日本に出現した怪獣がある日突然姿を消すことがある。
地面に吸い込まれていくらしい。
忽然と姿を消し、再び現れた個体は今のところ確認されていない。
怪獣たちはどこへ消えてしまったのだろうか?
×
僕の恐怖の感情はいまだに衰え知らずでいつも怪獣に殺されるかもしれないというストレスに晒されている。
テレビだって本当は見たくない。だけど、見ないわけにもいかない。
見なければ見ないでストレスなのだ。
何かしらの情報を得るというのは恐怖でもあり安心でもあるということなのだろう。
僕は寝不足で霞む目でテレビを凝視する。
怪獣が現れるまで地上波の番組なんて観なかった。だが、最近は地上波の番組ばかりだ。
「透明な怪獣が姿を消したのはこの辺りです」
踏み荒らされた山中に怖いもの知らずのキャスターとテレビクルーたちが現場から中継している。
透明な怪獣は塗料によって可視化され、自衛隊がついに駆除しようと作戦が発表された矢先だった。
忽然と姿を消してしまったのだ。
「このあたりでしょうか」
キャスターがそう言った瞬間。地面に巨大な穴が空き、テレビクルーたちはその穴に飲み込まれてしまった。
一瞬の出来事だった。
僕の喉がひゅっと鳴った。
中継映像は真っ暗になり、電波が拾えなくなったのか番組はスタジオに戻る。
「クルーたちは大丈夫なんでしょうか」
「心配ですね」
「透明な怪獣はあの穴に落ちたということでしょうね」
安全な――少なくとも現地よりは――スタジオでコメンテーターたちが何やら話しているが頭に入ってこない。
怪獣がすっぽり入ってしまう穴に人間が真っ逆さまに落ちて無事で済むわけがない。
底はどこまで深いのだろうか。
一瞬で潰れてしまう方が楽だろう。
僕のような臆病者は底に着くまでにショック死してしまうかもしれない。
ヘリコプターから現地の映像がテレビに映し出される。
そこにはもう大穴はなく、元通りの地面があるだけだった。
×
数日後――。
「先日、クルーたちが消失した大穴について和久津大学の古森教授にうかがいます」
「えー、皆さん。落ち着いて訊いてください。ドローンを使ってあの穴の内部の成分を解析することに成功しました」
どうせあの穴も怪獣だったというんだろう。
「その結果……日本列島の本州、それ自体が定義としては怪獣と言えるという結論に達しました。今我々は怪獣の背の上で生活しているということになります」
あはははは。なるほど。そう来たか。
僕の中で何かが壊れる音がした。
今回でひとまず最終回となります。
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