掛けられた制服のブレザーとスカート・・・いや、先に言っておくが、オレにそんな趣味はないぞ?

 

 

実のところ、昨夜はあまり眠れなかった。別に、すぐ横で寝息を立てる美少女に興奮したからではない。そんな感情は、とっくにあの地獄へ・・・あれ?確かさっきも言ったよな、これ。

 

 

寝不足の理由はわかっている。他人と同じ部屋で眠ることに、オレの身体が拒絶反応を示したのだ。睡眠中は、誰しも無防備な状態を晒している。どれほど鍛えていようとも、そこを狙われたらひとたまりもない。実際オレは、そんな事例を嫌と言うほど見てきた。だから、たとえ一之瀬がか弱い少女であったとしても、一切油断はできないのである。

 

 

と言って、まさか彼女がホワイトルームからの刺客とも思えないが・・・

 

 

ふと見れば、まだ薄暗い部屋の中、スマホがメールの着信を知らせていた。連絡先を交換した相手など、ひとりも居ないはずなのに、いったい誰から・・・?

 

 

首を傾げながら開いた画面には・・・

 

 

 

 

 

 

 

FROM:チエ️

 

TO:きよぽん

 

SUBJECT:丸見えだぞ️ 

 

 

本文:おはよう️️♪昨夜は凄かったみたいだね?!大人の階段を上った気分はどう?今度、私のところにも報告しに来ること!★あと一之瀬さんのお部屋、ロック解除しておいたから、もう入れるよ(^^)/

 

PS:いまから2回戦なんてしちゃダメだぞ?遅刻厳禁(o・ω・o)@

 

 

 

 

 

 

 

これは絶対に受信履歴から消さないとダメなやつだ。だいたい、なんでオレが星之宮とメル友になっているんだ?それとあんたいくつ(何歳)だよ?あと、そもそも昨日ロックを解除しておけば、一之瀬は部屋に帰れたのでは・・・とボブ(オレ)は訝しんだ。

 

 

そこまで考えて、ふと窓に視線を移す。カーテン越しに漏れる朝日が、やけに眩しい。もしかして・・・いまさらながらにスマホの時計表示を確認したオレは、我が目を疑った。マジか・・・うそだろ?!(大病院占拠)

 

 

 

 

4/8 火曜日

08:00

 

 

 

 

「一之瀬!済まないが起きてくれないか」

 

 

マナー違反は承知でベッドに声を掛けるも、熟睡しているのか全く反応なし。掛け布団から少しはみ出したストロベリーブロンドが、白いシーツに広がってやけに艶かしい。

 

 

本来なら彼女が目覚めるまで待つべきだ。しかし、そんな悠長なことをしていたら、ふたり仲良く遅刻して、星之宮に弄り潰される未来しか見えない。逡巡している間にも、刻々と朝の貴重な時間は過ぎて行く。こんな時、萌えアニメなら妹が兄の布団に飛び乗って起こすのが定石だが・・・(ダメ!絶対)

 

 

ええい!ままよ!

 

 

「起きてくれ!朝だ!」

 

 

やむなく、膨らんだ掛け布団を剥がす。あっ・・・(察し)

 

 

「んんっ・・・ふわぁ・・・おはようお母さん、入学式、間に合うかなぁ・・・」

 

 

いまだ寝ぼけ眼の一之瀬。これが演技だとしたら、彼女は一流のエージェントになれるだろう。

 

 

「残念だが入学式は昨日終わったぞ。始業まで、あと30分もない」

 

 

「ふぇ?」

 

 

その言葉にようやく目覚めたのか、一之瀬は飛び起きた。慌てるあまり、色々と捲れ上がったり、ずり落ちたりしていることにも気付いていないようだ。

 

 

「た、大変?!どうしよう綾小路君!」

 

 

「とにかく落ち着いてくれ。まずは取り敢えず、その格好をどうにかしてくれると助かる」

 

 

「??・・・にゃにゃん?!」

 

 

自分のあられもない姿を見下ろし、まるで尻尾を踏まれた猫のように飛び上がる一之瀬。ほぅ・・・これがいわゆるラッキースケベというものか。(大正解)しかし、こんな場面でも悲鳴が()()とは・・・それと、あの見事なストロベリーブロンド、起き抜けだとああなる(大爆発する)んだな・・・(爆)

 

 

「・・・み、見たの?」

 

 

冷静に状況を分析するオレの目の前で、再び布団にくるまった一之瀬が呟く。

 

 

「偶然って恐いな」

 

 

「見たの?」

 

 

・・・やはり、ラッキーなスケベなどというものは存在しないようだ。しかし、過ちを気に病むことはない。ただ認めて次の糧にすればよい。それが学生の特権だ。(一部拡大解釈)

 

 

「済まない。お詫びに何でもしよう」

 

 

「・・・いま、何でもって言ったよね?」

 

 

なるほど・・・これが敗北というものか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、朝食を摂る暇もなく、オレのジャージを着たまま自分の部屋へ帰ることになった一之瀬。少なくとも、教科書や筆記用具は取りに戻らなくてはならない。不幸中の幸いは、すでにほとんどの生徒たちが登校済みで、朝帰り(?)の姿を見られる可能性が低いことか・・・

 

 

「本当にありがとう。このお礼は、必ずするからね」

 

 

制服を手に慌ただしく立ち去る彼女を見送ると、こちらも速攻で準備を済ませ部屋を飛び出す。このまま終わるわけにはいかんのだ。(ロボス元帥)

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

「にゃ?!あ、綾小路君?」

 

 

寮のロビーで待機していたオレは、タイミング良くエレベーターで降りてきた一之瀬とのランデブーに成功した。女子は色々と準備に手間取るものと聞いていたが、なかなかどうして、この素早さは大したものだ・・・ザクとは違うのだろう、ザクとは。(意味不明)て言うか、この短時間であの頭を綺麗に纏める技術は、ぜひご教授願いたい。

 

 

「単刀直入に聞く。何か食べたか?」

 

 

これだけは、事前に確認しておく必要がある。もし彼女がたっぷり朝食を摂っていたならば、この作戦計画は根本から破綻することになるだろう。

 

 

「え?いや、野菜ジュースをひとくち飲んだくらいだけど・・・」

 

 

よし!なら、いけるな。

 

 

「わかった。じゃあ、かばんを抱えてくれないか」

 

 

「ふにゃ?!」

 

 

言うが早いか、一之瀬をお姫様抱っこしてダッシュを開始する。礼儀を欠いた振る舞いなのは百も承知だが、いまは1秒たりともムダに出来ないのだ。普通に歩いて登校していたら、恐らくふたりとも遅刻は免れまい。結果的にオレのせいで、優等生の彼女にまで迷惑をかけることになってしまうだろう。そう考えて出した結論が、これである。

 

 

極力、一之瀬に負担がかからないような走り方をするつもりだが、やはり満腹の身では辛いはず。先ほど、食事の有無を確かめたのはそのためだ。

 

 

入学2日目にして遅刻という、新入生として最悪の結末を回避すべく、持てる走力を駆使して人影のない通学路を疾走する。こんなに本気で走るのは、ホワイトルーム以来だな。

 

 

「にゃにゃ@?¥*!!(>_<)☆彡△♪」

 

 

腕の中で、Bクラスの天使が何か叫んでいる。済まん。いまは耐えてもらうしかない・・・

 

 

そして無事、作戦は成功した。フルスピードで校舎に駆け込んだが、まだ予鈴は鳴っていないようだ。走力は衰えてはいないらしい。これなら、体育祭あたりで全力を出してみるのも面白いかもな・・・尤も、オレと勝負できるヤツがそうそう居るとも思えないが。

 

 

昇降口で一之瀬を降ろし、改めて非礼を詫びる。一瞬、残念そうな表情を浮かべたように思えたのは、何かの見間違いだろう。

 

 

「乱暴なやり方で済まなかった。後日、必ず埋め合わせはするから、いまは目を瞑ってくれないか」

 

 

彼女の返答次第で、オレの平穏な高校生活が終わる。

 

 

「にゃ?!と、とんでもないよ!綾小路君のおかげで遅刻しないで済んだし・・・お姫さま抱っこも経験できちゃったしね」ボソッ

 

 

またもや慌てたように、あわあわと両手を振る美少女。もちろん、身体(の一部)も揺れる。昨日から、もはやお約束だな・・・周囲の目を避けるために彼女と別れ、何食わぬ顔で教室へと向かう。オレの平穏無事な高校生活は、いま始まったばかりだ。

 

 

そして場面は、第1話の冒頭へ・・・って、さっきからオレは、誰に何を説明しているんだろう?




次回第4話:櫛田桔梗・・・オレの実力が通用しない不良品が、またひとり・・・
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