聖園ミカの弱くてニューゲーム   作:Red_stone

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連合軍編6話 ミレニアムとの接触

 

 

 数日後、ナギサはハスミとともにミレニアムの喫茶店に足を運んでいた。

 そこはまさにミレニアムを象徴するかのような喫茶店だった。清潔で、まばゆい光に溢れている。その中をロボットが走り回っている。

 レトロとは逆に位置する店で、少し入りにくい。

 

「教えていただいた喫茶店はここですね。ハスミさんはミレニアムの喫茶店にはよく行かれますか?」

「いえ、もっぱらトリニティにばかり。他の自治区に足を踏み入れる機会は中々ありませんね。ナギサさんこそ、他自治区から茶葉を取り寄せたりなどしていませんでしたか?」

 

「ええ、ミレニアムからも取り寄せたことがありましたね。ここではどのような紅茶を出していただけるのでしょうか」

「そうですね、ええと。ミレニアムの職人が、AI技術を用いて最高の自動装置で淹れた紅茶と言うことですが」

 

 店の前で足を止めた二人に、親し気に声がかけられる。もっとも、実際には知り合い程度の仲ではあるのだが。

 

「どうかな、ミレニアムが誇る喫茶店は。実はここの紅茶を淹れる機械はエンジニア部が納品したものでね。0.1度単位の温度操作に加えて、160分割した領域の個別温度操作を可能にしたものなんだ。もちろんbluetoothで操作できるし、自爆機能も搭載してある」

 

 白石ウタハ。キヴォトスの中でも最先端の技術を持つミレニアム、その中でもハードウェアに関しては最高峰の技術を持つエンジニア部の部長。それに本人もマイスターの称号を持っている超一級の技術者である。

 相手がトリニティの生徒会長であろうと物怖じしない。

 

「ご無沙汰しております、ウタハさん。まさかカーニバルの縁でお世話になるとは思わなかったですが」

「なに、不思議な縁で依頼を受けることはままあるさ。顔を売るのも重要ということだね」

 

「入ってから話をしましょうか。まずはミレニアム流の紅茶を楽しませていただきましょう」

「――それと、スイーツもですね」

 

「もちろんだ。ミレニアム自慢の一品を是非味わっていってほしい」

 

 3人は個室に通され、紅茶とスイーツが供される。ナギサが紅茶を味わう。

 

「なるほど。完璧な温度調整とはこういうものですか。職人の方もよく研究されているのですね。どこを切り取っても落ち度のない、100点の紅茶と言えます」

「……香りが引き立っていますね。それに、苦みも一切ない澄み切った味わいで」

 

「ははは。お二人さんはまるで評論家だね。うん、おいしい」

 

 紅茶をよく味わう二人と比べ、ウタハはがぱがぱ飲んでいる。人柄の違いというやつか。

 

「スイーツの方も、相性が良いものを、これまた完璧な温度調整で仕上げていますね。機械で作っているからこそ、手の熱が移ることもない」

「はい、この舌触りは熟練の職人でも中々出せません。少し驚きました。これは、とてもおいしい」

 

「うん。コンビニのスイーツとは一味違うね」

 

「ただ――惜しむらくは、ただ欠点がないと言うだけであること。100点ではあっても満点ではない。職人の顔が見えてこない」

「そうですか? とてもおいしいと思いますが」

「うん。おいしければそれでいいだろう?」

 

 一通り舌つづみを打ち、落ち着いてから切り出す。楽しみにしていたことではあれど、別にそこは本題ではない。

 

「それで、ウタハさん。本日会いに来たのは、ミレニアムの中でもマイスターの称号を持つあなただからこそ分かることがあると思ったからです」

「ああ、相談なら受けよう。通信では送れない機密だと言うことだったね」

 

「はい。こちらのデータを確認ください。ハスミさん、お願いします」

「どうぞ」

 

 ハスミからPCが手渡される。

 

「ありがとう。通信機能を物理的に封鎖するとは中々に用心深いね。……さて」

 

 ウタハは表示された画面を見ていく。だが、表示されるデータを見ていくにしたがって怪訝な表情になっていく。

 

「これはただの鉄を解析しているだけじゃないか。キヴォトスで一般的に流通しているものだね。もう一つのデータは白色塗料。お望みならどちらも型番まで当てることもできるが――」

 

 こんなものを見せてどうする気だ、と顔に書いてある。からかわれた、とそう思っている。

 

「はい。私も不思議に思っています。動画データの方を確認してください」

「動画……これか? ――なに」

 

 怪訝な顔つきだったのが、目に鋭い光を帯びていく。それは先のビナーとの戦闘データだった。人類の敵と称するに値するほどの敵に対し、一つの戦争規模の砲撃を浴びせかけている。

 それでも、敵は倒れない。そればかりか反撃までしてくるのだから、これはとんでもない敵だった。

 

「すまない。これを先生には?」

「先生には総指揮を担当していただきました。データもお渡ししてあります」

 

「なるほど。確認するが、さきほどのデータはこれが落とした破片を解析したもので合っているかな」

「はい。撃退した後に残された戦利品です。何もない砂地だったので取り違えも考えられません」

 

「だが、この解析結果では普通の物質と何も見分けがつかない。――なにか見落としがあるはずだ。もしくは、検査機器の能力が足りていないのか」

「ウタハさんでも見落としに関しては分かりませんか?」

 

「難しいね。エンジニア部の工房で解析させてもらうわけにはいかないかな?」

「それは無理です。国家機密ですので」

 

「……まあ、解析に成功すれば富も思いのままだろうからね。――ふむ」

 

 ウタハはもう一度PCに目を落とす。また一から確認して不審点を洗い出していく。

 

「どうでしょう」

「……うむ。これが意味することは分からないが、どうして普通の金属と塗料を使っているのだろうね?」

 

 少し考え込んだ後、自分でも分かっていない疑問点を口にする。思い付きから真実にたどり着くということもよくあることだ。

 

「普通の……とは?」

「だって、これはキヴォトスで一般的に流通している素材だ。だが、私はこんなロボットが作られたなど聞いたことが無い。ここまでデカいものを作ったとなれば、噂になってもおかしくないだろう?」

 

「それは――そもそもビナーやデカグラマトンは人の手で作られたものだと?」

「分からないが、しかし人が作ったものでないならどこから買って来たんだ? 規格を合わせる必要などないだろう。この量の鉄を買った人間が居るのなら、トリニティで見つけられるのではないか?」

 

「いえ、探してはみましたが特に見つかりませんでした」

「これは明らかに自然物ではない。キヴォトスの規格に合わせて作られた既製品だ。もしかしたら、デカグラマトンとは人間が作ったものを侵食する性質を持つのかもしれない」

 

「……侵食、ですか? それは――どういう」

「――であるとしたら、デカグラマトンは他にも存在する……?」

 

「セイアさんが言っていました。デカグラマトンとは生命の樹を表す10の階梯。エデンの園のリンゴであると」

「10……いや、ここでは結論を出せないな。やはり現物を見たいのだが、どうだろうか?」

 

「分かりました。では、今度はトリニティに来てください」

「すまないね。だが、エンジニアとしてこれ以上好奇心を刺激されるものもない。遠慮なく伺わせてもらおう」

 

「また後日に。本日は忙しいところありがとうございました」

「ナギサさんこそ。すぐに予定を整理する」

 

 握手して、今日は別れた。

 

 

 

 そして、次の日にナギサが学園の前で出迎える。

 

「ようこそいらっしゃいました。まさか相談した次の日に来ていただけるとは」

「はは、すまないね。どうしても気になってしまってね」

 

「それと……そちらの方々は?」

「ああ、こちらは明星ヒマリだ。この件に関する専門家だよ」

 

「専門……?」

 

 車椅子の女性はにこりと微笑む。

 

「ヴェリタスの部長兼、特異現象捜査部の部長……ミレニアム最高の天才清楚系病弱美少女ハッカーの明星ヒマリと申します」

「ヴェリタス、あの高名な。ですが――特異現象捜査部とは?」

 

「科学では解き明かせない現象。神秘、もしくはそれに類するものの作用により人類に害を及ぼす存在。そのような”敵”に対するカウンターとして、ミレニアムの生徒会長であるリオが私的に作った組織。それが特異現象捜査部なのです」

「……まさにデカグラマトンがそれと言う訳ですか。もしや、すでに研究されていましたか?」

 

「候補として選択肢に上がっていました。ですが、Divi:Sionシステム――機械を侵食し人類の敵へと変えるものの方を研究しておりましたので」

「……Divi:Sion?」

 

「今は関係のある話ではないでしょう。ビナーの破片を見せていただけますか?」

「ええ、もちろんです。こちらへ」

 

 厳重な警備を抜けつつ、秘匿された研究区画へと足を進めていく。ヒマリは招かれたのは自分だとばかりに自信満々の所作で車いすを走らせている。

 

「――ふふっ、中々に本気のようですね。良いでしょう。ミレニアムの清楚な高嶺の花であり、みなさんの憧れである「全知」の学位を持つ眉目秀麗な乙女が快刀乱麻に解決して差し上げましょうね」

 

「えと……?」

「ああ、気にしないでくれ。ヒマリさんはこういう人なんだ。だが――この件に関してはこの人の知見が必要なんだ」

 

「そうですとも。超天才病弱美少女ハッカーが少し説明してさしあげましょう。まず、特異現象という原点に立ち戻ってみましょう」

 

 人類の敵として撃退したビナーを研究するトリニティ。だが、特異現象捜査部はそのような現象を以前から調査し研究していたのだと持論を開陳する。

 

「そもそも、物理法則を超えた現象なんて私たちは日常的に目にしています。銃で撃たれても痛いで済むなど、普通でしたらありえません。先生のように一発の銃弾で死んでしまうのがあるべき法則なのです」

「その不思議な力を総称して神秘と呼ぶのでしたか? まあ、キヴォトスでは普通のことですので特に気にしませんね」

 

「そうです。ですが神秘を計測する術はありません。結局、なにか不思議なことがあるからそれを神秘と呼称しているのです。生徒のヘイローについても、幻覚でない証拠を提示できた者は居ないのですよ」

「……そういうものだと納得するしかないなら、今やっている研究は無駄だと?」

 

「いいえ、敵を研究するのは大事なことです。古今東西、技術に劣った方が滅ぼされてきたのですから。何をしてでも、彼らの技術を手に入れる必要があります。そのためにはまず情報を手に入れることが先決です」

「その見込みはありますか? 残骸は普通のものと何一つ見分けがついていない状況ですが」

 

「とても難しいでしょう。ですが、私という稀代の美少女なら可能です」

「……美少女と研究に何の関係が?」

 

「ふふっ。大船に乗ったつもりでお任せください」

「なんだか不安になってきました……」

「まあ、一朝一夕で済むものでもない。気を長くもって行こう」

 

 トリニティはミレニアムとも協力して敵の秘密を解き明かす研究を開始した。――全てはデカグラマトン打倒のため。

 撃退ではダメなのだ。人類の敵を殲滅しないと、枕を高くして眠ることなどできないのだから。

 

 

 

20万PVの同人誌は誰がいい?

  • ナギサ様
  • セイアちゃん
  • ミカ(二冊目)
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