怪獣ホラー ~ウルトラマンが助けに来ない世界で~   作:正雪

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見えない怪獣

 とある山村が一夜にして潰れた。

 

 まるで巨大な隕石がゆっくりと村全体を押しつぶしたかのように、家屋も住人もぺちゃんこになってしまったらしい。

 

 あまりにも強い圧力によって潰された人間はただの赤い染みになってしまう。警察や消防はその染みの数で死者数をカウントしたとも言われている。

 

 

 

 それがどうやら透明な超巨大生物によるものだとわかったのはよく晴れた日に地方都市が壊滅した時だ。

 

 山が崩れ、田舎町が押しつぶされてもなお人々は自然災害だと信じていた。

 

 だが、ビルがなぎ倒され、人々が突如として赤い染みになるのを目の当たりにし、それが何か物体が移動して起きている被害なのだとようやく気付くことになった。

 

 これまでは一人も目撃者がいなかったのだが、ここにきて生きてその被害から逃れることができた人間が現れたのだ。

 

 生物ではないかと言われる理由は命からがら逃げのびた人がインタビューで大きな息遣いが聞こえたと言ったからだ。

 

 

 

 肉眼で観測できないソレはどうして見えないのかはわからない。

 

 ネット上では怪獣だと書かれているが政府は超巨大生命体あるいは非生命体と呼称している。

 

 僕はきっとあれは怪獣なのだと思う。

 

 ウルトラマンにも透明怪獣ネロンガというのが出てくる。きっとあれと同じようなやつなのだろう。

 

 

 

 気まぐれに街を破壊していく怪獣は次にどこに現れるのかわからない。

 

 ふと現れては人間を赤い染みに変えていく。

 

 怪獣は塗り絵のように丁寧に街を踏みつぶしていく。

 

 一定区間をしっかりと踏みつぶすと不思議と怪獣は姿を消す。

 

 だが、朝でも昼でも夜でも法則性なく現れるというのは恐ろしい。

 

 気が休まる時がない。

 

 

 

 透明かつ一般市民の居住地に現れるので自衛隊も攻撃しようとしない。

 

 死者数が五桁に届いてようやく自衛隊は塗料をかけて可視化させる作戦を決行することにしたらしい。

 

 出現タイミングや場所は専門家が一生懸命に予測しているが今のところニュースで見た予測が当たったことは一度もない。

 

 怪獣は気まぐれなのだ。

 

 

 

 また一つの人間の集落が更地になった。

 

 そして町一つを犠牲にしてヘリコプターが塗料を散布する。

 

 僕はテレビの前でその中継をじっと見つめる。

 

 塗料を撒いているヘリコプターやジェット機が一機、また一機と小さく丸まって落下する。

 

 握りつぶされているのだ。

 

 専門家の予想では超巨大生命体あるいは非生命体は全長400~500メートルだという。誤差が100メートルもある。

 

 ガンダムが18メートルでエヴァンゲリオンが40メートル、ウルトラマンも40メートル、ゴジラが一番大きいシリーズで118.5メートル。途方もない大きさだ。

 

 

 

 そして怪獣がピンク色の塗料でまだらに姿を現していく――。

 

 

 

 

 僕にはそれが――人間に見えた。

 

 

 

 

 僕だけじゃない。

 

 日本中の誰しもが人間にしか見えていないだろう。

 

 

 

 あの巨大な怪獣は人型だったのだ。

 

 人間の姿をしたモノが無邪気にあるいは人間に対して悪意を持って街を破壊しているのだ。

 

 場所や時間に法則性をつけず、気まぐれにいつどこに現れるのかわからないのは僕たちに対し、学校に行っているとき、トイレに入っているとき、寝ているとき、いつ殺されるかわからないと不安にさせるためなのだ。きっと。

 

 蟻を潰すように人間を潰すことを楽しんでいる。

 

 一気に破壊しつくさないのは勿体ないからだ。

 

 僕にはわかる。

 

 僕があの怪獣ならきっとそうするから。

 

 だから……怖い。

 

 

 

 僕は人間のシルエットが浮かびあがったあの日から眠れなくなった。

 

 

 

 自分が潰されて赤い染みになってしまうかもしれない恐怖に苛まれながらベッドに入る。

 

 今日もきっと眠れないだろう。




拙作『夜道を歩く時、彼女が隣にいる気がしてならない』というホラー小説が4/24に発売予定です。こちらもホラー作品となっておりますのでご興味がある方は是非チェックしてみてください。
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