怪獣ホラー ~ウルトラマンが助けに来ない世界で~   作:正雪

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ただ寝ているだけ

 地震と大雨で山が崩れ、中から出てきたのは怪獣だった。

 

 その山は有名な観光地だったため、自分たちがこれまで登っていたのが怪獣の背中だと知り、人々はそろって背筋を寒くした。

 

 山にそのまま手足が生えた亀のような姿をしているそれは今のところ一歩も移動はしていない。

 

 背負った甲羅の中に手足や頭を引っこめているため、実際には山があるのと何も変わらない。

 草木が生い茂り、動物が住処を作っている。

 

 

 

 この怪獣はいつからここで寝ているのだろうか。

 

 起きていたことはあるのだろうか。

 

 少なくとも生きている、ということだけはわかっているらしい。

 

 

 

 世論は真っ二つに割れた。

 

 このまま静かに寝かせておけばいい派と寝ている間に殺してしまえ派だ。

 

 前者は余計な刺激を与えて暴れ出すことを恐れている。

 

 後者は目を覚ました後の不安に苛まされ続けることに怯えている。

 

 

 

 自衛隊はこの亀怪獣の強度を調査している。

 

 政府からの公式発表はないが、ワイドショーで核爆弾数発撃ち込めば効果が期待できる、というようなことを専門家が言ったことで世間はさらに混乱している。

 つまり周囲の街は犠牲になるということだ。その影響が向こう何年続くかわからない。何発も核を撃ち込まれたらおそらく生きているうちに故郷に戻ることはできないだろう。

 

 

 

 寝ている怪獣の周辺は大騒ぎだ。

 

 市民団体が怪獣を守れと横断幕やプラカードを持って、自衛隊の調査を妨害している。

 

 亀の怪獣は優しいから殺してはいけないのだと主張する女性が泣き崩れている様が報道された。

 

 根拠としてはガメラが人類の味方だからだそうだ。

 

 きっといつか目を覚まして透明な怪獣を倒してくれると思い込んでいるらしい。

 

 あれはガメラじゃない。なぜそれがわからないのだ。

 

 仮に人類を守るためかどうかは別にあの透明な人型怪獣と敵対したとして、この山が移動したらその跡はどうなると思っているのだろう。

 

 超巨大なロードローラーが通った跡のようになるのは想像に難くない。

 

 透明な怪獣が負ける頃には日本は真っ平らになっていることだろう。

 

 

 

 僕は怪獣も怖いし、無根拠に亀怪獣を守れと騒ぐ人々が怖くて憎い。

 

 静かにしていてほしい。

 

 土に埋もれ、木々が生い茂っても眠り続けた怪獣にとっては騒音というほどではないかもしれない。

 

 だが、僕がもし怪獣なら……煩く騒いで眠りを妨げた生物をまず殺すだろう。

 

 

 

 何もしなければ僕らが死ぬまでは起きないでいてくれるかもしれないのだから。

 

 頼むから静かにしてくれ。

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